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短歌

短歌と俳句の違い|音数・季語・題材を作例で比べる

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この記事の答え

短歌は五・七・五・七・七の31音で、季語の決まりはありません。俳句(有季定型)は五・七・五の17音に季語を一つ入れるのが基本です。

  • 俳句は季語と一つの物で景を立て、気持ちは言わずに物に託すことが多い
  • 短歌は下の句の14音に、そのときの動作や気づきを置ける。会話や時間の流れも入れやすい
  • どちらにも字余り・無季・自由律などの例外がある。題材が「一瞬の景」なら俳句、「景と心の動き」なら短歌から試すと選びやすい
目次

書きたい場面はあるのに、短歌にするか俳句にするかで迷う。短歌に季語は要るのか、俳句に気持ちを入れてはいけないのか、と手が止まる。この記事では、二つの形式の違いを表で確かめたあと、同じ観察メモから短歌と俳句を作り、どの情報が残り、どれが落ちたかを並べて比べます。読み終えたら、自分の題材をどちらの形式で書くかを選べます。

まず形の違いを一覧で確かめる

比べる点 短歌 俳句(有季定型)
音数 五・七・五・七・七の31音 五・七・五の17音
句の呼び方 五句。初めの五七五を上の句、七七を下の句と呼ぶ 三句。上五・中七・下五と呼ぶ
季語 決まりはない。季節の言葉を使ってもよい 一句に一つ入れるのが基本
気持ちの扱い 心の動きや気づきを言葉にすることも多い 気持ちを言わず、物と季語に託すことが多い
話者 「わたし」の動作や考えを書き込みやすい 話者は見たものの後ろに隠れることが多い
区切り 意味の切れ(句切れ)は歌ごとに違う 切れ字や名詞止めで一句に切れを作ることが多い

辞書でも、短歌は「五・七・五・七・七の5句31音からなる歌」、俳句は「五・七・五の3句17音を定型とする短詩」で「季語を入れることを原則とする」と説明されています(デジタル大辞泉)。同じ辞書の俳句の項目には、無季の主張や定型を破った自由律俳句もみられる、とも書かれています。つまり上の表は基本の形で、どちらにも例外があります。例外は最後の節で扱います。

注意音数は文字数ではない

短歌も俳句も、数えるのは文字ではなく音です。たとえば「石鹸箱」は4文字ですが、読みは「せっけんばこ」で6音です。小さい「ゃ・ゅ・ょ」は前の字と合わせて1音、「っ」「ん」「ー」はそれぞれ1音と数えます。自分の読みで数えたいときはかな入力の音数確認が使えます。

同じ観察メモから、短歌と俳句を一つずつ作る

違いは、同じ題材で両方を作ってみると一番よく分かります。次の架空の観察メモを使います。

作例観察メモ(架空)

十月半ばの日曜日の夜。一日、部屋で誰とも話さずに過ごした。銭湯を出ると、風が思ったより冷たい。洗った髪がすぐに冷える。抱えた洗面器の中で、石鹸箱がかたかた鳴る。帰りぎわ、番台の人に「もう夜は寒いね」と言われて、「寒いですね」と返した。それが今日、初めて出した声だった。

このメモから、短歌と俳句を一つずつ作ります。

作例・短歌短歌:会話と気づきを残す

番台に「寒いですね」と返事して今日はじめての声だと気づく
句よみ音数
番台にばんだいに5音
「寒いですね」とさむいですねと7音
返事してへんじして5音
今日はじめてのきょうはじめての7音
声だと気づくこえだときづく7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

作例・俳句俳句:物と季語で立てる

銭湯の石鹸箱の鳴る夜寒
句よみ音数
銭湯のせんとうの5音
石鹸箱のせっけんばこの7音
鳴る夜寒なるよさむ5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※「夜寒」は秋の季語(デジタル大辞泉《季 秋》、精選版日本国語大辞典《季語・秋》)。秋が深まり、夜の寒さを強く感じること。

二つを並べると、同じメモからでも主役がまったく違います。

観察メモの要素 短歌 俳句
番台の人との会話 残した(歌の中心) 落とした。「銭湯」で場所だけ示す
一日誰とも話していない 「今日はじめての声」として言葉にした 言葉にしていない。石鹸箱の音しかしない静けさに託した
十月半ばの夜の冷え 会話の「寒いですね」で伝える 季語「夜寒」が担う
洗面器の中で鳴る石鹸箱 落とした 残した(句の中心)
洗った髪が冷える 落とした 落とした
話者の動作・気づき 「返事して」「気づく」と書いた 書いていない

俳句は17音のうち3音を季語「夜寒」に使うので、残りは14音です。ここに入るのは、せいぜい物一つと、その動き一つです。そこで、一日の静けさを「話していない」と言う代わりに、夜道で鳴る石鹸箱の音だけを置きました。読者は、その音がよく聞こえるほど周りが静かで、話す相手もいない帰り道を思い浮かべます。

