小説原稿のルビ・傍点の付け方|Wordと投稿サイトで確認すること
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この記事の答え
ルビは「読めない語に読みを示すもの」と「別の読みで意味を重ねる表現」を分け、必要な箇所に絞って付けます。付け方は提出先ごとに別の仕組みです。
- Wordではルビの機能([ホーム]タブの[ルビ]など)で付ける。投稿サイトでは「|親文字《ルビ》」のようなそのサイトの記法を本文に書く
- 同じ記法でも、ルビにできる文字数や、|を省略できる条件、傍点の書き方はサイトごとに違う
- 入力できたことと、読者に見えることは別。保存し直した画面、PDF、投稿プレビュー、スマホ表示で確かめる
目次
人物名の読みや、造語の読み、強調の傍点を、応募用のWord原稿と投稿サイトの両方に入れたい人に向けた記事です。短い作例原稿を一つ用意し、どこにルビを付けるかを決めてから、Word、カクヨム、小説家になろうでの付け方を並べます。最後に、付けたルビや傍点が保存・変換・投稿のあとも読者に見えているかを確かめる表を示します。
ルビを付ける箇所を、先に決める
ルビを付ける作業より先に、どこに付けるかを決めます。ルビは読み手を助けますが、多すぎると文面がにぎやかになり、本当に読ませたい読みが目立たなくなります。
| 付ける箇所 | 判断の目安 |
|---|---|
| 読みにくい人物名・地名 | 初めて出てくる箇所に付ける。長い作品では、章が変わって久しぶりに出る箇所にもう一度付けることがある |
| 作品の中だけの言葉(造語) | 初出に付ける。読みが作品の雰囲気を左右するなら、読み方を固定する意味でも付ける |
| 一般語の難しい漢字 | ルビを付けるより、かなで書く・別の言葉にする方が読みやすくないかを先に考える |
| 表現としてのルビ(漢字と違う読みを当てる) | 意味を重ねたい箇所だけに使う。同じ語に毎回付けると効果が薄れる |
| 傍点 | 強調したい語に付ける。文中の強調が多いと、どこも強調していないのと同じになる |
人物名の読みやすさそのもの、たとえば読みにくい名前を付けるかどうかは、命名の段階の判断です。名前の決め方は小説のキャラクターの名前の付け方で扱っています。
読みを示すルビと、表現としてのルビ
ルビには、性質の違う二つの使い方があります。
- 読みを示すルビ:「鴇田」に「ときた」と付けるように、書かれた漢字の読み方を伝える。読者は読みを知って先へ進む。
- 表現としてのルビ:「約束」に「のろい」と付けるように、書かれた語と違う読みを当てて、二つの意味を同時に見せる。読者は、文字と読みのずれを読む。
表現としてのルビは、読者が「約束」と「のろい」の両方を受け取って初めて効きます。もしルビが表示されない環境で読まれると、「約束」だけが残り、意図が伝わりません。そのため、表現としてのルビほど、表示の確認が大切です。
作例原稿:付ける箇所を決める
次の短い原稿を使います。ルビと傍点を付ける前の状態です。
作例ルビを付ける前の作例原稿
鴇田柊は、祖母の店の奥で綴灯を見つけた。
「それは、言葉を一晩だけ覚えておく灯りだよ」
祖母の声は、昨日と同じように穏やかだった。けれど柊は知っている。この店に残るという約束は、祖母にとって、もう呪いに近い。
あの日も、ちゃんと晴れていたのだ。
この原稿で、ルビと傍点を付ける箇所を次の五つに決めました。
| 番号 | 対象 | 付けるもの | 種類 |
|---|---|---|---|
| 1 | 鴇田柊 | ときたしゅう | 読みを示すルビ(人物名の初出) |
| 2 | 綴灯 | つづりび | 読みを示すルビ(造語の初出) |
| 3 | この店 | ここ | 表現としてのルビ(かなを含む文字列に付ける) |
| 4 | 約束 | のろい | 表現としてのルビ(直後の「呪い」と響き合わせる) |
| 5 | ちゃんと | 傍点 | 強調 |
