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俳句

俳句の作り方|観察と季語から最初の一句を作る初心者向け入門

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この記事の答え

俳句は、自分が見た一場面と季語を組み合わせ、五・七・五の十七音にまとめると作れます。

  • 「秋らしいこと」を考える前に、台所や通勤路で見た物の動きを一つメモする
  • 季語は歳時記で季節と意味を確かめ、最初は一句に一つだけ入れる
  • 五七五に収めたら、「おいしい」「きれい」などの感想の言葉を、見た物に置き換える
目次

季語を入れて五七五にそろえたのに、読み返すと誰にでも書けそうな一句になる。そんなときは、季語と音数より先に「何を見たか」が決まっていないことを疑ってみてください。この記事では、夜の台所で梨を剝いた架空の場面を使い、観察メモ、季語の確認、五七五へのまとめ、見直しまでを通して見せます。読み終えたら、今日見た場面から同じ手順で一句を作れます。

最初の一句は「有季定型」で作る

俳句にはいくつかの作り方がありますが、最初の一句には有季定型(ゆうきていけい)が向いています。季語を一つ入れ、五・七・五の十七音にまとめる形です。決まりが少なく、形が整ったかどうかを自分で確かめやすいからです。

要素 中身 最初の一句での扱い
季語 季節を表す言葉として歳時記に載っている語。「梨」「虫」「小春」など 一つだけ入れる。季節と意味を歳時記で確かめる
定型 五・七・五の十七音 まずは合わせてみる。はみ出したら、直すか残すかをあとで判断する
具体的な場面 自分が見た・聞いた・触った物と、その動き 一句の中心にする。季語と音数より先に決める

三つ目の「具体的な場面」は、俳句の決まりではありません。けれど、季語と十七音だけを満たした句が物足りなく感じられるときは、まずここが決まっているかを確かめます。この記事の手順は、場面を先に決めるところから始めます。

注意季語のない俳句、五七五でない俳句もある

季語を入れない無季の句や、音数にとらわれない自由律の句も、俳句として書かれ続けています。有季定型は唯一の正しい形ではなく、最初に練習しやすい入口です。両者の違いは季語のない俳句とは?無季俳句と自由律の違いで整理しています。

音数は読みを「かな」にして数える

十七音は文字の数ではなく、声に出したときの音の数です。漢字のままでは数えにくいので、読みをひらがなで書いてから数えます。

言葉 読み 音数 数え方
包丁 ほうちょう 4 「ちょ」のように小さい「ゃゅょ」が付く字は、合わせて1音
しゃりっと しゃりっと 4 「しゃ」で1音。小さい「っ」は1音
みんな みんな 3 「ん」は1音
スプーン すぷーん 4 のばす「ー」も1音

読みを書いた紙を見ながら指を折るのが確実です。かなを入力して数えたいときはかな入力の音数確認を使えます。

身近な場面を一つ選び、観察メモを取る

歳時記の季語を眺めて「梨で何か作ろう」と考えると、梨について知っていること(おいしい、秋の果物)しか出てきません。先に場面を決め、その中で見た物を書き出します。遠くへ出かける必要はありません。台所、ベランダ、駅までの道で十分です。

手順観察メモの取り方(5分)

  1. 場所と時刻を一行で書く。「十月の夜、台所」のように。あとで季語の季節と照らし合わせるときに使います。
  2. 見た物・聞いた音・手ざわりを、物の名前と動きで書く。「きれい」「おいしそう」ではなく、何がどう動いたかを書きます。
  3. 感想は別の欄に分ける。感じたことを捨てる必要はありません。句に入れる言葉と混ぜないためです。

架空の場面で書いた観察メモです。

作例観察メモ(十月の夜、台所で梨を剝く)

・冷蔵庫から出した梨が、思ったより重い
・包丁を入れると、しゃりっと音がする
・皮が一度も切れずにつながって、流しの中まで垂れた
・剝いたところに汁がにじみ、手首まで伝ってくる
・切り分けた皿の底に、汁がうすくたまる
・片づけのあと、まな板を立てて乾かす。窓の外で虫が鳴いている
感想:みずみずしい。秋だなと思った。一日が終わってほっとした

