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俳句

冬の俳句の作り方|冬の季語と身近な動作を一句にまとめる

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この記事の答え

冬の句は「寒い」と書く代わりに、寒さのせいで手や体がどう動いたかを一つ選び、季語は一つに絞ると景が見えます。

  • 俳句の冬は立冬(11月8日ごろ)から立春の前日(2月3日ごろ)まで。正月の行事や暮らし(年賀状・初詣・雑煮)は冬ではなく「新年」の季語として別に扱う
  • 寒し・冷たし・息白し・冬の朝はどれも冬の季語なので、ほかの季語と並べない。家の中の「暖かい」は春の季語「暖か」と重なる
  • 句ができたら、観察メモを伏せて句だけを読み、「どこで・誰が・何をしたか」が分かるかを点検する
目次

冬の句を作ると、「寒い」「冷たい」「白い息」が続き、何句作っても同じ寒さの話になる。題材が尽きたと感じたら、寒さそのものではなく、寒さのせいで手や体がいつもと違う動きをした瞬間を探してみてください。この記事では、冬と新年の季語の区分を確かめたうえで、架空の観察メモから室内・屋外・玄関の三つの場面を選び、説明的な初稿を、動作が見える一句に直すまでを見せます。

冬と新年は、歳時記では別の季節

NPO法人季語と歳時記の会が公開している「きごさい歳時記」の「冬」の項では、冬を立冬(11月8日ごろ)から立春の前日(2月3日ごろ)までとし、新暦ではだいたい十二月・一月・二月にあたると説明しています。「冬の季語」の一覧は、これを三つに分けています。

区分 二十四節気での範囲 新暦の目安 季語の例(きごさい歳時記の区分)
初冬 立冬から大雪の前日まで 11月8日ごろ〜12月6日ごろ 小春
仲冬 大雪から小寒の前日まで 12月7日ごろ〜1月4日ごろ 冬至、柚子湯、冬日和
晩冬 小寒から立春の前日まで 1月5日ごろ〜2月3日ごろ 寒の内、大寒、悴む
三冬 冬の全体 11月8日ごろ〜2月3日ごろ 寒し、冷たし、息白し、湯婆、襟巻、冬日

日付は、同じ歳時記の大雪(12月7日ごろ)・小寒(1月5日ごろ、寒の入り)などの項にある目安で、年によって一日ほど前後します。

正月の言葉は「新年」、年末と一月の寒さは「冬」

暦の上では一月も冬のうちですが、正月の行事や暮らしの言葉は、四季とは別の新年の季語としてまとめられています。きごさい歳時記の「暮・新年の季語」一覧では、年末の季語を「暮」、正月の季語を「新年」として分けて並べています。「新年」の項では、新年は一月、正月とほぼ重なると説明されています。

時期 言葉の例 置かれている季節(きごさい歳時記)
十二月の末(年末の準備) 年の暮、大晦日、賀状書く、年用意、煤払 暮の季語。十二月末の言葉なので、冬の時期にあたる
元日から正月の間 元日、初日、初詣、雑煮、書初、年賀状、初春 新年
一月の寒さ 寒の内、大寒、悴む 冬(晩冬)

同じ一月でも、初詣や雑煮のような正月の行事・暮らしを書けば新年の句に、手がかじかむ朝や寒の内の厳しさのような冬の寒さを書けば冬の句になります。年賀状に使う「初春」「新春」も、きごさい歳時記では「初春(はつはる)」の傍題として新年に置かれ、春の季語ではありません(春の季語の範囲は春の俳句の作り方で確かめています)。

年末の句に「年賀状」を使うと、新年の句になる

冬と新年の取り違えは、一語で起きます。十二月二十八日の夜、年賀状を書いていて残りが十枚になった、という場面で比べます。

新年の季語で書いた年末の句を、年末の季語に直す

「年賀状」で書いた初稿

作例・俳句初稿:年賀状

年賀状あと十枚の夜更けかな
句よみ音数
年賀状ねんがじょう5音
あと十枚のあとじゅうまいの7音
夜更けかなよふけかな5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

「賀状書く」に替えた句

作例・俳句修正:賀状書く

賀状書くあと十枚の夜更けかな
句よみ音数
賀状書くがじょうかく5音
あと十枚のあとじゅうまいの7音
夜更けかなよふけかな5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※季語:賀状書く(年末・暮の季語)

