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短歌

短歌の連作の作り方|一首を選び、並び順と題名を整える

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この記事の答え

連作は、一首ずつの出来だけでなく、主題・中心の歌・並び・始めと終わり・題名で一つの作品にします。

  • まず「何の連作か」を一行で書き、それを一番よく担う歌を中心に決める
  • 同じことを言っている歌、気持ちを説明しているだけの歌は外す。外した歌は別の連作のために残しておく
  • 時間順・視点の移動・対比などで並べ替え、最後の一首を替えると読後の印象がどう変わるかを比べて選ぶ

公募に出す場合は、首数・表題・未発表の条件を、その回の募集要項で確かめます。

目次

一首ずつはできているのに、何首か並べても、ただ歌が集まっているだけに見える。連作の流れが見えないときは、並べる前に「何の連作か」と「どの歌を外すか」が決まっていないことがあります。この記事では、架空の同じ場所を詠んだ六首から五首を選び、時間順と視点の移動という二通りの並びを比べて、始めと終わり、題名まで決めます。読み終えたら、自分の手元の歌を一つの連作にまとめられます。

連作は、主題と並びで一つの作品にする

連作は、いくつかの短歌を一つの題のもとに並べた作品です。一首ずつが独立して読める歌であると同時に、並ぶことで、一首だけでは伝わらない時間の流れや、気持ちの変化、場所の広がりが生まれます。

連作というと、始まりから終わりまで筋のある物語を思い浮かべるかもしれません。けれど物語にしなければならないわけではありません。並べ方には、たとえば次のような型があります。

並べ方の型 何でつなぐか 向く題材
時間順 朝から夜、一日、一年など時間の進み 一日の出来事、季節の移り変わり
視点の移動 遠くから近くへ、外から内へ、他人から自分へ 一つの場所、一つの物
対比 前と後、ある・ない、にぎやかさと静けさ 変化、喪失、始まりと終わり
反復 同じ語や同じ物を何首かに置く 一つのモチーフを何度も見つめる題材
変奏 同じ主題を、違う場面で詠む 場面がばらばらの歌をまとめたいとき

どの型を選んでも、先に決めるのは「この連作は何についての作品か」という主題です。

同じ場所で六首を作り、中心の歌を決める

ここからは、架空の題材で連作を作ります。

作例題材のメモ(架空)

市民プールの、今年の営業最終日。八月三十一日。朝から一人で泳ぎに行った。入口に「本日で今季の営業を終了します」の貼り紙。財布の回数券は二枚残っていた。監視台の若い監視員が、走る子に笛を吹く。泳いでいると、息継ぎのたびに雲が見える。夕方、閉場の放送が流れても、なかなか上がれなかった。水面に落ち葉が一枚浮いていた。翌朝、通りがかりにフェンスの外から見ると、もう水が抜かれていた。

このメモから、まず思いつくままに六首作りました。

作例・短歌①入口

入口の貼り紙に今日最終日回数券の残りは二枚
句よみ音数
入口のいりぐちの5音
貼り紙に今日はりがみにきょう7音
最終日さいしゅうび5音
回数券のかいすうけんの7音
残りは二枚のこりはにまい7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

作例・短歌②監視台

走るなと監視台から笛ひとつ叱られた子が歩いて急ぐ
句よみ音数
走るなとはしるなと5音
監視台からかんしだいから7音
笛ひとつふえひとつ5音
叱られた子がしかられたこが7音
歩いて急ぐあるいていそぐ7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

作例・短歌③息継ぎ

息継ぎのたびに見えてる夏の雲往復ごとに形を変えて
句よみ音数
息継ぎのいきつぎの5音
たびに見えてるたびにみえてる7音
夏の雲なつのくも5音
往復ごとにおうふくごとに7音
形を変えてかたちをかえて7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

作例・短歌④上がりたくない

もう少し泳いでいたい夏だった上がりたくない水から上がる
句よみ音数
もう少しもうすこし5音
泳いでいたいおよいでいたい7音
夏だったなつだった5音
上がりたくないあがりたくない7音
水から上がるみずからあがる7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

作例・短歌⑤閉場

閉場の放送が鳴り最後まで浮いていたのはわたしと落ち葉
句よみ音数
閉場のへいじょうの5音
放送が鳴りほうそうがなり7音
最後までさいごまで5音
浮いていたのはういていたのは7音
わたしと落ち葉わたしとおちば7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

作例・短歌⑥翌朝

翌朝のフェンス越しには水のないプールの底の線まで見える
句よみ音数
翌朝のよくあさの5音
フェンス越しにはふぇんすごしには7音
水のないみずのない5音
プールの底のぷーるのそこの7音
線まで見えるせんまでみえる7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

