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短歌

短歌の口語と文語の違い|言葉と文法をそろえて詠む方法

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この記事の答え

口語はふだんの話し言葉にもとづく言葉づかい、文語は平安時代の言葉を基礎にした書き言葉の言葉づかいです。違いは主に、動詞の活用、助動詞、文の終わり方に出ます。どちらが上ということはありません。

  • 口語は今の声や物の名前がそのまま入り、読者がつまずきにくい。文語は短く言い切る形や、「けり」のような気づきの言い方を使える
  • 文語を一語だけ足すときは、その語の活用と、付ける形(接続)を辞書で確かめる。「見えるけり」のような口語と文語の継ぎはぎになっていないか点検する
  • 文語と旧かな(歴史的仮名遣い)は別の選択。文法と、かなづかいを、それぞれ一首の中でそろえる
目次

短歌らしくしようと語尾に「けり」を付けたら、どこかちぐはぐになった。口語で詠んでいたのに、一句だけ古い言い方が混ざって浮いている。この記事では、架空の場面「冬の朝、曇った窓を指でぬぐう」を口語と文語の両方で詠み、意味・響き・活用の違いを並べます。語尾だけを古くした失敗例の直し方と、文語を足す前に辞書で確かめる点もまとめるので、読み終えたら自分の歌をどちらの言葉でそろえるか選べます。

口語と文語は、言葉づかいの体系の違い

辞典の説明を短くまとめると、次のようになります。

口語 文語
辞典の説明 日常の談話などに用いられる言葉遣い。明治以降の話し言葉と、それをもとにした書き言葉を合わせていう(デジタル大辞泉) 話し言葉とは異なる独自の言葉。特に、平安時代語を基礎に独特の発達をとげた書き言葉(デジタル大辞泉)
違いが出やすいところ 動詞・形容詞の活用、助動詞の使い方(精選版 日本国語大辞典) 活用、助辞、文末の形。例として文語「見ゆ」と口語「見える」(改訂新版 世界大百科事典)

短歌でいう「口語」「文語」も、この違いです。単語を一つ古くすれば文語になるわけではなく、動詞の形、付ける助動詞、文の終わり方がまとまって変わります。

言いたいこと 口語 文語の例
見える 見える 見ゆ
見えない 見えない 見えず
見えた(気づいた) 見えた 見えけり
ぬぐっている ぬぐっている ぬぐへり
白い霜 白い霜 白き霜

文語と旧かなは別の選択

もう一つ、混同しやすいのがかなづかいです。「ぬぐへり」の「へ」のような書き方は、歴史的仮名遣い(旧かな)によるものです。デジタル大辞泉は歴史的仮名遣いを「語を仮名で表記する際の方式の一つ」と説明しています。文語は言葉づかい(文法)の話、旧かなは書き表し方(表記)の話で、組み合わせは四通りあります。

現代仮名遣い(新かな) 歴史的仮名遣い(旧かな)
口語 霜が見えている 霜が見えてゐる
文語 指のぬぐえるひとすじに 指のぬぐへるひとすぢに

文化庁が示す「現代仮名遣い」の前書きは、この仮名遣いが科学・技術・芸術などの専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではないこと、主に現代文の口語体に適用するものであることを述べています。短歌でどちらのかなづかいを使うかは、作者が選んでよいところです。ただし、一首の中ではどちらかにそろえるのが基本です。

旧かなで書いても、音数は発音で数えます。「ぬぐへる」は「ぬぐえる」と読むので四音です。

同じ場面を、口語と文語で詠み比べる

ここからは、次の架空の場面を使います。

作例場面メモ

冬の朝、台所の窓が真っ白に曇っていた。人差し指で一本、横に線を引くようにぬぐうと、その細い筋の向こうに、向かいの家の屋根が見えた。屋根には霜が降りて、白くなっていた。

作例・短歌口語で詠んだ歌

曇り窓指でぬぐったひとすじに向かいの屋根の霜が見えてる
句よみ音数
曇り窓くもりまど5音
指でぬぐったゆびでぬぐった7音
ひとすじにひとすじに5音
向かいの屋根のむかいのやねの7音
霜が見えてるしもがみえてる7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

作例・短歌文語で詠んだ歌(旧かな)

曇り窓指のぬぐへるひとすぢに向かひの屋根の霜ぞ見えける
句よみ音数
曇り窓くもりまど5音
指のぬぐへるゆびのぬぐえる7音
ひとすぢにひとすじに5音
向かひの屋根のむかいのやねの7音
霜ぞ見えけるしもぞみえける7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

