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俳句

俳句の取り合わせとは?季語と十二音を組み合わせる作り方

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この記事の答え

取り合わせは、季語と、季語とは別の素材(入門では多くの場合、十二音のフレーズ)を一句に並べ、二つの間にある関係を読者に見つけてもらう作り方です。

  • 十二音の種は、季語を含まず、物と動作が見える言葉で先に作る
  • 季語は歳時記の解説を読み、種と同じことを言い直していないか、どこか一点で触れ合うかで選ぶ
  • 同じ種に季語を三つ当て、近すぎる(説明が重なる)・離れすぎる(場面が割れる)を比べて、読者が橋を架けられる距離を選ぶ
目次

「季語+十二音」で作ってみたのに、二つが別々の話に見える。反対に、季語を足したら句が当たり前の内容になった。どちらも、季語と十二音の距離の問題です。この記事では、引っ越しの日を描いた架空の十二音「最後に運ぶ子供椅子」を一つ用意し、季語を入れ替えながら、近すぎる組み合わせ・離れすぎる組み合わせ・響き合う組み合わせを比べます。読み終えたら、自分の種に三つの季語を当てて、一句を選べるようになります。

取り合わせは「二つの間」で読ませる作り方

取り合わせ(とりあわせ)は、一句の中に二つの素材を置き、その組み合わせから一つの景色や気分を立ち上げる作り方です。入門では、上五か下五に置いた季語(5音)と、季語を含まない残り十二音のフレーズを組み合わせる形で練習すると分かりやすくなります。

大事なのは、二つを「入れる」ことではありません。二つの間に、読者が関係を見つけられることです。季語と十二音は、文としてつながっていなくてかまいません。そのかわり、読者が「この曇り空の下で椅子を運んでいるのだ」と一つの場面にまとめたり、「この空の感じと、この部屋の感じは似ている」と気分を重ねたりできる手がかりが要ります。

対になる作り方に、一つの対象(多くは季語そのもの)をよく見て一句にする一物仕立て(いちもつじたて)があります。どちらが上という関係ではなく、題材と言いたいことで選び分けます。たとえば講談社現代新書『決定版 一億人の俳句入門』(長谷川櫂)の目次には「一物仕立てと取り合わせ」「一物仕立てと取り合わせの見分け方」という章が並んでおり、入門の段階から二つを区別して学ぶ考え方があることが分かります。

比べる点 取り合わせ 一物仕立て
一句の中心 季語と、別の素材の組み合わせ 一つの対象(季語であることが多い)
読者がすること 二つの間の関係を見つける 対象の細部や動きの発見を受け取る
つまずきやすい点 二つがつながらない/つながりすぎる 季語の説明になる
作り始め 十二音の種と季語を別々に用意する 一つの物を観察してメモを取る

二つの素材を大きく離し、ぶつかり合う驚きをねらう取り合わせは「二物衝撃」と呼ばれることもあります。ただ、離せば離すほど良い句になるわけではありません。この記事で確かめるのは、まさに「どこまで離せるか」です。

要点取り合わせで確かめる三つのこと

  • 季語と十二音が、同じことを二回言っていないか(近すぎ)
  • 読者が二つを、一つの場面か一つの気分にまとめられるか(離れすぎ)
  • 季語の意味(歳時記の解説)のどこか一点が、十二音の何かと触れ合っているか

十二音の種を先に作る

取り合わせでは、季語より先に十二音を作ると、あとで距離を調整しやすくなります。季語を先に決めると、十二音がその季語の説明になりがちだからです。

種にする言葉の条件

条件 理由
季語を含まない 季語を入れ替えて試すため。季語が入っていると季重なりになる
物か動作が見える 読者が場面を思い浮かべる足場になる
気持ちの言葉(さびしい・うれしい等)を入れない 気持ちは季語との組み合わせから読者が受け取る
七音+五音(または五音+七音)にまとまる 季語の五音と合わせて五七五に収まる

観察メモから種を三つ作って選ぶ

例として、架空の場面「家族で住んだ部屋から引っ越す日」のメモを用意しました。

作例観察メモ(引っ越しの日)