少し意外だったことに印を付ける

メモの中から、句の中心にする一点を選びます。目安は、その場で少し意外だったこと、または自分の手や体が動いたことです。誰でも知っている梨の性質より、その夜にしか起きなかったことのほうが一句の芯になります。

メモ 判断 理由
梨が思ったより重い 保留 実感はあるが、重さは目に見えにくい
皮が一度も切れずに流しまで垂れた 選ぶ 剝く手の集中と、長くつながった皮の形が見える
汁が手首まで伝う 保留 みずみずしさが出る。別の句に回せる
まな板を立てて乾かす/虫が鳴く 選ぶ 片づけの動作と外の音。季語と組み合わせやすい

ここでは二つを選び、一つ目は梨そのものを見つめる句、二つ目は季語と別の場面を並べる句にします。

メモが「きれいな景色」や「秋らしい」だけになってしまう人は、先に俳句の題材の見つけ方で観察メモの取り方を練習すると進めやすくなります。

季語を歳時記で確かめる

メモの中の季語の候補は「梨」と「虫」です。冷蔵庫、包丁、まな板は季語ではありません。候補が見つかったら、歳時記(季語を季節ごとに集め、意味や例句を載せた本)で次の三点を確かめます。

  1. その言葉は、どの季節の季語か
  2. 解説の意味が、自分の見た場面と合っているか
  3. 同じ季語の別の言い方(傍題)に、場面により近い言葉はないか

この記事の作例は、NPO法人季語と歳時記の会が公開している「きごさい歳時記」で確かめました。

季語 季節と分類 解説の要点 自分の場面と合うか
梨 秋(三秋)・植物 秋を代表する果物の一つで、水分が多く甘い。傍題に「長十郎」「二十世紀」「有りの実」など 十月の夜に剝いた梨なので合う
虫 秋(三秋)・動物 秋に鳴く虫の総称で、その声を楽しむもの。「虫の声」「虫時雨」は傍題 窓の外で鳴いていたので合う

「三秋」は、初秋・仲秋・晩秋の秋全体を通して使える季語、という意味です。

気をつけたいのは「虫」です。俳句で「虫」とだけ書くと、ふだんの意味の虫全般ではなく、秋に鳴く虫とその声を指します。部屋に入ってきた羽虫を書きたいなら、別の言葉を探すことになります。季語には、ふだんの意味より狭い意味や特別な意味を持つ言葉があるので、知っているつもりの言葉ほど一度引いておきます。

注意歳時記によって扱いが違うこともある

季節の細かな区分(初秋・仲秋など)、傍題の範囲、どの言葉を見出しにするかは、歳時記によって違うことがあります。句会や投稿先が歳時記を指定している場合はそれに合わせ、確かめた歳時記の名前をメモに残しておくと、あとで迷いません。見出し・傍題・例句の読み方は歳時記の使い方で詳しく扱っています。

五七五にまとめる(一物仕立て)

一つ目は、梨だけを見つめて作ります。季語になる物そのものの姿や動きを一句にする形を一物仕立て(いちもつじたて)といいます。

一文で書いてから、削って十七音にする

いきなり五・七・五に当てはめず、まずメモを一文にします。それから、なくても伝わる言葉を外していきます。

段階 書いたこと 音数
一文にする 梨を剝いたら、皮が一度も切れずに流しの中まで垂れた 29音
外す言葉を選ぶ 「一度も」「の中」「垂れた」 —
五・七・五に割る 梨を剝く/皮は切れずに/流しまで 5・7・5

外した理由は次のとおりです。

  • 「一度も」:「切れずに」だけで、皮がつながったままだと分かります。
  • 「の中」:「流しまで」で場所は足ります。
  • 「垂れた」:「流しまで」で止めると、皮がどこまで伸びたかを読む人が思い描きます。最後の動詞を言わないぶん、皮の長さに目が向きます。

