小説原稿をPDFにする方法|提出前に文字・ページ・ファイル形式を確認する
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この記事の答え
PDFを作る前に、提出先がPDFを受け付けているかを要項で確かめます。Word(.docx)やテキスト(.txt)を指定している応募先に、PDFは出しません。
- Word(Windows版)では[ファイル]→[コピーの保存]または[名前を付けて保存]で、ファイルの種類に「PDF」を選ぶ
- 書き出したPDFを元の原稿と照合し、文字・ルビ・改ページ・ページ順と番号・フォントを確かめる
- 自分の端末だけでなく、別の端末や別のソフトでも開く。直すときはPDFではなく元のWordを直して書き出し直す
目次
書き上げた小説原稿をPDFにして提出したい、あるいは提出前に見た目を固定して確かめたい人に向けた記事です。最初に、提出先がPDFを受け付けるかどうかの確かめ方を実在の応募要項三つで示し、次にWordからの書き出し方、最後に、ルビ・傍点・章扉・ページ番号を入れた確認用の原稿で、変換前後に何を照らし合わせるかを表にします。
DOCX・PDF・テキストは、役割が違う
小説原稿のやり取りでよく使う三つの形式は、それぞれ得意なことが違います。
| 形式 | 役割 | 向いている場面 | 注意すること |
|---|---|---|---|
| Word(.docx) | 直せる原稿。書式(縦書き・字数と行数・ルビ)も持てる | 応募先がWordを指定しているとき。人に直してもらうとき | 開く環境のフォントや版によって、行の折り返しやページ数が変わることがある |
| PDF(.pdf) | 見た目を固定した原稿。どの端末でもほぼ同じ形で見える | 応募先がPDFを受け付けるとき。印刷所への入稿。読んでもらうだけのとき | 直すのに向かない。PDFになった時点のページ数で固定される |
| テキスト(.txt) | 文字だけの原稿。書式は持たない | 応募先がテキストを指定しているとき。投稿サイトへ本文を移すとき | 縦書き・ルビ・ページ番号は残らない。文字コードの指定に注意 |
PDFは「見た目を変えずに渡す」ための形式です。原稿を直すための形式ではありません。
提出先がPDFを受け付けるか、先に確かめる
実在の応募要項三つを比べる
PDFで出せるかどうかは、応募先ごとに違います。三つの賞の要項を並べると、次のようになります。
| 項目 | 集英社短編小説新人賞 | 群像新人文学賞(第70回) | 電撃小説大賞(第34回) |
|---|---|---|---|
| 受け付けるファイル | .docx または .txt | Word(.doc/.docx/.docm)のみ | テキスト(txt)、Word(doc・docx)、OpenDocument(odt)、一太郎(jtd)、PDF |
| 要項に記載なし | 受け付けない(Wordのみ) | 受け付ける | |
| 書式 | 400字詰め原稿用紙25〜30枚換算 | A4判・縦書き・1行40字×36行、ページ右下に通し番号 | 1ページ=42文字×34行、テキスト以外は縦書き |
| 容量などの条件 | ― | ― | 1ファイル10MBまで。アップロード後の修正・削除はできない |
ここから分かるのは、「PDFなら見た目が崩れないから、どこへでも出せる」わけではないということです。集英社と群像の賞にPDFを出すと、指定の形式に合いません。電撃小説大賞のようにPDFを受け付ける賞でも、字数×行数・縦書き・容量の条件はPDFにも適用されます。
電撃小説大賞の要項には、ファイルの「0ページ目」に作品タイトル・ペンネーム・あらすじを書き、本文は1ページ目から始める、という指定もあります。Wordでページ番号の開始番号を0にすると、表紙が0、本文の最初が1になります(設定の仕方はWordで小説原稿を整える方法で扱っています)。PDFにしたあとも、この番号のとおりに並んでいるかを確かめます。
要項全体の読み方は小説新人賞の応募要項の読み方で扱っています。
公募以外の提出先
| 提出先 | PDFの扱いの例 | この記事との関係 |
|---|---|---|
| 印刷所(同人誌など) | PDFでの入稿を案内している印刷所がある。たとえばシメケンプリントの小説原稿の案内では、PDFにフォントを埋め込む設定を求めている | 書き出しと照合はこの記事の手順が使える。表紙・塗り足し・左右のページ配置は別の確認が要る |
| 電子書籍(Kindle ダイレクト・パブリッシング〈KDP〉など) | KDPのヘルプでは、対応するPDFは英語・フランス語・ドイツ語など特定の言語で書かれたものに限られ、日本語は挙げられていない | PDFにしても日本語の電子書籍にはならない。電子書籍は別の工程 |
| 感想・講評の依頼 | 読むだけならPDF、書き込みや修正をしてもらうならWord | 後の「共有用と修正用で形式を分ける」で扱う |
変換の前に、元の原稿で整えておくこと
PDFは、書き出した瞬間のWordの状態をそのまま写します。崩れていない原稿を書き出すために、先に次の点を整えます。
