小説の句読点・かぎ括弧・三点リーダー|表記ルールを整える方法
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この記事の答え
小説の表記に、すべての媒体で通用する一つの決まりはありません。提出先の指定 → 自分で決めた表記の方針 → 一般的な慣習の順に優先し、作品の中で統一します。
- 一般的な慣習の代表は、三点リーダーとダッシュを二つ重ねる(「……」「――」)、文中の「!」「?」のあとを一字空ける、閉じかっこの直前に句点を付けない、段落の頭を一字下げる(会話の行は下げない)
- 応募要項や投稿サイトの表示に指定・制約があれば、そちらに合わせる
- 方針を表記表に書き、検索で揺れを一つずつ拾って直す。会話や引用の意図を壊す一括置換はしない
目次
書き上げた原稿を読み返したら、「…」と「・・・」が混ざっている、会話の終わりに句点がある行とない行がある、数字が漢数字だったり算用数字だったりする。この記事は、そうした揺れを提出前に整えたい人に向けて、小説で広く使われている表記の慣習と、それより優先すべき提出先の指定を分けて説明します。後半では、揺れた段落を統一した修正例と、自分用の表記表、検索で揺れを拾う手順を示します。
表記の決まりは三つに分けて考える
小説の表記には、法律や試験の正解のような「唯一のルール」はありません。実際に従うものは、次の三つに分かれます。
| 種類 | 例 | 従う強さ |
|---|---|---|
| 提出先の指定 | 応募要項の書式、編集部からの指示、投稿サイトの記法や自動処理 | 最優先。指定があれば慣習より優先する |
| 作者の表記の方針 | 「数字は漢数字」「会話の最後に句点は付けない」など、作品ごとに決めたこと | 作品の中で統一する。意図的な例外は記録する |
| 一般的な慣習 | 三点リーダーを二つ重ねる、段落の頭を一字下げる、など | 方針を決めるときの出発点。破っても誤りとは限らない |
慣習は媒体によっても違います。たとえば、文化審議会が示した「公用文作成の考え方」では、括弧の中で文が終わる場合には閉じ括弧の前に句点を打つ、という目安が示されています(引用部分や、文になっていない語句には打たない、などの例外つき)。一方、現在出版されている小説では、会話の閉じかっこの直前には句点を付けない書き方が広く見られます。どちらが正しいかではなく、公用文と小説とで、よく使われる書き方が違うということです。
この記事で「一般的」「慣習」と書くものは、出版物で広く見られる書き方の目安です。応募先や編集部の指定、投稿サイトの表示がそれと違えば、そちらに合わせてください。
句読点とかぎ括弧の基本
句点と読点
- 句点は「。」、読点は「、」を使うのが一般的です。横書きの文書では「,」「.」を使うこともありますが、小説では縦書き・横書きとも「、」「。」が多く使われます。どちらを使う場合も、一つの作品の中で混ぜないようにします。
- 読点の位置は、表記の決まりというより文のリズムの問題です。打つ位置で意味が変わる文(「警官は、自転車で逃げる男を追った」と「警官は自転車で、逃げる男を追った」)だけは、読み手が取り違えない位置にあるかを確かめます。
かぎ括弧と二重かぎ括弧
| 記号 | 小説でのよくある使い方 |
|---|---|
| 「」 | 会話。心の中の言葉や、強調したい語句に使うこともある |
| 『』 | 「」の中でさらに会話や言葉を引くとき(入れ子)。書名・作品名にも使う |
| () | 補足。心の声に使う作品もある |
| 〈〉《》【】 | 看板の文字、電話越しの声、通信など、作品ごとに役割を決めて使う |
入れ子は「『』は「」の中」と覚えておけば十分です。『』をさらに入れ子にする必要が出たら、文を分けられないかを先に考えます。
〈〉や《》などをどの場面に使うかには慣習の決まりがほとんどないので、作品の中で役割を一つに決めて、表記表に書いておきます。
注意投稿サイトでは、括弧が記法として扱われることがある
- カクヨムでは、《》はルビの記法です。本文に《》をそのまま表示したい場合は、公式ヘルプのとおり記号の直前に「|」を置きます。
- 小説家になろうでは、親文字が漢字でルビがひらがな・カタカナの場合、《》の代わりに丸括弧でもルビになります。「山田太郎(やまだたろう)」のように読みを丸括弧で書くとルビとして表示されるので、括弧のまま見せたい場合は丸括弧の直前に「|」を入れます。
