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小説

小説を最後まで書けないときの進め方|詰まる原因を分けて完成させる

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この記事の答え

初稿が止まったら、まず止まった場所と、次に書くはずだったことを書き出します。原因は次の四つのどれかに分けると、次にする作業が決まります。

  • 次の出来事が決まっていない(構成不足)なら、結末を仮に置き、残りの場面を一行ずつ箇条書きでつなぐ
  • 予定より長くなっている(分量過大)なら、書いた部分は今は削らず、残りの場面に字数を配り直す
  • 冒頭を直し続けている(修正癖)なら、直したい点をメモに移して冒頭を閉じ、新しい場面を書く。時間が足りない(時間不足)なら、一回の量を減らし、次に書く一文を残して終える
目次

書き始めた小説が途中で止まり、気づくと冒頭ばかり書き直している。そうなったとき、やる気や才能の問題として片付けると、次に何をすればよいかが決まりません。この記事では、止まる原因を、次の出来事が決まっていない、長くなりすぎた、直すことに時間を使っている、書く時間が細切れになっている、の四つに分けて考えます。止まった原稿の例を四つ使い、原因の見分け方と、次の一時間でする作業、一週間の小さな進行例を示します。読み終えたら、今日書く箇所と、後へ回す修正を決められます。

止まった場所を書き出す

原因を考える前に、原稿がどこで止まっているかを書き出します。頭の中で「どこかで行き詰まった」と思っているだけだと、原因と関係のない冒頭を直し始めてしまいます。

ひな形止まった場所のメモ(コピーして使えます)

予定の長さ:
書いた字数:
止まっている場面(何場面目/何章目):
最後に書いた一文:
次に書くはずだったこと(分かる/分からない):
最近の作業(書いた日・直した日・書かなかった日):

字数は、Word なら文書を開いたままステータスバーで確認できます。数えたい範囲を選択すると選択部分の数が表示され、ステータスバーの文字カウントをクリックすると文字数・段落数・行数を確認できます。場面ごとに字数を知りたいときは、その場面だけを選択して数えます。ほかのアプリで書いている場合は、文字数・段落数カウンターに貼り付けて数えられます。

メモが書けたら、次の四つの問いに上から答えます。最初に「はい」になったものが、いま手を付ける原因です。

問い はいの場合 原因
次に起きる出来事を、一行で言えないか 次の場面に何を書けばよいか分からない A 構成不足
残りの場面を同じ密度で書くと、予定の長さを大きく超えそうか 終わりが見えない B 分量過大
最近の作業時間のうち、新しい文を書いた時間より、書いた文を直した時間のほうが長いか 冒頭や前の章ばかり手を入れている C 修正癖
書く日が週に一日以下か、前回から一週間以上空いているか 書くたびに読み返しに時間を取られる D 時間不足

二つ以上当てはまる場合も、上から順に手を付けます。次の出来事が決まっていないのに時間を増やしても、増えた時間は読み返しと手直しに消えるからです。

原因ごとに、次の一時間でする作業を決める

四つの原因それぞれについて、止まった原稿の例と、次の一時間の使い方を示します。どの例も、この記事のために作った架空の原稿です。

A 構成不足:次の出来事が決まっていない

作例止まった原稿の例A

予定8,000字の短編。転校した高校で写真部に入った湊(みなと)の話。転校初日、部室、先輩の澄川にカメラを渡される場面まで、三場面・2,400字を書いた。その先に何が起きるのか決まっていない。

時間 作業 終わったときに手元にあるもの
0〜15分 結末を三案書き、一つを仮に選ぶ 仮の結末が一行
15〜35分 今いる場面から仮の結末まで、残りの場面を一行ずつ箇条書きでつなぐ 残りの場面の一覧
35〜60分 一覧の次の一行(場面4)の書き出しを300字ほど書く 新しい本文

