短歌の結句の作り方|最後の七音で焦点と余韻を整える
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この記事の答え
結句は、一首を読み終える直前の七音です。ここに何を置くかで、読者の目に最後に残るものが決まります。
- 物で結ぶと像が残り、動作で言い切ると時間や動きが残り、上の四句と別の事実を置くと一首の意味が読み直される
- 気持ちの名前や、上の四句の言い直しで結句を埋めていないか点検する。音数が七でも、新しいものが何も加わっていなければ直す
- 体言止めは選択肢の一つ。言い切る案・名詞で止める案を作り、声に出して比べて選ぶ
目次
上の四句までは場面が見えているのに、最後の七音になると「うれしくなった」「父の手料理」のように、気持ちやまとめの言葉で埋めてしまう。そうなるのは、最後の七音に何を任せるかが、まだ決まっていないからです。この記事では、架空の上の四句を一つ用意し、物で結ぶ、動作で結ぶ、意味を返す、の三つの結句を付けて比べます。言い直しの結句と、七音に無理に詰め込んだ結句の直し方も示すので、読み終えたら自分の歌の結句を三通り作って選べます。
結句は、一首の見え方を最後に決める七音
短歌の五つの句のうち、最後の第五句を結句と呼びます。世界大百科事典の「短歌」の項(コトバンク「結句」に収録)では、第五句を「結句」「尾句」「落句」などと呼ぶと説明しています。五・七・五・七・七の最後の七音です。
結句は、読者が一首を読み終える直前に通る場所です。そのため、同じ上の四句でも、結句に置く言葉によって、一首のどこに焦点が合うか、読み終えたあと何が残るかが変わります。結句が担える役割は、大きく三つあります。
| 結句の役割 | 何をするか | 結句に置くもの |
|---|---|---|
| 焦点を定める | 上の四句で見せた場面の中から、一点に目を止めさせる | その場面の物・細部 |
| 時間や動きを残す | 場面を止めずに、動作で言い切って終える | 人物の動作、作者の動作 |
| 見方を変える | 上の四句と別の事実を置き、場面全体を読み直させる | 事情・時間・場所など、まだ出ていない情報 |
どの役割にも共通するのは、上の四句にまだないものを結句で加えることです。上の四句で言ったことを、気持ちの言葉やまとめの言葉で言い直すと、七音を使ったのに一首に何も加わりません。
同じ上の四句に、三つの結句を付けて比べる
ここからは、次の上の四句を使います。ふだんは台所に立たない父が、早朝に玉子焼きを作っている場面です。
| 句 | 表記 | 読み | 音数 |
|---|---|---|---|
| 初句 | 朝五時の | あさごじの | 5 |
| 二句 | 台所には | だいどころには | 7 |
| 三句 | 父がいて | ちちがいて | 5 |
| 四句 | 玉子を巻いて | たまごをまいて | 7 |
この四句に、性格の違う三つの結句を付けます。
作例・短歌結句A:物で結ぶ
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 朝五時の | あさごじの | 5音 |
| 台所には | だいどころには | 7音 |
| 父がいて | ちちがいて | 5音 |
| 玉子を巻いて | たまごをまいて | 7音 |
| 焦げた端っこ | こげたはしっこ | 7音 |
合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり
作例・短歌結句B:動作で結ぶ
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 朝五時の | あさごじの | 5音 |
| 台所には | だいどころには | 7音 |
| 父がいて | ちちがいて | 5音 |
| 玉子を巻いて | たまごをまいて | 7音 |
| また巻き直す | またまきなおす | 7音 |
合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり
作例・短歌結句C:意味を返す
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 朝五時の | あさごじの | 5音 |
| 台所には | だいどころには | 7音 |
| 父がいて | ちちがいて | 5音 |
| 玉子を巻いて | たまごをまいて | 7音 |
| 母の入院 | ははのにゅういん | 7音 |
合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり
三首とも五・七・五・七・七で、違うのは最後の七音だけです。
| 比べる点 | A 焦げた端っこ | B また巻き直す | C 母の入院 |
|---|---|---|---|
