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学び方・選び方

短歌のおすすめ入門書|作り方・読み方・推敲の目的別に選ぶ

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この記事の答え

短歌の本は、作り方の入門書・作品解説・推敲例・文法書・歌集で役割が違います。困っていることに合う章が目次にあるかで選びます。

  • 今の言葉で最初の一首を作りたい → 『かんたん短歌の作り方』(ちくま文庫)
  • 何首か作ったが、どこを直せばいいか分からない → 添削例で手法を示す『短歌のレシピ』(新潮新書)
  • 文語で詠みたい、助動詞や仮名遣いに自信がない → 『短歌文法入門 改訂新版』(飯塚書店)

品切れの本は図書館で探せます。本を読んだら、その日のうちに自分の一首を一か所直して、読み・音数・表現の三つで確かめます。

目次

短歌を作り始めて、音数はそろうようになった。けれど、どの言葉を選べばいいのか、どう直せばいいのかは分からない。そこで本で学ぼうとしても、入門書・歌集・文法書が並んでいて、どれから読めばいいか迷います。この記事では、本の種類ごとの役割を分けたうえで、5冊を目的別に比べます。最後に、選んだ本を自分の一首に使う一週間の例を示します。

入門書・作品解説・歌集・雑誌・講座の役割を分ける

短歌を学ぶための本や場には、それぞれ得意なことがあります。一冊ですべてを済ませようとせず、今の自分に必要な役割から選びます。

種類 主な役割 向く時期 これだけでは足りないこと
作り方の入門書 一首を作る手順、音数、言葉の選び方 最初の数首を作るとき 自分の歌への具体的な指摘
作品解説・添削例の本 他の人の歌がどう読まれ、どう直されるか 何首か作り、直し方を知りたいとき 一首目を作る手順
文法書 文語の活用、助詞・助動詞、仮名遣い 文語で詠みたいとき 歌の良し悪しの判断
歌集 一人の歌人の歌のまとまり、連作の並び いつでも。読むことが作る力の土台になる 作り方の説明
雑誌 新しい歌、投稿欄の入選歌と選評、特集 作り続けたいとき 体系的な順序立った説明
講座・添削 自分の歌への返答 本で直しても疑問が残るとき 費用と時間がかかる

この記事で比べるのは、上の三つ(入門書・作品解説・文法書)です。歌集と雑誌の使い方は後の節で、講座や添削の選び方は短歌の添削はどこに頼む?で扱っています。

目次と試し読みで確かめる六つの項目

入門書は、書名だけでは中身が分かりません。出版社のページの紹介と目次、書店や電子書籍ストアの試し読みで、次の六つを確かめます。

確認表短歌の入門書を選ぶときの確認項目

  • 口語か文語か:作例や説明が、今の話し言葉の短歌か、文語の短歌か。自分が詠みたい言葉と合っているか
  • 音数と句切れ:五七五七七の数え方、字余り、意味の区切りを扱う章があるか
  • 作例の出どころ:著者の歌、投稿された歌、近代の名歌のどれを使って説明しているか
  • 推敲の扱い:直す前と後を並べて、なぜ直したかを説明しているか
  • 課題の有無:読者が手を動かす練習や問いがあるか
  • 版の違い:単行本と文庫で内容や付録が違わないか。品切れでないか

目次の言葉を、自分の困りごとに当てはめてみると選びやすくなります。たとえば『短歌のレシピ』の目次には、「理屈は引っこめよう」「読者を信頼しよう」「『は』と『が』で変わること」「リズムをとるか助詞をとるか」といった回が並んでいます。結句で気持ちを説明してしまう人なら前の二つ、助詞の選び方で迷う人なら後の二つが、自分の課題に近い回だと見当が付きます。

目的別に5冊を比べる

5冊を、同じ項目で並べます。価格は確認時の表示です。

本 種類・刊行・価格 主な内容 向く目的
かんたん短歌の作り方(枡野浩一、ちくま文庫) 作り方の入門・2014年・文庫336頁・990円(税込) 今の言葉で作る「かんたん短歌」。作り方、Q&A、作品集 口語で最初の一首を作る
一人で始める短歌入門(枡野浩一、ちくま文庫) 作品解説・2007年・文庫256頁・出版社品切れ 投稿された歌から選んだ100首を、10週に分けて解説 他の人の歌を読み、表現の効き方を学ぶ
短歌のレシピ(俵万智、新潮新書) 添削例・2013年・新書192頁・836円(税込)・電子版あり 投稿作品の添削を通して、32の具体的な手法を示す 作った歌の直し方を知る
はじめての短歌(穂村弘、河出文庫) 考え方・2016年・文庫176頁・682円(税込) 社会で使う言葉と短歌の言葉の違い、読者の共感 短歌らしい言葉とは何かを考える
短歌文法入門 改訂新版(日本短歌総研 編著、飯塚書店) 文法書・2020年・四六判264頁・1,800円+税 実作に必要な文語文法を体系的に解説。例歌は現代短歌785首 文語の活用・助詞・仮名遣いを確かめる

