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俳句

春の俳句の作り方|春の季語と小さな変化を一句にする

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この記事の答え

春の句は、春らしい言葉を集めるより、この春に目の前で変わった一つのものを選ぶと似なくなります。

  • 俳句の春は立春(2月4日ごろ)から立夏の前日(5月5日ごろ)まで。立春後の2月の寒さは春の季語で詠み、年賀状の「初春」は新年の季語
  • 花が開いた・日が延びた・芽が出たなど、先週や今朝と違うものを一つ選び、その季語を歳時記で確かめる
  • 季語が言っていること(日が長い、春が来た)や「うれしい」は残りの十二音で繰り返さず、見た物と動作に置き換える
目次

春の句を作ると、桜、春風、うららか、と似た言葉ばかりが並び、去年の句と見分けがつかなくなる。そんなときは、季語を選ぶ前に「この春、目の前で何が変わったか」を一つ決めてみてください。この記事では、俳句の春がいつからいつまでかを確かめたうえで、架空の観察メモから花・光・芽の三つの変化を選び、季語を歳時記で確かめて一句にするまでを見せます。

俳句の春は「立春から立夏の前日まで」

最初に、俳句でいう春の範囲を確かめておきます。NPO法人季語と歳時記の会が公開している「きごさい歳時記」の「春」の項では、春を立春(2月4日ごろ)から立夏(5月6日ごろ)の前日までとしています。旧暦では一月・二月・三月が春にあたります。

春はさらに三つに分けられます。きごさい歳時記の「春の季語」の一覧は、次の区分で季語を並べています。日付は、同じ歳時記の立春・啓蟄・清明の項にある「ごろ」の目安で、年によって一日ほど前後します。

区分 二十四節気での範囲 新暦の目安 季語の例(きごさい歳時記の区分)
初春 立春から啓蟄の前日まで 2月4日ごろ〜3月5日ごろ 余寒、春寒、冴返る
仲春 啓蟄から清明の前日まで 3月6日ごろ〜4月4日ごろ ものの芽、草の芽、蒲公英
晩春 清明から立夏の前日まで 4月5日ごろ〜5月5日ごろ チューリップ、桜、花冷え
三春 春の全体 2月4日ごろ〜5月5日ごろ 日永、木の芽、風光る、麗か

暮らしの春と、歳時記の春がずれるところ

この表を今の暮らしの感覚と並べると、ずれが三つ見えてきます。

  • 立春を過ぎた2月は、寒くても春です。立春を過ぎれば、雪が残っていても句は春として読まれます。寒さを書きたいときは、冬(三冬)の季語である「寒し」ではなく、立春後の寒さを表す余寒・春寒・冴返る(いずれも初春)を探します。
  • 桜の4月は、春の終わりの区分です。入学式や新年度のころは、歳時記ではもう晩春です。逆に、5月の連休の前半までは、まだ春の範囲に入ります。
  • 年賀状の「初春」「新春」は春ではありません。きごさい歳時記では「初春(はつはる)」は新年の季語で、傍題に新春・迎春が並びます。旧暦では年の始めが立春のころにあたったので「初春」と呼んで祝い、新暦で冬に正月を迎えるようになっても、その呼び名が残ったと説明されています。同じ字でも「しょしゅん」と読めば春の初めのことです。新年の季語の扱いは冬の俳句の作り方で、冬の季語と分けて確かめています。

注意区分は「目安」として使う

時候の季語(余寒、花冷えなど)は、区分がそのまま時期を表します。余寒を4月の場面に使うと、読む人は2月ごろの寒さとして受け取ります。一方、花や芽の季語は、咲く時期や芽吹く時期が地域や年によって違います。実際に見た時期が区分と少しずれていても、春の季語を春の場面に使うこと自体は問題ありません。区分の示し方や、どの言葉を見出しにするかは歳時記によって違うことがあるので、句会や投稿先が歳時記を指定していればそれに合わせます。

春らしい言葉を重ねると、句が似てくる

春の句が毎年似てしまう原因を、作例で見てみます。春らしい言葉で十七音を作ると、たとえばこうなります。

作例・俳句作例:春らしい言葉を重ねた句

うららかや桜の下の春の風
句よみ音数
うららかやうららかや5音
桜の下のさくらのしたの7音
春の風はるのかぜ5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※麗か(三春)・桜(晩春)・春の風(三春)の三つが季語