- 字数×行数・縦書き・用紙・余白が要項どおりになっている
- 表紙(作品情報)と本文の間、章の区切りに、空の行ではなく改ページが入っている
- ページ番号の位置と開始番号が要項どおりになっている
- 変更履歴とコメントがすべて片付いている(残っていると、PDFに吹き出しや修正の印が出ることがある)
- ルビ・傍点を付け終え、ルビのある行で行数がずれていない(ルビの付け方は小説原稿のルビ・傍点の付け方)
確認用の原稿を一つ作っておく
初めてPDFを書き出すときは、本番の原稿の前に、崩れやすい要素を一通り入れた短い確認用の原稿で試すと、どこを見ればよいかがはっきりします。この記事では、次の構成の確認用原稿を使います。
| ページ | 内容 | 試す要素 |
|---|---|---|
| 0(表紙) | 作品名・筆名・あらすじ | 開始番号0のページ番号、改ページ |
| 1 | 章扉「一」 | 章の区切りの改ページ |
| 2 | 本文(下の見本) | 縦書き、ルビ、傍点、三点リーダー、ダッシュ、二桁の数字 |
| 3 | 章扉「二」と本文の続き | 2ページ目の最終行が流れてこないか |
| 4 | 本文の最後 | 総ページ数、最終ページの番号 |
作例確認用原稿の本文(2ページ目の一部)
汐入澪が灯台の鍵を返しに来たのは、十月の最後の日だった。
「本当に、もう来ないの?」
「……来ないよ。今度こそ」
澪は笑った。――それから、いまだけは振り返らなかった。
鍵の札には、12と彫ってあった。
見本の「汐入澪」にはルビ、「いま」には傍点(このサイトの表示では太字で代用)、「12」は縦中横(縦書きの中で二桁の数字を横に並べる設定)を付けています。どれも、変換や閲覧環境によって位置がずれたり、表示が変わったりしやすい要素です。
WordからPDFを書き出す
Word for Microsoft 365・Word 2021/2019/2016(Windows版)での手順は次のとおりです。
手順WordでPDFとして保存する(Windows版)
- 保存済みの原稿なら[ファイル]→[コピーの保存]を、まだ保存していない原稿なら[名前を付けて保存]を選びます(版によって表示の名前が少し違うことがあります)。
- [参照]で保存先を選びます。
- ファイルの種類の一覧から「PDF (*.pdf)」を選びます。
- 必要に応じて[オプション]を開き、次の項目を確かめます。
- [保存]を選びます。
[オプション]で小説原稿に関係するのは、次の項目です。
| オプションの項目 | 小説原稿での選び方 |
|---|---|
| ページ範囲 | 提出用は「すべて」。一部だけ確認したいときに範囲を指定する |
| 発行対象 | 文書だけを出す。変更履歴やコメントを含める設定になっていないか見る |
| ISO 19005-1 準拠(PDF/A) | 長期保存向けの形式。提出先に指定がなければ、選ばなくてもよい |
| パスワードを使用してドキュメントを暗号化する | 提出用には使わない。相手が開けなくなるおそれがある |
環境によっては、印刷の画面でプリンターとしてPDFを選ぶ方法でもPDFを作れます。ただ、その方法では上の保存のオプションが出ないため、提出用はWordの保存機能で書き出すほうが確かめやすくなります。
注意Mac版・Web版で書き出すとき
Mac版のWordやWeb版のWordでもPDFを作れますが、メニューの位置や選べるオプションがWindows版と同じとは限りません。上の手順はWindows版のものです。Mac版・Web版で作ったPDFも、下の照合表で同じように確かめてください。
PDFを元の原稿と照らし合わせる
書き出したら、元のWordの画面とPDFを並べて、次の表の項目を一つずつ照合します。確認用原稿で試す場合に、見本のどこを見るかも書いています。
| 確かめる項目 | Wordの原稿で見るところ | PDFで見るところ |
|---|---|---|
| 総ページ数 | 画面下の総ページ数(確認用原稿なら0〜4の5ページ) | PDFのページ数が同じか |
| ページ番号 | 表紙が0、本文の最初が1になる設定 | 各ページの番号と位置が同じか。番号が飛んだり重なったりしていないか |
| 改ページ | 章扉「一」「二」がページの先頭にある | 前のページの最後の行が、章扉のページに流れ込んでいないか |
| 1ページの行数・字数 | 文字数と行数の設定(例:42字×34行) | 本文のページで、数行の字数と行数を数える |
| ルビ | 「汐入澪」のルビの読みと位置 | ルビが本文や隣の行と重なっていないか。ルビのある行だけ行送りが変わっていないか |
| 傍点 | 「いま」の傍点 | 点が付いていて、位置がずれていないか |
| 記号 | 「……」「――」 | 二つの記号がつながって見えるか。ダッシュの間にすき間や段差がないか |
| 縦中横 | 「12」が一字分に収まっている | 横に寝ていないか、二字分に広がっていないか |
| 人名などのふだん使わない字 | 異体字(例:「髙」「﨑」)を使った箇所 | 字が欠けたり、別の字形に置き換わったりしていないか |
| 変更履歴・コメント | すべて承諾・削除済み | 吹き出しや色の付いた修正の印が出ていないか |