「皮が」を「皮は」に替えたのは、梨の実ではなく皮のほうに目を留めている感じを出すためです。「が」でも意味は通ります。

作例・俳句作例1:梨の皮(一物仕立て)

梨を剝く皮は切れずに流しまで
句よみ音数
梨を剝くなしをむく5音
皮は切れずにかわはきれずに7音
流しまでながしまで5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※季語:梨(秋)

この句は「おいしい」とも「秋だ」とも言っていません。それでも、皮を切らないように慎重に剝く手つき、長くつながった皮、夜の台所の流しが見えます。梨が秋の季語なので、季節も句の中にあります。

季語と別の場面を組み合わせる(取り合わせ)

二つ目は、季語と、季語とは直接つながらない場面を並べる形です。これを取り合わせといいます。季語以外の部分をおよそ十二音で作り、五音の季語と組み合わせます。

メモの「まな板を立てて乾かす」は、季語を含まない場面で、ちょうど十二音です。これを、同じメモにあった「虫の声」と並べます。

作例・俳句作例2:まな板(取り合わせ)

まな板を立てて乾かす虫の声
句よみ音数
まな板をまないたを5音
立てて乾かすたててかわかす7音
虫の声むしのこえ5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※季語:虫の声(「虫」の傍題・秋)

まな板を立てて乾かすのは、台所の仕事を終えるときの動作です。「一日が終わった」「静かになった」とは書いていませんが、水音や包丁の音がやみ、窓の外の虫の声が耳に入ってくる時間が伝わります。手元のまな板(近く)と、外の虫の声(遠く)という距離も一句の中に生まれます。

季語と十二音の距離が近すぎると説明に、遠すぎると意味不明になりやすいのが取り合わせの難しいところです。距離の測り方と別案の比べ方は俳句の取り合わせとは?で扱っています。

作例の記録

二句について、季語・確かめた歳時記・読み・音数を別々に記録しておきます。読みと音数を分けて書いておくと、あとで直すときに数え直しが楽になります。

句 季語・季節・確かめた歳時記 よみ 音数
梨を剝く皮は切れずに流しまで 梨・秋(三秋)・きごさい歳時記「梨」 なしをむく/かわはきれずに/ながしまで 5・7・5
まな板を立てて乾かす虫の声 虫の声・秋(三秋。「虫」の傍題)・きごさい歳時記「虫」 まないたを/たててかわかす/むしのこえ 5・7・5

季語と音数だけの句と比べる

ここで、季語と音数だけをそろえた句と並べてみます。どちらも季語が一つあり、十七音です。

季語と十七音だけの句から、見た物が残る句へ

季語と音数はそろっている句

作例・俳句作例:みんなで食べて

梨を剝きみんなで食べておいしいな
句よみ音数
梨を剝きなしをむき5音
みんなで食べてみんなでたべて7音
おいしいなおいしいな5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

見た物が残っている句

作例・俳句作例1:梨の皮

梨を剝く皮は切れずに流しまで
句よみ音数
梨を剝くなしをむく5音
皮は切れずにかわはきれずに7音
流しまでながしまで5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

変更の理由

  • 修正前も、季語(梨)が一つあり、五・七・五の十七音です。形の上では俳句になっています。足りないのは、この人がその夜に見たものです。「剝いて、食べて、おいしい」は梨を食べた人なら誰でも書けるので、読む人の頭に新しい景が浮かびません。
  • 修正後は「おいしい」と言わずに、皮をていねいに剝く手と、つながった皮の長さを見せています。おいしさや、きれいに剝こうとした気持ちは、読む人が景から受け取ります。
  • 感想の言葉を使ってはいけない、という決まりはありません。景がはっきり見える句の中に気持ちの言葉を一つだけ置くと、かえって効く場合もあります。最初の一句では、まず感想を見た物に置き換えられないか試してください。

