短歌の推敲のやり方|説明・助詞・語順を見直すチェックと例
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この記事の答え
推敲は、直す前に初稿を保存し、一首で残したい場面を一行で書くことから始めます。そのうえで、大きいところから小さいところへ順に見直します。
- 焦点:一首に物や出来事を詰め込みすぎていないか
- 説明:「懐かしい」「寂しい」などの気持ちの言葉を、物と動作に置き換えられないか
- 主語・助詞・語順:誰の行為か分かるか、最後に置いた言葉に焦点が合っているか
- 情報の過不足:初めて読む人に、場面が分かるか。削りすぎていないか
音数が合うことは完成の条件の一つにすぎません。直した案は初稿と並べて声に出し、失ったものがないかを確かめます。
目次
一首を見直そうとすると、気持ちを言いすぎている気もするし、「が」と「の」のどちらがよいかも気になり、どこから手をつければいいか分からなくなります。この記事では、架空の初稿を一首用意し、焦点、説明、助詞と語順、情報の過不足、音の五つの段階で順に直していきます。各段階で何を直し、何を失ったかを並べるので、読み終えたら同じ順番で自分の歌のどこを直すかを選び、別案と比べて決められます。
直す前に、初稿を保存して「残したい場面」を書く
推敲という言葉は、唐の詩人賈島が「僧は推す月下の門」の「推す」を「敲く」にするか迷い、韓愈に問うて「敲」に改めたという故事から来ています(デジタル大辞泉ほか)。迷ったのは一字ですが、賈島の手元には「推す」と「敲く」の二つの案がありました。推敲は、ただ直すことではなく、案を並べて選ぶことだと考えると進めやすくなります。
選ぶためには、比べる相手が要ります。そこで、直し始める前に二つの準備をします。
- 初稿をそのまま保存する。ノートなら別の行に書き写し、スマートフォンなら初稿のメモを残したまま、複製に書き込みます。日付と「初稿」の印を付けておきます。
- 残したい場面を、歌ではなく普通の文で書く。いつ、どこで、何を見たか、何をしたか。そして、一首の中で一番残したい一点を一行で書きます。
この一行が、推敲の途中で迷ったときの物差しになります。言葉を一つ替えるたびに、「この一点はまだ残っているか」と確かめます。
ひな形場面メモ(コピーして使えます)
いつ: どこで: 見たもの・聞いたもの・触れたもの: 自分がしたこと: 一番残したい一点(一行で):
推敲は大きいところから順に見る
推敲で手間がむだになりやすいのは、助詞一字から直し始めて、あとで句ごと削る場合です。直す順番を決めておくと、迷う時間が減ります。
| 順番 | 確かめること | 直し方の例 |
|---|---|---|
| 1 焦点 | 物や出来事が多すぎて、どこを見ればいいか散っていないか | 残したい一点に関係しない物を外す |
| 2 説明 | 気持ちの言葉や、まとめる言葉で済ませていないか | 気持ちのもとになった物や動作に置き換える |
| 3 主語・助詞・語順 | 誰の行為か分かるか。助詞で意味のつながりがずれていないか。最後の語に焦点が合っているか | 助詞を一字ずつ替えて読む。語順を入れ替える |
| 4 情報の過不足 | 初めて読む人に場面が分かるか。削りすぎていないか | 足りない情報を一つだけ足す。重なる情報を外す |
| 5 音 | 音数のずれ、読みにくさ、初稿と比べて失ったもの | 声に出して読み比べる。字余りは残すか決める |
音数を最後に置いたのは、内容が決まらないうちに数を合わせても、あとで言葉ごと入れ替わるからです。
作例の初稿と、場面メモ
ここからは、次の架空の初稿を直していきます。
作例・短歌初稿:祖母の家
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 祖母の家の | そぼのいえの | 6音字余り(基準5音) |
| 柿の木も時計も | かきのきもとけいも | 9音字余り(基準7音) |
| 輪ゴムまで | わごむまで | 5音 |
| 懐かしくって | なつかしくって | 7音 |
| 少し寂しい | すこしさびしい | 7音 |
合計34音(6・9・5・7・7)/基準は5・7・5・7・7
作例場面メモ
いつ:祖母が亡くなって半年たった秋の午後。
どこで:誰も住んでいない祖母の家。母と片付けに来た。
見たもの・触れたもの:庭の柿の木、止まった柱時計、台所の引き出しの輪ゴム。祖母は、新聞や野菜に付いてきた輪ゴムを捨てずにためていた。手に取ると古くなってべたつき、指にくっついた。
一番残したい一点:祖母のためた輪ゴムが、指に貼りついた感触。