主題を一行で書く

六首を読み返して、この連作が何についての作品かを一行で書きます。

主題:夏が終わる日に、場所が空になっていくのを、最後まで残った自分が見ている。

「プールの思い出」「夏の終わり」だけでは広すぎて、どの歌を外すかの基準になりません。何が、どう変わるのを、誰が見ているのかまで書くと、歌の選び分けに使えます。

中心の歌を決める

主題を一番よく担っている歌を、中心の歌に決めます。この六首なら⑤です。閉場の放送という「場所の終わり」と、最後まで浮いていた「自分」、季節の変わり目を示す「落ち葉」が、一首に入っています。

中心の歌は、連作の最後に置くとは限りません。決めておくと、ほかの歌が「中心の歌へ向かう歌」か「中心の歌から離れていく歌」かが見えて、並びを考えやすくなります。

似た歌を選び分ける

六首を一首ずつ、場面・時間・視点と、その歌が連作に新しく加える情報で整理します。

歌 時間 視点 新しく加える情報 判断
①入口 朝 自分の持ち物 最終日であること。使い切れない回数券 残す。場面と時を渡す
②監視台 昼 他人を見る プールのにぎわい、明るさ 残す。①と⑤の間に人の気配を置く
③息継ぎ 昼 水の中の自分 時間が過ぎていく感覚 残す。泳ぐ体の内側の歌
④上がりたくない 夕 自分の気持ち なし(⑤と同じ場面を、気持ちの言葉で言っている) 外す
⑤閉場 夕 水の中の自分 場所の終わりと、残った自分 中心の歌
⑥翌朝 翌朝 フェンスの外 水がなくなったこと 残す。前日との対比

④を外した理由は二つあります。

  • ⑤と同じ場面を詠んでいる。どちらも「閉場の時刻に、水から上がりたくない自分」の歌です。同じ場面が二首続くと、連作が足踏みします。
  • 気持ちを言葉で二度言っている。「泳いでいたい」「上がりたくない」と、同じ気持ちを重ねています。⑤は「最後まで浮いていた」という事実だけで、同じ気持ちを読者に渡しています。

似た二首のどちらを残すか迷ったら、景や動作で見せている歌を残し、気持ちを説明している歌を外すと、連作全体が引き締まります。ただし、連作のどこか一首で気持ちをはっきり言うと、ほかの景の歌が生きることもあります。外した歌は捨てずに、別の連作の候補として取っておきます。

一首ずつの言葉の直し方は、短歌の推敲のやり方で扱っています。連作に入れる前に、一首として説明が多すぎないかを見ておきます。

二通りの並びを比べる

残った五首(①②③⑤⑥)を、二通りに並べてみます。

並びA:時間順

① 入口 → ② 監視台 → ③ 息継ぎ → ⑤ 閉場 → ⑥ 翌朝

朝から夕方、そして翌朝へと時間が進みます。読者は主人公と一緒にプールに入り、一日を過ごし、翌朝、水の抜かれたプールを見ます。最後の⑥で「昨日まであった水がもうない」という対比が生まれ、夏が終わったことが、言葉にせずに伝わります。

並びB:視点の移動(外から内へ)

⑥ 翌朝 → ① 入口 → ② 監視台 → ③ 息継ぎ → ⑤ 閉場

水のないプールから始め、フェンスの外 → 入口 → 監視台を見上げるプールサイド → 水の中 → 最後まで浮いている自分、と視点がだんだん水の中へ近づいていきます。最初に空のプールを見せるので、続く四首は「もう終わってしまった日の記憶」として読まれます。最後は、閉場の放送の中で浮いている自分の姿で終わります。

比べる点 並びA:時間順 並びB:外から内へ
読者が受け取る流れ 一日を一緒に過ごし、翌朝に終わりを知る 終わりを先に知り、その日を思い返す
最後に残る印象 水のない底の線。終わったという事実 水に浮いたままの自分。終わらせたくない気持ち
⑥の働き 前日との対比で、結末になる 全体を記憶の枠にする、入口になる
向く主題 「夏が終わった」を静かに受け止める 「夏を終わらせたくない」気持ちを残す

どちらが正解ということはありません。主題の一行「最後まで残った自分が見ている」に照らすと、並びBのほうが「残った自分」で終わるので、主題に近いと言えます。一方、並びAは読みやすく、⑥の対比が強く効きます。並べ替えで主題の重心が変わることを確かめたうえで、どちらかを選びます。

対比と反復を使う場合

ほかの型も試せます。

  • 対比:⑥を中央に置き、「水のある日」の歌と「水のない日」の歌を前後に分けると、時間の流れより、ある・ないの対照が前に出ます。
  • 反復:①の「回数券」を、最後の歌にもう一度出す(たとえば⑥を、財布に残った回数券を見る歌に作り直す)と、使い切れなかった二枚で始まり二枚で終わる、輪のような連作になります。