| フォント | 本文に使ったフォント | PDF閲覧ソフトの文書のプロパティにあるフォントの一覧で、埋め込まれているか |
| ファイル名・容量 | 要項の指定 | ファイル名の形と、容量が上限内か |
フォントの埋め込みは、PDFを開いて文字がきれいに見えるだけでは判断できません。自分のパソコンにそのフォントが入っていれば、埋め込まれていなくても同じように見えるからです。閲覧ソフトの文書のプロパティで、フォントの一覧に「埋め込み」「埋め込みサブセット」などの表示があるかを確かめます(表示の名前はソフトによって違います)。OfficeのPDF保存の設定にも、フォントが埋め込まれていない場合の扱いに関する項目があります。埋め込めないフォントを使っている場合は、別のフォントに変えて書き出し直すことも考えます。
崩れていたときは、Wordを直して書き出し直す
照合で違いが見つかったら、PDFを編集ソフトで直すのではなく、元のWordを直してからもう一度書き出します。PDFだけを直すと、Wordの原稿とPDFの中身が食い違い、次に直すときにどちらが最新か分からなくなります。
| PDFで見つかった崩れ | 考えられる原因 | Wordでの直し方 |
|---|---|---|
| 章扉の前のページの最終行が流れ込んでいる | 改ページではなく空の行で次のページへ送っていた | 章扉の前に改ページを入れ、空の行を消す |
| ページ数がWordの表示より多い | 書き出したときに、変更履歴やコメントを含めていた | 変更履歴を承諾し、コメントを削除して書き出し直す。[オプション]の発行対象も確かめる |
| ルビのある行だけ行間が広い | ルビの大きさや行間の設定で、その行の高さが増えている | ルビの文字を小さくするか、段落の行間の設定を見直す |
| 文字が別の書体に置き換わっている | フォントが埋め込まれていない、または埋め込めないフォント | 埋め込める一般的な明朝体に変えて書き出し直す |
別の端末・別のソフトで開く
自分のパソコンでPDFを確かめただけでは足りません。提出先の人は、別のパソコン、別の閲覧ソフトで開きます。
確認表別の環境で開いて確かめること
-
スマートフォンやタブレットなど、書き出したパソコンとは別の端末で開けたか
-
ブラウザーの閲覧機能と、専用のPDF閲覧ソフトの両方で開けたか
-
パスワードを求められずに開けたか
-
1ページ目に表紙(または要項の指定どおりの内容)が出ているか
-
ルビ・傍点・縦中横が、元のパソコンで見たときと同じ位置にあるか
-
最後のページまでめくって、白紙のページや欠けたページがないか
縦書きの原稿を見開きで表示すると、閲覧ソフトによっては左から右へページが並び、本の見開きとは逆の順に見えることがあります。提出用の原稿では、ページ番号の順に並んでいれば問題ありません。印刷して本にする場合は、左右のページ配置が別の確認事項になります(下の印刷所の項を参照)。
共有用と修正用で、形式を分ける
PDFは「この状態で読んでほしい」ときの形式で、Wordは「ここから直せる」原稿です。人に原稿を渡すときは、何をしてほしいかで形式を選びます。
| 渡す目的 | 形式 | 理由 |
|---|---|---|
| 応募する | 要項で指定された形式 | 指定以外の形式は受け付けられないことがある |
| 読んで感想をもらう | 相手の端末で行やページが変わらず、ページ番号で感想を伝えてもらえる | |
| 文章に直接、修正や書き込みをしてもらう | Word(.docx) | 変更履歴やコメントで、どこをどう直したかが残る |
| 投稿サイトへ本文を移す | テキスト、または本文のコピー | サイトの記法で書き直す必要がある |
感想や講評を頼むときに、どの形式で何を返してほしいかを依頼文にどう書くかは、小説の添削・講評の依頼文の書き方で扱っています。
ファイル名には版と日付を入れておくと、どのPDFがどのWordから作られたかが分かります(例:「灯台の鍵_第3稿_20261014.docx」と、そこから書き出した「灯台の鍵_第3稿_20261014.pdf」)。原稿を直したら、Wordの版を上げてからPDFを作り直します。
印刷所や電子書籍に出すときは、別の確認がいる
ここまでの手順は、応募や共有のためのPDFを想定しています。印刷所と電子書籍には、それぞれ別の条件があります。
- 印刷所へのPDF入稿:シメケンプリントの小説原稿の案内では、PDFにフォントを埋め込む設定を求め、右綴じ(縦書き)の本では本文が左ページから始まること、扉を加えたりPDFを結合したりすると左右が逆になることがある点に注意を促しています。数値や条件は印刷所ごとに違うので、入稿先の案内に合わせます。
- 電子書籍:KDPのヘルプでは、対応するPDFの言語に日本語は挙げられておらず、Kindle Createは日本語のリフロー型の本とプリント・レプリカの本に対応していないと説明されています。原稿をPDFに保存しても、日本語の電子書籍ができあがったことにはなりません。日本語の小説を電子書籍にする工程(EPUBの作成と表示の確認)は小説を電子書籍にする方法で扱っています。