後へ回すこと:書いた三場面の手直し、結末の最終決定。

結末の仮置きと箇条書きのつなぎ方は、次の見出しで詳しく見ます。

B 分量過大:予定より長くなり、終わりが見えない

作例止まった原稿の例B

予定1万字の短編。家族で祖母の故郷を訪ねる二泊三日の話。7,000字書いたが、まだ一日目の夜。このまま二日目と三日目を書くと、2万字を超えそうで、手が止まった。

時間 作業 終わったときに手元にあるもの
0〜10分 書いた場面ごとの字数を数え、残りの場面を書き出す 場面ごとの字数の一覧
10〜30分 下の三つの選び方から一つを決め、残りの場面に字数を割り当て直す 残りの場面の字数予算
30〜60分 次の場面を、割り当てた字数の中で書く 新しい本文

後へ回すこと:書いた7,000字を削ること。削るのは初稿を終えてからにします。いま一日目を削り始めると、二日目にたどり着く前に同じ場面を何度も直すことになります。

選び方 やること 合う場合
予定の長さを変える 2万字前後の作品として書き切る 長さを自分で決めていて、提出先の上限がない
残りの出来事をまとめる 二日目と三日目を「祖母の生家の跡」と「帰りの駅」の二場面にして、残り3,000字に収める 提出先に上限がある。結末に必要な出来事が少ない
書いた部分は改稿で削る前提で進む 残りは書きたい密度で書き、初稿のあとで一日目を半分に縮める 一日目に、あとで要らなくなる説明が多いと分かっている

人物や出来事が多すぎて長くなっている場合は、短編小説の書き方で、中心の変化に照らして場面を絞る方法を扱っています。

C 修正癖:冒頭ばかり直して先へ進まない

作例止まった原稿の例C

冒頭の1,500字を五回書き直した。書き出しの一文が決まらず、毎回そこから読み直している。場面のメモは結末まであるが、二場面目に入れていない。

時間 作業 終わったときに手元にあるもの
0〜5分 冒頭の今の版を「冒頭_初稿」として別に保存し、閉じる 開かない冒頭
5〜15分 冒頭について直したい点を、修正メモに書き出す(直さない) 修正メモ
15〜20分 冒頭の最後の三行だけ読む 書き始める位置
20〜60分 二場面目を書く。言い換えたくなった語には印だけ付けて先へ進む 新しい本文

後へ回すこと:書き出しの一文。初稿を最後まで書くと、結末に合う書き出しが見えてくることがあるので、決めるのは最後で足ります。

D 時間不足:間が空いて、続きが書けない

作例止まった原稿の例D

長編。章ごとの予定表はある。平日は帰りが遅く書けず、土曜に二時間取っても、前回の章を読み返すだけで一時間かかる。この三週間で進んだのは800字。

時間 作業 終わったときに手元にあるもの
0〜10分 章の予定表の今の章と、前回の最後の段落だけ読む 書き始める位置
10〜50分 書く。前回の内容を確かめたくなっても、読み返さずに【確認】と印を付ける 新しい本文
50〜60分 次に書く一文と、次の場面で起きることを一行ずつメモして終える 次回の書き出し

後へ回すこと:前の章の読み返しと手直し。

時間不足の場合、一回の時間を延ばすより、書く日の間隔を縮めるほうが効きます。平日に15分だけの日を週に二日作り、その日は前回のメモの一文から100〜200字書くか、次の場面のメモに一行足すだけにします。間隔が短いと、次に書き始めるときの読み返しが短くて済みます。長編の章の予定表そのものを作り直したい場合は、長編小説の書き方の章カードが使えます。

結末を仮に置き、残りの場面を箇条書きでつなぐ

構成不足(A)で止まった原稿は、まず結末が決まっているかを確かめます。結末は、書き始める前に決めていなくても、止まった時点で仮に置けば十分です。行き先が一つあると、今いる場面から何をつなげばよいかが見えます。

