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短歌

短歌の上の句・下の句とは?五七五と七七のつなぎ方を作例で解説

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この記事の答え

短歌の上の句は前半の五・七・五(三句)、下の句は後半の七・七(二句)です。下の句は、上の句と同じことを言い直すのではなく、上の句にない何かを一つ進めると、一首に流れが生まれます。

  • 受け継ぐ:上の句の像を同じ向きに続け、新しい像を足す
  • 具体へ移す:上の句の場面の中から、一点に目を寄せる
  • 転じる:視点・時間・感覚を変える

上の句と下の句は音の区切りです。意味の切れ目(句切れ)がいつもその境目にあるとは限りません。

目次

上の句で場面を作ったのに、下の句がその言い換えになってしまう。あるいは、下の句で何か新しいことを言おうとして、上の句とつながらない話になってしまう。この記事では、架空の場面「引っ越しの朝、最後にカーテンを外した窓」の上の句を一つ固定し、そこに性格の違う下の句を付け替えて比べます。意味が飛びすぎた下の句の直し方と、上の句・下の句と句切れの違いも同じ素材で示すので、読み終えたら、自分の歌の後半で何を進めるかを選べるようになります。

上の句は五・七・五、下の句は七・七

デジタル大辞泉は、上の句を「短歌1首の前半五・七・五の3句」、下の句を「短歌1首の第4句と第5句」と説明しています。精選版 日本国語大辞典では、上の句を「本(もと)の句」、下の句を「末(すえ)」とも呼ぶとしています。

まとまり 句 音数 別の呼び方
上の句 初句・二句・三句 5・7・5 本(もと)の句
下の句 四句・結句 7・7 末(すえ)、末の句

上の句は十七音、下の句は十四音です。上の句のほうが長いので、上の句で場面や状況を示し、下の句で一首の焦点を定めると、組み立てやすくなります。ただし、これは決まりではありません。上の句で焦点の物を見せ、下の句で場面を広げる歌もあります。

大事なのは、上の句と下の句が、それぞれ別の仕事をしているかです。

下の句が上の句の言い換えになっていないか

ここからは、次の架空の場面を使います。

作例場面メモ(架空)

引っ越しの朝。港町の古いアパート。荷物はほとんど箱に詰め終わり、最後にカーテンを外した。急に部屋が明るくなった。窓の横の壁に、カレンダーを留めていた画鋲の穴が四つ見えた。カーテンがないので、向かいの家の窓がよく見える。遠くで船の汽笛が鳴った。

上の句は、次の十七音に固定します。

句 表記 読み 音数
初句 カーテンを かーてんを 5
二句 外した窓の はずしたまどの 7
三句 明るさに あかるさに 5

最初に付けた下の句は、次のものでした。

作例・短歌言い換えの下の句

カーテンを外した窓の明るさにがらんと広い部屋がまぶしい
句よみ音数
カーテンをかーてんを5音
外した窓のはずしたまどの7音
明るさにあかるさに5音
がらんと広いがらんとひろい7音
部屋がまぶしいへやがまぶしい7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

音数は五・七・五・七・七で、文としてもつながっています。けれども、下の句で言っていることを確かめると、次のようになります。

下の句の言葉 上の句との関係
まぶしい 上の句の「明るさ」の言い換え
がらんと広い 引っ越しの朝の部屋の、だれでも思いつく説明
部屋 「窓」から見て当然そこにある場所

下の句の十四音を使って、上の句で分かったことをもう一度言っています。読者は上の句を読んだ時点で「明るくなった」と分かっているので、下の句で新しく見えるものがありません。上の句と下の句が同じ内容の言い換えになる、というのはこの状態です。

下の句で何を進めるか:三つのつなぎ方

下の句を作るときは、上の句から何を一つ進めるかを先に決めます。

つなぎ方 下の句ですること 進むもの
受け継ぐ 上の句の像を同じ向きに続け、新しい像を足す 像の広がり
具体へ移す 上の句の場面の中から、一点に目を寄せる 焦点、気づき
転じる 視点・時間・感覚のどれかを変える 見る位置、時間、感覚