変更の理由

  • きごさい歳時記では、「年賀状」は新年の季語で、傍題に「賀状」があります。「賀状書く」は年末に年賀状を書くことを言う季語で、解説に「単に賀状では新年の季語となる」と書かれています。
  • 初稿は新年の句として読まれるので、「あと十枚」が、届いた年賀状を正月の夜に読んでいる場面にも取れてしまいます。書いている作者の手元と、読む人の頭に浮かぶ景がずれる例です。
  • 修正では季語だけを替えました。年末の夜更けに、まだ書き終わらない机の上が見えます。

「寒い」「冷たい」は、それだけで冬の季語

冬の句で題材が尽きる原因の一つは、寒さを表す言葉の多くが、それだけで冬の季語になっていることです。きごさい歳時記で確かめると、次のようになります。

よく使う言葉 季語としての扱い(きごさい歳時記) 句の中で起きること
寒い 「寒し」三冬の季語(寒さは傍題) ほかの季語と並ぶと季語が二つになる
冷たい 「冷たし」三冬の季語 同上
白い息 「息白し」三冬の季語 同上
冬の朝・冬の夜 「冬の朝」三冬などの季語 同上。時間を言うだけで景は増えない
暖かい 「暖か」三春の季語 冬の部屋の暖かさを書いたつもりが、春の句として読まれる

季語は一つに絞り、残りの十二音からは寒さ・暖かさを表す言葉を外します。そこで空いた音を使って、寒さのせいで人や物がどう動いたかを書きます。季語が二つ入ってしまった句の見直し方は俳句の季重なりとは?で扱っています。

手・衣服・道具・境目を観察する

冬の動作は、体のどこか、身につける物、使う道具に表れます。そして、外の寒さと家の中の暖かさが入れ替わる境目(玄関、窓、ドア)では、一瞬で体が反応します。

観察の対象 見つけ方の問い 季語の例(きごさい歳時記)
手 指はいつもどおり動いたか。何を落とし、何をつかみ損ねたか 悴む(晩冬)、皸・霜焼(晩冬)
衣服 何を着たまま、何を脱がずにしたか 襟巻(傍題にマフラー)・手袋・外套(三冬)
道具 冬にだけ使う物を、使ったあとどうしたか 湯婆(傍題に湯たんぽ)・炬燵・ストーブ(三冬)
境目 玄関や窓で、体や持ち物に何が起きたか 隙間風・障子(三冬)
光・静けさ 日差しは部屋のどこまで届いたか。いつもより大きく聞こえた音は 冬日(三冬、傍題に冬日向・冬日差)

架空の観察メモ

十二月から一月にかけて書いた、という設定のメモです。

作例観察メモ(架空・十二月〜一月)

[室内・一月の朝]枕元の湯たんぽが、まだぬるい。捨てずに洗面器にあけて、その湯で顔を洗った。
[屋外・一月中旬の朝・バス停]自販機に入れようとした十円玉を落とした。指先が思うように動かない。拾うのにも二度かかった。
[境目・夜・玄関]帰ってドアを開けたとたん、眼鏡が真っ白に曇った。マフラーも外さないまま、玄関でハンカチを出して拭いた。
感想:寒い。手が冷たい。家の中は暖かくてほっとする。

三つの場面の季語を、きごさい歳時記で確かめます。

季語 区分・分類 解説の要点 メモとの合い方
湯婆(たんぽ) 三冬・生活 熱湯を入れて布で包み、寝床や手足を温める道具。傍題に湯たんぽ 枕元の湯たんぽ
悴む(かじかむ) 晩冬・生活 寒さで手足が思うように動かなくなる状態 一月中旬(晩冬)、十円玉を落とす指
襟巻(えりまき) 三冬・生活 冬、首に巻いて寒さを防ぐもの。傍題に首巻、マフラー 外さないままのマフラー

室内:道具を「使い終えたあと」まで見る

一つ目は、湯たんぽの朝です。

寒さと結果を説明した初稿から、道具のその後を書いた句へ

説明的な初稿

作例・俳句初稿:ぬるい湯

寒い朝湯たんぽの湯はぬるくなり
句よみ音数
寒い朝さむいあさ5音
湯たんぽの湯はゆたんぽのゆは7音
ぬるくなりぬるくなり5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

湯の使い道を書いた句

作例・俳句作例1:湯たんぽ(室内)

湯たんぽの残りの湯にて顔洗う
句よみ音数
湯たんぽのゆたんぽの5音
残りの湯にてのこりのゆにて7音
顔洗うかおあらう5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※季語:湯婆(三冬)の傍題「湯たんぽ」