例Aの結末を、三案書いてみます。

結末の案 湊に起きる変化 判断
文化祭の展示に、自分の写真を一枚だけ出す 撮る物を自分で選べるようになる 仮に選ぶ。カメラを渡された場面からつながる
写真部をやめ、カメラを澄川に返す 居場所は別にあると気づく 予備として残す
前の学校の友人に、撮った写真を送る 前の町との関係が変わる 写真部の場面とつながりにくい

仮に選んだら、今いる場面から結末まで、一行一場面で箇条書きにします。各行には「何が起きるか」と「主人公が何をするか」を入れます。

作例例A 残りの場面のつなぎ案

・場面3(書いた):先輩の澄川にカメラを渡される
・場面4:初めての撮影会。湊は何を撮ればいいか分からず、一枚も撮らずに帰る。澄川に「毎日見ている物を撮れ」と言われる
・場面5:湊は毎朝、通学路の踏切を撮り始める。前の町の踏切とは、遮断機の音が違う
・場面6:文化祭の前日、写真を一枚に選べない。澄川が去年の展示に一枚も出さなかったと知る
・場面7(仮の結末):展示の壁に、踏切の写真を一枚だけ貼る。隣には、澄川の分の空いた場所がある

箇条書きは、そのとおりに書くための設計図ではなく、先へ進むための仮の道です。書いている途中で場面6が要らなくなったり、別の結末のほうがよいと分かったりしたら、箇条書きを書き換えます。本文は直さず、書き換えた箇条書きに沿って先へ進みます。結末の決め方や最後の場面の選び方をもっと詰めたいときは、小説の終わり方で、同じ物語の結末を複数の案で比べる方法を扱っています。

書ける場面から書き、つなぎの印を残す

次の場面がどうしても書けないのに、もっと先の場面(山場や結末)は書けそうだ、ということがあります。その場合は、書ける場面から書いてかまいません。初稿は、最初から順に書く必要はありません。

ただし、飛ばした箇所には、あとで埋める内容を一行で残します。

【つなぎ:場面5 湊が毎朝の踏切を撮り始める。約900字。前の町の踏切の音を思い出す】

印に字数の目安を書いておくと、あとで埋めるときに場面の大きさを迷いません。書ける場面から書くときは、次の三つを守ります。

  • 先の場面を書いたら、残りの場面の一覧に「済」と印を付け、飛ばした場面には【つなぎ】の行を置く
  • 先の場面を二つ書いたら、次は飛ばした場面に戻る。楽な場面だけを書き続けると、最後に難しいつなぎだけが大量に残る
  • 飛ばした場面に戻るときは、その前後の場面の最初と最後の数行だけ読む

結末の場面を先に書くと、つなぎの場面で何を準備すればよいかがはっきりすることもあります。例Aなら、場面7の「澄川の分の空いた場所」を先に書いておくと、場面6で「去年一枚も出さなかった」ことをどのくらいはっきり書けばよいかが決めやすくなります。

初稿中の修正を、メモと時間で区切る

修正癖(C)の人にとって難しいのは、直したい箇所が見えているのに直さないことです。我慢で抑えようとするより、直したい気持ちの行き先を用意します。

ひな形修正メモ(本文とは別のファイルに)

場所(場面・段落):
直したいこと:
思いついた案(あれば):

記入例はこうなります。

作例修正メモの記入例

場面1・一文目:「春だった」を、駅の場面から始める形にするか検討
場面1・二段落目:母の説明が長い。場面3の会話に移せるか
全体:湊の口調が、場面2から少し丁寧になっている

修正メモに書いた時点で、その箇所は「忘れない」状態になります。直すのは初稿を最後まで書いてからで足ります。そのうえで、修正に使う時間にも区切りを付けます。

決めること 例
修正メモを見てよい時間 週末に15分だけ。読み返して並べ替えるだけで、本文は直さない
初稿中でも直してよい箇所 続きが書けなくなる誤りだけ(人物の名前や関係を取り違えていて、次の場面が書けない場合など)
一回の作業で前の文を読む量 前回の最後の三行
修正を始める日 初稿の最後の一文を書いた翌日以降

