小説の書き方を学ぶおすすめ本|初心者・構成・文章表現の目的別に選ぶ
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この記事の答え
小説の入門書は、評判より自分がどの工程で止まっているかで選びます。
- 書き始められない、基本を一通り知りたい → 推敲・人称・構成・セリフなどの回が並ぶ講座本(例:『マナーはいらない 小説の書きかた講座』)
- 途中で止まる、筋が組めない → 構成の型を扱う本(例:『SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く』)
- 文章が伝わらない → 文のひびき・長さ・視点を練習問題で鍛える本(例:『文体の舵をとれ』)
同じ書名でも単行本と文庫で中身が違うことがあるため、版と目次を確かめ、読んだ章は一つずつ自作の場面で試します。
目次
小説の書き方の本は数が多く、評判の高い一冊を買っても、自分の困りごとに触れる章が少なければ読みっぱなしになります。この記事では、書き始め・途中・文章のどこで止まっているかを三つの相談例で分け、目次が公開されている4冊を用途別に比べます。読んだ章を自作の一場面で試す練習計画まで示すので、一冊を選んだあと何をすればよいかも決められます。
先に、自分がどこで止まっているかを決める
「小説の書き方」を一つの技術として探すと、入門書選びで迷います。実際には、題材を決める、筋を組む、人物を動かす、文章にする、直す、という別々の工程があり、止まる場所は人によって違います。
次の三つは、この記事のために作った架空の相談例です。自分に近いものを一つ選んでください。
| 相談例 | 本人の言葉 | 止まっている工程 | 目次で探す言葉 |
|---|---|---|---|
| A 書き始められない | 「書きたい気持ちはあるのに、何から決めればいいか分からない。一人称と三人称のどちらで書くかでも迷う」 | 書く前の決めごと(長さ、人称、構想) | 人称、枚数・長さ、構想、短編の構成 |
| B 途中で止まる | 「冒頭の三場面までは書けた。そこから何を起こせばいいか分からず、毎回放り出してしまう」 | 筋の組み立て(中盤の出来事、山場への流れ) | プロット、構成、ビート、長編 |
| C 文章が伝わらない | 「一作書き上げたが、読んだ友人に『場面が想像しにくい』『誰の気持ちか分かりにくい』と言われた」 | 文章と語り(描写、視点、文の長さ) | 描写と説明、視点、文の長さ、推敲 |
相談例Aの人に文章表現の本を渡しても、まだ直す原稿がありません。相談例Cの人に「最初の一作の決め方」から始まる本を渡すと、知っている話が続いて読む手が止まります。同じ本でも、止まっている工程によって役に立つ章の割合が変わることが、目的別に選ぶ理由です。
まだ一作も書いていない人は、本を買う前に、無料の手順だけで短い初稿を書いてみるのも一つの方法です。手順は小説の書き方|初心者が最初の一作を完成させる手順にまとめています。一作書いてみると、自分がどこで止まるかがはっきりします。
目次の言葉を、自分の課題に対応させる
買う前に本の中身を知る手がかりとして確かめやすいのは、出版社が公開している目次です。目次を見るときは、書名や帯の言葉ではなく、自分の課題に当たる章が何回分あるかを数えます。
目次から適合を判断する例
相談例C(文章が伝わらない)の人が、『マナーはいらない 小説の書きかた講座』の目次を見る場合を考えます。目次には25の回(本の中では「皿」と呼ばれています)が並んでいます。その中から、友人に言われた二つの指摘に関係しそうな回を拾います。
| 友人の指摘 | 関係しそうな回(目次の題) | 判断 |
|---|---|---|
| 場面が想像しにくい | 十三皿目「情報の取捨選択について」、十六皿目「情報提示のタイミングについて」、十八皿目「描写と説明について」 | 3回分ある。最初に読む候補 |
| 誰の気持ちか分かりにくい | 五皿目・六皿目「人称について」(一人称編・三人称編) | 2回分ある。二番目に読む |
| (全体の直し方) | 一皿目「推敲について」 | 書き上げた原稿があるので、最後に読む |
25回のうち6回が直接の課題に当たるので、相談例Cの人にとっては「一冊のうちの一部が役に立つ本」です。これで十分と考えるか、文章の章が多い本を探すかは、手元の予算と時間で決めます。同じ方法で『文体の舵をとれ』の目次を見ると、全10章のうち「文の長さと複雑な構文」「視点(POV)と語りの声」「視点人物の切り換え」「直接言わない語り」など、文章と語りの章が大部分を占めています。