※旧かなの「ぬぐへる」「ひとすぢ」「向かひ」は、「ぬぐえる」「ひとすじ」「むかい」と読みます。

二首とも五・七・五・七・七で、描いている場面は同じです。違いが出ているのは、二句と結句の文法、それにかなづかいです。

確認した箇所

箇所 口語の歌 文語の歌 確かめたこと
二句 指でぬぐった 指のぬぐへる 文語の「ぬぐふ」は四段活用。その已然形「ぬぐへ」に、完了・存続の助動詞「り」の連体形「る」が付き、「ひとすぢ」にかかる。「の」は、ぬぐった主(指)を示す
三句・四句 ひとすじ・向かい ひとすぢ・向かひ 語は同じ。旧かなで書くかどうかだけが違う
結句 霜が見えてる 霜ぞ見えける 「見ゆ」はヤ行下二段活用で、連用形は「見え」。「けり」は連用形に付く。係助詞「ぞ」を受けて、「けり」は連体形「ける」で結ぶ(係り結び)

「り」は、デジタル大辞泉によると四段動詞の已然形とサ変動詞の未然形に付き、動作が続いていることや、完了してその結果が残っていることを表します。「指のぬぐへる」で、ぬぐった筋が窓に残っている様子になります。

「けり」は動詞・助動詞の連用形に付き、意味の一つに、それまで気づかなかったことに初めて気づいた詠嘆(…たのだなあ)があります(デジタル大辞泉)。「霜ぞ見えける」は、ぬぐった筋の向こうに霜があったことに、今気づいた驚きを含みます。

意味と響きの違い

比べる点 口語の歌 文語の歌
時間の感じ 「見えてる」で、今まさに見ている。作者と同じ時間に読者が立つ 「けり」で、見続けている時間より、「あったのか」と気づいた一点が残る
気持ちの出し方 書かれていない。淡々と見たものを言う 「ぞ」と「ける」で、見つけたことへの小さな驚きを強める
声の調子 「見えてる」はくだけた話し言葉。独り言に近い 改まった、ゆっくりした調子
読者の負担 文法でつまずかない 文語に慣れていない読者は、一度立ち止まる

どちらがよい歌ということはありません。台所の窓という日常の場面を、独り言の近さで残したいなら口語、小さな発見を改まった調子で残したいなら文語が合います。

日常語(口語)の強み

口語で詠むよさは、今の自分の声がそのまま歌になることです。

  • 時間の細かい違いを言い分けられる。「見えてる」「見えてた」「見えちゃった」で、今か、少し前か、思いがけなかったかが変わります。
  • 今の物の名前がなじむ。スマートフォン、コンビニ、自動ドアのような言葉も、口語の文に入れれば浮きません。
  • 会話をそのまま入れられる。人が言った一言を、かぎかっこで歌の中に置けます。
  • 読者が文法で立ち止まらない。場面そのものに目を向けてもらえます。

一方で、気をつけたい点もあります。口語は「た」「る」で文が終わることが多く、何首も並べると語尾が単調になりがちです。「〜ている」「〜ない」のように音数を使う形も多く、三十一音に収めようとすると説明に音を取られることがあります。口語の歌の結び方を変えたいときは、短歌の結句の作り方で、物で結ぶ・動作で言い切る形を比べています。

文語の語感と文法

文語で詠むよさは、短く言い切る形と、気づきや感慨を込める助動詞を使えることです。ただし、文語の形がいつも口語より短いわけではありません。

言いたいこと 口語・音数 文語・音数
見えない 見えない・4 見えず・3
ぬぐっている ぬぐっている・6 ぬぐへり・4
見えた(気づき) 見えた・3 見えけり・4
白い霜 白い霜・5 白き霜・5

「見えけり」のように、文語のほうが長くなる形もあります。文語を選ぶ理由は、音数より、その形が持つ意味と調子に置いたほうが、一首の言葉がそろいやすくなります。

短歌でよく使う文語の助動詞

助動詞 付く形(接続) 主な意味 作例の語で
き 連用形(カ変・サ変には特別な付き方がある) 話し手が直接経験した過去の回想(デジタル大辞泉) 見えき・見えし霜
けり 連用形 過去から続く事柄、伝え聞いた過去、初めて気づいたことへの詠嘆など(デジタル大辞泉) 見えけり
たり ラ変以外の動詞の連用形 動作の継続(…ている)、完了とその結果の存続、完了(デジタル大辞泉) 見えたり
り 四段動詞の已然形、サ変動詞の未然形(四段は命令形に付くとする辞典もある) 継続、完了とその結果の存続、完了(デジタル大辞泉) ぬぐへり
ぬ(完了) 連用形 完了・実現(…た・…てしまった) 見えぬ(文の終わり)
ず(打消) 未然形 打消(…ない) 見えず