「受け継ぐ」と「言い換え」は似ていますが、違いは新しい像が一つ増えているかどうかです。言い換えは同じ情報を別の言葉で言い、受け継ぐ下の句は同じ方向に話を続けながら、上の句になかった物を見せます。

同じ上の句に、下の句を付け替える

同じ上の句に、つなぎ方の違う下の句を付けて並べます。

作例・短歌受け継ぐ下の句

カーテンを外した窓の明るさに床に四角く日の差している
句よみ音数
カーテンをかーてんを5音
外した窓のはずしたまどの7音
明るさにあかるさに5音
床に四角くゆかにしかくく7音
日の差しているひのさしている7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

作例・短歌具体へ移す下の句

カーテンを外した窓の明るさに画鋲の穴の四つ浮かんで
句よみ音数
カーテンをかーてんを5音
外した窓のはずしたまどの7音
明るさにあかるさに5音
画鋲の穴のがびょうのあなの7音
四つ浮かんでよっつうかんで7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

作例・短歌視点を転じる下の句

カーテンを外した窓の明るさに向かいの家の人と目が合う
句よみ音数
カーテンをかーてんを5音
外した窓のはずしたまどの7音
明るさにあかるさに5音
向かいの家のむかいのいえの7音
人と目が合うひととめがあう7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

作例・短歌時間を転じる下の句

カーテンを外した窓の明るさに最後の箱をテープで閉じる
句よみ音数
カーテンをかーてんを5音
外した窓のはずしたまどの7音
明るさにあかるさに5音
最後の箱をさいごのはこを7音
テープで閉じるてーぷでとじる7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

下の句 つなぎ方 下の句で進んだもの 上の句とつながる像・言葉
床に四角く日の差している 受け継ぐ 光が床に落ち、窓の形になる 明るさ→日、窓→四角
画鋲の穴の四つ浮かんで 具体へ移す 光に照らされて見えた、暮らしの跡 明るさ「に」浮かぶ。光があるから穴が見える
向かいの家の人と目が合う 転じる(視点) 見る側から、見られる側へ 窓、カーテンを外した。外したから目が合う
最後の箱をテープで閉じる 転じる(時間) 引っ越しの作業が終わりへ進む カーテンを外した。最後の片付けの順番

それぞれの下の句で、一首の焦点がどう変わるか

受け継ぐ下の句は、明るさを床の日だまりという形にしました。上の句と同じく光の歌のままですが、「四角く」で窓の形が床に写り、光がどこから来てどこに落ちたかまで見えます。言い換えの下の句との違いは、「まぶしい」という感じ方ではなく、床の四角という像を足したところです。

具体へ移す下の句は、光に照らされた壁の一点に目を寄せます。画鋲の穴は、カレンダーを何年も掛けていた跡です。上の句の明るさが、ここで「ここに暮らしていた時間」を浮かび上がらせるものに変わります。下の句の「浮かんで」は、光があるから見えるという関係を、上の句の「明るさに」と結んでいます。

視点を転じる下の句は、窓の外から部屋を見られる側に作者を移します。カーテンを外すと、光が入るだけでなく、外からも見えるようになる。上の句では光を受けていた作者が、下の句では向かいの人に見られています。もう他人の目から部屋を守る物がない、という引っ越しの朝の身の置きどころのなさが出ます。

時間を転じる下の句は、場面を作業の終わりへ進めます。カーテンを外したのが最後の片付けだったことが分かり、一首の中で時間が流れます。一方で、光そのものへの関心は、下の句では薄れます。

どの下の句がよいかは、この一首で何を残したいかで決まります。部屋で過ごした年月なら画鋲の穴、部屋を離れる心もとなさなら目が合う瞬間、という選び方です。

同じ上の句に二つの下の句を試す

自分の歌で試すときは、まず二つの下の句を作るところから始めると負担が少なくなります。一つは「具体へ移す」、もう一つは「転じる」にすると、性格の違う二案がそろいやすくなります。