家具を出した部屋で、声がよく響く。
物置の奥から、子どもが小さいころ使っていた木の椅子が出てきた。
迷ったが、捨てずに持っていくことにした。トラックに最後に積んだのはその椅子。
窓の外は薄曇り。

このメモから十二音の種を三つ作り、比べます。

種の案 よみと音数 判断
引っ越しの日はさびしいな ひっこしのひは(7)さびしいな(5) 気持ちを言っている。季語を足すと寂しさが二重になる
声が響いて広い部屋 こえがひびいて(7)ひろいへや(5) 使える。ただし空き部屋の響きは多くの人が気づく発見で、季語に頼る度合いが大きい
最後に運ぶ子供椅子 さいごにはこぶ(7)こどもいす(5) 物と動作がある。子の成長や家族の年月を、言わずに含んでいる

三つ目を種に決めます。「子供椅子」という具体物があるので、子どもがもう座らないこと、それでも捨てなかったことが、説明なしに伝わります。種がここまで具体的だと、季語は気持ちを補う必要がなくなり、空気や光や時間を受け持てます。

観察メモの取り方や、一句の種になる場面の選び方は俳句の題材の見つけ方で扱っています。種の音数はかな入力の音数確認に読みを入れて数えられます。

季語の候補を歳時記で集める

種ができたら、季語の候補を三〜五語集めます。この段階では一つに決めず、性質の違うものを混ぜて拾うのがこつです。

手順季語の候補を集める手順

  1. 種の場面が起きた季節を確かめる。ただし実際の季節だけに絞らず、別の季節の候補も一つ入れておく。
  2. 歳時記の季節の巻や索引から、天気・光・音・行事・植物・動物など、分類の違う候補を拾う。
  3. 候補ごとに歳時記の解説を読み、その季語が何を言っている言葉かを一行でメモする。
  4. 種の言葉と、同じ物や同じ気持ちを指していないかを確かめる。

手順3の「一行メモ」が、取り合わせの判断材料になります。この記事で使う季語を、NPO法人季語と歳時記の会のきごさい歳時記の解説で確かめると、次のようになります。

季語(季節) 歳時記の解説の要点 一行メモ
春惜しむ(晩春) 過ぎゆく春を惜しむこと。出会いや別れの多い季節で、束の間の佳い時間を惜しむ心にもつながる 名残を惜しむ気持ちそのもの
海開き(夏。きごさい歳時記では晩夏) 7月10日前後に海水浴場を開く日。神事のあと泳ぎ始め、海の家も営業を始める 海辺のにぎやかな始まり
鳥曇(晩春) 秋に渡ってきた雁や鴨などが北へ帰っていくころの曇り空。鳥の群れが消えたあとに曇り空だけが残る 去っていくものの気配が残る空

季語の意味や季節の確かめ方は俳句の季語の選び方で詳しく扱っています。晩春・晩夏などの細かな分類は歳時記によって違うことがあるので、使う歳時記を一つ決めて確認します。

同じ種に四つの季語を合わせて比べる

近すぎる:季語が気持ちを言い直す

作例・俳句近すぎる例

春惜しむ最後に運ぶ子供椅子
句よみ音数
春惜しむはるおしむ5音
最後に運ぶさいごにはこぶ7音
子供椅子こどもいす5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

「春惜しむ」は、過ぎゆく春を惜しむ気持ちそのものを表す季語です。種の「最後に運ぶ」にも、すでに終わりを惜しむ気分が入っています。そのため句全体が「名残惜しい」を二回言う形になり、読者が自分で感じ取る余地がなくなります。

近すぎる組み合わせは、誤りというより予想どおりで止まるのが弱点です。季語を読んだ時点で十二音の気分が分かってしまい、読み終えたときに新しく見えるものがありません。

近すぎる型には、季語が種の「事情」を説明してしまう場合もあります。

作例・俳句近すぎる例(事情を説明する)

卒業や最後に運ぶ子供椅子
句よみ音数
卒業やそつぎょうや5音
最後に運ぶさいごにはこぶ7音
子供椅子こどもいす5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

