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言葉・表現

小説の情景描写の書き方|五感と視点で場面を具体的にする

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この記事の答え

情景は、見えるものを全部書くのではなく、その場にいる人物が、いまの目的で気づくものを選んで書きます。

  • 先に「誰が、何のためにそこにいるか」を決める。急いでいる人と、立ち止まっている人では、同じ場所でも目に入る物が変わる
  • 五感は毎回全部入れない。視覚を土台に、人物の注意を引いた感覚を一つか二つ足す
  • 遠景と近景は人物の気持ちの余裕で切り替え、細部は人物の動作につながるものを残す。つながらない細部は減らしてかまわない
目次

場面の始まりに風景を書いてみたものの、天気や建物を並べただけで、誰がそこにいるのか分からない。五感を使えと言われて全部入れたら、かえって何も浮かばなくなった。この記事では、架空の小さな私鉄の駅を、急いでいる人と家に帰りたくない人の二人の目で書き分けます。全部の感覚を詰めた案と並べて、何を選び、何を落としたかを確かめていきます。読み終えたら、自作の場面で残す細部を選び直せます。

誰が、何のためにそこにいるかを先に決める

国語辞典では、情景は「心にある感じを起こさせる光景や場面」(デジタル大辞泉)と説明されています。小説の情景も、ただの景色ではなく、誰かの心に何かを起こしている景色です。だから書き始める前に、景色より先に二つのことを決めます。

決めること 問い 決まると変わること
視点人物 誰の目と耳で、この場所を感じるか 書ける物が、その人が気づける物に絞られる
場面の目的 その人は、いま何をしようとしているか 同じ物の中から、どれに目が行くかが決まる

まず、この二つを決めずに書いた段落を見てください。舞台は、川沿いの小さな駅(架空)。十月の夜、九時の少し前です。

作例版A:見えるもの・感じるものを全部入れた案

夜九時前の駅は、静かで落ち着いた雰囲気だった。川の向こうには団地の明かりがいくつも並び、空には細い月が出ていた。駅前のパン屋からは香ばしい匂いが漂い、どこからか金木犀の甘い香りもした。踏切の警報音がカンカンと鳴り、ホームには発車メロディが流れている。改札の横の自動販売機が白く光り、ベンチには空き缶が一つ置かれていた。川から吹く風は少し冷たく、頬に当たる空気がひんやりとしていた。口の中には、さっき飲んだコーヒーの苦みが残っていた。

視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚がすべてそろっています。それでも読み終えて残るものが少ないのは、次の三つの理由からです。

  • 誰が見ているのか分からない。コーヒーを飲んだ「誰か」はいるはずですが、その人が何をしに駅へ来たのかが見えません。
  • どの細部も同じ重さで並んでいる。月も空き缶も一文ずつなので、読者はどれが大事か判断できません。
  • 細部どうしが食い違っている。「静かで落ち着いた」と書いたすぐあとに、警報音と発車メロディが鳴っています。全部を入れようとすると、こうした矛盾にも気づきにくくなります。

「静か」「落ち着いた雰囲気」のように、場所を評価する言葉を具体的な物や行動へ置き換える考え方は、小説が説明ばかりになるときの直し方で扱っています。ここでは、具体的な細部が並んでいても情景が立ち上がらない理由、つまり選び方のほうを見ていきます。

作例:同じ駅を、急ぐ人と帰りたくない人の目で書く

同じ駅、同じ時刻に、二人の人物を置きます。

  • 沙耶:二番線の八時五十二分の上りに乗らなければならない。駅に着いたのは発車の二分前。
  • 浩二:一番線の電車を降りて、改札を出たところ。家はここから歩いて十分だが、まだ帰りたくない。理由は本文では書かない。

作例版B:沙耶(急いでいる)

改札の上の発車標で、〈20:52 普通〉の文字が光っていた。あと二分。
沙耶はICカードを読み取り機に押しつけ、音が鳴るのを待たずに通り抜けた。
跨線橋の階段の上から、発車メロディが降ってくる。二番線だ。手すりをつかみ、一段飛ばしで上がる。踊り場で下りてくる高校生の一団とすれ違い、肩のトートバッグが誰かの傘の柄に引っかかった。
「すみません」
振り向かずに言ったとき、メロディが途中で止まった。

作例版C:浩二(帰りたくない)