短歌は31音あるので、出来事(返事をした)と、そこから生まれた気づき(今日初めての声だった)の二つを、一首の中でつなげられます。一日の孤独を、会話という小さな出来事から照らす形です。

季語:俳句では一句の柱、短歌では決まりがない

俳句の季語は、季節と気分の両方を運ぶ

有季定型の俳句では、季語が季節を示すだけでなく、その季節らしい空気まで運びます。作例の「夜寒」は、単に夜が寒いというだけでなく、秋が深まって夜の冷えが身にしみてくる時期を表す言葉です。だから「一日の終わりの心細さ」も、季語に半分を任せられます。

ここで気をつけたいのが、会話の「寒いですね」です。辞書では「寒い」に《季 冬》(デジタル大辞泉)、《季語・冬》(精選版日本国語大辞典)と季節が示されています。短歌なら、ただの会話としてそのまま使えます。けれど俳句に入れると、冬の句として読まれやすくなります。十月半ばの夜の冷えを俳句で言うなら、秋の季語「夜寒」を選ぶほうが、メモの季節と合います。

短歌の上の句を、そのまま俳句にした場合

短歌の上の句だけを取り出した五七五

作例・俳句上の句だけを取り出した形

番台に「寒いですね」と返事して
句よみ音数
番台にばんだいに5音
「寒いですね」とさむいですねと7音
返事してへんじして5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

俳句として作り直した形

作例・俳句物と季語で作り直した形

銭湯の石鹸箱の鳴る夜寒
句よみ音数
銭湯のせんとうの5音
石鹸箱のせっけんばこの7音
鳴る夜寒なるよさむ5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

変更の理由

  • 「寒い」は冬の季語とされる(辞書の季語の表示でも冬)ので、十月の場面とずれます。秋の季語「夜寒」に替えました。
  • 「返事して」は、次に何かが続く途中の形です。短歌では下の句が受け止めますが、俳句ではここで終わってしまい、言いさしに読まれます。
  • 音数が五七五でも、短歌の上の句がそのまま俳句になるわけではありません。俳句は17音で一句として閉じる必要があります。

季語の選び方は、意味・季節・句の主役との関係を歳時記で確かめるのが基本です。手順は俳句の季語の選び方で扱っています。

短歌は季語を入れてもよく、入れなくてもよい

短歌には、季語を入れる決まりも、入れてはいけない決まりもありません。季節の言葉を使えば季節感が出ますし、使わなくても歌は成り立ちます。作例の短歌にも季語らしい言葉はありませんが、「寒いですね」という会話から、季節が冷え始めたころだと分かります。

反対に、俳句と同じ季語を短歌に入れることもできます。

作例・短歌季語「夜寒」を入れた短歌

銭湯の石鹸箱の鳴る夜寒今日の会話は番台とだけ
句よみ音数
銭湯のせんとうの5音
石鹸箱のせっけんばこの7音
鳴る夜寒なるよさむ5音
今日の会話はきょうのかいわは7音
番台とだけばんだいとだけ7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

上の句は俳句とまったく同じです。下の句の七七で「今日話したのは番台の人とだけ」と、孤独の理由を明かしています。俳句では読者に任せていたことを、短歌では言葉にできる、という違いがよく見えます。

ただし、短歌は「俳句に七七を足したもの」ではありません。この歌のように上の句で景を区切ってから下の句で心を置く形もあれば、最初の短歌のように、31音を一続きの話し言葉で流す形もあります。どこで意味を区切るかは短歌の句切れで、上の句と下の句のつなぎ方は短歌の上の句・下の句で詳しく扱っています。

場面と気持ちを入れる余地を比べる

俳句:言うか、託すか

俳句に気持ちや出来事を入れてはいけない、という決まりはありません。17音に入れられる量が少ないので、何を言葉にして何を物に託すかを選ぶことになります。同じメモから、出来事を言葉にした俳句も作ってみます。

作例・俳句出来事を言葉にした俳句

番台へ今日はじめての声夜寒
句よみ音数
番台へばんだいへ5音
今日はじめてのきょうはじめての7音
声夜寒こえよさむ5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※季語は「夜寒」(秋)。「声」と「夜寒」を名詞のまま並べている。

比べる点 石鹸箱の句 番台への声の句
言葉にしたこと 物の音と季節 今日初めて声を出したという出来事
読者に任せたこと 一日誰とも話していないこと 声を出す前の一日の静けさ、声の響き方
強み 景がはっきり見え、静けさが音で伝わる 何があったかが伝わりやすい
弱くなりやすい点 孤独まで読み取れるかは読者しだい 「声夜寒」と詰めたぶん、言葉が窮屈に感じられることがある