三行目の「柊」は、一行目で読みを示したので付けません。4のルビは、直後に「呪い」という語がすでにあるので、付けると重なりすぎると感じるなら外す、という判断もあります。表現としてのルビは、付けた状態と付けない状態を両方読んで決めてください。
このサイトの表示では、付けた結果は次のようになります(傍点は太字で代用しています)。
作例ルビと傍点を付けた状態(表示の見本)
鴇田柊は、祖母の店の奥で綴灯を見つけた。
「それは、言葉を一晩だけ覚えておく灯りだよ」
祖母の声は、昨日と同じように穏やかだった。けれど柊は知っている。この店に残るという約束は、祖母にとって、もう呪いに近い。
あの日も、ちゃんと晴れていたのだ。
Wordでルビと傍点を付ける
ルビ
Microsoftのサポート記事では、日本語のルビは次の手順で付けると説明されています。対象は Word for Microsoft 365、Word 2024/2021/2019/2016 で、事前に日本語の言語機能が有効になっている必要があります。
手順Wordでルビを付ける
- ルビを付ける文字列(作例なら「鴇田柊」)を選択します。
- [ホーム]タブの[フォント]グループにある[ルビ]を選びます(サポート記事の日本語訳では[ふりがな]と書かれているボタンです)。
- ルビの欄に読みを入力します。読みが自動で入っている場合も、作者の意図した読みになっているかを必ず見直します。
- 配置などを選び、プレビューで確かめて[OK]を選びます。
人物名のように姓と名がある場合は、「鴇田」と「柊」を別々に選んでルビを付けるか、まとめて付けるかを決めます。別々に付けると、姓の上に「ときた」、名の上に「しゅう」が並び、どの字がどう読むかがはっきりします。選択した文字列がルビの画面で分かれて表示されたり、まとめて表示されたりすることがあるので、意図した区切りになっているかをプレビューで確かめます。
3の「この店」に「ここ」を付ける場合も、Wordでは「この店」の三文字を選択してルビを入力します(ルビの画面で「この」と「店」に分かれて表示されたら、一つの親文字にまとめてから読みを入れます)。かなを含む文字列でも、親文字の範囲を選択で決められ、特別な記号が要らないのがWordの特徴です。投稿サイトではここが違います(後で示します)。
Microsoftのサポート記事には、文字列に付けた書式(太字など)はルビには適用されない、という注意もあります。
傍点
Windows版のWordでは、対象の文字列を選択し、[ホーム]タブの[フォント]グループ右下の矢印から[フォント]ダイアログを開いて、[傍点]で点の種類を選ぶのが一般的な方法です。この手順はMicrosoftのサポート記事では確かめられなかったので、項目が見当たらない場合は、使っているWordのヘルプで「傍点」を検索してください。
注意Mac版・Web版で付けるとき
- Microsoftのサポート記事は、Windows版とMac版で手順を分けて書いていません。Mac版で同じボタンが見つからない場合は、ボタンの位置や名前が違っている可能性があるので、Mac版のWordのヘルプで「ルビ」を検索して確かめてください。
- Web版(ブラウザーで開くWord)については、同じ記事に手順がありません。ルビや傍点はデスクトップ版のWordで付けるのが確実です。Web版で開いたときに表示が保たれているかは、別に確かめます。
投稿サイトの記法で付ける
投稿サイトでは、本文の中に決められた記号を書くと、公開画面でルビや傍点として表示されます。Wordで付けたルビは、テキストをコピーして投稿サイトに貼っても、そのサイトの記法には変わりません。投稿サイト用の原稿には、そのサイトの記法を書き込む必要があります。
カクヨムの記法
カクヨムの公式ヘルプによると、ルビと傍点は次のように書きます。
- ルビ(|あり):親文字の直前に「|」、直後に「《》」で読みを書く。|は全角・半角のどちらでもよく、漢字以外を含む文字列にもルビを付けられる。
- ルビ(|なし):漢字だけでできた部分なら、直後に《》を書くだけでルビになる。