形は整っていますが、この句には季語が三つ入っています。どれも「春の明るく穏やかな気分」を受け持つ言葉なので、同じことを三回言っている状態です。そして、作者がどこで何を見たのかは一つも書かれていません。誰でも、どの年でも書ける句になるのはそのためです。

季語は一語で、季節も時間も気分も読む人に渡します。だから春らしさは季語一つに任せ、残りの十二音には「その日、その場所で見たもの」を入れます。春の季語を二つ以上入れてしまったときの見直し方は俳句の季重なりとは?で扱っています。

春の観察は「先週と違うもの」を探す

春は、同じ場所が一日ごと、一週間ごとに変わっていく季節です。春らしい物を探しに行くより、いつも通る場所で、前に見たときと違うものを探すほうが、自分にしか書けない一点が見つかります。観察の候補を、変化の種類で分けておきます。

観察の対象 見つけ方の問い 季語の例(きごさい歳時記)
花の開閉 朝と昼で、花の形は同じか。閉じている花はないか チューリップ(晩春)、蒲公英(仲春)
光・日の長さ 帰り道は先月より明るいか。灯りをつける時刻は変わったか 日永(三春)、風光る(三春)
芽 枝先や鉢、道の割れ目に、先週なかった色はないか 木の芽(三春)、ものの芽・草の芽(仲春)
人の動作・生活 着る物、干す物、外で過ごす時間は変わったか 春ショール(三春)、石鹸玉(三春)、春泥(三春)
寒さの戻り 暖かい日のあとに、急に冷えた日はないか 冴返る(初春)、花冷え(晩春)

表の季語は例です。先に季語を決めるのではなく、変化を見つけてから、それに合う季語を歳時記で探します。

架空の観察メモ

三月の終わりから四月の初めにかけて書いた、という設定のメモです。

作例観察メモ(架空・三月下旬〜四月上旬)

[3月25日・ベランダ]冬のあいだに枯れたと思い、土を捨てるつもりで端に寄せておいた鉢。赤い芽が三つ出ている。何を植えた鉢だったか思い出せない。
[3月28日・帰宅後]六時半に帰っても、空がまだ明るい。先月はこの時刻には真っ暗だった。着替えずに、そのままベランダの鉢に水をやった。
[4月8日・駅前の花壇]朝の八時、チューリップは細長く閉じていた。昼休みに通ると開ききって、花びらが外へ反り、中の黒いところまで見えた。
感想:枯れていなくてうれしい。毎日少しずつ明るくなる。春が来た。

三つの記録は、それぞれ芽・光・花の変化です。どれも「前に見たときと違う」ことが書かれています。最後の感想は句に入れる言葉ではなく、自分が何に心を動かされたかを確かめるための欄です。

場面に合う季語を歳時記で確かめる

メモの三つの場面に合う季語を、きごさい歳時記で確かめます。見るのは、区分が場面の日付と合うか、解説の意味が場面と合うかの二点です。

季語 区分・分類 解説の要点 場面との合い方
ものの芽 仲春・植物 春のもろもろの草木の芽。特定の植物の芽ではない。傍題に「芽」 3月25日で仲春に入る。何の芽か分からないので合う
日永 三春・時候 春になり、昼の時間が伸びてくること。実際は夏のほうが日が長いが、冬に比べて春は長く感じられる 先月より帰り道が明るい、という変化そのもの
チューリップ 晩春・植物 四月ごろに花壇を彩る花。傍題に牡丹百合、鬱金香 4月8日の駅前の花壇なので合う

芽の季語は、見た物によって選び分けます。きごさい歳時記では「木の芽」(三春)は樹木の芽吹きを言い、「ものの芽」はどの植物とも決めない芽です。メモの鉢は何を植えたか思い出せないので、「ものの芽」を選びました。庭木の枝先なら木の芽、名前の分かる草なら、その草の季語を探します。

季語が決まったら、ここからは三つの場面を一句ずつにしていきます。花は季語そのものを見つめる一物仕立て、光は季語と動作を組み合わせる取り合わせ、芽は感想を見た物に置き換える推敲で見せます。

