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エッセイ

エッセイの書き方|体験を一篇にまとめる初心者向けの手順と例

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この記事の答え

エッセイは、体験したことを全部書く文章ではありません。一つの場面と、そこで動いた考えを選び、読者が思い浮かべられる言葉で書きます。

  • 体験メモから「中心にする場面」と「気づきの一文」を一つずつ決める
  • 場面は物・言葉・動作で書き、自分にしか分からない事情(人の呼び名、いつもの場所)は一言補う
  • 最初は1,200〜2,000字・五つのまとまり(書き出し・補い・場面・考え・結び)で書き切り、一晩置いてから大きな問題から順に直す
目次

日常の出来事をエッセイにしようとすると、その日にあったことを順に全部書いてしまったり、最後を「〜と改めて思った」で締めたりしがちです。書き始める前に中心にする場面を一つ、伝えたい考えを一つ選んでおくと、短くても読者に届く一篇になります。この記事では、架空の書き手の体験メモ「陶器市で、湯のみを傷物と勘違いした」を使い、題材の絞り込みから段落の並び、初稿、修正版までを通して見せます。作例の体験と書き手は、この記事のために作った架空のものです。

最初の一篇は「場面一つ・考え一つ」で1,200〜2,000字にする

ここで扱う「エッセイ」は、日本語でいう随筆に近い、体験や見聞から書く文章です。デジタル大辞泉は「随筆」を「自己の見聞・体験・感想などを、筆に任せて自由な形式で書いた文章」と説明し、言い換えの語にエッセーを挙げています。一方で同じ辞典は「エッセー」に「特定の主題について述べる試論。小論文」という意味も載せています(コトバンク「エッセー」)。学校の小論文や、英語の論述型エッセイのように序論・本論・結論で主張を論証する文章は、この記事では扱いません。

形式が自由だからこそ、最初の一篇では次の三つだけ先に決めておくと迷いません。

決めること 最初の一篇の目安 理由
長さ 1,200〜2,000字(400字詰め原稿用紙で3〜5枚) 場面を一つ書き込み、考えを一段落書ける長さ。読み返しも一度で済む
中心の場面 一つ 場面が二つ以上あると、読者はどちらの話なのか迷う
伝えたい考え 一文で言えるもの一つ 書いている途中で話がそれたとき、戻る場所になる

「自由な形式」は、何を書いてもまとまるという意味ではありません。場面と考えを一つずつに絞るのは、読者が一度読んで追えるようにするためです。慣れてきたら、二つの場面を比べたり、過去と現在を行き来したりする書き方も選べます。

日記とエッセイの違いや、「随筆」という呼び名の幅を先に確かめたい場合は、エッセイと日記・随筆の違いで同じ出来事の書き分けを比べています。

体験メモから、場面と気づきを一つずつ選ぶ

書き始める前に、体験を思い出せるだけメモします。この段階ではまだ選ばず、起きた順に書き出してかまいません。

作例作例:体験メモ(架空の書き手)

秋の連休。河川敷の陶器市へ、友人Mと。
駐車場に入るまで三十分。焼きそばを食べる。Mとは別行動。
白い湯のみを探していた(先月、十年使った湯のみのふちを欠いた)。
三軒目のテント。白くて背の低い湯のみ。ふちが一か所だけ内側に波打っている。千二百円。
「これ、傷物ですか」と聞いた。少し安くなるかもと思った。
売っていたのは作った本人。「わざとなんです。指がかかるように」。顔が熱くなった。
そのまま千二百円で買った。新聞紙で包んでくれた。
Mは大皿を買っていた。帰りは渋滞。
家で使ったら、くぼみに人差し指がぴったり。
そういえば、通販の「一つずつ形が異なります」をいつも注意書きだと思って読んでいた。