変更の理由

  • 初稿には「寒い(寒し)」と「湯たんぽ(湯婆)」の二つの季語があります。「ぬるくなり」も、湯たんぽなら朝には誰のものでもそうなる、という説明です。
  • 修正後は「寒い」を外し、季語を湯たんぽ一つにしました。空いた音で、メモにある「その湯で顔を洗った」という動作を書いています。
  • 寒いとは書いていませんが、水道の水が冷たい朝であること、ぬるい湯でもありがたく使う暮らしぶりが伝わります。

屋外:手の動きを、落とした物で見せる

二つ目は、一月中旬の朝のバス停です。

季語の説明になった初稿から、指先の失敗を書いた句へ

説明的な初稿

作例・俳句初稿:指が動かぬ

冷たくて指が動かぬ冬の朝
句よみ音数
冷たくてつめたくて5音
指が動かぬゆびがうごかぬ7音
冬の朝ふゆのあさ5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

落とした硬貨を書いた句

作例・俳句作例2:十円玉(屋外)

悴みて十円玉を落としけり
句よみ音数
悴みてかじかみて5音
十円玉をじゅうえんだまを7音
落としけりおとしけり5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※季語:悴む(晩冬)

変更の理由

  • 初稿は「冷たくて(冷たし)」と「冬の朝」の二つの季語を持ち、「指が動かぬ」は寒さで手足が動かなくなるという「悴む」の意味そのものです。季語を探せば一語で言えることを、十七音かけて説明しています。
  • 修正後は、季語を「悴む」一つにして、意味の説明を外しました。代わりに、十円玉を落とすという失敗を書いています。小さな硬貨を落とすほど指が動かないこと、硬貨が地面に当たる小さな音まで聞こえる朝の静けさを、読む人が補います。
  • 「冬の朝」から「悴む」へ季語を替えたのは、時間より手の状態を句の中心にしたかったからです。悴むは晩冬の季語なので、場面の一月中旬とも合います。
  • 「けり」は、気づいたことを言い切って句を終える切れ字です。「落とす音」と結ぶ案も考えられます。切れ字の使い分けは俳句の切れ字の使い方で比べています。

境目:玄関の一瞬で、外と内の温度差を見せる

三つ目は、帰宅した玄関の場面です。最初に作った句には、季語・動作・音数の三つに直す点がありました。

季語のない字余りの初稿から、境目の動作を書いた句へ

説明的な初稿

作例・俳句初稿:眼鏡曇る

暖かい部屋に入ると眼鏡曇る
句よみ音数
暖かいあたたかい5音
部屋に入るとへやにはいると7音
眼鏡曇るめがねくもる6音字余り(基準5音)

合計18音(5・7・6)/基準は5・7・5

眼鏡を拭く動作を書いた句

作例・俳句作例3:マフラー(境目)

マフラーのまま眼鏡拭く玄関で
句よみ音数
マフラーのまふらーの5音
まま眼鏡拭くままめがねふく7音
玄関でげんかんで5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※季語:襟巻(三冬)の傍題「マフラー」

変更の理由

  • 初稿には冬の季語がありません。そのうえ「暖かい」は、きごさい歳時記では春の季語「暖か」と重なるので、句が春の部屋として読まれるおそれがあります。下五の「眼鏡曇る」は六音で、一音はみ出しています。
  • 修正後は、季語に「マフラー」(襟巻の傍題)を入れ、動作を「曇る」から「拭く」に替えました。外から帰ってマフラーも外さないうちに、玄関で眼鏡を拭いている人の姿から、眼鏡が曇ったこと、外が寒く家の中が暖かいことが、すべて伝わります。
  • 下五を「玄関で」の五音にし、場所を最後に置きました。「眼鏡曇る」という結果を言わずに拭く動作だけを書くと、なぜ拭いているのかを読む人が考える余地が生まれます。
  • 字余りは一律の誤りではなく、残したほうが良い場合もあります。この初稿では、季語を入れて動作を替える直しの中で、自然に五音に収まりました。直す場合と残す場合の判断は俳句の字余り・字足らずで比べています。