並べ替えを何通りも試すときは、歌に番号を振って一首ずつ紙片やカードに書くか、作品集の目次整理のように順番を入れ替えられる道具を使うと、比べやすくなります。

始めの一首と終わりの一首を決める

並びの中で、特に読後の印象を決めるのが、最初と最後の歌です。

始めの一首は、読者を場所と時間に連れて行く役目です。①は「入口」「最終日」と、どこの、いつの話かを一首で渡せるので、始めに向いています。並びBのように、結末にあたる景から始めて、読者に「何があったのか」と思わせる始め方もあります。

終わりの一首は、まとめや感想ではなく、景や動作で閉じると余韻が残ります。たとえば④のような「上がりたくない」で終えると、読者が感じるはずだったことを作者が先に言ってしまいます。

確かめ方として、最後の一首だけを入れ替えて読み比べるのが有効です。

最後に置く歌 読後に残るもの
⑤ 閉場 浮いている自分と落ち葉。まだ終わっていない時間
⑥ 翌朝 水のない底。終わってしまった事実
④ 上がりたくない(外した歌) 気持ちの説明。読者が想像する余地が少ない

一首ずつの結句の作り方は短歌の結句の作り方で扱っていますが、連作の最後の歌は、一首の結句と同じく「何を最後に見せるか」で選びます。

題名を付ける

連作の題名は、歌の中で言っていないことを一つ足すか、歌の中の言葉を一つ選んで光を当てる役目を持ちます。題で説明しすぎると、歌を読む楽しみが減ります。

題名の案 題が足すもの 気になる点
夏の終わり 主題そのもの 主題を先に言ってしまう。どの夏の連作にも付けられる
最終日 時 ①の言葉と重なり、①の驚きが弱くなる
八月三十一日 具体的な日付 場所は伝わらないが、日付から夏休みの終わりが浮かぶ
回数券 ①の物に光を当てる 使い切れなかった夏、という読みを誘う。①で始まる並びAに反復を加えるなら、それとも合う
浮いていた ⑤の動作 主題の「残った自分」と結び付く。最後の歌の印象を強める

並びAなら「八月三十一日」(回数券の反復を加えるなら「回数券」)、並びBなら「浮いていた」が候補になります。題名は最後に、並びと一緒に決めます。題名が決まったら、題と重なる言葉が歌の中にないか、もう一度見直します。

応募する首数に合わせて広げる・絞る

連作を公募に出す場合、首数と表題は応募先が決めています。たとえば第28回NHK全国短歌大会の近藤芳美賞は新作15首1組で、表題が必要です。短歌研究社の短歌研究新人賞は、第69回の応募規定で「未発表の新作短歌30首」とし、一枚目に表題と氏名を書くよう定めていました。

五首の連作を、15首や30首に広げるときの手順です。

手順首数の多い連作に広げる手順

  1. 主題の一行を見直す。15首、30首を支えられる広さがあるかを確かめる。狭すぎる場合は、時間(一日→一夏)や場所(プール→町)を広げる。
  2. 応募首数より多めに歌を作る。外す歌が出る前提で、候補を多く用意する。
  3. 「似た歌の選び分け」の表を全首で作り、同じ情報を加える歌を一首にしぼる。
  4. 連作をいくつかの区切り(場面や時間)に分け、区切りごとに中心の歌を決める。
  5. 始めと終わりの一首を決め、最後の一首を入れ替えて読み比べる。
  6. 題名を決め、題と歌の言葉が重なっていないか確かめる。

首数のほかに、次の点もその回の規定で確かめます。

  • 未発表の条件:SNS・ブログ・結社誌・歌会に出した歌を入れてよいか。NHK全国短歌大会は、既発表作品や、新聞・雑誌・結社誌・SNSなどへの同一・類似作品の投稿を認めていません。連作の一首だけでも既発表なら、条件に触れることがあります。
  • ちょうどか以内か:「30首」がちょうど30首なのか、以内なのか。
  • 表題と書式:表題をどこに書くか、一枚に何首書くか、原稿用紙かA4か。

応募先の選び方と提出前の確認は、短歌の投稿先の選び方にまとめています。完成した連作を誰かに読んでもらい、並びや題名について意見がほしい場合は、短歌の添削はどこに頼む?で、複数首の講評を頼む方法を扱っています。

確認表連作を仕上げる前の確認表

  • 主題を一行で書けている(何が、どう変わるのを、誰が見ているか)
  • 中心の歌を決めている
  • 同じ場面・同じ情報の歌が続いていない
  • 気持ちを説明しているだけの歌を、景や動作の歌と比べて選んだ
  • 並べ方を二通り以上試し、読後の印象の違いを確かめた
  • 最後の一首を入れ替えて読み比べた
  • 題名が主題を言いすぎていない。歌の言葉と重なりすぎていない
  • 全首の読みと音数を確かめた
  • 応募する場合は、首数・表題・未発表の条件をその回の要項で確かめた