このメモには出来事が十近くあります。全部を書けば一日の記録になります。エッセイにするには、ここから中心の場面を一つ選びます。選ぶときは、次の三つを確かめます。

確かめること 問い 作例での答え
気持ちが動いたか その瞬間、驚き・恥ずかしさ・おかしさ・引っかかりがあったか 「わざとなんです」と言われて顔が熱くなった
場面として書けるか 物・言葉・動作を思い出せるか 波打ったふち、千二百円の値札、作り手の返事、手の中の湯のみ
考えにつながるか 「なぜ引っかかったのか」を一文で言えるか ゆがみを、疑いもなく欠点だと思っていた

三つがそろったのは、「傷物ですか」と聞いた場面でした。駐車場の三十分や焼きそばは事実ではあっても、この気づきとは関係がありません。友人Mもこの場面には登場しないので外します。

次に、その場面から何に気づいたのかを一文で書きます。この記事では、場面と気づきの組み合わせを「焦点」と呼びます。

作例作例:焦点のメモ

場面:陶器市で、ふちの波打った湯のみを「傷物ですか」と作り手本人に聞き、「わざとです」と言われた。
気づき:私は、そろっていることを「ちゃんとしている」ことだと決めつけて物を見ていた。
入れないこと:駐車場、焼きそば、Mとの別行動、帰りの渋滞。

気づきは、立派な教訓である必要はありません。「〜だと思い込んでいた」「〜が気になった」「〜の理由がやっと分かった」くらいの、小さな考えの動きで十分です。気づきの一文がどうしても書けないなら、その場面はまだ考えが熟していないのかもしれません。別の場面を選ぶか、メモのまましばらく置いておきます。

練習自分の体験で焦点を一文にする(15分)

  1. 最近、少しでも気持ちが動いた出来事を一つ選び、起きた順に十行ほどメモします。
  2. メモの中から、上の表の三つの問いに答えられる瞬間に印を付けます。
  3. 「場面」「気づき」「入れないこと」を一行ずつ書きます。

書きたい体験そのものが見つからない場合は、エッセイのネタがないときの探し方で、日常のメモから題材を一つに絞る手順を扱っています。

選んだ場面を、読者が思い浮かべられるまで具体的にする

書き手は体験を覚えているので、要約しただけで場面がよみがえります。読者にはそれができません。読者が頭の中に場面を組み立てられるのは、物・言葉・動作が書かれているときです。

中心の場面を、要約から場面へ

要約で書いた場面

三軒目のテントで、よさそうな湯のみを見つけたが、ふちが少しゆがんでいたので、傷物かどうか聞いてみた。すると、わざとそうしているのだと言われて、とても恥ずかしかった。

物・言葉・動作で書いた場面

白い、背の低い湯のみだった。ふちが一か所だけ、指の幅ほど内側へ波打っている。
「これ、傷物ですか」
テントの奥で新聞紙を広げていた女性が顔を上げた。
「それ、わざとなんです。指がかかるように、そこだけへこませてあるんですよ」
作った本人だった。耳のあたりが熱くなった。

変更の理由

  • 「少しゆがんでいた」を「一か所だけ、指の幅ほど内側へ波打っている」にしたことで、読者にもそのゆがみが見えます。この形が、あとで指が収まる結びにつながります。
  • 「傷物かどうか聞いた」を、実際に口にした言葉に戻しました。自分の言葉をそのまま書くと、そのときの気まずさが説明なしで伝わります。
  • 「とても恥ずかしかった」は「耳のあたりが熱くなった」に置き換えました。気持ちの言葉を残す書き方も間違いではありませんが、中心の場面では、体の反応や動作のほうが読者に届きやすくなります。

すべての文を細かく書く必要はありません。具体的に書くのは中心の場面だけで、そこへ行くまでの移動や前後の出来事は一、二文の要約で足ります。目安として、中心の場面に全体のおよそ三分の一の字数を使うと、焦点がぼやけにくくなります。

自分にしか分からない言葉を補う

体験メモには、書き手だけに通じる言葉が混ざります。読者向けの文章にするときは、それを一言で補うか、話に関係がなければ削ります。

メモの言葉 読者にとっての問題 補い方
陶器市 どんな場所で、誰が売っているのか分からない 「河川敷に白いテントが並び、多くの店では器を作った人が自分で売り場に立つ」と一文足す
湯のみを探していた なぜ探していたのか分からない 「先月、十年使った湯のみのふちを欠いた」と理由を一言
M 誰なのか分からない この場面に関わらないので、人物ごと削る
わざと 何のための「わざと」なのか分からない 作り手の言葉「指がかかるように」をそのまま書く