| 焦点 | 玉子焼きの焦げた端 | 父の手の動き | 父が台所にいる事情 |
| 読後に残る像 | フライパンの上の、黒くなった黄色い端 | 菜箸を動かし続ける父の背中 | 早朝の台所の光景全体 |
| 父の不慣れさの伝え方 | 失敗の跡(物)で見せる | 繰り返し(時間)で見せる | 理由を明かし、読者に想像させる |
| 読者に任せること | 父の表情、作者の気持ち | 何度目か、父の気持ち | 母の容態、家族の不安 |
Aは、結句で父から目が離れ、焦げた端だけが残ります。不器用さを責めるでも笑うでもなく、物を差し出して終わります。Bは、父の動作を言い切って終えるので、場面が止まらずに続きます。「また」の一語で、うまくいかずに何度も巻き直していることが分かります。
Cは、上の四句に出てこなかった事実を最後に置きます。読者はここで、「父がいて」の意味を読み直します。なぜ朝五時に、ふだんいない人が台所にいるのか。結句で理由が分かったとき、玉子を巻く手つきまで違って見えてきます。
ただし、Cのように事情を明かす結句は、一首の謎を解いてしまう結句でもあります。AやBでは、父がなぜ台所にいるのかを読者が考える余地が残っていました。どの結句がよいかは、一首で残したいものが「物」「動き」「事情」のどれかで決まります。
言い切る結び:動作を終止形で置く
結句Bのように、動詞や形容詞の言い切りの形(終止形)で終える結び方です。言い切ると、文がそこで完結します。読み終えたあとに残るのは、言い切られた動作や状態そのものです。
言い切る形は、時制や文体によっても手触りが変わります。同じ動作で比べてみます。
| 結句 | 読み・音数 | 手触り |
|---|---|---|
| また巻き直す | またまきなおす・7 | 今まさに目の前で続いている |
| また巻き直した | またまきなおした・8 | 少し離れて振り返る。一音の字余り |
| 巻き直しけり | まきなおしけり・7 | 文語。「〜したのだなあ」という気づきや感慨がこもる |
「けり」は文語の助動詞で、デジタル大辞泉では動詞・助動詞の連用形に付くと説明されています(「巻き直し」が連用形)。意味には、過去から続いてきた事柄や、初めてその事実に気づいたことへの詠嘆などがあります。
ただ、この上の四句は「いて」「巻いて」と口語で書かれています。結句だけを「けり」にすると、一首の中で文体が切り替わり、最後だけ調子が改まって聞こえます。それを意図して使う歌もありますが、たまたま七音に収まるからという理由で文語の結びを選ぶと、浮いて聞こえやすくなります。口語と文語のそろえ方は短歌の口語と文語の違いで扱っています。
作例・短歌文語の結びにした案
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 朝五時の | あさごじの | 5音 |
| 台所には | だいどころには | 7音 |
| 父がいて | ちちがいて | 5音 |
| 玉子を巻いて | たまごをまいて | 7音 |
| 巻き直しけり | まきなおしけり | 7音 |
合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり
※上の四句は口語、結句だけが文語の形です。
「また巻き直した」の字余りは、一音多いぶん結句が少し長く引かれます。残すか直すかの判断は短歌の字余り・字足らずで、残す案と直す案を並べて比べています。
名詞で止める結び:最後に置く物を選ぶ
結句Aのように、最後を名詞で終える形を体言止め(名詞止め)といいます。デジタル大辞泉は「和歌・俳諧などで、最後の句を体言で終わらせること」とし、余韻・余情を生む効果があると説明しています。例として挙げられているのは、『新古今和歌集』の「春過ぎて夏来にけらし白妙の衣干すてふ天の香具山」です。最後の「天の香具山」で、白い衣が干された山の姿が目に残ります。
名詞で止めると、言い切りの述語がないまま歌が終わります。読者は、言われていない述語を自分で補いながら、最後の名詞を見つめることになります。
名詞止めにするか、言い切るかは語順で変わる
同じ言葉でも、結句の中の語順で、名詞止めにも言い切りにもなります。
| 結句 | 読み・音数 | 形 | 残るもの |
|---|---|---|---|
| 焦げた端っこ | こげたはしっこ・7 | 名詞止め | 焦げた端という物の姿 |
| 端が焦げてる | はしがこげてる・7 | 言い切り | 焦げているという状態の報告 |
「端が焦げてる」は、作者が見たことを報告する言い方で、話し言葉に近い軽さがあります。「焦げた端っこ」は、報告せずに物を置いて終わるので、読者はその端を自分の目で見ることになります。どちらが合うかは、一首の調子と、残したいものによります。
体言止めは必須ではない