かんたん短歌の作り方(ちくま文庫)

『かんたん短歌の作り方』は、今の言葉で作る「かんたん短歌」の入門書です。目次は「作り方」「Q&A」「作品集二〇〇〇」「作品集二〇一四」の順に並びます。2000年に出た同名の本が親本です。

  • 向く人:口語で、最初の一首から作り始めたい人。作り方の説明のあとにQ&Aがあるので、作りながら出てくる疑問を引けます。
  • 向かない人:文語の文法を学びたい人。今の言葉で作る短歌が中心です。
  • 選ぶ前に:作り方の章の分量は、出版社ページの「目次をすべて読む」や試し読みで確かめてから選ぶと安心です。

一人で始める短歌入門(ちくま文庫)

『かんたん短歌の作り方』より「もっとかんたん」な入門書として書き下ろされた本で、投稿された8,709首から選んだ100首を解説し、1週10首ずつ10週で読み進める構成です。目次には「五感に訴える言葉」「余計な部分が魅力」「リズムは恐ろしい」「読者にバトンされる」などのレッスン名が週ごとに並び、巻末には「補講」があります。

  • 向く人:作り方の説明より、実際の歌を読んで「この言葉がなぜ効くのか」を知りたい人。
  • 向かない人:今すぐ書店で買いたい人。確認時、出版社ページは品切れの表示でした。
  • 選ぶ前に:入手方法は後の「品切れの本の探し方」を参照してください。

短歌のレシピ(新潮新書)

『短歌のレシピ』は、伝えたい思いを素材に見立て、それを生かす道具と調理法を身につけることを説く本で、投稿作品の添削を通して32の具体的な手法を紹介しています。目次は第1講から第16講まで、各講に二つずつの手法が並び、「擬音を生かそう」「だめ押しの一歩手前で止めよう」「倒置法を活用してみよう」「語順をよく確認して仕上げよう」「歌の並べ方を考えよう」などがあります。

  • 向く人:何首か作ってみて、自分の歌の直し方を知りたい人。一つの回が一つの手法なので、自分の課題に合う回から読めます。
  • 向かない人:まだ一首も作っていない人の一冊目。添削は、直す前の歌があって初めて役に立ちます。
  • 選ぶ前に:電子版もあります。目次の手法名を、自分の歌の困りごとと照らし合わせてから読むと、読みっぱなしになりにくくなります。

はじめての短歌(河出文庫)

『はじめての短歌』は、ビジネス文書のような社会の言葉と短歌の言葉の違いや、読者の共感を得る方法を扱う短歌入門です。成美堂出版から2014年に出た本の再刊です。

  • 向く人:音数はそろうのに「短歌らしくならない」と感じている人。手順より、短歌の言葉の考え方を知りたい人。
  • 向かない人:五七五七七の数え方や文法から順に学びたい人。
  • 選ぶ前に:章立ては、書店や試し読みで確かめてから選ぶと安心です。

短歌文法入門 改訂新版(飯塚書店)

『短歌文法入門 改訂新版』は、実作に必要な文語文法を短歌の制作に即して体系的に解説した本の改訂版で、引用歌を差し替え、図版を加えています。目次は「短歌の形式と語法」「品詞と活用形」「短歌の言葉」(季語、枕詞、かなづかい、音便など)の三部と、活用表などの付録です。

  • 向く人:文語で詠みたい人、口語の歌に「けり」「たり」などを混ぜて迷っている人。引いて確かめる使い方ができます。
  • 向かない人:口語だけで詠むと決めていて、文語を使う予定のない人。最初の一冊としては説明の範囲が広すぎるかもしれません。
  • 選ぶ前に:四六判264ページの文法書です。最初から通読するより、迷った語の活用を引く本として考えると使いやすくなります。