メモと見比べると、初稿にはいくつも課題があります。
- 柿の木・時計・輪ゴムと物が三つ並び、どれを見ればいいか分からない
- 「懐かしく」「寂しい」と、気持ちを二つ言葉で言っている
- 「も」「も」「まで」で並べていて、全体をまとめる言い方になっている
- 祖母の家に何をしに来たのか、祖母がどうしているのかが分からない
- 初句と二句が字余り(六音・九音)
最後の字余りが一番目立ちますが、ここから直すと、残す物が決まらないまま数合わせが始まります。先に焦点を決めます。
1 焦点を絞る:一首に入れる物を一つにする
物を三つから一つへ
初稿
作例・短歌初稿
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 祖母の家の | そぼのいえの | 6音字余り(基準5音) |
| 柿の木も時計も | かきのきもとけいも | 9音字余り(基準7音) |
| 輪ゴムまで | わごむまで | 5音 |
| 懐かしくって | なつかしくって | 7音 |
| 少し寂しい | すこしさびしい | 7音 |
合計34音(6・9・5・7・7)/基準は5・7・5・7・7
第一稿
作例・短歌第一稿:焦点を輪ゴムに
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 祖母の家の | そぼのいえの | 6音字余り(基準5音) |
| 引き出しにある | ひきだしにある | 7音 |
| 輪ゴムの束 | わごむのたば | 6音字余り(基準5音) |
| 懐かしくって | なつかしくって | 7音 |
| 少し寂しい | すこしさびしい | 7音 |
合計33音(6・7・6・7・7)/基準は5・7・5・7・7
変更の理由
- メモの「一番残したい一点」は輪ゴムでした。柿の木と時計を外し、空いた二句に輪ゴムのある場所(引き出し)を入れました。
- 「まで」は、柿の木や時計に加えて輪ゴム「まで」という並べ方でした。並べる物がなくなったので、助詞も要らなくなりました。
- 「輪ゴムの束」で三句が六音の字余りになりましたが、音数はこの段階では直しません。言葉がまだ入れ替わるからです。
- 失ったもの:家全体の広がりと、止まった時計が示していた時間の感じです。外した柿の木と時計は捨てずに、別の歌の種としてメモに残します。一首で詠みきれない素材が多いときは、何首かに分けて並べる方法もあります(短歌の連作の作り方)。
焦点を絞るときの目安は、読み終えた人の目に何が残るかを一つ言えるかです。初稿を読み終えた人に「何が見えましたか」と聞くと、柿の木と答える人も、時計と答える人もいるでしょう。第一稿なら、答えは輪ゴムの束にまとまるはずです。
2 説明の言葉を、物と動作に置き換える
焦点が決まっても、第一稿の下の句は「懐かしくって少し寂しい」と気持ちを説明したままです。気持ちの言葉は、読者が自分で感じるはずのことを先に言ってしまいます。置き換えるときは、その気持ちになったとき、何を見て、何をしていたかをメモから探します。
気持ちの言葉から、手の感触へ
第一稿
作例・短歌第一稿
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 祖母の家の | そぼのいえの | 6音字余り(基準5音) |
| 引き出しにある | ひきだしにある | 7音 |
| 輪ゴムの束 | わごむのたば | 6音字余り(基準5音) |
| 懐かしくって | なつかしくって | 7音 |
| 少し寂しい | すこしさびしい | 7音 |
合計33音(6・7・6・7・7)/基準は5・7・5・7・7
第二稿
作例・短歌第二稿:感触を書く
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 祖母の家の | そぼのいえの | 6音字余り(基準5音) |
| 引き出しにある | ひきだしにある | 7音 |
| 輪ゴムの束 | わごむのたば | 6音字余り(基準5音) |
| 手に取ればみな | てにとればみな | 7音 |
| べたついていた | べたついていた | 7音 |
合計33音(6・7・6・7・7)/基準は5・7・5・7・7
変更の理由
- 寂しさのもとは、メモにあった「古くなってべたついた輪ゴム」でした。べたつきは、長いあいだ誰も触れていなかった時間を、言葉で言わずに伝えます。
- 「手に取れば」で作者の動作が入り、読者も引き出しの前に立つ位置に移ります。
