俳句の入門書と歳時記|作句・鑑賞・季語調べに合う本を選ぶ
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この記事の答え
俳句の本は、作り方を学ぶ入門書、名句を読み解く鑑賞書、季語を調べる歳時記で役割が違います。最初の一冊は、今つまずいている工程で選びます。
- 一句目の作り方が分からない → 手順に沿って練習できる作句入門書から
- 季語の季節や意味を確かめたい → 四季と新年を一冊で引ける入門向けの歳時記か、まず無料の歳時記サイトから
- 季節別の文庫歳時記は、今の季節の一冊から始め、続けるなら残りの巻か合本を検討する
目次
俳句の本を探すと、入門書と歳時記が同じ棚に並んでいて、どれから買えばよいか迷います。けれど、作り方を学ぶ本と季語を調べる本は、使い道がまったく違います。この記事では、具体的な本を、目的、解説、索引、収録範囲、判型、冊数と費用で比べます。
最初に、本を使う目的を三つに分ける
俳句の本は、大きく三つの目的に分かれます。今のあなたがどれで困っているかを先に決めると、最初の一冊がしぼれます。
| 目的 | 向く本 | 本で得られること | 本だけでは得にくいこと |
|---|---|---|---|
| 一句を作る手順を知りたい | 作句入門書 | 題材の拾い方、季語の入れ方、十七音へのまとめ方、見直しの順番 | 自分の句がどう読まれるかへの返答 |
| 句を読む目を養いたい | 鑑賞書 | 名句のどこが効いているのか、助詞や切れの働き | 作る手順そのもの |
| 季語の季節・意味・傍題を確かめたい | 歳時記 | 季節の区分、解説、例句、索引 | 作り方の練習 |
入門書の中にも季語の説明や小さな季語の一覧が入っていることはありますが、季語を一つずつ引いて季節や傍題を確かめる道具にはなりません。反対に、歳時記は辞書に近い本なので、最初から順に読んで作り方が身につく作りにはなっていません。両方を一度にそろえる必要はなく、困っている工程の本から一冊選べば十分です。
作句入門書と鑑賞書を比べる
入門書三冊と鑑賞書一冊を、同じ項目で並べます。価格は出版社ページに表示された税込定価です(改定されることがあります)。
| 本 | 種類・刊行 | 判型・価格 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業(PHP研究所) | 作句入門・2018年 | 四六判並製・1,650円・電子版あり | 対話形式で、初心者が一句を作るまでのコツを解説 |
| ゼロから始める俳句入門(大高翔著、KADOKAWA) | 作句入門・2014年 | A5判176ページ・1,430円 | 季語・切れ字の基本から推敲、句会、投句のマナーまで |
| 俳句入門 初級から中級へ(稲畑汀子著、PHP新書) | 作句入門・1998年 | 新書判・723円 | 決まり事、句作の心得、歳時記の使い方、花鳥諷詠・客観写生 |
| 夏井いつきの世界一わかりやすい俳句鑑賞の授業(PHP研究所) | 鑑賞・2021年 | 四六判並製・1,595円・電子版あり | 名句の解釈を通して、季語、助詞・助動詞、句またがり、自由律、対比などを学ぶ |
夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業
『夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業』は、俳句の初心者である編集者を生徒役にした対話形式の入門書です。目次には「『尻から俳句』で俳句デビュー」「『十二音日記』を書いてみよう」「完成した句をチェックしよう」「『切れ字』を使ってみよう」「季語を観察してみよう」「『一物仕立て』を仕分けしよう」「句会に出てみよう」などの時間割が並んでいます。
- 向く人:まだ一句も作っていない人、作る手順を順番に練習したい人。目次の流れが、作る→確かめる→句会に出る、の順になっています。
- 向かない人:季語を引いて季節や傍題を確かめたい人。それは歳時記の役目です。
- 選ぶ前に:試し読みで、対話形式の語り口が自分に合うかを見ておくと安心です。
ゼロから始める俳句入門
季語や切れ字の基本から、推敲の手順、句会での振る舞い、投句のマナーまでを扱う入門書です。A5判で176ページあります。
- 向く人:作る手順に加えて、句会や投句(新聞・雑誌などへの投稿)まで、一通りの流れを一冊で見渡したい人。
- 向かない人:一つの工程(たとえば季語選び)だけを深く学びたい人。