作例では特に、「売り場にいたのが作った本人だった」という一点が大切です。これを書かないと、「傷物ですか」と聞いたことの気まずさが読者に伝わりません。書き手には当たり前すぎて書き落としやすい情報ほど、読者には必要なことがあります。

情景や手触りをさらに書き込みたいときは、エッセイの描写の書き方で、描写する量と感覚の選び方を扱っています。

場面から考えへ、自分の言葉でつなぐ

エッセイが出来事の報告と分かれるのは、場面のあとで「なぜそれが引っかかったのか」を書き手が考えるところです。ただし考えの部分は、長くても短くても、場面から離れすぎないことが大切です。

同じ場面のあとに置く考えを、三通り比べます。

作例考えの書き方A:一般的な教訓で言い切る

人や物を見た目だけで判断してはいけないと、改めて思った。

作例考えの書き方B:自分の思い込みを、別の小さな場面で確かめる

値引きを頼むつもりだったわけではない。ただ、ゆがんでいるなら安いはずだと、手に取った瞬間に決めていた。考えてみると、通販で器を選ぶときも、「手作りのため一つずつ形が異なります」という一文を、私は注意書きとして読み飛ばしていた。そろっていることを、ちゃんとしていることだと思っていたのだ。

作例考えの書き方C:答えを出さずに、問いとして残す

あの湯のみのくぼみを、私はなぜ最初に「傷」と呼んだのだろう。

Aは誰にでも書ける一文で、この体験でなくても成り立ちます。読者は「それはそうだ」と思うだけで、書き手がこの日に何を見つけたのかは伝わりません。

Bは、湯のみの場面で気づいた思い込みを、通販の説明文という別の小さな場面で確かめています。考えが体験から出てきたことが分かり、読者も自分の似た経験を思い出せます。最初の一篇では、Bのように「自分は〜と思っていた」と、ほかの場面での一例を組み合わせると、教訓めいた調子になりにくくなります。

Cは、考えを言い切らずに読者へ預ける書き方です。場面だけで十分に伝わる作品や、結論を急ぎたくない題材では有効です。ただ、最初の一篇で問いだけを置くと、書き手自身が何を考えたのか分からないまま終わることもあります。まずBで書いてみて、言いすぎだと感じたら削ってCに近づける、という順に試すと選びやすくなります。

場面から考えへ移るところでは、「帰りの電車で」「あとになって」のように、考えた時と場所を一言入れておくと、話が急に飛んだように見えません。読者は、書き手が場面を離れて振り返っていることを、そこで受け取れます。

考えの段落が長くなって自分の話ばかりに見える、説教のように読めると感じた場合は、エッセイが自分語り・説教に見えるときの直し方で直し方を比べています。

書き出しと結びを決めて、段落の並びを作る

場面と考えが決まったら、書く前に段落の並びを決めます。最初の一篇は、次の五つのまとまりで組むと書きやすくなります。字数は全体を1,300字前後にする場合の目安です。

まとまり 役割 作例の内容 字数の目安
1 書き出し:中心の場面の途中から入る 「これ、傷物ですか」と聞いてしまう 150字
2 補い:読者に必要な前提 陶器市の様子、作り手が売り場に立つこと、湯のみを探していた理由 250字
3 中心の場面 「わざとなんです」という返事と自分の反応、買うまで 400字
4 考え 値段で決めつけていたこと、通販の説明文の例 350字
5 結び:考えを受けた最後の場面 家で湯を注ぎ、くぼみに指が収まる 150字