名詞止めは、古くから短歌の結句で使われてきた形ですが、名詞で止めれば余韻が出るわけではありません。最後の名詞が、場面の題名やまとめになっていると、かえって説明的に聞こえます。次の節で見る「父の手料理」がその例です。名詞で止めるなら、目で見える物、手で触れられる物を最後に置けているかを確かめます。動きを残したいなら、言い切る結びのほうが合います。
上の四句と同じ意味を、結句で言い直さない
結句でまず点検したいのは、上の四句で見せたことを、別の言葉でもう一度言っていないかです。言い直しの結句は、音数は七でも、一首に新しいものが加わりません。
場面の題名から、物へ
修正前
作例・短歌題名で結んだ案
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 朝五時の | あさごじの | 5音 |
| 台所には | だいどころには | 7音 |
| 父がいて | ちちがいて | 5音 |
| 玉子を巻いて | たまごをまいて | 7音 |
| 父の手料理 | ちちのてりょうり | 7音 |
合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり
修正後
作例・短歌物で結んだ案
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 朝五時の | あさごじの | 5音 |
| 台所には | だいどころには | 7音 |
| 父がいて | ちちがいて | 5音 |
| 玉子を巻いて | たまごをまいて | 7音 |
| 焦げた端っこ | こげたはしっこ | 7音 |
合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり
変更の理由
- 「父の手料理」は、上の四句(父が台所にいて玉子を巻いている)をまとめた言葉です。写真に付けた説明文のように、見えている場面に名前を付けただけになっています。
- 修正後は、まとめる代わりに場面の中の一点(焦げた端)を置きました。上の四句にまだなかった細部が加わります。
- 名詞止めという形は同じです。違いは、最後の名詞が「場面の題名」か「場面の中の物」かです。
気持ちの名前から、動作へ
修正前
作例・短歌気持ちで結んだ案
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 朝五時の | あさごじの | 5音 |
| 台所には | だいどころには | 7音 |
| 父がいて | ちちがいて | 5音 |
| 玉子を巻いて | たまごをまいて | 7音 |
| うれしくなった | うれしくなった | 7音 |
合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり
修正後
作例・短歌動作で結んだ案
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 朝五時の | あさごじの | 5音 |
| 台所には | だいどころには | 7音 |
| 父がいて | ちちがいて | 5音 |
| 玉子を巻いて | たまごをまいて | 7音 |
| また巻き直す | またまきなおす | 7音 |
合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり
変更の理由
- 「うれしくなった」は、上の四句を読んだ読者が感じるはずの気持ちを、作者が先に言っています。読者は確認するだけになります。
- 修正後は、作者がうれしくなったきっかけ(不慣れな手つきで何度も巻き直す父)を、動作で置きました。うれしさを感じるか、いじらしさや心配を感じるかは読者に任せています。
- 気持ちの言葉で結ぶ歌がすべて弱いわけではありません。上の四句が物と動作だけで組まれていて、最後に一語だけ気持ちを置くと、その一語が効くこともあります。言い直しになっていないかを、気持ちの言葉を外した案と比べて確かめます。
言い直しになりやすい結句の型を、点検用にまとめます。
| 言い直しの型 | 例 | 確かめる問い |
|---|---|---|
| 気持ちの名前 | うれしくなった・切なくなった | その気持ちのもとになった物や動作は何か |
| 場面の題名 | 父の手料理・朝の台所 | 上の四句をまとめただけになっていないか |
| 教訓・感想 | これが家族だ・大事な時間 | 読者に考えてほしいことを、先に結論にしていないか |
| 上の四句の繰り返し | 父が作る | 上の四句にない情報が一つでも加わっているか |
七音に詰め込んだ結句をほどく
言いたいことが多いと、それを七音に押し込もうとして、助詞を抜いたり、漢語を詰めたりした結句になります。
詰め込んだ結句を、名詞の形に戻す
修正前
作例・短歌詰め込んだ結句
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 朝五時の | あさごじの | 5音 |