川の向こうの団地は、窓の半分ほどに明かりがついていた。どの部屋も、もう夕飯の片づけが済んだころだろう。
浩二は改札を出たところで足を止め、自動販売機の前に立った。押すつもりのないボタンを、上の段から順に眺める。缶コーヒーの列に、〈あたたか〜い〉の赤い札が今年も出ていた。
後ろから、女が一人、改札に体ごとぶつかるようにして駆け込んでいった。少しして、二番線の発車メロディが鳴りやんだ。
駅前のパン屋が、シャッターを半分まで下ろしている。その隙間から、焼き上がったあとの甘い匂いがまだ流れてきた。
浩二はポケットの中で、鳴らない携帯電話を一度握り、それから小銭を探しはじめた。

版Cで改札に駆け込んでいく「女」は、版Bの沙耶です。浩二には彼女が見えていますが、沙耶の段落には自動販売機の前の男は出てきません。同じ瞬間でも、急いでいる人の目には、急ぐことに関係のない物が入らないからです。

その場にあるものを書き出し、二人が何を選んだかを見る

書く前に、この駅で書けそうなものを感覚ごとに書き出し、それぞれの版で使ったかどうかを印にしました。

感覚 その場にあるもの 版B 沙耶 版C 浩二
視覚(遠) 川向こうの団地の明かり、細い月 使わない 団地だけ使う
視覚(近) 発車標の〈20:52〉 使う 使わない
視覚(近) 自動販売機の〈あたたか〜い〉の札、その前の男 見落とす 札を使う(男は本人)
聴覚 発車メロディ 使う(急ぐ合図) 使う(背中で聞くだけ)
聴覚 踏切の警報音、ICカードの読み取り音 読み取り音だけ使う 使わない
嗅覚 パン屋の匂い、金木犀 使わない パン屋だけ使う
触覚 階段の手すり、ポケットの携帯電話 手すりを使う 携帯電話を使う
味覚 口に残るコーヒーの苦み 使わない 使わない

二人とも、書き出したものの半分も使っていません。それでも版Aより場所がはっきり浮かぶのは、選んだ細部が、それぞれの人物の目的に結びついているからです。

比べる点 版B 沙耶 版C 浩二
目的 電車に間に合う 家に着くのを遅らせる
注意が向く先 時刻、ホームの番号、通り道を邪魔するもの 自分に関係のない物、時間をつぶせる物
距離 近景だけ。遠くを見る余裕がない 遠景(団地)から近景(札)へ下りてくる
発車メロディの意味 間に合うかどうかの合図 自分には関係のない音
文の速さ 短い文が続き、動作が多い 一文が長めで、立ち止まる動作が多い
見落としているもの 自動販売機の前の男、町の明かり 発車標の時刻

浩二が団地の明かりを見て「夕飯の片づけが済んだころ」と考えるのは、帰る家のある人の目だからです。帰りたくない理由は一言も書いていませんが、ほかの家の窓が気になり、鳴らない携帯電話を握っていることから、家で誰かが待っているか、待っていないかが問題なのだと読者は推測できます。理由を書かずにおくことで、読者が考える余地が残ります。

五感は、その人が気づいた感覚を一つか二つ足す

五感を使うと描写が具体的になる、とよく言われます。ただ、それは「全部入れる」という意味ではありません。場面の中の人物も、ふだんは目に入るものを中心に場所をとらえ、ほかの感覚は注意を引かれたときに意識に上る、と考えると選びやすくなります。それぞれの感覚が前に出やすいのは、次のようなときです。

感覚 人物が気づきやすいとき この駅での使い方
視覚 いつも。ただし何を見るかは目的で決まる 沙耶は時刻、浩二は窓の明かり
聴覚 合図になる音、急に始まる・止まる音、目が使えないとき メロディが止まる(沙耶には一大事)
嗅覚 場所の境目を越えたとき、立ち止まったとき 浩二が足を止めたから、パン屋の匂いに気づく
触覚・温度 体が何かに触れたとき、じっとしているとき 沙耶は手すりをつかむ、浩二はポケットの電話を握る
味覚 食べる・飲む場面、口の渇きなど体の状態が変わったとき この場面では使わない

目安としては、視覚を土台にして、人物の注意を引いた感覚を一つか二つ足すと、場面がまとまりやすくなります。これは決まりではありません。暗闇の中の場面や、目の見えない人物の視点では、聴覚や触覚が中心になります。光の届く範囲から場面を組み立てる方法は小説の光と暗さの描写で、匂いと記憶を結びつける書き方は小説の匂いの描写で扱っています。