Wordで決めた括弧の使い方が、そのまま投稿サイトで同じように表示されるとは限りません。投稿前にプレビューで確かめてください。ルビの記法の違いは小説原稿のルビ・傍点の付け方で詳しく扱っています。
段落の頭の字下げ
段落の書き始めは全角の空白で一字下げ、かぎ括弧で始まる会話の行は下げない、というのが一般的な形です。
小説家になろうの「自動字下げ」機能も、行の先頭に全角スペースを一つ入れる機能で、かぎ括弧「」で始まる行と、すでに先頭に全角スペースがある行は処理しないと説明されています。ヘルプには処理後に字下げの有無を確かめるよう書かれているので、機能を使った場合も、〈〉や()で始まる行がどう扱われたかは自分の目で確認します。
半角スペースや複数の空白で字下げをすると、表示する環境によって幅が変わります。字下げは全角スペース一つにそろえます。
会話の終わりの句点と、改行の付け方
閉じかっこの直前の句点
現在の小説では、「行くよ。もう決めたんだから」のように、会話の中の文と文の間には句点を打ち、閉じかっこの直前には打たない書き方が広く使われています。
閉じかっこの前に句点を打つ書き方(「行くよ。もう決めたんだから。」)も、誤りではありません。以前の出版物や、公用文の目安に沿った文書では、こちらの形が見られます。応募先や編集部の指定があればそれに従い、なければどちらかに決めて作品全体でそろえます。
会話のあとの地の文
会話の行と地の文の行の関係にも、よく使われる形がいくつかあります。
| 形 | 例 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 会話を一行に立て、地の文は改行して字下げ | 「行くよ」(改行) 遥は言った。 | 小説でよく見られる基本の形 |
| 地の文の中に会話を入れる | 遥は「行くよ」と言った。 | 短い言葉を流れの中で伝えたいとき |
| 会話の行を続けて並べる | 「母さんは何て」(改行)「好きにしなさいって」 | 誰の言葉か分かる範囲で、やり取りの速さを出す |
地の文の中に会話を入れるときは、閉じかっこのあとに「と」「って」などが続くので、閉じかっこの直前の句点は付けません。会話がどの人物のものか伝わるか、という内容の問題は小説のセリフを書き分ける方法で扱っています。
三点リーダーとダッシュは、二つ重ねるのが一般的
三点リーダー「……」
三点リーダー(…)は、言葉が途切れる・沈黙する・余韻を残すところに使います。出版物では「……」と二つ重ねて使うのが一般的です。
| 書き方 | 扱い |
|---|---|
| …… | 一般的な形(三点リーダー二つ) |
| … | 一つだけの形。慣習からは外れるが、投稿サイトなどでは見かける。使うなら作品全体でそろえる |
| ・・・ / ・・・ | 中黒(・)を並べたもの。三点リーダーとは別の文字で、点の位置や間隔がそろわない。三点リーダーに直すのが無難 |
| ………… | 四つ以上。長い沈黙を強く見せたいときに、意図して使うことがある |
小説家になろうのスマートフォン版の「記号挿入」機能では、三点リーダーのボタンで「…」が一つ入ると説明されています。二つ重ねる方針なら、ボタンを二回押します。
ダッシュ「――」
ダッシュ(―)は、言いかけてやめる、言葉を言い換える、話題が急に変わる、語句を挿入する、といった場面で使います。こちらも「――」と二つ重ねるのが一般的です。
ダッシュは、形の似た別の文字と取り違えやすい記号です。
| 見た目が似ている文字 | 何の文字か | 小説でダッシュとして使うか |
|---|---|---|
| ― | 全角のダッシュ(ダーシ) | 使う。二つ重ねて「――」 |
| ー | 長音(伸ばし棒)。「コーヒー」の「ー」 | 使わない。縦書きでは向きも変わる |
| - | 半角のハイフン | 使わない |
| 一 | 漢数字の「いち」 | 使わない |
| ─ | 罫線 | 使わない。環境によって太さや長さが違って見える |
小説家になろうの「記号挿入」のヘルプでも、全角ダッシュは半角ハイフンや伸ばし棒ではない、と注意が書かれています。日本語入力ソフトによっては「だっしゅ」と入力して変換すると候補に出ます。出ない場合は記号の一覧から探し、全角のダッシュ(―)を選びます。
感嘆符・疑問符のあとは一字空ける