花の開閉:変化の「あと」の一瞬を書く

チューリップのメモには、朝と昼の二つの姿があります。変化を見つけると、つい両方を句に入れたくなります。

変化を報告した句から、一瞬を見せる句へ

朝と昼を両方書いた初稿

作例・俳句初稿:朝と昼

朝閉じて昼は開いたチューリップ
句よみ音数
朝閉じてあさとじて5音
昼は開いたひるはひらいた7音
チューリップちゅーりっぷ5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

開ききった一瞬だけを書いた句

作例・俳句作例1:チューリップ(一物仕立て)

開ききり花びら反らすチューリップ
句よみ音数
開ききりひらききり5音
花びら反らすはなびらそらす7音
チューリップちゅーりっぷ5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※季語:チューリップ(晩春)

変更の理由

  • 初稿は「朝はこうで、昼はこうだった」という報告です。変化は伝わりますが、読む人の頭に残る姿がありません。
  • 修正後は、昼休みに見た一瞬だけを書きました。花びらが外へ反るほど開いた姿は、かわいらしいチューリップという思い込みとは違う、少し乱れた形です。そこまで開いたことから、朝は閉じていたことや、日差しの暖かさを読む人が想像できます。
  • 一物仕立ては、季語になる物(ここではチューリップ)だけを見つめて一句にする形です。季語の物について誰でも知っていること(花壇に並ぶ、色がきれい)ではなく、その日にしか見られなかった形や動きを書きます。詳しい深め方は一物仕立ての俳句の作り方で扱っています。
  • 時間の流れそのものが書きたい場合は、初稿の形を残す選び方もあります。そのときは「閉じて」「開いた」の対比が一句の中心になるので、ほかの言葉を足さないことが大切です。

光の変化:季語が言うことを、動作で言い換えない

日の長さは目に見えにくい変化です。メモにある「まだ明るい」をそのまま句にすると、季語と同じことを二度言う形になりがちです。

季語の説明をなぞった句から、動作を見せる句へ

「まだ明るくて」と書いた初稿

作例・俳句初稿:帰り道

帰り道まだ明るくて日永かな
句よみ音数
帰り道かえりみち5音
まだ明るくてまだあかるくて7音
日永かなひながかな5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

帰宅後の動作を書いた句

作例・俳句作例2:水やり(取り合わせ)

仕事着のままで水やる日永かな
句よみ音数
仕事着のしごとぎの5音
ままで水やるままでみずやる7音
日永かなひながかな5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※季語:日永(三春)

変更の理由

  • 「日永」は、春になって昼の時間が伸びてくることを表す季語です。初稿の「まだ明るくて」は、季語がすでに言っていることの言い直しで、十二音のうち七音が説明に使われています。
  • 修正後は、メモの「着替えずに鉢に水をやった」を使いました。仕事着のままで外の作業ができるほど明るい、ということは書かずに伝わります。帰ってすぐ鉢に向かう人の暮らしぶりも見えてきます。
  • 季語と季語を含まない十二音を組み合わせる形を取り合わせといいます。この句は、明るさと水やりが理由でつながる「近め」の組み合わせです。もっと離れた言葉と組み合わせると、読む人が二つの間を考える余地が広がります。季語と十二音の距離の測り方は俳句の取り合わせとは?で比べています。

季語の解説を読んだら、そこに書いてあることは句の中で言わない、と覚えておくと便利です。チューリップでいえば「花壇に並び咲いている」、ものの芽でいえば「土から出てくる」が、季語の説明だけになりやすい言葉です。

芽の発見:「うれしい」を見た物に置き換える

三つ目の鉢のメモには、「枯れていなくてうれしい」という感想が付いています。この気持ちをそのまま句にした初稿から始めます。

感想を言った句から、うれしさのもとを見せる句へ

感想を言い切った初稿

作例・俳句初稿:うれしさ

ものの芽や枯れてなかったうれしさよ
句よみ音数
ものの芽やもののめや5音
枯れてなかったかれてなかった7音
うれしさようれしさよ5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

見た物と事情だけを書いた句

作例・俳句作例3:鉢(感想を外す)

捨てかけた鉢にものの芽三つほど
句よみ音数
捨てかけたすてかけた5音
鉢にものの芽はちにもののめ7音
三つほどみっつほど5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※季語:ものの芽(仲春)