書き出しは、背景より場面の途中から

書き手は、「私は昔から器が好きで」と自己紹介や背景から始めたくなります。けれども読者はまだ何の話か分からないので、背景を読む理由を持っていません。作例では、いちばん気まずい一言「これ、傷物ですか」から始め、陶器市の説明は二段落目に回しました。説明を後へ回しても、読者は「何が起きたのか」を先に知っているので、補いの段落を読む理由があります。

書き出しの選び方は、エッセイの書き出しの書き方で、同じ体験を動作・会話・意外な事実・問いから始めた四つの冒頭で比べています。

結びは、考えを言い直すより、もう一度場面に戻る

結びで考えをもう一度まとめると、考えの部分の繰り返しになります。作例では、考えの段落のあとに、家で湯のみを使う短い場面を置きました。ゆがみを「傷」と呼んだ書き手が、そのくぼみに自分の指が収まるのを確かめる場面です。考えを言い直さなくても、湯のみへの見方が変わったことが伝わります。

もちろん、考えを一文で言い切って終える結びが合う作品もあります。結びの形を比べたいときはエッセイの終わり方を参照してください。

初稿を書き、一晩置いて読み返す

段落の並びが決まったら、最後まで書きます。初稿では言葉選びに時間をかけず、五つのまとまりを埋めることを優先します。

次は、作例の書き手が焦点と段落の並びを決める前に書いた初稿です。読み返しで直す点を確かめられるよう、起きた順に全部書いた形のまま載せます。

作例作例:初稿(直す前・約300字)

私は昔から器が好きで、秋の連休には毎年、河川敷の陶器市に出かける。今年は友人のMと一緒に行った。朝九時に着いたのに駐車場に入るまで三十分もかかり、着いたころにはもうお腹がすいていたので、まず焼きそばを食べた。

それからMとは別行動にして、私は白い湯のみを探して回った。三軒目のテントで、よさそうな湯のみを見つけたが、ふちが少しゆがんでいたので、傷物かどうか聞いてみた。すると、わざとそうしているのだと言われて、とても恥ずかしかった。結局その湯のみを買った。Mは大きな皿を買っていた。帰りは渋滞していて、家に着いたのは六時過ぎだった。

家で使ってみると、とても持ちやすかった。人や物を見た目だけで判断してはいけないと、改めて思った。

書き終えたら、すぐに読み返さず一晩以上置きます。書いた直後は、頭の中の記憶で文章の足りない部分を補って読んでしまうからです。読み返すときは、次の順に確かめます。

確認表初稿を読み返すときの確認表

  • 【焦点】中心の場面は一つか。その場面に、全体のおよそ三分の一の字数を使っているか
  • 【焦点】気づきに関係しない出来事(移動、食事、ほかの人の行動)が残っていないか
  • 【場面】中心の場面に、そのとき実際に口にした言葉や、手の動きが書かれているか
  • 【読者】自分にしか分からない言葉(人の呼び名、「いつもの」「例の」)を、補うか削るかしたか
  • 【考え】考えの部分は、この体験でなければ書けない内容になっているか
  • 【結び】結びが、考えの段落の言い直しになっていないか
  • 【文章】声に出して読み、引っかかる文や同じ語尾の連続がないか

作例の初稿を確認表で見ると、直す点は次のとおりです。

初稿 修正版 変えた理由
「器が好きで」「毎年」から書き始める 「これ、傷物ですか」という一言から始める 何の話かを先に見せるため。背景は二段落目で補う
駐車場、焼きそば、M、渋滞が入っている すべて削った 気づきに関わらない。字数を中心の場面に回す
中心の場面が二文の要約 湯のみの形、作り手の言葉と手の動き、耳が熱くなる反応を書いた 読者が場面を思い浮かべられるようにする
売っていたのが作った本人だと書いていない 陶器市では作り手が売り場に立つこと、相手が本人だったことを書いた これがないと、聞いたことの気まずさが伝わらない
「見た目だけで判断してはいけない」で終わる 通販の説明文の例で思い込みを確かめ、湯のみを使う場面で終える 一般的な教訓では、この体験から何を見つけたかが伝わらない