- 文字数:親文字は最大20文字、ルビは最大50文字。
- 傍点:対象を《《 》》で囲む。
- 制限:ルビも傍点も、改行をまたぐと無効になる。同じ箇所にルビと傍点を同時には付けられない。エピソード本文以外には付けられない。
- 《をそのまま表示したいとき:記号の直前に|を置く。
小説家になろうの記法
小説家になろうのヘルプセンターによると、次のとおりです。
- ルビ:ルビを振る文字の前に「|」(全角・半角どちらでも)、読みを《》で囲む。
- |の省略:親文字が漢字で、ルビがひらがな・カタカナなら、|を省略できる(《》の直前の漢字にルビが付く)。
- 丸括弧:同じ条件なら、《》の代わりに丸括弧で読みを書いてもルビになる。丸括弧のまま見せたいときは、丸括弧の直前に「|」を入れる。
- 文字数:1〜10文字の1フレーズに、最大10文字までルビを設定できる。「&」「"」「<」「>」を使うと、上限内でも設定できない場合がある。
- 付けられる場所:作品本文、前書き、後書き。
- 傍点:入力補助の[傍点]ボタンで、傍点を振る文字を入力して挿入する。挿入される記法はヘルプに書かれていないので、ボタンで入れてプレビューで確かめる。
- 表示:推奨ブラウザ以外や一部のスマートフォンでは、ルビが正しく表示されないことがある。記法が正しくないと、縦書きPDFの生成が正常に行われない可能性がある。
作例の五か所を、Wordと二つのサイトで比べる
| 対象 | Word | カクヨム | 小説家になろう |
|---|---|---|---|
| 1 鴇田柊(ときたしゅう) | 選択して[ルビ]。姓と名を分けてもよい | |鴇田柊《ときたしゅう》 | |鴇田柊《ときたしゅう》 |
| 2 綴灯(つづりび) | 選択して[ルビ] | |綴灯《つづりび》 | |綴灯《つづりび》 |
| 3 この店(ここ) | 「この店」を選択して[ルビ] | |この店《ここ》(|が必要) | |この店《ここ》(|が必要) |
| 4 約束(のろい) | 選択して[ルビ] | |約束《のろい》 | |約束《のろい》 |
| 5 ちゃんと(傍点) | [フォント]ダイアログの[傍点] | 《《ちゃんと》》 | 入力補助の[傍点]ボタン |
表では、|を省略できる箇所にもすべて|を付けています。省略できる条件はサイトのヘルプのとおりですが、省略すると思わぬ範囲にルビが付くことがあるからです。
たとえば3を|なしで「この店《ここ》」と書くと、両サイトのヘルプの説明に従えば、《》の直前の漢字「店」だけが親文字になり、「この店」と表示されます。逆に、「祖母鴇田柊《ときたしゅう》」のように漢字が続いている箇所では、意図より長い範囲が親文字になることがあります。親文字の始まりを|で示す習慣にしておくと、この種の失敗を防げます。
小説家になろうでは、もう一つ注意があります。本文で「綴灯(つづりび)」のように読みを丸括弧で書くと、それがルビとして表示されます。丸括弧の補足として見せたい箇所は「綴灯|(つづりび)」と書きます。カクヨムでは、ヘルプに丸括弧のルビ記法は書かれていません。あるサイトで通じる記法を、ほかのサイトでも同じと考えないことが大切です。
作例作例原稿の投稿用テキスト(カクヨム)
|鴇田柊《ときたしゅう》は、祖母の店の奥で|綴灯《つづりび》を見つけた。
「それは、言葉を一晩だけ覚えておく灯りだよ」
祖母の声は、昨日と同じように穏やかだった。けれど柊は知っている。|この店《ここ》に残るという|約束《のろい》は、祖母にとって、もう呪いに近い。
あの日も、《《ちゃんと》》晴れていたのだ。
小説家になろうへ載せる場合は、5の傍点を入力補助のボタンで入れ直します。ほかの投稿サイトに載せる場合も、そのサイトのヘルプで記法と文字数の上限を確かめてください。投稿先そのものの選び方は小説の投稿サイトを比較で扱っています。
応募原稿と投稿用の原稿を分けて保存する
Wordの応募原稿と投稿サイト用のテキストは、ルビの持ち方がまったく違います。一つのファイルで両方をまかなおうとすると、Wordの原稿に「|」や「《》」が残ったまま提出する、投稿サイトにWordのルビが落ちたまま公開する、といった事故が起きます。