「卒業」(仲春)があると、子どもが卒業したから椅子が要らなくなった、という理由が読めてしまいます。椅子をなぜ最後に運ぶのかを読者が考える前に、季語が答えを渡している状態です。

離れすぎる:場面が二つに割れる

作例・俳句離れすぎる例

海開き最後に運ぶ子供椅子
句よみ音数
海開きうみびらき5音
最後に運ぶさいごにはこぶ7音
子供椅子こどもいす5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

「海開き」は海水浴場が開く日のにぎわいです。引っ越しの部屋とは、場所も気分も遠く離れています。読者はこの二つを一つの場面にまとめようとして、「海辺へ子供椅子を運んでいる」と読むかもしれません。そう読まれると、引っ越しの句だったことが消えてしまいます。

遠い組み合わせがすべて失敗するわけではありません。離れた二つの間に、色・音・温度・動きなど共通の手触りが一つあれば、読者は驚きながら橋を架けられます。この例が離れすぎなのは、作者が見た場面へ戻る道がないからです。

響き合う:季語の一部だけが種に触れる

作例・俳句響き合う例

鳥曇最後に運ぶ子供椅子
句よみ音数
鳥曇とりぐもり5音
最後に運ぶさいごにはこぶ7音
子供椅子こどもいす5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

「鳥曇」は、冬を越した渡り鳥が北へ帰っていくころの曇り空です。季語の中心は空模様ですが、その奥に「去っていくもの」の気配があります。引っ越しの種とは、この一点だけで触れています。

「惜しむ」と言わないので、気持ちは読者に任されます。薄曇りの光の中で小さな椅子を抱えている姿が見え、鳥が去ったあとの空と、家族が去ったあとの部屋が、言われなくても重なります。季語と種が同じことを言わず、かといって無関係でもない。この距離が、取り合わせで「響き合う」と言われる状態です。

四句の距離を表にする

季語 種と重なる点 読者に残る余地 判断
春惜しむ 「最後」の名残惜しさを、季語がもう一度言う 少ない。気分が先に分かる 近すぎる
卒業 椅子が要らなくなった理由を、季語が説明する 少ない。事情が先に分かる 近すぎる
海開き 重なる点がない。場所も気分も別 大きすぎて、別の場面として読まれる 離れすぎる
鳥曇 「去っていくもの」の気配だけが触れる 空と部屋を、読者が自分で重ねられる 響き合う

この表の判断は、作者の意図を「引っ越しの日の静かな感慨」に置いた場合のものです。たとえば海辺の町へ越していく話を書きたいなら、海の季語が響き合う側に回ることもあります。距離は季語だけで決まるのではなく、種と意図との関係で決まります。

季語の位置を替えて、最後に残るものを選ぶ

同じ組み合わせでも、季語を上五に置くか下五に置くかで、読者が最後に見るものが変わります。

季語を上五から下五へ動かす

季語が上五

作例・俳句季語を上五に

鳥曇最後に運ぶ子供椅子
句よみ音数
鳥曇とりぐもり5音
最後に運ぶさいごにはこぶ7音
子供椅子こどもいす5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

季語が下五

作例・俳句季語を下五に

子供椅子最後に運ぶ鳥曇
句よみ音数
子供椅子こどもいす5音
最後に運ぶさいごにはこぶ7音
鳥曇とりぐもり5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

変更の理由

  • 上五に季語を置くと、まず空があり、その下の人の動作へ視線が下りて、最後に子供椅子が残ります。物が主役として残る形です。
  • 下五に季語を置くと、椅子を運ぶ手元から始まり、最後に視線が空へ抜けます。句の終わりが広がり、余韻が空に残ります。
  • どちらが正しいということはありません。読み終えたときに何を残したいかで選びます。季語のあとの切れを「や」などの切れ字ではっきりさせる方法は俳句の切れ字の使い方で比べています。

同じ種で別の季語を試す

近すぎる・離れすぎる・響き合うの比較で距離の感覚がつかめたら、季節や分類の違う季語をさらに当ててみます。季語を替えると、同じ十二音でも時間帯・天気・気分、ときには物語まで変わります。

