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発表・本作り

小説同人誌の入稿前チェック|本文・表紙・試し刷りで確認すること

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この記事の答え

入稿前は、本文データ・表紙データ・注文内容・印刷所の指定の四つが互いに合っているかを照らし合わせます。

  • 本文はページ数と順番、綴じ方向と左右、ルビ・禁則、フォントの埋め込み、奥付を見る
  • 表紙は確定したページ数で計算した背幅、塗り足し、文字の位置、表1と表4の左右を見る
  • 画面での確認、実寸の試し刷り、印刷所のテンプレートとの照合は見つかる不備が違うので、三つとも行う。直したら、入稿するファイルそのものを開き直して確かめる
目次

本文も表紙もできあがり、あとは入稿するだけ。この段階で確かめたいのは、文章の誤字とは別の、ページの順番、背幅、塗り足し、フォントといった「本の形」にかかわる不備です。この記事では、本文と表紙を分けた確認表と、架空の入稿データに仕込んだ不備の見つけ方・直し方を示します。最後に、どのファイルを入稿するかを確定させるまでの手順をまとめます。

入稿前に照らし合わせる四つのもの

入稿前の確認は、データを眺めて「おかしなところがないか」を探すより、四つのものを互いに照らし合わせるほうが見落としが減ります。

照らし合わせるもの 中身 食い違いの例
本文データ 本文のPDFなど。扉・目次・奥付を含む 本文は170ページなのに、注文が168ページ
表紙データ 表1・背・表4をつなげた表紙のファイル 背幅が、本文が確定する前のページ数で作られている
注文内容 判型、綴じ方向、製本、ページ数、部数、用紙 注文は右綴じなのに、表紙の表1と表4が左綴じの並び
印刷所の指定 入稿ガイド、テンプレート、ファイル形式、ファイル名の決まり 指定はPDFなのに、別の形式で書き出している

確認の方法も三つに分けます。それぞれ見つかる不備が違うので、どれか一つで済ませないことが大切です。

確認の方法 見つけやすい不備 見つけにくい不備
画面での確認(PDFを開く) ページ数、ページの順番と左右、フォントの埋め込み、用紙サイズ 文字の大きさや余白の実際の印象
実寸の試し刷り ノド側の読みにくさ、ルビの詰まり、ノンブルの大きさ、文字の切れ 埋め込まれていないフォント、わずかなサイズの違い
印刷所の指定との照合 ファイル形式、ファイル名、塗り足し、背幅、奥付に必要な記載 作品の中身の誤り(これは校正で見る)

印刷所の入稿ガイドとテンプレートを手元に置く

確認の物差しになるのは、注文する印刷所の入稿ガイドです。同じ項目でも印刷所によって指定が違うので、別の印刷所の案内や一般論で代わりにしないでください。

たとえば、次のように違いがあります。

項目 トム出版の入稿前チェック項目 緑陽社の案内
本文の保存形式 PSD、PDF、TIFF、EPSのいずれか 小説本セットはPDF推奨。Word等も受付(Word入稿は締切が早まる)
本文のサイズ 原寸(A5は148×210mm)に周囲3mmの塗り足し PDFの場合、周囲が白なら塗り足しは不要で、原寸で作る
ノンブルとファイル名 ノンブルはファイル名と同じ。通し番号で全ページに付ける 本文のファイル名はノンブルと同じ数字。全ページにノンブル(見せない場合は隠しノンブル)
奥付 奥付があり、印刷所(トム出版)の名前が入っているか (チェックリストに奥付の項目はない)

印刷所がテンプレートを配っている場合は、表紙のテンプレートを自分のデータの下に重ねて、背の位置や塗り足しの線が合っているかを見ます。テンプレートの背幅がページ数ごとに分かれている場合は、確定したページ数のものを使っているかも確かめます。