- 失ったもの:気持ちの向きです。「寂しい」がなくなったので、べたつきを不快さとして読む人も出てきます。それで構わないか、どうしても寂しさを伝えたいかは、このあと情報の過不足を確かめる段階でもう一度考えます。
説明になりやすい言葉は、気持ちの言葉だけではありません。
| 説明になりやすい言葉 | 例 | 置き換えるときの問い |
|---|---|---|
| 気持ちの言葉 | 懐かしい・寂しい・うれしい | そう感じたとき、何を見て、何をしていたか |
| まとめる言葉 | みんな・いろいろ・すべて | まとめた中身のうち、一つだけ挙げるなら何か |
| 評価の言葉 | きれい・すてき・不思議な | どこを見て、そう評価したか |
| 存在だけを言う動詞 | ある・いる・見える | その物は何をしているか。自分はその物に何をしたか |
ただし、気持ちの言葉を使ってはいけないわけではありません。物と動作で場面を作ったうえで、最後に一語だけ気持ちを置く歌もあります。それが言いすぎになるかどうかは、後で別案を作って比べます。
3 主語・助詞・語順を選ぶ
第二稿で、残したい物(輪ゴム)と感触(べたつき)はそろいました。次は、言葉のつながり方を見ます。
第二稿の上の句「祖母の家の引き出しにある輪ゴムの束」には、「の」が三つあり、「ある」で物が置かれているだけです。祖母は「家の持ち主」として出てくるだけで、輪ゴムとのかかわりが見えません。メモには「祖母は輪ゴムを捨てずにためていた」とあります。この行為を、祖母を主語にして入れてみます。
祖母を、輪ゴムをためた人として出す
第二稿
作例・短歌第二稿
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 祖母の家の | そぼのいえの | 6音字余り(基準5音) |
| 引き出しにある | ひきだしにある | 7音 |
| 輪ゴムの束 | わごむのたば | 6音字余り(基準5音) |
| 手に取ればみな | てにとればみな | 7音 |
| べたついていた | べたついていた | 7音 |
合計33音(6・7・6・7・7)/基準は5・7・5・7・7
第三稿
作例・短歌第三稿:祖母の行為を入れる
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 引き出しに | ひきだしに | 5音 |
| 祖母のためてた | そぼのためてた | 7音 |
| 輪ゴムの束 | わごむのたば | 6音字余り(基準5音) |
| 手に取ればみな | てにとればみな | 7音 |
| べたついていた | べたついていた | 7音 |
合計32音(5・7・6・7・7)/基準は5・7・5・7・7
変更の理由
- 「祖母のためてた」で、輪ゴムが祖母の暮らしの癖を示す物になりました。ここでの「の」は「祖母がためてた」の「が」と同じく、ためた人を示しています。
- 語順も変えました。「引き出しに」から始めると、引き出しを開ける、祖母のためた物だと気づく、輪ゴムが見える、という気づきの順に言葉が並びます。
- 「祖母の家の」を外したので、初句の字余り(六音)もなくなりました。
- 失ったもの:「祖母の家」という場所の情報です。どこの引き出しなのかは、この段階では分からなくなりました。
助詞を一字ずつ替えて読み比べる
助詞は一字で意味のつながりが変わります。迷ったら、同じ位置に候補を入れて読み比べます。第三稿の二句で試すと次のようになります。
| 二句の候補 | 読み・音数 | この歌での読まれ方 |
|---|---|---|
| 祖母のためてた | そぼのためてた・7 | ためた人を示しつつ、やわらかく「輪ゴム」へ続く |
| 祖母がためてた | そぼがためてた・7 | ためた人が祖母だと強めに示す。「が」で一瞬、祖母に目が止まる |
| 祖母もためてた | そぼもためてた・7 | 「ほかの誰かも、祖母も」という意味になり、場面が変わる |
「が」と「の」はこの位置ではほぼ同じ意味ですが、声に出したときの流れ方が少し違います。どちらがよいかは歌によって変わるので、一首の中で読み比べて決めます。一方「も」は意味そのものを変えてしまいます。初稿の「柿の木も時計も」のように、「も」は並べる物があるときに働く助詞です。
助詞を見直すときは、次の点も確かめます。
- 「の」が三つ以上続いていないか。続くと、最後の名詞にたどり着くまでに焦点がぼやけやすい
- 「は」と「が」を、意味を考えずに入れていないか。「は」は、ほかのものと比べる響きを持つことがある
- 音数を合わせるために、必要な助詞を抜いていないか(字余りの扱いは短歌の字余り・字足らずで比べています)
語順:最後に置いた言葉に焦点が集まる