感覚を足すときは、その感覚がいつ、なぜ気づかれたかが分かる置き方にします。

感覚を並べる書き方から、気づいた瞬間に置く書き方へ

感覚を並べた

駅前のパン屋から甘い匂いがした。風が冷たかった。踏切の音が聞こえた。

気づいた瞬間に置いた

駅前のパン屋が、シャッターを半分まで下ろしている。その隙間から、焼き上がったあとの甘い匂いがまだ流れてきた。

変更の理由

  • 修正前は三つの感覚が順番に並ぶだけで、どれも浩二の行動と結びついていません。
  • 修正後は「シャッターが半分」という視覚が先にあり、その隙間から匂いが来ます。閉店間際で、匂いだけが残っているという時間の情報も同時に伝わります。
  • 冷たい風と踏切の音は削りました。足すなら、浩二がそれに反応する(襟を立てる、踏切の音で顔を上げる)ときです。感覚を一つ削っても、場面に必要な情報が減らないかを確かめてから削ります。

遠景と近景は、人物の気持ちの余裕で切り替える

情景には距離があります。遠くの景色(遠景)は場所の広がりと全体の空気を、近くの物(近景)は人物がいま関わっている物を伝えます。どちらから書くか、どこまで寄るかで、場面の速さと人物の状態が変わります。

組み方 読者が受け取るもの 向く場面
遠景から近景へ 場所に入っていく感じ。時間がゆっくり流れる 着いたばかり、立ち止まっている、ためらっている
近景だけ 視野の狭さ、切迫 急いでいる、追われている、作業に集中している
近景から遠景へ 緊張がほどける、場面が閉じる 何かが終わったあと、場面の最後

版Bの沙耶は近景だけ、版Cの浩二は遠景から近景へ下りてきます。距離の選び方そのものが、人物の状態を伝えています。

同じ人物でも、状況が変われば距離が変わります。沙耶が急いでいる最中に遠景を差し込むと、どうなるでしょうか。

急いでいる最中の遠景を、緊張がほどけたあとへ移す

急いでいる最中に遠景を入れた

沙耶は手すりをつかみ、一段飛ばしで上がった。跨線橋の窓から、川の向こうの団地の明かりが見えた。空には細い月が出ていた。メロディが途中で止まった。

間に合わなかったあとで遠景が見える

ホームに出たとき、ドアはもう閉まっていた。電車は沙耶の目の前で動きだし、赤い尾灯が川のほうへ遠ざかっていった。
沙耶は手すりから手を離した。そのとき初めて、川の向こうに団地の明かりが並んでいるのが見えた。

変更の理由

  • 修正前では、走っている沙耶が月を眺める余裕を持っているように読めてしまい、急いでいる感じが途切れます。
  • 修正後は、電車に乗り遅れた瞬間に視野が広がります。「初めて」見えた遠景が、もう急ぐ必要がなくなったことと、力が抜けたことを伝えます。
  • 急いでいる最中にあえて遠景を入れる書き方もあります。走りながら一瞬だけ月が目に入り、それが人物にとって意味を持つ(大事な人と見た月を思い出す)場合です。そのときは、人物がそれに目を留めた理由が後の文で分かるようにします。

どこまで寄るかで、細部の重さが変わる

距離には、どのくらい細かく書くかも含まれます。遠くから「駅前に店が並んでいた」と書くのと、近づいて「シャッターが半分まで下りている」と書くのとでは、読者が受け取る重さが違います。

細かさ 例 読者が受け取ること
全体 駅前には小さな店が並んでいる 場所の見取り図。ここに重要なものはない
部分 パン屋がシャッターを下ろしかけている 時刻と、店が閉まりかけていること
細部 缶コーヒーの列の〈あたたか〜い〉の赤い札 人物がそこに目を留めている。何か意味があるかもしれない

読者は、細かく書かれたものほど大事だと受け取りやすくなります。だから細部まで寄るのは、人物が実際に目を留めている物と、話の中で意味を持つ物に限ると、読者の注意を迷わせません。版Cの赤い札は、浩二がボタンを眺め続けている(時間をつぶしている)ことと、季節が一つ進んだことを同時に伝えています。