このように目次で数えると、読む前に「何章を自分の原稿に使えるか」の見当が付きます。
目次の範囲で4冊を比べる
以下は、4冊を目次の範囲で比べたものです。順位は付けていません。
| 書名・版 | 扱う範囲 | 向く相談 | 向かない相談・注意 |
|---|---|---|---|
| マナーはいらない 小説の書きかた講座(三浦しをん、集英社オレンジ文庫、2026年1月、文庫判272頁) | 推敲、枚数感覚、短編の構成、人称、一行アキ、比喩、時制、セリフ、描写と説明、取材、タイトルなど25回。人称や構成の基本からタイトル・取材まで扱う | A・C。基本を一通り見渡したい人、短編から書く人 | 長編の筋を細かく組む型を求める人には、構成の回が短編中心 |
| 小説講座 売れる作家の全技術(大沢在昌、角川文庫、2019年2月、368頁) | 一人称、強いキャラクター、会話文、プロット、小説の「トゲ」、文章と描写、長編、強い感情の描き方、作家としての生計とデビュー後など。受講生の作品を題材に解説する | B・C。エンターテインメント小説を書く人、新人賞を目指す人 | 初稿をまず一作仕上げたいだけの人には、デビューや作家活動の回が多い |
| 文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室(アーシュラ・K・ル=グウィン、大久保ゆう訳、フィルムアート社、2021年8月、四六判256頁) | 文のひびき、句読点と文法、文の長さ、繰り返し、形容詞と副詞、動詞の人称と時制、視点、直接言わない語りなど全10章。章末に練習問題、付録に合評会 | C。文章を練習問題で鍛えたい人、仲間と課題を回したい人 | A・B。筋の組み方や題材の決め方は目次の中心ではない。英語で書かれた原著の翻訳 |
| SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く(ジェシカ・ブロディ、島内哲朗訳、フィルムアート社、2019年3月、A5判480頁) | 主人公、15段階のビート・シート、10のジャンル(各章で海外の小説を分析)、ログラインとシノプシスの書き方、行き詰まったときの章 | B。長めの物語の筋を型で組みたい人 | 短い一作を気軽に書きたい人には分量が大きい。例は海外の長編小説 |
試し読みと中身の確かめ方
| 書名 | 出版社ページの試し読み | 買う前の確かめ方 |
|---|---|---|
| マナーはいらない | なし | 目次の回の題で判断する。書店か図書館で、自分の課題に当たる回を一つ開く |
| 小説講座 売れる作家の全技術 | あり(電子書籍ストアでの試し読みへの案内) | 冒頭の回の語り口と、講評の進め方が合うかを見る |
| 文体の舵をとれ | あり(第5章「形容詞と副詞」、訳者解説) | 第5章の練習問題を一つ、自分の文で試せるかを見る |
| SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く | あり(イントロダクション、訳者あとがき) | ビート・シートの考え方が、自分の書きたい長さに合うかを見る |
注意比較表に入れなかった本
中公文庫から2025年11月に刊行された伊藤桂一『文章作法 小説の書き方』は、作者の実作を例に私小説・時代小説・戦記文学の書き方を解説する本です。目次を並べて比べられなかったため、比較表には入れていません。時代小説や私小説を書きたい人は、章立てを書店や図書館で確かめてから選ぶと安心です。
同じ書名でも、単行本と文庫で中身が違う
入門書は、単行本が先に出て、何年かあとに文庫になることがよくあります。このとき、収録される内容が変わる場合があります。書名だけで「同じ本」と考えずに、出版社ページで版ごとの説明を確かめます。
『小説講座 売れる作家の全技術』は、その違いが大きい例です。単行本に収録されていた「第二部 受講生作品講評」は、文庫版には収録されていません。代わりに文庫版では、著者と編集長の座談会による特別講義、新人賞リスト、文庫版あとがきが加わっています。
| 読みたいもの | 選ぶ版 |
|---|---|
| 受講生の作品に対する講評を、まとまった形で読みたい | 単行本(新刊で手に入るとは限らないため、図書館や古書も探す) |
| 講座本文と、文庫化の際に加わった座談会・新人賞リストを読みたい | 文庫版 |