書いた文を読むと直したくなるのは、書き手として自然なことです。読む量を決め、直したいことの行き先を決めておけば、直す時間を新しい文に回せます。初稿を書き終えてから修正メモを使って直す順番は、小説の推敲・改稿のやり方で扱っています。

残りの字数と日数から、作業量を調整する

分量過大(B)や時間不足(D)で止まっている場合、締切までの作業量を数字で確かめると、何を変えればよいかが見えます。次の例の数字は、すべて仮定です。

作例計算の例(仮定)

予定1万字の短編。書いた字数4,200字、残り5,800字。
締切まで14日。推敲と提出前の確認に最後の4日を残すので、初稿に使えるのは10日。
そのうち仕事の都合で3日は書けないので、書ける日は7日。
5,800字 ÷ 7日 ≒ 1日830字。
30分で300字ほど書けるとすると、1日に80分以上必要になる。

平日に30分しか取れないなら、この計画は成り立ちません。そのときは、次のどれかを選びます。

選び方 計算 注意
残りの場面をまとめて、残りを4,500字にする 4,500字 ÷ 7日 ≒ 1日640字 どの場面をまとめるかを先に決める
締切が自分で決めたものなら、延ばす 書ける日を10日にすると、5,800字 ÷ 10日 = 1日580字 延ばした締切も、推敲の日を含めて決め直す
推敲の日を減らす 推敲を2日にすると、書ける日が9日になり、1日650字ほど 推敲の日を削るのは最後の手段。提出前の確認の日は残す

一日に書ける量は人によっても、日によっても違います。自分の量が分からない場合は、三回分の作業で書けた字数を記録して、その平均を仮の数字にします。締切と休みを入れて日ごとの目安を出すときは締切からの執筆計画が使えます。推敲や提出確認の日も含めた計画の立て方は、小説の執筆計画の立て方で扱っています。

体調や生活の事情で書けない週があるのは、計画の失敗ではありません。書けなかった日は、残りの日数に入れずに計算し直します。

一週間の小さな進行例

例Aの原稿(予定8,000字、2,400字まで書いた、残り5,600字)で、一週間の進め方を組んだ例です。平日は30分で約300字、休日は90分で約900字書けると仮定しています。

曜日 時間 作業 書く字数
月 30分 結末の仮置きと、残りの場面の箇条書き(本文は書かない) 0字
火 30分 場面4の前半 300字
水 30分 場面4の後半。終わりに次に書く一文をメモ 300字
木 休み — 0字
金 30分 場面5の前半 300字
土 90分 書ける場面から:結末の場面7を先に書く 900字
日 90分 場面5の後半と、場面6の前半 900字
合計 2,700字

この仮定どおりに進めば、一週間で残りは2,900字になり、もう一週間ほどで初稿の最後の一文までたどり着く見込みです。計画どおりに進まない週があっても、月曜のように「書かずに設計だけする日」を挟めば、次の週の最初に何を書くかが決まった状態で始められます。

今日書く箇所と、後へ回す修正を決める

最後に、今日の作業を始める前の確認表です。全部に答えられたら、あとは決めた箇所を書くだけです。

確認表今日の作業を始める前の確認表

  • 止まった場所のメモ(場面・字数・最後の一文)を書いた
  • 原因をA〜Dのどれか一つに決めた(重なる場合は、Aから順に手を付ける)
  • 仮の結末が一行ある
  • 今日書く場面を一つ決めた(書ける場面から書く場合は、飛ばす箇所に【つなぎ】の行を置いた)
  • 今日は直さないことを、修正メモに移した
  • 前の文を読むのは、最後の三行だけにすると決めた
  • 作業の終わりに、次に書く一文を残す

初稿は、最後の一文まで書いて初めて、どこを直せばよいかが分かる原稿です。今日書く箇所が決まったら、修正メモは閉じて、その一行目から書き始めてください。