| 台所には | だいどころには | 7音 |
| 父がいて | ちちがいて | 5音 |
| 玉子を巻いて | たまごをまいて | 7音 |
| 母入院で | ははにゅういんで | 7音 |
合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり
修正後
作例・短歌名詞の形にした結句
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 朝五時の | あさごじの | 5音 |
| 台所には | だいどころには | 7音 |
| 父がいて | ちちがいて | 5音 |
| 玉子を巻いて | たまごをまいて | 7音 |
| 母の入院 | ははのにゅういん | 7音 |
合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり
変更の理由
- 修正前は「母が入院したので、代わりに父が作っている」という理由を、七音に詰めようとした形です。「が」を抜いた「母入院」は、メモや見出しの言葉に聞こえます。
- 末尾の「で」は理由を説明する助詞で、「だから父が台所にいる」と、上の四句とのつながりを作者が説明してしまいます。
- 修正後は「母の入院」と、助詞「の」でつないだ名詞の形にしました。理由のつながりは書かず、事実だけを置いたので、上の四句との関係は読者が結びます。
詰め込みに気づいたら、次のどれかを試します。
| 詰め込みの形 | 例 | ほどき方 |
|---|---|---|
| 助詞を抜く | 母入院・父巻き直す | 助詞を戻し、入りきらない情報を一つ外す |
| 理由をつなぐ | 〜ので・〜で・〜から | つなぎの言葉を外して、事実だけを置く |
| 情報を二つ入れる | 母の入院と父の朝 | 一つを上の句へ移すか、別の歌に回す |
| 文語を一語だけ混ぜる | 〜しけり・〜なり | 文体をそろえるか、口語の言い方を探す |
どうしても外せない情報があり、七音に収まらないなら、一音の字余りを選ぶこともできます。無理に縮めた不自然な七音より、自然な八音のほうが読みやすい場合もあります。
声に出して、最後の響きで選ぶ
結句の候補がそろったら、上の四句から通して声に出して読みます。結句だけを読むと、四句とのつながりや、四句のあとの間が分かりません。
手順結句を読み比べる手順
- 候補の結句を三つ以上、同じ上の四句に付けて書き並べる。
- 一首ずつ、初句から通して声に出して読む。結句の前で自然に間ができるか、そのまま続くかに印を付ける。
- 読み終えた直後に目に浮かんだものを一語で書く(例:焦げた端、父の背中、母)。
- その一語が、一首で残したかったものと一致する案を選ぶ。
- 迷ったら、最後の一音の響きも比べる。
作例の三つの結句を声に出すと、終わり方にも違いがあります。
| 結句 | 四句とのつながり | 終わりの響き |
|---|---|---|
| A 焦げた端っこ | 「巻いて」のあとに小さな間ができる | 「っこ」で短く跳ねて終わる。少しおかしみが出る |
| B また巻き直す | 「巻いて、また巻き直す」と一続きに流れる | 「す」で息が抜け、動作の途中のように終わる |
| C 母の入院 | 「巻いて」のあとに大きな間ができる | 「ん」で口を閉じて終わる。重く止まる |
響きの感じ方には個人差があり、ここに挙げたのは作例を読んだときの一つの聞こえ方です。それでも、同じ七音でも終わりの音が違えば、一首の後味が変わることは、声に出すと確かめられます。上の句と下の句のつながり全体を見直したいときは、短歌の上の句・下の句で意味の関係を整理できます。
自分の歌で、結句を三通り作る
練習一首に三つの結句を付ける(20分)
- 結句に迷っている自作の歌を一首選び、上の四句をそのまま書き写します。
- 「物で結ぶ」「動作で結ぶ」「上の四句にない事実を置く」の三つの結句を、七音前後で作ります。
- それぞれ通して声に出し、読後に浮かんだものを一語で書きます。
- 一首で残したかったものと一致した結句を選び、外した結句は理由を一行で書いて残しておきます。
確認表結句の確認表
-
結句に、上の四句にまだないものが一つ加わっている
-
気持ちの名前や場面の題名で、上の四句を言い直していない
-
名詞で止めるなら、最後の名詞は目で見える物か、触れられる物か
-
言い切るなら、その動作や状態は一首で残したいものか
-
口語と文語が、意図せず混ざっていない
-
助詞を抜いたり、理由のつなぎを入れたりして、七音に詰め込んでいない
-
結句を三通り作り、上の四句から通して声に出して比べた
-
読み終えた直後に浮かぶものが、残したかった一点と一致している
結句の候補が決まったら、音数はかな入力の音数確認に読みを入れて確かめられます。