説明と音数を見直す

句ができたら、その場で完成とせず、次の順に見直します。

確認表最初の一句の見直し

  • 季語は一つか。二つ以上あるときは、どちらを主役にするか決めたか
  • 季語の季節と、実際に見た場面の季節が合っているか
  • 「おいしい」「きれい」「楽しい」「さみしい」など、感想を言い切る言葉はないか
  • 「〜から」「〜ので」など、理由を説明する言葉はないか
  • 季語がすでに言っていることを、もう一度言っていないか(「虫の声」に「鳴いている」を足す等)
  • 読みをかなで書き、五・七・五を数えたか
  • 声に出して読み、つかえる所や、意味が二通りに取れて困る所はないか

確認表で引っかかりやすいのは、三つ目の感想の言葉です。取り合わせの作例も、最初は次のような形でした。

気持ちの説明を、動作に置き換える

修正前

作例・俳句作例:ほっとひと息

片づけてほっとひと息虫の声
句よみ音数
片づけてかたづけて5音
ほっとひと息ほっとひといき7音
虫の声むしのこえ5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

修正後

作例・俳句作例2:まな板

まな板を立てて乾かす虫の声
句よみ音数
まな板をまないたを5音
立てて乾かすたててかわかす7音
虫の声むしのこえ5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

変更の理由

  • 「ほっとひと息」は、読む人に感じてほしい気持ちを先に言ってしまっています。「片づけて」も、何を片づけたのかが見えません。
  • 修正後は、片づけの最後の動作を書きました。気持ちは書いていませんが、仕事を終えた手と、聞こえてくる虫の声から、ひと息ついた時間が伝わります。
  • 修正前でも、季語と音数の条件は満たしています。直すかどうかは、気持ちの言葉を外しても景が立つかどうかで決めます。

音数が合わないときに試すこと

五・七・五に収まらないときは、言葉を増やして埋めたり、意味の薄い語で削ったりする前に、次の順に試します。

試すこと 作例での例
なくても伝わる語を外す 「流しの中まで」→「流しまで」
助詞を替える・省く 「皮が一度も切れずに」→「皮は切れずに」
語順を入れ替える 「切れずに皮は」と「皮は切れずに」を声に出して比べる
同じ物を短く言える語を探す 「片づけの最後に」→「まな板を立てて」のように動作で言う

一音はみ出しても、言葉を替えると景が弱くなる場合は、そのまま残すこともあります。字余り・字足らずは一律の誤りではありません。直す場合と残す場合の見分け方は俳句の字余り・字足らずで比べています。

自分の一句を作る

ここまでの手順を、自分の場面で一度通してみてください。

練習今日見た場面で一句作る(20分)

  1. 今日いた場所を一つ選び、場所と時刻を一行で書きます。
  2. 5分間、見た物・聞いた音・手ざわりを、物の名前と動きで5行書きます。感想は別の欄へ書きます。
  3. 少し意外だったこと、自分の手や体が動いたことに印を付けます。
  4. メモの中の季語の候補を歳時記で引き、季節と解説を確かめます。場面に季語が見当たらなければ、その日の季節の季語を歳時記から一つ選び、取り合わせにします。
  5. 印を付けた一点を一文にし、外せる言葉を外して五・七・五にします。
  6. 読みをかなで書いて音数を数え、見直しの確認表を使います。

ひな形作句メモ(コピーして使えます)

場所と時刻:
見た物・音・手ざわり(物の名前と動きで):
1.
2.
3.
4.
5.
感想(句には入れない欄):
句の中心にする一点:
季語:   季節:   確かめた歳時記:
一文にしたもの:
句:
よみ(かな):
音数: ・ ・

一句できたら、数日置いてから読み返すと、説明の言葉や重なりに気づきやすくなります。季語・具体性・助詞の順に直す方法は俳句の推敲のやり方で扱っています。

何句か作ってみて、作り方や季語を順序立てて学びたくなったら、俳句の入門書と歳時記で、作句を学ぶ本と季語を調べる歳時記を目的別に比べています。どちらも最初から両方そろえる必要はなく、今つまずいている工程に合わせて選べば十分です。