三句で変えたことの記録

三つの直しで、何をなぜ変えたかをまとめます。

句 季語の変更 動作の変更 音数
湯たんぽの残りの湯にて顔洗う 寒し+湯婆の二つ → 湯婆(湯たんぽ)一つ 「ぬるくなる」(物の変化)→「顔洗う」(人の動作) 5・7・5 のまま
悴みて十円玉を落としけり 冷たし+冬の朝 → 悴む(晩冬)一つ 「指が動かぬ」(季語の意味)→「落とす」(失敗の一瞬) 5・7・5 のまま
マフラーのまま眼鏡拭く玄関で なし(暖かい=春と重なる)→ 襟巻の傍題マフラー 「曇る」(結果)→「拭く」(動作) 5・7・6 → 5・7・5

読みをかなで入力して音数を確かめたいときはかな入力の音数確認が使えます。

読む人に景が伝わるか点検する

句ができたら、観察メモを伏せて、句だけを読み直します。自分はメモの内容を覚えているので、句に書いていないことまで補って読んでしまいます。次の四つの問いに、句の言葉だけで答えられるかを確かめます。

問い 作例1 湯たんぽ 作例2 十円玉 作例3 マフラー
どこで 洗面所(顔を洗う場所) 屋外(書いていないが、悴む手で硬貨を扱う場所) 玄関
いつごろ 冬の朝(湯たんぽの残りの湯) 冬(晩冬) 冬の帰宅時
誰が何をしたか 湯たんぽの湯で顔を洗った 十円玉を落とした マフラーのまま眼鏡を拭いた
読む人に任せていること 水道の水の冷たさ、暮らしぶり 指先の動かなさ、朝の静けさ 眼鏡の曇り、外と内の温度差

四つ目の「任せていること」が、句の余韻になる部分です。ここが空欄になる句は、すべてを説明していて、読む人の考える余地がありません。反対に、一つ目から三つ目の問いに答えられない句は、読む人に景が渡っていません。作例2では「どこで」が句の言葉だけでははっきりしませんが、硬貨を落とす一瞬が見えれば足りると考え、場所の言葉は足していません。自販機やバス停を入れたい場合は、ほかの言葉を削って音を作ることになります。

確認表冬の句の見直し

  • 季語は一つか。寒し・冷たし・息白し・冬の朝を、ほかの季語と並べていないか
  • 家の中の暖かさを「暖かい」と書いていないか(春の季語「暖か」と重なる)
  • 正月の行事・暮らしの言葉(年賀状、初詣、雑煮、初春)を、冬の場面に使っていないか。年末なら「賀状書く」など暮の季語を探したか
  • 季語の意味(悴む=手が動かない、など)を十二音で言い直していないか
  • 結果(曇る、ぬるくなる)ではなく、人の動作(拭く、洗う、落とす)を書いたか
  • メモを伏せて句だけを読み、どこで・いつ・誰が何をしたかが分かるか
  • 読みをかなで書き、五・七・五を数えたか

季語と動作がそろったあと、助詞や語順まで順に見直したいときは俳句の推敲のやり方の手順が使えます。

練習冬の動作を三つ集めて一句にする(20分)

  1. 今日の生活の中で、寒さのせいでいつもと違う動きをした瞬間を三つ書きます。室内・屋外・境目(玄関や窓)から一つずつ選ぶと、題材が偏りません。
  2. それぞれに「何を落とした・何を外さなかった・何を使った」という形で、物の名前を入れます。
  3. 一つを選び、季語を歳時記で引いて、冬か新年か、冬のどの区分かを確かめます。
  4. 寒さ・暖かさを表す言葉を外し、動作を十二音にして季語と合わせます。
  5. メモを伏せ、四つの問いの表で句を点検します。

冬と新年の季語を手元で引くなら

この記事の季語は、無料で引けるきごさい歳時記で確かめました。季節別の文庫を使う場合、『俳句歳時記 第五版』(角川ソフィア文庫)は、冬と新年が別の巻です。冬の巻には時候から冬の行事・忌日、「使ってみたい季語の傍題」「読めますか 冬の季語」、索引が並び、新年の巻には全五巻の総索引が付きます。冬の巻だけでは、年賀状や初詣のような新年の言葉は引けません。

年末から正月にかけての句をよく作るなら、『今はじめる人のための俳句歳時記 第三版』(角川ソフィア文庫)のように、冬と新年を一冊で引き比べられる歳時記が便利です。悴む(かじかむ)、湯婆(たんぽ)、皸(あかぎれ)のように、冬の季語には読みにくい漢字も多くあります。歳時記の種類ごとの違いは俳句の入門書と歳時記で比べています。