表の「接続」は、その助動詞の前に来る動詞を、どの活用形にするかという決まりです。「けり」なら連用形なので、「見ゆ」は連用形の「見え」にして「見えけり」になります。辞典によって説明の細部が違うこともあるので、使う前には手元の古語辞典で、動詞の活用の種類と、助動詞の接続の両方を確かめます。

「見えぬ」は、打消にも完了にも読める

下二段活用の「見ゆ」のように、未然形と連用形が同じ「見え」になる動詞では、「ぬ」を付けたときに意味が二通りに取れます。

形 文法の上での読み方 意味
見えぬ霜(名詞の前) 打消「ず」の連体形「ぬ」 見えない霜
霜は見えぬ(文の終わり) 完了「ぬ」の終止形 霜は見えた(見えるようになった)

デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典とも、完了の「ぬ」は連用形に、打消の「ぬ」は未然形に付くと説明しています。ただ、口語にも「知らぬ」「言わぬ」のような打消の「ぬ」が残っているため、文の終わりの「見えぬ」を「見えない」と受け取る読者もいます。誤解されたくないなら、打消は「見えず」、完了は「見えけり」「見えたり」のように、紛れない形を選ぶほうが安全です。

係り結び:「ぞ・なむ・や・か」と「こそ」

文語の文で、係助詞に応じて文末の活用形が変わる決まりを係り結びといいます。百科事典マイペディアは、「ぞ・なむ・や・か」は連体形で、「こそ」は已然形で結ぶと説明し、例に「昔の人の袖の香ぞする」(『古今和歌集』)を挙げています。「ぞ」を受けて、サ変動詞「す」が連体形「する」になっています。

係助詞 結びの形 作例の結句で
なし(「は」など) 終止形 霜は見えけり
ぞ・なむ・や・か 連体形 霜ぞ見えける
こそ 已然形 霜こそ見えけれ

同じ百科事典マイペディアは、係り結びが奈良〜平安時代に発達した法則で、今日ではほとんど見られないとも述べています。口語の歌にはふつう出てこない形なので、文語の歌で「ぞ」や「こそ」を使うときだけ、結びの形を確かめれば足ります。

係り結びや文語の終止形は、文がどこで終わるかをはっきり示します。口語では終止形と連体形が同じ形の語が多く、文の切れ目の判断が分かれることがあります。一首の中の文の区切りについては短歌の句切れで、区切る案と流れる案を比べています。

語尾だけを古くした歌を直す

口語で作った歌に、文語の語尾を一つ足すと、どこが継ぎはぎになるかを見ます。次の歌は、口語の歌の結句「霜が見えてる」を、「けり」を付ければ短歌らしくなると考えて直し、ついでに「ひとすじ」も古風に「ひとすぢ」と書き換えた例です。

作例・短歌語尾だけ古くした歌

曇り窓指でぬぐったひとすぢに向かいの屋根の霜が見えるけり
句よみ音数
曇り窓くもりまど5音
指でぬぐったゆびでぬぐった7音
ひとすぢにひとすじに5音
向かいの屋根のむかいのやねの7音
霜が見えるけりしもがみえるけり8音字余り(基準7音)

合計32音(5・7・5・7・8)/基準は5・7・5・7・7

この歌には、文法とかなづかいの問題が四つ重なっています。

問題 どこか なぜ問題か
活用の継ぎはぎ 見えるけり 「けり」は連用形に付く。口語の終止形「見える」に文語の助動詞を付けた形になっている
文体の混在 ぬぐった/けり 二句は口語の「た」、結句は文語の「けり」。過去の言い方が二つの体系で重なる
かなづかいの混在 ひとすぢ/向かい 「すぢ」は旧かな、「向かい」は新かな。一首の中で表記がそろっていない
字余り 霜が見えるけり 誤った形のせいで八音になり、結句のリズムも崩れた