作例・俳句別案:光の季語

日脚伸ぶ最後に運ぶ子供椅子
句よみ音数
日脚伸ぶひあしのぶ5音
最後に運ぶさいごにはこぶ7音
子供椅子こどもいす5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

「日脚伸ぶ」(晩冬)は、年が明けて日が少しずつ長くなることです。きごさい歳時記の解説は、冬木の芽がふくらんで春の近さを感じさせる季節だと書いています。がらんとした部屋の奥まで日が届き、引っ越しが「終わり」より「次の暮らしの始まり」に見えてきます。鳥曇より明るい読みです。

作例・俳句別案:音の季語

蝉時雨最後に運ぶ子供椅子
句よみ音数
蝉時雨せみしぐれ5音
最後に運ぶさいごにはこぶ7音
子供椅子こどもいす5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

「蝉時雨」は、たくさんの蝉がいっせいに鳴く騒がしさを時雨にたとえた言葉で、きごさい歳時記では「蝉」(晩夏)の傍題です。外の蝉の声と、静まり返った室内が対比になります。音で場面を包む取り合わせで、「にぎやかさの中の空白」という、鳥曇とは別の気分が出ます。

季語 句の中で変わったこと
鳥曇 薄曇りの静かな光。去っていくものの気配
日脚伸ぶ 部屋の奥まで届く日差し。終わりより始まりに傾く
蝉時雨 外の音と室内の静けさの対比。暑さや汗まで想像させる

どれを選ぶかは、作者が実際に見た場面に近いか、読者に何を残したいかで決めます。歳時記の解説と自分の体験が重なる季語を選ぶと、句に無理が出にくくなります。

注意季語をいくつ替えても句が動かないとき

どの季語を当てても似たような句にしか見えない場合は、十二音の種が弱い(気持ちや一般論で、物がない)ことがあります。観察メモに戻って種を作り直します。反対に、種の物より季語そのものを深く見たくなったら、取り合わせではなく一物仕立てで作るほうが合っているかもしれません。

自分の種で取り合わせを作る

練習一つの種に三つの季語を当てる(20分)

  1. 最近見た場面をメモに三行書き、季語を含まない十二音の種を二つ作ります。
  2. 歳時記から分類の違う季語を三つ選び、それぞれの解説を一行にまとめます。
  3. 種一つに三つの季語を当てて、三句作ります。
  4. 下の確認表で近すぎ・離れすぎを判定し、一句を選びます。
  5. 選んだ句を、季語を上五に置く形と下五に置く形の両方で書き、最後に何が残るかを比べます。

確認表取り合わせの確認表

  • 季語と十二音に、同じ物・同じ語が入っていない
  • 季語が、十二音の気持ちや事情を説明していない
  • 季語と十二音を、一つの場面か一つの気分にまとめて読める
  • まとめて読んだ場面が、自分の意図した場面と大きくずれていない
  • 歳時記の解説のどこか一点が、十二音の何かと触れ合っている
  • 季語のほかに季節の言葉が入っていない(入っている場合は意図がある)
  • 声に出して読むと、季語のあとに自然な切れがある

確認表は採点表ではありません。静かに言い重ねる効果をねらって近い季語を選ぶこともあり、遠い組み合わせでも読者が驚きとして受け取れれば成り立ちます。迷ったら、作った三句を説明なしで誰かに読んでもらい、「どんな場面が見えたか」を聞いてみてください。見えた場面が意図とずれていれば、距離を一段階近づけます。

季語を二つ組み合わせても取り合わせになりますか

二つの素材の両方が季語だと、季重なりになります。季重なりがすべて誤りというわけではありませんが、どちらが主役か分かりにくくなりやすいので、入門の練習では季語は一つにして、もう一方は季語でない十二音にすると距離を比べやすくなります。季語が二つ入った句の見直し方は俳句の季重なりとはで扱っています。

できた一句を、季語・具体性・助詞の順に見直したくなったら俳句の推敲のやり方が使えます。取り合わせと一物仕立てを入門書で順を追って学びたい場合は、作句・鑑賞・季語調べの目的別に俳句の入門書と歳時記で本の選び方を比べています。