- 選ぶ前に:章立ては、書店や試し読みで確かめてから選ぶと安心です。
俳句入門 初級から中級へ
俳句の決まり事、句作の心得、歳時記の使い方などを解説し、高浜虚子の説いた花鳥諷詠・客観写生の本質に迫る入門書です。季題、十七音の定型、省略、切字、推敲も扱います。
- 向く人:有季定型と写生という一つの考え方に沿って、まとまった説明を読みたい人。新書判で持ち歩きやすい大きさです。
- 向かない人:対話や練習問題で手を動かしながら学びたい人。
- 選ぶ前に:1998年刊です。出版社ページに在庫の表示がないため、書店で入手できるか、図書館にあるかを確かめてください。章立ても、そのときに見ておくと安心です。
夏井いつきの世界一わかりやすい俳句鑑賞の授業
『俳句の授業』の第2弾です。上達には作る力だけでなく読み解く力が大事だという考えから、名句の解釈を通して季語、助詞・助動詞、句またがり、自由律、対比などを学ぶ構成です。前作の「尻から俳句」「十二音日記」のおさらいも載っています。
- 向く人:何句か作ってみたが、自分の句のどこが弱いのか分からない人。名句がなぜ効いているかを知ると、自分の句の助詞や語順を見直す目安ができます。
- 向かない人:最初の一句をまだ作っていない人の一冊目。中心は作る手順ではなく、読み解くことです。
- 選ぶ前に:どの句が取り上げられているかは、試し読みで確かめてから選ぶと安心です。
注意同じ著者の二冊を混同しない
『俳句の授業』と『俳句鑑賞の授業』は書名が似ていますが、前者は作る手順、後者は読み解くことが中心です。一冊目にどちらを選ぶかは、「まだ作っていない」か「作ったが伸び悩んでいる」かで決めます。
歳時記を選ぶときに見る部分
歳時記は、季語を季節ごとに集め、解説と例句を載せた本です。同じ「歳時記」でも、次の部分の作りが本によって違います。引き方そのものは歳時記の使い方で扱うので、ここでは選ぶときに見る点だけをまとめます。
| 見る部分 | 確かめること | 違いが出る場面 |
|---|---|---|
| 季語の解説 | 季節の区分、意味、どう詠まれてきたか。作句の注意があるか | 季語の意味を取り違えないか確かめるとき |
| 例句 | 古典の句と近現代の句の割合、句の数 | 季語がどんな景と組み合わされてきたかを見るとき |
| 傍題 | 見出しの下に別の言い方が並んでいるか | 音数を調整したいとき |
| 索引 | 巻ごとの索引か、全季節の総索引か。傍題も引けるか | 季節が分からない言葉を引くとき |
| 文字とふりがな | 文字の大きさ、季語の読みが付いているか | 難読の季語を読むとき、長く使うとき |
特に大事なのが索引です。季節別の歳時記は、その季節の巻を開かなければ季語にたどり着けません。ところが、迷う言葉ほど「何の季節か」が分かっていません。全季節の総索引があるか、一冊で全季節を収めているかで、調べやすさが大きく変わります。
確認表書店や試し読みで確かめること
-
凡例(本の使い方の説明)に、季節の区分(初秋・三秋など)の示し方が書かれているか
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知っている季語を一つ選び、索引から本文まで何ページめくるとたどり着けるか
-
傍題が索引に載っていて、傍題からも見出しへ引けるか
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解説の文字の大きさが、自分が無理なく読める大きさか
-
版と発行年。改訂で見出しや例句が変わることがある
季節別の文庫・一冊本・大型本・無料サイトを比べる
ここでは、季節別の文庫・一冊本・大型本の歳時記と、無料で引ける歳時記サイトを並べます。
| 歳時記 | 収録の範囲と冊数 | 判型・ページ | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 俳句歳時記 第五版(角川ソフィア文庫) | 春・夏・秋・冬・新年の全5巻 | 文庫判。春272・夏320・秋272・冬272・新年240ページ | 2018年刊の改訂版。例句を見直し、解説に「作句のポイント」を追加。各巻に索引、新年の巻に全五巻の総索引 |
| 合本俳句歳時記 第五版(角川書店編) | 四季と新年を1冊に | A6変形判・1,200ページ | 2019年刊。伝統的な季語から新しい季語までを収録し、解説に作句のポイント |
| 今はじめる人のための俳句歳時記 第三版(角川ソフィア文庫) | 四季と新年を1冊に | 文庫判・656ページ | 2025年刊。よく使われる約1,000の季語を見出しにし、傍題・関連季語約3,700語。全季語にふりがな、古典句一覧と総索引。文字を大きくした |
| カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版(講談社) | 四季と新年を1冊に | A4判・1,154ページ | 2008年刊。季語1万5千(見出し4,200)、写真・絵画・図表2000点以上のオールカラー、例句3万句 |
| きごさい歳時記(NPO法人季語と歳時記の会) | ウェブで全季節 | — | 無料。ことば検索、季節別・分類別の一覧、50音の目次から引ける |
季節別の文庫は「今の季節の一冊」から始められる
俳句歳時記 第五版は、季節ごとに一冊ずつの文庫です。秋の巻を例にとると、季語の本文のあとに「読めますか 秋の季語」「さらに深めたい俳句表現」といった項目と索引が並んでいます。新年の巻には、全季語・傍題の総索引が全五巻ぶん収められています。
一冊が薄いので、今の季節の巻だけをかばんに入れて出かける使い方に向きます。一方で、季節が分からない言葉を調べるには、その言葉が載っている巻を探す必要があります。総索引のある新年の巻を手元に置くか、一冊本と使い分けると迷いが減ります。
一冊本は「季節が分からない言葉」を引きやすい
合本俳句歳時記 第五版と今はじめる人のための俳句歳時記 第三版は、四季と新年を一冊に収めています。どちらも同じ本の中で全季節を引けるのが利点です。
二冊の違いは、収録の規模と読みやすさの方針です。合本は1,200ページあり、伝統的な季語から新しい季語までを収めています。今はじめる人のための歳時記は見出しを約1,000季語にしぼり、全季語にふりがなを付け、文字を大きくしています。季語を引くたびに読みでつまずきそうなら後者、季語を幅広く引きたいなら前者、という選び方になります。なお、合本と季節別の文庫で収録内容がまったく同じかどうかが気になる場合は、書店や試し読みで見比べてから選ぶと安心です。
写真で確かめたいなら、大型本を図書館で
見たことのない植物や鳥、地方の行事の季語は、文字の解説だけでは姿が浮かばないことがあります。カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版は、写真・絵画・図表2000点以上をオールカラーで収めた大型本です。A4判で1,154ページあり、持ち歩く本ではありません。購入の前に、図書館の参考図書の棚にあるかを確かめ、必要なときに引きに行く使い方も考えられます。
無料の歳時記サイトで足りる場面
きごさい歳時記は、NPO法人季語と歳時記の会が公開している無料の歳時記サイトです。ことば検索のほか、季節別・分類別の一覧や50音の目次から季語を引けます。季語の項には、季節と分類、傍題、解説、例句が並びます。
本を買う前に、まずこのサイトで何度か季語を引いてみると、自分が歳時記に何を求めているか(索引の引きやすさ、解説の詳しさ、例句の数)がはっきりします。ただし、季節の細かな区分や傍題の範囲、どの言葉を見出しにするかは、歳時記によって違うことがあります。句会や投稿先が特定の歳時記を基準にしている場合は、それに合わせます。
冊数・費用・持ち運びを見積もる
最後に、買い方ごとの冊数と費用を並べます。価格は出版社ページに表示されていた税込定価です。
| 買い方 | 冊数 | 費用の目安 | 持ち運び |
|---|---|---|---|
| 無料の歳時記サイトだけ | 0冊 | 0円 | スマホで引ける。電波と画面の大きさに左右される |
| 季節別の文庫を今の季節だけ | 1冊 | 各巻748円(出版社ページの税込定価) | 文庫1冊。最も軽い |
| 季節別の文庫を全巻 | 5冊 | 3,740円(各巻748円×5) | 外出時は季節の1冊だけ持つ |
| 今はじめる人のための俳句歳時記 第三版 | 1冊 | 1,298円 | 文庫判656ページ |
| 合本俳句歳時記 第五版 | 1冊 | 2,970円 | A6変形判だが1,200ページの厚さ |
| カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版 | 1冊 | 16,762円 | 持ち歩かない。自宅や図書館で使う |
比べた入門書は出版社表示で723〜1,650円で、PHP研究所の二冊には電子版もあります。電子版は持ち歩きに便利ですが、歳時記の電子版を検討するときは、索引から本文へ移れるか、ことばで検索できるかを、ストアの試し読みで確かめてください。