直し方は二つあります。文語にそろえるか、口語に戻すかです。

文語にそろえる

修正前

作例・短歌語尾だけ古くした歌

曇り窓指でぬぐったひとすぢに向かいの屋根の霜が見えるけり
句よみ音数
曇り窓くもりまど5音
指でぬぐったゆびでぬぐった7音
ひとすぢにひとすじに5音
向かいの屋根のむかいのやねの7音
霜が見えるけりしもがみえるけり8音字余り(基準7音)

合計32音(5・7・5・7・8)/基準は5・7・5・7・7

修正後

作例・短歌文語にそろえた歌

曇り窓指のぬぐへるひとすぢに向かひの屋根の霜は見えけり
句よみ音数
曇り窓くもりまど5音
指のぬぐへるゆびのぬぐえる7音
ひとすぢにひとすじに5音
向かひの屋根のむかいのやねの7音
霜は見えけりしもはみえけり7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

変更の理由

  • 結句は「見ゆ」の連用形「見え」に「けり」を付けた「見えけり」にしました。係助詞「ぞ」を使わないので、終止形の「けり」で結びます。「ぞ」を使うなら、最初の文語の歌のように「霜ぞ見えける」になります。
  • 二句の「指でぬぐった」を、四段動詞「ぬぐふ」の已然形+「り」の連体形を使った「指のぬぐへる」(指がぬぐった)に替え、過去の言い方を文語にそろえました。
  • 「向かい」を旧かなの「向かひ」にして、「ひとすぢ」と表記をそろえました。新かなにそろえるなら、「ひとすじ」「ぬぐえる」と書きます。

口語に戻す

修正前

作例・短歌語尾だけ古くした歌

曇り窓指でぬぐったひとすぢに向かいの屋根の霜が見えるけり
句よみ音数
曇り窓くもりまど5音
指でぬぐったゆびでぬぐった7音
ひとすぢにひとすじに5音
向かいの屋根のむかいのやねの7音
霜が見えるけりしもがみえるけり8音字余り(基準7音)

合計32音(5・7・5・7・8)/基準は5・7・5・7・7

修正後

作例・短歌口語に戻した歌

曇り窓指でぬぐったひとすじに向かいの屋根の霜が光った
句よみ音数
曇り窓くもりまど5音
指でぬぐったゆびでぬぐった7音
ひとすじにひとすじに5音
向かいの屋根のむかいのやねの7音
霜が光ったしもがひかった7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

変更の理由

  • 「けり」で出したかったのは、霜に気づいた瞬間の感じでした。口語では、「見える」と言う代わりに、霜の様子(光った)を言うことで、見つけた瞬間を置けます。
  • 「ひとすぢ」を新かなの「ひとすじ」に戻し、表記を口語の歌にそろえました。
  • 最初の口語の歌の「霜が見えてる」も、もちろん使えます。「光った」は朝日が当たった一瞬、「見えてる」は見続けている時間を残します。

口語の歌に文語を混ぜるときの確認

口語と文語を一首の中で混ぜること自体は、誤りではありません。口語を基調にして、結句だけ文語にする歌もあります。問題になるのは、混ぜた理由がなく、混ざった箇所の文法が崩れているときです。

次の歌は、口語の歌の結句だけを文語の終止形「見ゆ」にした例です。

作例・短歌口語の歌に文語の「見ゆ」を混ぜた歌

曇り窓指でぬぐったひとすじに向かいの屋根の霜白く見ゆ
句よみ音数
曇り窓くもりまど5音
指でぬぐったゆびでぬぐった7音
ひとすじにひとすじに5音
向かいの屋根のむかいのやねの7音
霜白く見ゆしもしろくみゆ7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

「見ゆ」は文語の終止形なので、文法の形としては正しく、言い切りの硬さが結句に出ます。一方で、口語の「霜白く見える」は八音です。もし「見ゆ」を選んだ理由が一音減らすためだけなら、二句の「ぬぐった」の口語の調子と、結句の硬さが合っているかを、もう一度確かめます。

混ぜる前に確かめること この歌での答えの例
なぜその箇所だけ文語にするのか、一行で言えるか 結句だけ言い切りを硬くして、霜の冷たさを出したい
文語にした箇所の活用・接続は正しいか 「見ゆ」はヤ行下二段の終止形。助動詞は付けていない
過去・完了の言い方が、口語と文語で二重になっていないか 「ぬぐった」の「た」はあるが、結句は現在の「見ゆ」なので重ならない
かなづかいは一首でそろっているか すべて新かな
声に出して、文語の箇所だけ浮いて聞こえないか 口語の四句のあとに「みゆ」で短く止まる。硬さを意図したなら残す
口語だけの案と比べたか 「霜が光った」と比べ、残したいものに近いほうを選ぶ