「!」「?」のあとに文が続く場合は、全角の空白を一つ入れるのが一般的です。
| 位置 | 書き方の例 | 空白 |
|---|---|---|
| 文の途中で、あとに文が続く | 「え! なんで持ってるの?」 | 入れる(全角一つ) |
| 閉じかっこの直前 | 「なんで持ってるの?」 | 入れない |
| 段落の最後 | 本当に、あれが最後だったのか? | 入れない |
| 二つ重ねる | 「嘘でしょ!?」 | 二字のあとに文が続くなら、その後ろに一字空ける |
「!」「?」は文の区切りの役目をするので、そのあとに句点は付けません(「行くの?。」とはしない)。また、全角と半角(「!」「?」)を混ぜないようにします。横書きの投稿サイトで半角の「!?」を使う場合も、作品の中でそろえておきます。
数字・英字・空白を決める
数字や英字の書き方は、縦書きか横書きかで慣習が変わります。
| 項目 | 縦書きでよく使われる形 | 横書きでよく使われる形 |
|---|---|---|
| 時刻・個数など | 漢数字(三時十五分、二人) | 漢数字、または算用数字(3時15分) |
| 年 | 漢数字(二〇二六年など) | 算用数字(2026年)が多い |
| 熟語・慣用句の数字 | 漢数字(一人前、二の足を踏む) | 漢数字(熟語は横書きでも算用数字にしない) |
| 英字の略語 | 全角(SNS)、またはカタカナに言い換える | 半角(SNS)が多い |
漢数字で数を書く方法にも、「十五」と単位の字を入れる書き方と、「一五」と位を並べる書き方があります。どちらかに決めます。
縦書きで半角の数字や英字を使うと、Wordなどでは文字が横に寝た向きで表示されます。Wordには、縦書きの中で二桁の数字を横に並べて一字分に収める「縦中横」の機能があります(Windows版では[ホーム]タブの[拡張書式]から)。ただし、テキストファイルで提出すると、この設定は残りません。縦書きの原稿をWordで整える手順はWordで小説原稿を整える方法で扱っています。
空白は、段落の頭の字下げと「!」「?」のあとにだけ、全角で一つ入れるのが基本です。文字の位置をそろえるために空白を何個も入れると、行の字数や表示する端末が変わったときに崩れます。
意図的な例外は、理由と一緒に残す
慣習から外れた書き方が、作品の表現になっている場合もあります。
- 長い沈黙を見せるために、三点リーダーを六つ、八つと重ねる。
- 電光掲示板やスマートフォンの画面の文字を、画面に出ているとおり算用数字や英字で書く。
- 手紙や文書の引用を、元の文書らしく見せるために、閉じかっこの前に句点を付ける。
- 感情が高ぶった場面で「!」を重ねる。
こうした例外は、同じ種類の場面では同じ書き方にすることと、表記表に理由を書いておくことが大切です。例外の理由が書いてあれば、あとで揺れを直すときに誤って統一してしまうことを防げます。地の文の語り方そのもの(説明・描写・心の声の使い分け)は表記とは別の問題なので、小説の地の文の書き方を参照してください。
作例:揺れた段落を、方針に沿って統一する
同じ場面を、表記が揺れた版と、方針に沿って統一した版で比べます。方針は「縦書きで提出する、漢数字、三点リーダーとダッシュは二つ重ね、会話の閉じかっこの前に句点なし、!?のあとに文が続けば一字空ける」です。
駅のホームの場面(表記の統一)
揺れた版
駅のホームで、遥は時計を見た。3時15分。電車はまだ来ない。
「本当に行くの・・・?」
隣で兄の圭が言った。
「行くよ。もう決めたんだから。」
「母さんは何て」
「『好きにしなさい』って。……それだけ。」
遥はそう言って笑った。笑ったつもりだった。
「そっか…まあ、お前がいいならいいけど」
圭はポケットから何かを出しかけて、やめた。ーー切符だ。昨日、遥が捨てたはずの。
「え!なんで持ってるの?」
「拾った」
十五時二十分、電車が入ってきた。
統一した版
駅のホームで、遥は時計を見た。三時十五分。電車はまだ来ない。
「本当に行くの……?」
隣で兄の圭が言った。
「行くよ。もう決めたんだから」
「母さんは何て」
「『好きにしなさい』って。……それだけ」
遥はそう言って笑った。笑ったつもりだった。
「そっか……まあ、お前がいいならいいけど」
圭はポケットから何かを出しかけて、やめた。――切符だ。昨日、遥が捨てたはずの。
「え! なんで持ってるの?」
「拾った」
三時二十分、電車が入ってきた。