- 応募用:Wordのルビ機能で付けた .docx
- 投稿用:サイトの記法を書き込んだテキスト(サイトごとに一つ)
のように、ファイルを分けて保存しておくと安全です。本文を直したときは、両方に同じ直しを入れます。
応募先がテキストファイル(.txt)での提出を求めている場合、Wordで付けたルビはテキストではルビとして残りません(読みが消えるか、本文に混ざって出ることがあるので、保存したファイルを開いて確かめます)。要項やよくある質問にルビの書き方の指定がないかを確かめ、指定がなければ、初出の語のあとに読みを括弧で添える(「鴇田柊(ときたしゅう)」)など、読み手が迷わない書き方に決めます。投稿サイトの記法を、そのまま応募原稿に書き込まないでください。
縦書きと行送りへの影響を確かめる
ルビは本文の外側に小さな文字で置かれるので、レイアウトに影響します。
- 縦書きでは、ルビは行の右側に付きます。横書きでは上側です。同じ原稿を縦書きの応募原稿と横書きの投稿サイトに出す場合、それぞれの向きで見え方を確かめます。
- ルビを付けた行だけ、行の間隔が広がることがあります。Wordで「1行40字×30行」のように文字数と行数を指定した原稿では、ルビのある行が広がると、1ページに入る行数が変わることがあります。ルビを付けたあとで、そのページの行数を数え直します。字数と行数の設定はWordで小説原稿を整える方法で扱っています。
- 長い読みを短い親文字に付けると、親文字の前後が空いたり、ルビがはみ出したりすることがあります。「綴灯(2字)」に「つづりび(4字)」のように、読みが親文字の倍の字数になる箇所は、表示を必ず見ます。
- ルビや傍点は、改行をまたいで付けられないサイトがあります(カクヨムのヘルプに明記)。親文字の途中で改行しないようにします。
保存・変換・投稿のあとに、表示を確かめる
ルビや傍点は、入力した画面で正しく見えていても、保存し直したり、別の形式にしたり、別の端末で開いたりすると変わることがあります。次の表で、作例の五か所が各段階で見えているかを確かめます。
| 確かめる段階 | 見る点 | 作例で確かめる箇所 |
|---|---|---|
| Wordで保存して開き直す | ルビの読みと位置、傍点が残っているか | 1〜5すべて |
| Wordを別の端末・別の版で開く | ルビの位置がずれていないか、フォントが置き換わっていないか | 1(字数の多いルビ)、3(かなを含む親文字) |
| PDFにする | ルビが本文と重なっていないか、行送りが変わっていないか | 2(親文字より読みが長い) |
| .txt で保存する | ルビが消えている、または読みが本文に混ざって出ていないか。読みの書き方を決めたとおりか | 1〜4 |
| 投稿サイトのプレビュー | 記法の記号(|《》)が本文に残っていないか。親文字の範囲が正しいか | 3(かなを含む親文字)、5(傍点) |
| 投稿サイトをスマートフォンで見る | ルビが表示されるか。表示されない場合、表現としてのルビの意味が失われていないか | 4(表現としてのルビ) |
確認表ルビ・傍点の最終確認
-
ルビは、読みを示す箇所と、表現として使う箇所を区別して付けた
-
人物名・造語は初出(必要なら章の初出)に付け、毎回は付けていない
-
応募用のWordファイルに「|」「《》」などの記法が残っていない
-
投稿用のテキストは、そのサイトの記法と文字数の上限に合わせた
-
かなを含む文字列にルビを付けた箇所は、|で親文字の始まりを示した
-
小説家になろうに載せる原稿で、丸括弧の読みが意図せずルビになっていない
-
ルビを付けたページの行数が、指定した行数のままになっている
-
投稿サイトのプレビューとスマートフォンで、表現としてのルビが読めることを確かめた
句読点やかっこの使い方、三点リーダーなど、ルビ以外の表記をそろえる方法は小説の句読点・かぎ括弧・三点リーダーで扱っています。