直す順番は、大きなものから小さなものへ。まず入れる出来事と削る出来事を決め、次に場面の書き込み、最後に一文ずつの言葉を直します。文章から直し始めると、あとで段落ごと削ったときにその手間がむだになります。題材・構成・文章の順に見直す方法は、エッセイの推敲のやり方で詳しく扱っています。

作例:修正版の全文

確認表で直した修正版です。上の五つのまとまりに沿っています(会話の区切りで段落を分け、考えの部分も二段落にしたので、段落の数は八つです)。

作例わざと(作例・修正版・約1,000字)

「これ、傷物ですか」

聞いてから、しまったと思った。テントの奥で新聞紙を広げていた女性が顔を上げ、私の手の中の湯のみを見た。白い、背の低い湯のみだった。ふちが一か所だけ、指の幅ほど内側へ波打っている。値札には千二百円とあった。

秋の連休に、河川敷で開かれる陶器市だった。白いテントが長い列になって並び、多くの店では器を作った人が自分で売り場に立っている。私は先月、十年使った湯のみのふちを欠いてしまい、代わりを探しに来ていた。条件は、白くて、手になじむこと。三軒目のテントで、ようやくそれらしいものを見つけたところだった。

「それ、わざとなんです」と女性は言った。湯のみを受け取ると、くぼみに自分の人差し指を当てて見せた。爪のきわに、白い土が少し残っていた。「指がかかるように、そこだけへこませてあるんです。熱いお茶でも持ちやすいので」

作った本人だった。耳のあたりが熱くなった。よく見ると、台に並んだほかの湯のみも、ふちのどこか一か所が同じようにへこんでいた。私は「そうなんですね」と言いながら、返された湯のみを台に戻しかけて、やめた。いま戻したら、傷物だと思ったことをもう一度認めるような気がした。財布から千円札と百円玉を二枚出すと、女性は湯のみを新聞紙で二重に包み、「使ってみてくださいね」と言った。

帰りの電車で、私は自分が何を聞いたのかを考えていた。値引きを頼むつもりだったわけではない。ただ、ゆがんでいるなら安いはずだと、手に取った瞬間に決めていた。作った人から見れば、私は手間をかけた工夫を、欠点と呼んだ客だったことになる。

考えてみると、通販で器を選ぶときも、商品説明の「手作りのため一つずつ形が異なります」という一文を、私は注意書きとして読み飛ばしていた。家の食器棚を思い浮かべると、並んでいるのは同じ形が何枚もそろう皿ばかりだ。割れても同じものを買い足せる、という理由で選んできた。そろっていることを、ちゃんとしていることだと思っていたのだ。そろっていない物を見ると、どこかで誰かが失敗したのだと考えるくせが、いつの間にかついていたらしい。

台所で湯を沸かし、新聞紙を一枚ずつはがした。湯を注いで右手で持つと、人差し指の腹が、ふちのくぼみにそのまま収まった。少し回して持ち直しても、指はまた同じ場所へ戻っていった。

修正版では、陶器市、白い湯のみ、千二百円、「わざと」という言葉など、体験の中身は初稿とほとんど変わっていません。変えたのは、何を削り、どの場面を詳しくし、どこから書き始めるかです。初稿は捨てる原稿ではなく、選ぶための材料です。

作例は記事の中で読みやすいよう約1,000字に収めました。自分の一篇では、補いの段落や中心の場面のやりとりを少し足して、1,200〜1,500字にすると落ち着いた長さになります。

二篇目で試すこと

一篇を書き終えたら、同じ体験メモから中心の場面を変えてもう一度書いてみると、選ぶ力がつきます。作例なら、「家で湯を注いだら指がくぼみに収まった」場面を中心にし、陶器市のやりとりを回想として短く入れる書き方もできます。どちらの場面を中心にするかで、同じ体験から伝わる考えが少し変わることが分かります。

書き上げた作品に題名を付けるときは、本文の中の言葉や具体物から候補を出す方法をエッセイのタイトルの付け方で扱っています。構成や推敲を本で体系的に学びたくなったら、エッセイの書き方を学ぶ本で、自分が詰まっている工程に合う入門書を選べます。