『マナーはいらない 小説の書きかた講座』も、文庫化にあたって回が一つ増えています。目次の二十四皿目には「書き下ろし(単行本版)」、二十五皿目「最近の動向について」には「書き下ろし(文庫版)」と付いています。
翻訳書の場合は、原著の改訂版を訳したものか、刷によって訂正が入っているかなども出版社ページに書かれることがあります。古書や図書館で借りるときは、奥付の版と刷を一度見ておくと安心です。
一章を、自分の一場面へ使う練習計画
入門書を最後まで読んでから書こうとすると、読み終わるころには最初の章の内容を忘れています。一章読んだら、自分の原稿の一場面で一度試す、という順番にすると、本の内容が手元に残ります。
手順一章一場面の練習(一章につき三日の目安)
- 一日目:課題に当たる章を一つだけ読む。目次で選んだ章を読み、要点を自分の言葉で三行以内に書きます。本の文章を書き写すのではなく、「自分の原稿で何を変えるか」が分かる形で書きます。
- 二日目:試す場面を一つ選び、元の文を残しておく。書きかけの原稿でも、完成した一作でもかまいません。400〜800字ほどの一場面を選び、手を入れる前の文を別の場所に保存します。
- 三日目:書き直して、元の文と並べる。読んだ章の観点で一場面だけ書き直し、何が変わったかを一行で書きます。変わらなかった、悪くなった、という結果も記録します。合わなかった観点は、無理に取り入れなくてかまいません。
ひな形一章一場面の練習メモ(コピーして使えます)
本の書名と版: 読んだ章(目次の題): 章の要点(自分の言葉で三行): 試す場面(作品名・場面の番号・字数): 書き直しで変えたこと: 結果(よくなった/変わらない/合わなかった)と理由: 次に読む章:
記入例:相談例Cの人が「人称」の回を使う場合
作例練習メモの記入例(架空)
本の書名と版:マナーはいらない 小説の書きかた講座(集英社オレンジ文庫)
読んだ章:五皿目・六皿目「人称について」
章の要点:(読んだ人が自分の言葉で書く欄。この記入例では省略)
試す場面:短編「冬の温室」場面2(約700字、三人称)
書き直しで変えたこと:場面2の視点人物を姉に固定し、妹の心の中を書いていた三文を、妹の動作とセリフに置き換えた
結果:友人に言われた「誰の気持ちか分かりにくい」箇所は減った。ただ、妹の迷いが伝わりにくくなったので、セリフを一つ足す
次に読む章:十八皿目「描写と説明について」
記入例の「章の要点」を空けているのは、本の内容をこの記事で要約しないためです。自分で読んで書く欄なので、他人の要約を写しても練習になりません。
視点の揺れを自分で点検する手順は小説の視点がぶれるときの直し方で、場面の描写と説明の配分は小説が説明ばかりになるときの直し方で、本とは別の作例を使って扱っています。本で読んだ観点を確かめ直すときに使えます。
無料の記事で足りる場合、本や講座が向く場合
本を買う前に、今の自分に必要なのが「手順」なのか「体系」なのか「他人の目」なのかを分けておくと、お金と時間をかける先を間違えにくくなります。
| 今の状態 | 合う学び方 | 理由 |
|---|---|---|
| まだ一作も書いていない | 無料の入門記事で一作書く | 止まる場所が分かる前に本を選ぶと、合わない章が多くなる |
| 止まる工程が一つに絞れている | その工程の記事、または工程に章が多い本 | 必要な部分だけを集中して読める |
| 工程は分かるが、全体を一冊で見渡したい | 目次の範囲が広い講座本 | 推敲・人称・構成などを同じ著者の考え方で通して読める |
| 自分の原稿に、他人から継続して返答がほしい | 添削つきの講座や講評 | 本は自分の原稿を読んでくれない。返答は人に頼む必要がある |
| 費用をかけずに複数の本を比べたい | 図書館 | 文学の棚の創作・文章作法の本を並べて目次を比べられる。蔵書検索では「小説 書き方」「小説作法」などで探す |
筋の組み立てだけで止まっているなら、本を一冊読む前に小説のプロットの書き方の記入例で筋を表にしてみる方法もあります。書き上げた原稿を構成から直したい場合は、小説の推敲・改稿のやり方が無料で使えます。
本を読み、練習もしたうえで、自分の原稿に継続して返答をもらいたくなったら、講座の形式(添削、個別指導、グループ)を比べる段階です。比べ方は小説のオンライン講座の選び方で扱っています。
目的別に一冊を選ぶ
ここまでで、自分の相談例と、目次で数えた章の割合が分かっていれば、候補はかなり絞れています。最後に、比べた4冊を、向く人と注意点で並べます。