情景を、人物の動きにつなぐ

情景を書いたあと、人物が止まったままだと、景色は場面の前に置かれた「背景の説明」になります。情景と人物の動きは、互いに呼び合う形でつなげます。

つなぎ方 例
情景が動作を起こす メロディが降ってくる → 手すりをつかんで階段を上がる
動作が情景を見せる 足を止める → パン屋のシャッターの隙間が目に入る
動作の途中で情景にぶつかる 階段ですれ違う → バッグが傘の柄に引っかかる
情景の中の物を人物が使う 自動販売機のボタンを眺める → 小銭を探す

景色の段落のあとに人物を置く書き方から、景色と動作を交互に置く書き方へ

景色をまとめて書いてから、人物を動かす

発車標には〈20:52〉と出ていた。跨線橋の階段は長く、上からは発車メロディが聞こえていた。踊り場には高校生が大勢いた。
沙耶は走った。

一つの細部ごとに、動作を一つ置く

改札の上の発車標で、〈20:52 普通〉の文字が光っていた。あと二分。
沙耶はICカードを読み取り機に押しつけ、音が鳴るのを待たずに通り抜けた。
跨線橋の階段の上から、発車メロディが降ってくる。二番線だ。手すりをつかみ、一段飛ばしで上がる。

変更の理由

  • 修正前は、情景の三文と動作の一文が離れているため、景色を眺めてから走りだしたように読めます。急いでいる人物の時間の流れと合いません。
  • 修正後は、時刻を見て→通り抜け、メロディを聞いて→上がる、と細部の一つずつが次の動作の理由になっています。情景を読むことが、そのまま人物の行動を追うことになります。
  • 落ち着いた場面や、場所そのものを見せたい冒頭では、景色をひとまとまりで置いてから人物を動かす書き方も使えます。その場合も、最後の一文で人物を景色の中に入れると、景色が場面に結びつきます。

景色に対する人物の気持ちを、心の声や比喩で一言足す書き方もあります。ただ、版Cのように動作だけでも、読者は人物の内側を推測できます。感情・思考・動作の組み合わせ方は小説の心理描写の書き方で詳しく扱っています。

細部を減らす判断

描写は詳しいほどよい、というわけではありません。細部を減らすと、場面が速くなり、残した細部が目立ち、読者が想像で補う余地が生まれます。次のような場合は、思い切って減らすことを考えます。

  • 場面の中心が、会話や決断にあるとき。情景は場所が分かる一、二文にとどめ、人物のやり取りに字数を回します。
  • 同じ場所を二度目に書くとき。前と同じ説明は繰り返さず、変わったところだけを書きます。
  • 場所から場所へ移るだけのつなぎの部分。移動の途中の景色は、筋に関わらなければ一文で足ります。
  • 視点人物が、その状況で気づくはずのないもの。版Bの沙耶にとっての月や団地です。
  • 同じ情報を、別の感覚で重ねているとき。「シャッターを下ろしている」と「閉店間際の静けさ」は、どちらか一つで足ります。

二度目の場面で、実際に減らしてみます。翌年の初夏、浩二がもう一度同じ駅で電車を降りる場面です。

二度目の駅を、変わった細部一つで書く

一度目と同じように全体を書き直した

川の向こうの団地には明かりがついていた。改札の横には自動販売機があり、駅前にはパン屋がある。パン屋はもうシャッターを下ろしていた。浩二は改札を出て、自動販売機の前に立った。

変わったところだけを書いた

改札を出ると、浩二はまっすぐ自動販売機の前に立った。缶コーヒーの札は、いつの間にか赤から青に変わっていた。
浩二は今度はボタンを眺めずに、一本買った。

変更の理由

  • 団地もパン屋も、読者は一度目の場面で見ています。繰り返すと、読者は「前と何が違うのか」を自分で探すことになります。
  • 修正後は、札の色の変化だけで季節が巡ったこと(〈あたたか〜い〉の赤から〈つめた〜い〉の青へ)を伝え、「今度はボタンを眺めずに」で、浩二の何かが変わったことを伝えます。一度目の細部があるから、二度目は一文で足ります。
  • 久しぶりに訪れた場所が大きく変わっていて、その変化そのものが話の中心になる場合は、二度目のほうを詳しく書きます。