一つの景の季語を調べて、一句に使うまで
歳時記の選び方で迷ったら、実際に一つの景で季語を引いてみると、自分に必要な作りが分かります。架空の場面で試します。
作例場面のメモ(架空・十月はじめの夜)
駐輪場で自転車の鍵を回したら、金属が指に冷たかった。一度では回らず、二度回した。
「冷たい」を季語にしようと考えて引くと、きごさい歳時記では「冷たし」は冬(三冬)の季語で、局所的・触覚的な場面で使われることが多いと説明されています。十月の場面に使うと、句は冬の景として読まれます。
そこで秋の言葉を探すと、「冷やか」が秋(仲秋)の季語として載っています。解説は、秋が終わりに近づき冬が迫るころ、肌に触れるものや空気をひんやり感じる皮膚の感触、というものです。鍵に触れた指の感覚という場面に合うので、こちらを選びます。
作例・俳句作例:自転車の鍵
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 冷やかや | ひややかや | 5音 |
| 自転車の鍵 | じてんしゃのかぎ | 7音 |
| 二度回す | にどまわす | 5音 |
合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり
※季語:冷やか(秋)。季節と解説はきごさい歳時記による
この調べ方を、手元の歳時記の種類ごとに考えると違いが見えます。
| 手元にあるもの | 「冷たし」と「冷やか」を引くとき |
|---|---|
| 季節別の文庫の秋の巻だけ | 秋の言葉は引けるが、冬の季語である「冷たし」は秋の巻では確かめられない。冬の巻か総索引が要る |
| 季節別の文庫の全巻 | 新年の巻の総索引で、季節が分からない言葉も引ける |
| 一冊本 | 一冊の索引で両方を引き、季節を見比べられる |
| 無料サイト | ことば検索で両方を引ける。紙の歳時記と区分が違う場合がある |
季節の分からない言葉を引くことが多い人ほど、総索引や一冊本の便利さが効いてきます。逆に、今の季節に吟行(外を歩いて句を作ること)に出ることが多い人は、季節別の文庫一冊の軽さが役に立ちます。
本より、無料記事・句会・添削が役立つ場面
本で解決できるのは、一般的な作り方と季語の知識までです。次のような場面では、本を買い足すより別の手段が合っています。
| 今の状況 | 合う手段 | 理由 |
|---|---|---|
| まだ一句も作っていない。まず試したい | 無料の入門記事と無料の歳時記サイト | どこでつまずくかが分かってから本を選べる。手順は俳句の作り方で一通り試せる |
| 作った句を直したいが、何から見ればよいか分からない | 推敲の手順を確かめる | 季語・具体性・助詞の順に自分で点検できる。俳句の推敲のやり方 |
| 自分の句が他の人にどう読まれるか知りたい | 句会 | 本は一般論で、自分の句への反応は返ってこない。句会では選句と感想で読まれ方が分かる |
| 新聞・雑誌などに句を出してみたい | 投句 | 募集要項の確認から始める。公開の選評は、全員への個別の添削を約束するものではない。俳句を投稿・投句する前の準備 |
| 自分の句に、継続して具体的な指摘がほしい | 添削・通信講座 | 本や公開選評では得にくい、自作への返答がある。俳句の添削はどこに頼む? |
句会の流れや選句の仕方は句会とは?で確かめられます。
目的別の選び方のまとめ
ここまでの比較を、目的ごとにまとめます。順位ではなく、今の課題に合わせて選ぶための表です。
| 今の課題 | まず試すもの | 次に検討する本 |
|---|---|---|
| 一句目が作れない | 無料の入門記事で一句作る | 夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業、ゼロから始める俳句入門 |
| 作ったが伸び悩んでいる | 推敲の手順で自分の句を点検する | 夏井いつきの世界一わかりやすい俳句鑑賞の授業 |
| 写生の考え方をまとめて読みたい | — | 俳句入門 初級から中級へ(入手できるか確認) |
| 季語の季節と意味を確かめたい | きごさい歳時記 | 今はじめる人のための俳句歳時記 第三版、合本俳句歳時記 第五版 |
| 季節ごとに持ち歩きたい | 今の季節の文庫一冊 | 俳句歳時記 第五版の各巻(総索引は新年の巻) |
| 見たことのない季語の姿を確かめたい | 図書館の大型歳時記 | カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版 |