変更の理由
- 数字:全角の算用数字「3時15分」を漢数字にした。さらに、最後の「十五時二十分」は二十四時間制で、冒頭の書き方と食い違っていたので「三時二十分」にそろえた。表記の統一は、時刻の言い方のような内容の食い違いを見つけるきっかけにもなる。
- 三点リーダー:中黒の「・・・」と一つだけの「…」を「……」にした。『』のあとの「……」はもともと方針どおりなので触っていない。
- ダッシュ:長音の「ーー」をダッシュ「――」にした。見た目が似ているので、検索で探さないと見落としやすい。
- 会話の句点:二か所の閉じかっこ直前の「。」を削った。会話の中の文と文の間の句点(「行くよ。」「って。」)は残している。
- 感嘆符:「え!」のあとに文が続くので、全角の空白を入れた。「持ってるの?」は閉じかっこの直前なので空けない。
- 入れ子の括弧:『好きにしなさい』は「」の中の会話なので、二重かぎ括弧のままでよい。
- 横書きの投稿サイトに載せる版なら、数字を「3時15分」のような算用数字にそろえる方針もある。その場合も、作品の中で混ぜないことが大切。
表記表を作り、検索で揺れを拾う
方針が決まったら、表記表(スタイルシート)に書き出します。作品ごとに一枚作っておくと、続きを書くときや、ほかの人に読んでもらうときにも使えます。
ひな形表記表(コピーして使えます)
作品名: 提出先: (応募要項・投稿サイトで指定されている表記: ) 縦書き/横書き: 【句読点】句点「。」読点「、」/その他: 【会話の閉じかっこ】直前の句点:付けない・付ける 【括弧の役割】「」会話 『』入れ子・書名 () 〈〉 《》: 【三点リーダー】「……」二つ重ね/例外: 【ダッシュ】「――」二つ重ね(長音「ー」と区別) 【!?】あとに文が続けば全角一字空け/半角・全角: 【数字】漢数字・算用数字/単位の字(十五・一五)/年の書き方: 【英字】全角・半角・カタカナ: 【字下げ】段落の頭は全角一字/会話の行は下げない 【意図的な例外】場面・書き方・理由: 【表記を決めた語】(例:「わかる/分かる」「ください/下さい」など):
検索で揺れの候補を拾う
表記表ができたら、Wordなどの検索機能(Windows版Wordでは Ctrl+F で検索、Ctrl+H で置換)で、揺れの候補を一つずつ探します。
| 検索する文字 | 見つかる揺れ | 直すときの注意 |
|---|---|---|
| ・・ | 中黒を並べた三点リーダー | 「…」の数を方針に合わせる |
| … | 一つだけ・三つ以上の三点リーダー | 意図的に重ねた箇所(例外)は残す |
| ー | 長音を使ったダッシュ | カタカナ語の長音(「コーヒー」など)がすべて見つかるので、一つずつ見る |
| 。」 | 閉じかっこ直前の句点 | 手紙や文書の引用など、例外として残す箇所がないか見る |
| ! と ? | あとの空白の有無、全角・半角 | 閉じかっこの直前、段落の最後では空けない |
| 0〜9 の数字 | 算用数字の混在 | 掲示板の表示など、例外として算用数字にした箇所は残す |
注意一括置換で崩れやすい例
- 「ー」を「―」に一括置換すると、「コーヒー」「スーパー」などカタカナ語の長音まで、すべてダッシュになります。
- 「。」」を「」」に一括置換すると、手紙の引用など、句点を付ける例外として残した箇所まで消えます。
- 数字を一括で漢数字にすると、「3番線」のような固有の表示や、意図して算用数字にした画面の文字まで変わります。
[すべて置換]は使わず、[次を検索]で一つずつ確かめてから置換するのが安全です。置換の前には、ファイルの複製を保存しておきます。
作った表記表は、文賢のように辞書へ独自の表記ルールを登録できる校正ツールに入れておくと、長い原稿や続き物でも同じルールで揺れの候補を拾えます。ツールの指摘は候補なので、採用するかどうかは表記表に照らして一件ずつ決めます。
検索で拾った揺れを、文脈を見ながら直し終えたら、もう一度頭から通して読みます。表記の統一は、作品の内容に触れない最後の仕上げの作業です。推敲の途中で何度も表記を直すより、筋や場面が固まってから一度に行うほうが手戻りがありません。
自分では揃えきれない量の原稿や、出版前の原稿を第三者に確かめてもらいたい場合は、校正を依頼する方法もあります。添削との違いや依頼範囲の決め方は小説の校正サービスの選び方で扱っています。