反対に、細部を多く残したほうがよい場面もあります。

  • 物語にとって大事な場所に、初めて入るとき。読者がその場所を覚えておく必要があるなら、遠景から近景まで丁寧に書きます。
  • わざと時間を引き延ばしたいとき。何かが起きる直前に細部を積み重ねると、読者は先を待つ緊張を感じます。この使い方は小説で恐怖・緊張を描写するには?で扱っています。
  • 場所そのものが作品の主題に関わるとき。町や土地を描くことが目的の作品では、描写の量そのものが内容になります。

どの場合も、判断の基準は詳しさではなく、その細部が視点人物と場面の目的に結びついているかです。

自作の場面で、細部を選び直す

ここまでの手順を、自分の原稿の一場面に当てはめます。

手順情景を選び直す手順

  1. 場面の視点人物と、その人がいまその場所で何をしようとしているかを一行で書きます(例:「沙耶が、発車二分前の電車に間に合おうとしている」)。
  2. その場所で書けそうなものを、感覚ごとに十個ほど書き出します。遠くの物と近くの物の両方を入れます。
  3. 一行目の目的を持った人物が、気づく順に三つか四つ選びます。気づかないものには「見落とす」と印を付けます。
  4. 距離を決めます。急いでいるなら近景だけ、立ち止まっているなら遠景から近景へ、何かが終わったあとなら近景から遠景へ。
  5. 選んだ細部の一つずつに、人物の動作を一つつなげます。どの動作にもつながらない細部は、削る候補にします。
  6. 「静か」「美しい」「〜な雰囲気」のような評価の言葉が残っていたら、具体的な物か音に置き換えるか、削ります。
  7. 最後に通して読み、細部どうしの食い違い(静かなはずなのに音が鳴っている、夜なのに遠くの物の色まで見えている)がないか確かめます。

練習同じ場所を、目的の違う二人で書く(30分)

  1. 身近な場所を一つ選びます(コンビニの前、病院の待合室、公園の水飲み場など)。
  2. その場所で書けそうなものを、感覚ごとに十個書き出します。
  3. 目的の違う二人を決めます(例:急いでいる人と、そこから離れたくない人)。
  4. それぞれの目で200字ずつ書きます。使える細部は三つか四つまで。一人は近景だけ、もう一人は遠景から近景へ下りてくる形にします。
  5. 書き出した十個のうち、それぞれが使ったもの、見落としたものに印を付けて見比べます。

同じ場所を目的の違う人物で書く練習は、小説の書き方を練習する方法にも別の場所の課題と回答例があります。

注意実在の場所を書くとき

実在の駅や町をそのまま舞台にする場合は、電車の時刻、建物の配置、店の営業時間、窓から見える景色のように、確かめられる事実を地図や運営者の情報で確認します。事実と違う細部があると、その場所を知る読者には場面全体が作り物に見えてしまいます。名前を変えて架空の場所にするなら、複数の場所の特徴を混ぜ、実在の一か所と特定されないようにしておくと、事実との食い違いを気にせずに書けます。

確認表情景描写の確認表

  • 場面の視点人物と、その人がいま何をしようとしているかを一行で言える
  • 書いた細部は、視点人物がその状況で気づけるものになっている
  • 五感を、全部ではなく、人物の注意を引いたものに絞っている
  • 遠景と近景の順番が、人物の気持ちの余裕(急いでいる、立ち止まっている)と合っている
  • 細かく書いた物は、人物が目を留めている物か、話の中で意味を持つ物になっている
  • 情景の細部の多くが、人物の動作とつながっている
  • 二度目以降の場所は、変わったところを中心に書いている
  • 「静か」「〜な雰囲気」のような評価の言葉が、具体的な細部と食い違っていない

視点人物が知り得ない景色まで書いていないかは、人称の選び方とも関わります。一人称で語り手がいつ語っているかによって書ける景色が変わる点は一人称小説の書き方で、三人称で誰の目に寄るかの選び方は三人称小説の書き方で確かめられます。地の文全体の中で、情景を動作・説明・心の声とどう配分するかは小説の地の文の書き方を参考にしてください。

自分で選び直しても、どの細部が読者に届いているかは、場面を頭の中に持っている書き手には判断しにくいものです。原稿があって疑問が残っている場合は、読んだ人に「この場面で目に浮かんだ物を三つ」挙げてもらうと、狙った細部が残っているかを確かめられます。講評や添削を頼むことを考えているなら、小説の添削はどこに頼む?で依頼先ごとの範囲を比べ、講評・添削の依頼メモに「情景の量」「視点人物に合っているか」など尋ねたい点を書き出しておくと、答えを受け取りやすくなります。