手順二つの下の句を作る手順

  1. 上の句を書き写し、上の句から分かることを一行で書く(例:カーテンを外したら部屋が明るくなった)。
  2. 場面メモの中から、上の句にまだ出ていない物を三つ以上書き出す。
  3. その中から、上の句の場面の中にある一点を選び、「具体へ移す」下の句を作る。
  4. 次に、視点・時間・感覚のどれかを変える「転じる」下の句を作る。
  5. 二つの下の句それぞれについて、「上の句とつながる言葉」と「下の句で進んだもの」を一つずつ書く。書けない下の句は、言い換えか、飛びすぎのどちらかになっている。

意味が飛びすぎた下の句を直す

下の句で新しいことを言おうとすると、反対に、上の句とつながらない下の句になることがあります。

飛びすぎた下の句を、上の句へつなぎ直す

修正前

作例・短歌飛びすぎた下の句

カーテンを外した窓の明るさに夜の港に汽笛が鳴った
句よみ音数
カーテンをかーてんを5音
外した窓のはずしたまどの7音
明るさにあかるさに5音
夜の港によるのみなとに7音
汽笛が鳴ったきてきがなった7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

修正後

作例・短歌感覚を転じる下の句

カーテンを外した窓の明るさに遠い汽笛が部屋まで届く
句よみ音数
カーテンをかーてんを5音
外した窓のはずしたまどの7音
明るさにあかるさに5音
遠い汽笛がとおいきてきが7音
部屋まで届くへやまでとどく7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

変更の理由

  • 修正前は、音数は五・七・五・七・七に合っていますが、上の句の「明るさ」(朝)と下の句の「夜」がぶつかります。場所も、部屋の窓から突然、夜の港へ移っています。読者は、引っ越しの朝と汽笛の関係を見つけられません。
  • 作者が汽笛を入れたかったのは、メモにあったとおり、引っ越しの朝に遠くで鳴っていたからです。旅立ちの気配がある音なので、残す価値はあります。
  • 修正後は、「夜」と「港」を外し、汽笛が「部屋まで届く」としました。時間は上の句と同じ朝のまま、場所も作者のいる部屋に戻したので、明るくなった部屋に、外の音まで入ってくる、という形で上の句とつながります。視覚から聴覚へ感覚を転じた下の句です。
  • 「遠い」を足したことで、汽笛の鳴る場所は書かずに、町の広がりを残しました。

飛びすぎた下の句を直すときは、次の三つを確かめます。

確かめること 修正前の答え 直し方
上の句と時間・場所が食い違っていないか 朝と夜、部屋と港が食い違う 食い違う語(夜・港)を外す
上の句とつながる言葉が一つ以上あるか ない 上の句の物(窓・部屋)に関係する語を入れる(部屋まで)
下の句の新しいものが、場面メモの中にあったか あった(汽笛) 新しいものは残し、上の句の場面の中へ連れてくる

一方で、上の句とつながる言葉がわずかでも、読者が自分で結びつけられる距離なら、飛躍は一首の魅力になります。上の句と下の句の間に、読者が橋を架けられるかどうかが目安です。架けられるかどうかを確かめるには、作者以外の人に読んでもらうか、一晩置いて、場面メモを見ずに読み直します。

上の句・下の句と、句切れは別のもの

上の句と下の句は、音数による区切りです。一方、文の意味や文法がいったん終わるところを句切れと呼びます。この二つは、いつも同じ場所にあるわけではありません。

ここまでの作例は、上の句の最後が「明るさに」で、下の句へそのまま続いていました。三句と四句の間で、文は切れていません。上の句と下の句の境目はあっても、意味は一続きです。同じ素材で、文の切れ目が変わる例を並べます。

作例・短歌三句で文が切れる歌

カーテンを外した窓の明るさよ画鋲の穴の四つ浮かんで
句よみ音数
カーテンをかーてんを5音
外した窓のはずしたまどの7音
明るさよあかるさよ5音
画鋲の穴のがびょうのあなの7音
四つ浮かんでよっつうかんで7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