短歌では、読み終える直前の言葉が印象に残りやすくなります。第三稿は「べたついていた」で終わるので、感触が最後に残ります。仮に結句を「輪ゴムの束」にする語順にすれば、物の姿が最後に残ります。結句に何を置くかは、残したい一点と一致させます。結句の形の選び方は短歌の結句の作り方で、同じ上四句に三つの結句を付けて比べています。
4 情報が多すぎないか、少なすぎないかを確かめる
ここで、作者の頭の中を一度忘れ、この歌だけを初めて読む人の立場で読みます。第三稿から分かることと、分からないことを書き出します。
| 第三稿から分かること | 第三稿からは分からないこと |
|---|---|
| 引き出しに、祖母がためた輪ゴムがある | なぜ今、その引き出しを開けているのか |
| 輪ゴムは古く、べたついている | 祖母がもういないこと |
| 作者がそれを手に取った | どこの引き出しか(祖母の家か、自分の家か) |
祖母が今も元気で、ただ物持ちがよいだけ、という読み方もできてしまいます。メモの場面からは離れています。一方、情報を足すには音が要ります。そこで、下の句の二句を使っていた感触を一句にまとめ、空いた結句に場面の情報を入れます。
下の句を詰めて、場面の情報を足す
第三稿
作例・短歌第三稿
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 引き出しに | ひきだしに | 5音 |
| 祖母のためてた | そぼのためてた | 7音 |
| 輪ゴムの束 | わごむのたば | 6音字余り(基準5音) |
| 手に取ればみな | てにとればみな | 7音 |
| べたついていた | べたついていた | 7音 |
合計32音(5・7・6・7・7)/基準は5・7・5・7・7
第四稿
作例・短歌第四稿:片付けの場面を足す
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 引き出しに | ひきだしに | 5音 |
| 祖母のためてた | そぼのためてた | 7音 |
| 輪ゴムみな | わごむみな | 5音 |
| 指に貼りつく | ゆびにはりつく | 7音 |
| 片付けの午後 | かたづけのごご | 7音 |
合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり
変更の理由
- 「手に取ればみな、べたついていた」の二句を、「指に貼りつく」の一句にまとめました。「べたつく」より「指に貼りつく」のほうが、触れている体の場所まで見えます。
- 空いた結句に「片付けの午後」を置きました。片付けに来たと分かると、読者は家の主がもういない事情を自分で補います。「亡き祖母」と書かずに済みます。
- 「輪ゴムの束」を「輪ゴムみな」にして、三句の字余り(六音)がなくなりました。「みな」は、どれを取っても貼りつく、という数の多さを伝えます。
- 失ったもの:「束」という形です。束ねてあったのか、ばらばらに入っていたのかは、読者の想像に任されました。
削りすぎると、歌から人が消える
情報を減らす作業を続けていると、必要な情報まで削ることがあります。たとえば第四稿から、さらに祖母を外すと次のようになります。
作例・短歌削りすぎた案
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 引き出しに | ひきだしに | 5音 |
| ためこまれてた | ためこまれてた | 7音 |
| 輪ゴムみな | わごむみな | 5音 |
| 指に貼りつく | ゆびにはりつく | 7音 |
| 片付けの午後 | かたづけのごご | 7音 |
合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり
音数は整い、言葉も短くなりましたが、誰がためた輪ゴムなのかが消えました。この歌は、古い輪ゴムについての歌になり、メモの「祖母のためた輪ゴム」から離れています。削ったあとは、場面メモの一行がまだ歌の中にあるかを必ず確かめます。
一首の意味が伝わらないと言われたときは、情報の「多すぎ」「少なすぎ」に加えて、次の点を確かめます。
| 伝わらない原因 | 起きやすい形 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 焦点が多すぎる | 物や出来事を三つ以上並べている | 読み終えて目に残る物を一つ言えるか |
| 主語が見えない | 誰の行為か書かれていない動詞がある | 動詞ごとに、誰がしたのかを言えるか |