変更の理由

  • 初稿は、何がうれしかったのかを読む人に考えさせる前に、答えを言ってしまっています。「枯れてなかった」も、どんな鉢の何が枯れていなかったのかが見えません。
  • 修正後は、メモにある「捨てるつもりだった」という事情と、「芽が三つ」という数だけを書きました。一度は見放した鉢に小さな芽が出ている、という景から、うれしさや少しの申し訳なさを読む人が受け取ります。
  • 「三つ」を「三つほど」としたのは、数を正確に報告するより、しゃがんでのぞき込んだときの見え方に近づけるためです。「三つ」と言い切る案でも成り立ちます。
  • 感想の言葉を使ってはいけない、という決まりはありません。景がはっきりした句の中に気持ちの言葉を一つ置くと、かえって効くこともあります。初稿の段階では、まず感想を見た物に置き換えられないかを試します。

三句の記録

できた三句を、季語と確かめた歳時記、観察の種類と一緒に記録しておきます。

句 観察の種類と形 季語・区分 よみと音数
開ききり花びら反らすチューリップ 花の開閉・一物仕立て チューリップ(晩春)/きごさい歳時記 ひらききり/はなびらそらす/ちゅーりっぷ(5・7・5)
仕事着のままで水やる日永かな 光の変化・取り合わせ 日永(三春)/きごさい歳時記 しごとぎの/ままでみずやる/ひながかな(5・7・5)
捨てかけた鉢にものの芽三つほど 芽・感想を外した句 ものの芽(仲春)/きごさい歳時記 すてかけた/はちにもののめ/みっつほど(5・7・5)

三句とも「春」という字も「うれしい」「明るい」も使っていませんが、どれも春の句として読めます。季語が季節を受け持ち、残りの言葉がその日にしかなかった物と動作を受け持っているからです。読みをかなで入力して音数を確かめたいときはかな入力の音数確認を使えます。

春の句を見直す確認表

春の句ができたら、次の項目で見直します。春の句で特に起きやすいことを中心にしています。

確認表春の句の見直し

  • 季語は一つか。麗か・桜・春の風のように、同じ気分の春の季語を重ねていないか
  • 場面の日付と季語の区分が合っているか。特に余寒・花冷えなどの時候の季語
  • 立春後の寒さに冬の季語を、新年の「初春」「新春」を春の場面に使っていないか
  • 季語の解説に書いてあること(日が長い、芽が出る、花壇に咲く)を十二音で言い直していないか
  • 「うれしい」「春らしい」「明るい」などの感想を、見た物や動作に置き換えられないか
  • 変化の前と後を両方報告していないか。書くなら、どちらの一瞬かを選んだか
  • 読みをかなで書き、五・七・五を数えたか

季語と具体性のほかに、助詞や語順まで順に見直したいときは俳句の推敲のやり方の手順が使えます。

練習同じ場所を二回見て、春の一句を作る(二日間・各10分)

  1. 毎日通る場所を一つ決め、一日目に、花・光・芽・人の動作の四つの欄で一行ずつメモします。
  2. 三日から一週間あけて、同じ場所、できれば同じ時刻に行き、同じ四つの欄を書きます。
  3. 二回のメモを見比べて、違っていたものに印を付けます。一つだけ選びます。
  4. 選んだ変化に合う季語を歳時記で引き、区分が日付と合うか、解説の意味が場面と合うかを確かめます。
  5. 変化の「あと」の一瞬を十二音で書き、季語と合わせて一句にします。確認表で見直します。

春の季語を手元で引くなら

ここまでの作例は、無料で引けるきごさい歳時記で確かめました。季語を引く回数が増えてきたら、手元に一冊置くと、外でも確かめられます。

季節ごとの文庫を選ぶなら、『俳句歳時記 第五版 春』(角川ソフィア文庫)は春の季語だけを収めた一冊で、時候から始まり、春の行事や忌日、「読めますか 春の季語」、索引までを収めています。ただ、春の巻だけでは、年賀状の「初春」のような新年の季語や、冬の季語かもしれない言葉を引き比べることはできません。季節の分からない言葉を引くことが多いなら、『今はじめる人のための俳句歳時記 第三版』(角川ソフィア文庫)のように、四季と新年を一冊に収めた歳時記が向きます。季節別・一冊本・無料サイトの違いは俳句の入門書と歳時記で比べています。