作例・短歌初句で文が切れる歌

空っぽだカーテンのない窓越しに向かいの家の人と目が合う
句よみ音数
空っぽだからっぽだ5音
カーテンのないかーてんのない7音
窓越しにまどごしに5音
向かいの家のむかいのいえの7音
人と目が合うひととめがあう7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

歌 意味のまとまり 文の切れ目 上の句と下の句の境目
具体へ移す下の句の歌 【カーテンを外した窓の明るさに画鋲の穴の四つ浮かんで】 なし 三句と四句の間(意味は続く)
三句で文が切れる歌 【カーテンを外した窓の明るさよ】【画鋲の穴の四つ浮かんで】 三句のあと(「よ」) 三句と四句の間(切れ目と重なる)
初句で文が切れる歌 【空っぽだ】【カーテンのない窓越しに向かいの家の人と目が合う】 初句のあと(「だ」) 三句と四句の間(意味は続く)

「明るさに」を「明るさよ」と一字変えただけで、上の句が一つの文として言い切られ、下の句は別の文になります。このとき下の句は、上の句に寄りかからずに立つ必要があります。初句で切れる歌では、上の句の中に文の切れ目があり、上の句の終わりから下の句へは意味が続いています。

上の句・下の句は音の区切り、句切れは意味の区切りと分けて考えると、「上の句で一度切らなければならない」と思い込まずに済みます。どこで切るか、切らずに流すかの比べ方は短歌の句切れで、同じ題材の区切り違いを並べて扱っています。

上の句から作るか、下の句から作るか

上の句から順に作ると、下の句で何を言えばいいか分からなくなることがあります。そのときは、順番を逆にする方法もあります。

作り方 手順 向いている場面
上の句から 場面を上の句で示し、下の句で何を進めるかを選ぶ 場面ははっきりしているが、焦点が決まっていない
下の句から 一番残したい像を下の句(七・七)に先に置き、それが生きる場面を上の句で作る 残したい物や瞬間が、先に決まっている

たとえば、画鋲の穴が一番残したいものなら、先に「画鋲の穴の四つ浮かんで」を書き、それが見えるための条件(光、カーテンを外したこと)を上の句で用意します。下の句から作ると、上の句が下の句の言い換えになることは起きにくくなります。ただし今度は、上の句が下の句の理由の説明だけにならないよう、上の句にも見える物を入れておきます。

自分の歌で、下の句を付け替える

練習同じ上の句に三つの下の句(25分)

  1. 自作の歌を一首選び、上の句(五・七・五)をそのまま書き写します。
  2. 今の下の句が、上の句の言い換えになっていないかを確かめます。下の句の言葉ごとに「上の句にない新しい情報か」を印で分けます。
  3. 「受け継ぐ」「具体へ移す」「転じる」の下の句を、一つずつ作ります。
  4. 三つの下の句それぞれについて、上の句とつながる言葉と、下の句で進んだものを書きます。
  5. 声に出して読み比べ、一首で残したいものに一番近い下の句を選びます。選ばなかった下の句は、別の歌の種として残します。

確認表上の句と下の句の確認表

  • 上の句から分かることを、一行で書いた
  • 下の句に、上の句にない新しい像や情報が一つ以上ある
  • 下の句の言葉が、上の句の感じ方の言い換え(明るい→まぶしい等)になっていない
  • 下の句で何を進めたか(像・焦点・視点・時間・感覚)を一語で言える
  • 上の句とつながる言葉が、下の句に一つ以上ある
  • 上の句と下の句で、時間や場所が意図せず食い違っていない
  • 文の切れ目がどこにあるかを、上の句・下の句の境目とは別に確かめた
  • 読みをかなで書き、五・七・五・七・七を句ごとに数えた

下の句を付け替えると、音数が変わることがあります。句ごとの読みを入れて確かめるときは、かな入力の音数確認が使えます。

上の句と下の句の関係を整えたあと、一首全体の説明の多さや助詞を見直したいときは、短歌の推敲のやり方の順番が使えます。