口語で始めるか、文語も学ぶか

短歌は、今の話し言葉(口語)でも、古典の言葉と文法(文語)でも詠まれます。どちらで詠むかによって、合う本が変わります。

自分の状態 合う本 気をつけること
口語だけで詠みたい 『かんたん短歌の作り方』『はじめての短歌』 口語の歌でも、助詞や語順の直し方は『短歌のレシピ』のような添削例が役立つ
文語で詠みたい、文語に挑戦したい 『短歌文法入門 改訂新版』 文法書は歌の作り方の本ではない。作り方の入門書と併用する
口語の歌に文語の語尾が混ざって迷う 文法書で活用を確かめ、どちらにそろえるかを決める 混ぜることを一律に誤りとは言えない。意図して混ぜているかを確かめる

今の言葉で作る短歌の入門書と、文語の文法や古典の技法から学ぶ伝統的な道筋は、どちらが正しいというものではありません。ただ、この先に結社や講座で続けて学ぶつもりなら、その場で多く詠まれているのが口語か文語かによって、手元に置く本も変わります。たとえば『短歌のレシピ』の目次には、「擬音を生かそう」「メールを使って恋をしよう」などの回と並んで、「枕詞をつかってみよう」「序詞をつかってみよう」という古典の技法の回もあります。

口語と文語の違いと、一首の中で言葉と文法をそろえる考え方は、短歌の口語と文語の違いで作例とともに扱っています。文語の文法を、添削を受けながら学びたい場合は、NHK学園の「短歌文法のツボ」のように、文法の問題と作歌課題を組み合わせた講座もあります(講座一覧)。

品切れの本の探し方と、無料で読める歌集

出版社で品切れになっている本も、図書館には残っていることがあります。購入だけを前提にせず、次の順に探します。

  1. 住んでいる地域の公共図書館の蔵書検索で、書名を検索する。なければ、取り寄せ(相互貸借)やリクエストができるかを窓口で尋ねる。
  2. 国立国会図書館サーチで書名を引き、版(単行本か文庫か)と刊行年を確かめる。同じ書名で別の版がある場合、どちらを探すかを決めておく。
  3. 古書店や古書の通販で探す。その場合も、版と刊行年が自分の探している本と同じかを確かめる。

歌集を読むことも、作る力の土台になります。著作権の保護期間が終わった近代の歌集は、青空文庫で無料で読めます。たとえば石川啄木の『一握の砂』(1910年、東雲堂書店)は青空文庫に新字旧仮名で収められています。一首ずつ読むだけでなく、どの歌がどの順に並んでいるかにも目を向けると、連作や歌集の並べ方を考える手がかりになります。現代の歌集は、図書館の詩歌の棚で探せます。

困りごと別に、最初の一冊を選ぶ

ここまでの比較を、困りごとから引ける形にまとめます。

困りごと 先に読む 一緒に使うと役立つもの
まだ一首も作っていない 『かんたん短歌の作り方』 無料の作り方記事で、一首目を先に作ってしまう
作ったが、短歌らしくならない 『はじめての短歌』 歌集を一冊、図書館で借りて読む
作ったが、どこを直せばいいか分からない 『短歌のレシピ』 自分の歌を一首選び、目次の手法を一つずつ当てる
他の人の歌から表現を学びたい 『一人で始める短歌入門』(品切れ。図書館で) 雑誌の投稿欄の入選歌と選評
文語の活用や仮名遣いに自信がない 『短歌文法入門 改訂新版』 作り方の入門書をもう一冊
本で直しても疑問が残る 本より、自分の歌への返答 添削や講座(選び方)

読んだことを、自分の一首に使う一週間

本は読むだけでは身につきにくく、読んだ回の内容を、その日のうちに自分の歌に当ててみるのが近道です。ここでは架空の一首を例に、一冊の本を一週間使う流れを示します。

作例・短歌一日目に作った一首(架空の例)

終電のあとの駅前くず籠へ缶を落とせば少しさみしい
句よみ音数
終電のしゅうでんの5音
あとの駅前あとのえきまえ7音
くず籠へくずかごへ5音
缶を落とせばかんをおとせば7音
少しさみしいすこしさみしい7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

日 すること 例の一首での作業
1日目 身近な一場面で一首作る 終電のあと、人の消えた駅前のくず籠に空き缶を捨てた場面で作った
2日目 本の目次から、自分の歌に関係しそうな回を一つ選んで読む 結句で気持ちを言っているので、「理屈を言わない」「読者に任せる」といった回を選ぶ
3日目 読みと音数を確かめる 読みをかなで書き、5・7・5・7・7を数える(かな入力の音数確認)
4日目 表現:読んだ回の考え方で、一か所だけ直す案を三つ作る 結句「少しさみしい」を、見えたもの・聞こえたものに替える案を三つ
5日目 口語と文語がそろっているかを確かめる 「落とせば」の読まれ方を確かめる(下の注を参照)
6日目 歌集や雑誌で、似た場面の歌を探して読む 夜の駅や町、音を詠んだ歌を探す
7日目 案を一つ選んで清書し、直した理由を一行書く 下の修正後の歌