| 自分だけが知っている事情 | 家族内の呼び名、説明のない固有名 | 初めて読む人がその語の意味を知っているか |
| 助詞が抜けている | 音数のために「を」「に」「の」を外した | 抜いた助詞を戻して読むと意味が変わるか |
| 削りすぎ | 人や場所が消え、物だけが残った | 場面メモの「残したい一点」が歌の中にあるか |
5 声に出して、初稿と並べて比べる
最後に、初稿と第四稿を並べて声に出します。ここで、別の案も一つ作っておきます。第二稿で外した気持ちの言葉を、結句に一語だけ戻した案です。
作例・短歌別案:気持ちの言葉を一つ残す
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 引き出しに | ひきだしに | 5音 |
| 祖母のためてた | そぼのためてた | 7音 |
| 輪ゴムみな | わごむみな | 5音 |
| 指に貼りつく | ゆびにはりつく | 7音 |
| 少し寂しい | すこしさびしい | 7音 |
合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり
| 比べる点 | 第四稿(片付けの午後) | 別案(少し寂しい) |
|---|---|---|
| 伝わる情報 | 片付けの場面と時間。祖母の不在は読者が補う | 作者の気持ちの向き。場面の事情は伝わりにくい |
| 読後に残るもの | 午後の家と、指の感触 | 作者の寂しさ |
| 読者に任せる部分 | 気持ち | 事情 |
どちらも成り立つ歌です。第四稿は場面を渡して気持ちを読者に任せ、別案は気持ちを渡して事情を読者に任せます。自分のメモの「一番残したい一点」が感触なら第四稿、寂しさそのものなら別案に近い、という選び方ができます。一つの直し方だけが正解ではありません。
各段階で何が良くなり、何を失ったかをまとめます。
| 段階 | 直したこと | 良くなった点 | 失った点 |
|---|---|---|---|
| 1 焦点 | 柿の木と時計を外す | 見る物が輪ゴムに定まった | 家全体の広がり、時計の示す時間 |
| 2 説明 | 気持ちの言葉を感触に替える | 読者が自分で感じる余地ができた | 気持ちの向き(不快さと読む人も出る) |
| 3 助詞・語順 | 祖母を主語にして、引き出しから始める | 祖母と輪ゴムがつながった | 「祖母の家」という場所 |
| 4 過不足 | 感触を一句にまとめ、片付けを足す | 祖母の不在が伝わる | 束という形 |
初稿は、比べ終わるまで捨てない
推敲を重ねると、初稿よりよくなったと感じやすいものです。けれども直した案が、詠みたかった場面から離れていることもあります。最後に初稿と場面メモを並べ、次の三つを確かめます。
- 場面メモの「一番残したい一点」が、完成案にも残っているか
- 初稿にしかない良さ(勢い、言葉の手触り)を、完成案で失っていないか
- 外した素材は、別の歌の種として残してあるか
初稿のほうがよいと感じたら、初稿に戻ってかまいません。何度か直した結果、一語だけ初稿に戻す、ということもあります。
自分の歌で、五つの順番を試す
練習一首を四回直して比べる(30分)
- 推敲したい自作の歌を一首選び、初稿として日付を付けて保存します。
- 場面メモを書き、「一番残したい一点」を一行で決めます。
- 焦点、説明、助詞・語順、情報の過不足の順に、一段階ずつ直した歌を書きます。各段階で「良くなった点」と「失った点」を一行ずつ書きます。
- 最後に、初稿・完成案・別案を一つずつ声に出して読み、選んだ案と理由を書きます。
確認表短歌の推敲の確認表
-
初稿を、日付を付けて別に保存した
-
一首で残したい一点を、普通の文で一行に書いた
-
読み終えて目に残る物を、一つ言える
-
気持ちやまとめの言葉を、物と動作に置き換えられないか試した
-
動詞ごとに、誰の行為か言える
-
「の」が続きすぎていない。音数のために必要な助詞を抜いていない
-
結句に置いた言葉が、残したい一点と一致している
-
初めて読む人に分からない事情が、一つ以上残っていない
-
削ったあとも、場面の人や場所が消えていない
-
音数を数え、字余り・字足らずは理由を言える形にした
-
初稿と並べて声に出し、失ったものを確かめた
確認表を印刷したり、歌ごとにチェックの結果を保存したりしたいときは、作品別の推敲チェックが使えます。読みと音数を確かめるときはかな入力の音数確認に、句ごとの読みを入れます。
相談先を決めたら、聞きたいことを先に整理しておくと、返ってくる講評が具体的になります。依頼前に確認する項目は講評・添削の依頼メモで書き出せます。