どちらが正解ということはありません。景を見せることを優先するなら石鹸箱の句、出来事を伝えることを優先するなら声の句です。ただ、俳句で気持ちや出来事を言葉にするほど、季語と物が受け持つ部分が減る、という関係は覚えておくと選びやすくなります。

短歌:下の句に心の動きを置ける

短歌では、上の句で場面を見せ、下の句でそのときの動作や気づきを置く形が取りやすくなります。作例の短歌なら、「返事して」までが場面、「今日はじめての声だと気づく」が心の動きです。

ここで大事なのは、気持ちの名前(さびしい、孤独だ)を言わずに、気づいた事実を書いていることです。「今日はじめての声」と気づく話者の姿から、読者は一日の静けさを自分で感じ取ります。短歌は気持ちを書ける形式ですが、短歌でも、気持ちの名前をそのまま書くと説明的に見えやすくなります。

話者の出し方

形式 作例での話者 よく見られる傾向
短歌 「返事して」「気づく」と、話者が動き、考える 「わたし」の動作・会話・考えを書き込みやすい
俳句 話者は出てこない。石鹸箱の音を聞いている人がいるとだけ分かる 話者は見たものの後ろに隠れることが多い

これも傾向で、決まりではありません。自分の動作を詠む俳句も、景だけを詠む短歌もあります。

自分の題材をどちらで書くか決める

ここまでの比べ方を、題材選びに使える形にまとめます。迷ったら、書きたいことが次のどれに近いかで、先に試す形式を決めます。

書きたいこと 先に試す形式 理由
一つの物、一瞬の景 俳句 季語と物一つで景が立つ
景と、そのときの気づきや心の動き 短歌 下の句の14音に心の動きを置ける
人との会話、言われた一言 短歌 会話の引用は音数を多く使う
季節の移り変わりそのもの 俳句 季語が季節の幅と空気を持っている
二つの出来事の前後や理由 短歌 31音で「〜したら〜だった」とつなげられる
季節がはっきりしない題材 短歌(または季語のない句) 季語を入れると題材とずれる場合がある

俳句の題材は自然だけではありません。作例の俳句は銭湯の帰り道という暮らしの場面ですし、台所や駅のような身近な場所も題材になります。季語が一つ入っていれば、題材そのものは人の暮らしでもかまいません。

練習同じメモを二つの形式で書く(20分)

  1. 最近見た場面を、観察メモとして五行ほど書きます。時刻、場所、見えた物、聞こえた音、そのとき思ったことを一行ずつ入れます。
  2. 俳句にします。メモの季節に合う季語を歳時記で一つ選び、残りの14音に物を一つだけ入れます。思ったことは書きません。
  3. 短歌にします。同じ場面から、自分の動作か会話を一つ選んで上の句にし、下の句にそのとき気づいたことを置きます。気持ちの名前は使いません。
  4. 二つを並べ、メモのどの要素が残り、どれが落ちたかを表にします。落ちた要素のほうが書きたかったことなら、もう一方の形式で書き直します。

短歌の一首目を作る手順は短歌の作り方、俳句の一句目を作る手順は俳句の作り方で、それぞれ一から扱っています。

例外:字余り・無季・自由律・口語と文語

基本の形から外れる作り方も、どちらの形式にもあります。外れること自体は誤りではなく、何のために外すかが問われます。

例外 短歌 俳句
字余り・字足らず 調べや強調のために残すことがある 同じく、意図して残すことがある
季語 もともと決まりがない 季語を入れない無季俳句を作る立場もある
定型を外す 定型にとらわれない自由律の短歌もある 定型を破った自由律俳句がある
言葉と文法 口語でも文語でも詠まれ、混ぜ方も作者が選ぶ 文語の句も口語の句も作られる

気をつけたいのは、季語がないことと、定型でないことは別の話だという点です。たとえば、番台への声の句から季語を抜くと次のようになります。

作例・その他季語を抜いた五七五

番台に今日はじめての声を出す
句よみ音数
番台にばんだいに5音
今日はじめてのきょうはじめての7音
声を出すこえをだす5音

合計17音(5・7・5)

※五・七・五の定型だが、季語はない。

これは定型を守った無季の五七五で、自由律ではありません。有季定型の俳句として出すなら季語を入れて直しますし、無季俳句として作る立場もあります。季語のない五七五は、内容によっては川柳として読まれることもあります。無季俳句と自由律の違いは季語のない俳句とは?で、短歌の字余りを残すかどうかの判断は短歌の字余り・字足らずは直すべき?で扱っています。

公募や投句に出す場合は、形式の基本とは別に、募集ごとの決まりがあります。俳句の募集で季語が求められているか、短歌の募集で連作の首数が決まっているかなどは、出す先の要項で確かめます。