結句だけを文語にする場合の例は、短歌の結句の作り方でも口語の上の四句と並べて比べています。

古そうな言葉を足す前の点検

文語の言葉を足したくなったときは、足す前に次の順で確かめます。

手順文語を足す前の手順

  1. 足したい理由を一行で書く。気づきの詠嘆を入れたい、言い切りを硬くしたい、時間を遠くしたい、など。「短歌らしく見えるから」「一音減らしたいから」だけなら、口語の案も作って比べる。
  2. 動詞の活用の種類を辞書で確かめる。「見ゆ」はヤ行下二段、「ぬぐふ」は四段、のように。口語の「見える」と文語の「見ゆ」は活用が違う。
  3. 付ける助動詞の接続を確かめる。「けり」「き」「たり」は連用形、「り」は四段の已然形(命令形とする説もある)とサ変の未然形、「ず」は未然形。
  4. 係助詞があれば、結びの形を確かめる。「ぞ・なむ・や・か」なら連体形、「こそ」なら已然形。
  5. 一首の文体の方針を決める。全体を文語にするか、口語を基調に一か所だけ文語にするか。一か所だけなら、その理由が手順1の一行と一致しているか。
  6. かなづかいをそろえる。旧かなにするなら、一首のすべての語を旧かなで書く。
  7. 読みで音数を数える。旧かなは発音どおりに直して数える。
  8. 口語の案と並べて声に出す。文語のほうが残したいものに近いときだけ採る。

辞書は、古語の活用と接続が引ける古語辞典を使うと確かです。ふだん使っている国語辞典にも文語の動詞が載っていることがありますが、助動詞の接続まで詳しく載っているとは限りません。

口語か文語かを選ぶ目安

一首で残したいもの 向きやすい言葉
今まさに見ている近さ、独り言の声 口語
今の物の名前や、会話の一言 口語
見つけた瞬間の驚きを、改まった調子で 文語(けり・ぞ…ける など)
短く硬く言い切る結び 文語の終止形(見ゆ・見えず など)、または口語の名詞止め
時間を少し離して振り返る感じ 文語(き・けり)、または口語の「た」

表は目安です。口語で驚きを込めることも、文語で近い声を出すこともできます。大事なのは、選んだ言葉で一首がそろっていることです。

自分の歌で、口語と文語を詠み分ける

練習同じ一首を口語と文語で(30分)

  1. 自作の歌を一首選び、口語で詠んだ形と、文語で詠んだ形の両方を作ります(もとが口語なら文語版を、文語なら口語版を作る)。
  2. 文語版で使った動詞と助動詞を書き出し、古語辞典で活用の種類と接続を確かめて、表の形でメモします。
  3. 旧かなにする場合は、旧かな版も書き、読みをかなで書いて音数を数えます。
  4. 二つの版を声に出して読み比べ、「時間の感じ」「気持ちの出し方」「声の調子」の違いを一行ずつ書きます。
  5. 一首で残したいものに近い版を選び、選んだ理由を一行で書きます。

確認表口語と文語の確認表

  • 一首の文体の方針(口語・文語・口語基調に一か所だけ文語)を決めた
  • 文語の動詞は、活用の種類を辞書で確かめた
  • 文語の助動詞は、前の動詞を正しい活用形にして付けた(「見えるけり」のような継ぎはぎがない)
  • 係助詞「ぞ・なむ・や・か・こそ」を使った場合、結びの形を確かめた
  • 「見えぬ」のように、打消と完了のどちらにも読める形を、意図せず使っていない
  • 過去・完了の言い方が、口語と文語で二重になっていない
  • かなづかい(新かな・旧かな)が一首の中でそろっている
  • 旧かなの語も、発音どおりの読みで音数を数えた
  • 文語にした理由を一行で言える。音数合わせだけが理由になっていない
  • 口語の案と並べて声に出し、比べてから選んだ

読みを入れて句ごとの音数を確かめるときは、かな入力の音数確認が使えます。旧かなの語は、発音どおりのかなに直して入力します。

言葉をそろえたあと、説明が多い、助詞が硬いといった一首全体の問題が残るときは、短歌の推敲のやり方の順番で見直せます。