一週間で直した一首

一日目

作例・短歌一日目

終電のあとの駅前くず籠へ缶を落とせば少しさみしい
句よみ音数
終電のしゅうでんの5音
あとの駅前あとのえきまえ7音
くず籠へくずかごへ5音
缶を落とせばかんをおとせば7音
少しさみしいすこしさみしい7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

七日目

作例・短歌七日目

終電のあとの駅前くず籠へ缶を落とせばすとからんと響く
句よみ音数
終電のしゅうでんの5音
あとの駅前あとのえきまえ7音
くず籠へくずかごへ5音
缶を落とせばすとかんをおとすと7音
からんと響くからんとひびく7音

合計31音(5・7・5・7・7)/短歌の基準どおり

変更の理由

  • 結句の「少しさみしい」を、缶がくず籠の底で立てた音に替えました。気持ちの名前を言わず、小さな音が響くほど人のいない夜の駅前の静けさを、音で読者に渡しています。
  • 「落とせば」は、口語では「もし落としたら」の意味に読まれやすく、文語では「落としたところ」の意味になります。作者が言いたいのは実際に落としたときのことなので、口語でそろえて「落とすと」にしました。文語で詠む歌なら「落とせば」のままでよく、その場合はほかの句も文語にそろえます。
  • 気持ちを結句で言い切る形が合う歌もあります。直すかどうかは、上の句までで場面と気持ちがどれだけ伝わっているかで決めます。

この一週間で使ったのは、本の一回分だけです。一冊を最初から最後まで読み通すより、一回読んだら一首直すを繰り返すほうが、読んだことが自分の歌に残りやすくなります。一首全体の直し方の順番は、短歌の推敲のやり方で扱っています。

雑誌と歌集で、学びを続ける

入門書を一冊読み終えたあとは、雑誌と歌集が学びの続きになります。

短歌の総合誌には、新しい歌や評論、特集のほか、読者の投稿欄が載っています。たとえば短歌研究社の『短歌研究』では、読者投稿欄「短歌研究詠草」に電子版からも投稿できると、出版社のサイトで案内されています。雑誌は高く感じたら、図書館の雑誌棚で読めることもあります。

雑誌を学びに使うなら、次のように読むと、入門書の内容と結び付きます。

  • 投稿欄の入選歌と選評を読む:選者がどの言葉を評価しているかを、入門書で読んだ手法の名前に当てはめてみます。自分の歌への返答ではありませんが、「選ばれる歌」の傾向が見えてきます。
  • 特集から一つだけ持ち帰る:特集を全部読もうとせず、自分の次の一首に使える考え方を一つメモします。
  • 気になった歌を自分のノートに書き写す:書き写して、読みと音数、句切れ、助詞を確かめます。書き写した歌は自分の学習用にとどめ、SNSなどに公開する場合は引用のルールに従います。

テレビの「NHK短歌」には番組と連動したテキストもあり、番組ページから案内されています。

歌集は、一人の歌人の歌がまとまって読める本です。入門書では一首ずつ切り取られている歌も、歌集の中では前後の歌と並んで、時間や気持ちの流れを作っています。何首かを並べて連作を作りたくなったら、短歌の連作の作り方が次の手順になります。

本だけでは足りない場面

本は、自分の歌に直接答えてはくれません。次のような場面では、本より別の方法が向いています。

  • 自分の歌のどこが伝わっていないか知りたい:歌会で、複数の人の読みを聞く。
  • 本の手法を当てても、直し方が決まらない:一首を添削に出す。添削を頼む前の準備と頼み先の比べ方は短歌の添削はどこに頼む?で扱っています。
  • 人に読んでもらいたい、選ばれてみたい:新聞や雑誌の歌壇に送る。送る前の確認は短歌の投稿先の選び方にまとめています。

俳句の本も合わせて探している場合は、俳句の入門書と歳時記で同じように目的別に比べています。

目的に合う一冊を選ぶ

ここまでの表で、自分の困りごとに合う一冊が決まったら、出版社のページで目次と版を確かめてから選んでください。品切れの『一人で始める短歌入門』は、図書館で探すのが近道です。