まだ印刷所を決めていない、または比べている途中なら、小説同人誌の印刷所の選び方で仕様と見積もりの比べ方を確認してから入稿ガイドを読み込んでください。

作例:架空の入稿データで見つかった不備

ここからは、架空の短編集『坂の上の郵便局』(文庫判、右綴じ、くるみ製本、本文170ページ)の入稿データで、確認の手順を見ていきます。確認の手順を示すために、このデータには不備を六つ入れてあります。背幅などの数値は説明のための架空の値です。

番号 見つかった不備 見つけた方法 原因 直し方
1 「転居届」の扉のあとの白ページが抜け、以降のページの左右が逆になっていた PDFを見開き表示にして、各話の扉の位置を目次と照合 各話を別々にPDFにして結合したとき、白ページを1枚入れ忘れた 白ページを入れて書き出し直す。全体が170ページに戻ったか確かめる
2 表紙の背幅が8mmで作られていたが、確定した170ページでは9mmだった 印刷所の背幅計算に確定ページ数と用紙を入れ、表紙データの幅と比較 表紙を、組版前の見積もり(162ページ)で作っていた 背幅9mmで表紙を作り直す。表紙を頼んだ人に確定値を伝える
3 表紙イラストの背景が仕上がりの線で切れていて、塗り足しがなかった 表紙をPDFで開いて用紙サイズを確認し、四隅を拡大して背景の端を見た イラストを仕上がりサイズぴったりで受け取っていた 背景を塗り足しの外側まで延ばしたデータを用意する
4 「几帳面」のルビが消え、「隣町」のルビは位置がずれていた 実寸の試し刷りで、ルビの多いページを読んだ PDFにする方法を途中で変えた 元のファイルでルビが設定されているか確かめ、書き出し方を戻してから全ページのルビを確認する
5 ノンブルだけ、埋め込まれていないフォントになっていた PDFのプロパティでフォントの一覧を確認 ページ番号の欄に、使った覚えのない書体が自動で設定されていた ノンブルの書体を本文と同じ埋め込み可能なものに変えて、書き出し直す
6 奥付の発行日が前回の本のままで、印刷所名が見積もりを比べた別の会社になっていた 奥付を注文内容と一行ずつ照合 前に作った本の奥付を流用した 発行日と印刷所名を直す。連絡先も現在のものか確かめる

六つのうち、画面だけで見つかったのは1・3・5、試し刷りで見つかったのは4、照合で見つかったのは2・6でした。この作例では、どれか一つの方法だけでは半分ほどしか見つかりません。

不備5のように、本文には使っていない書体がノンブルや空白に紛れ込むことは、緑陽社のPDFチェックの解説でも注意されています。スペース、改行、ノンブル、ヘッダー、フッターに、使った覚えのないシステムフォントが自動的に使われることがあるので、すべてのフォントが埋め込まれているか確かめるよう案内しています。

本文のチェック表

本文は、次の三つのまとまりで確認します。

ページ数・順番・綴じ方向・奥付

確認表本文:ページと構成

  • PDFのページ数が、注文するページ数(印刷所の単位に合わせたもの)と一致している
  • 本扉、目次、各話の扉、白ページ、あとがき、奥付が、予定した順番と左右にある
  • 右綴じ(縦書き)の場合、ページの左右の並びが綴じ方向に合っている
  • 目次のページ番号が、組み上がった本文のページと一致している
  • ノンブルが全ページにある(見せないページは隠しノンブル)。印刷所の指定する大きさと位置になっている
  • 奥付の書名、筆名、発行日、発行者、連絡先、印刷所名が、注文内容と一致している

ページの左右は、PDFを見開き表示にすると確かめられます。右綴じの本は、本文の1ページ目が左ページになる並びです。シメケンプリントの小説原稿の解説では、扉の追加やPDFの結合でページの左右が逆になることがあると注意しています。作例の不備1はこれにあたります。

文字・ルビ・禁則

確認表本文:文字とルビ

  • ルビの多いページで、ルビが消えたり、ずれたり、隣の行に触れたりしていない
  • 行頭に句読点や閉じ括弧が来ていない。「……」「――」が行をまたいで分かれていない
  • 半角の数字や「!?」が、縦書きの中で横に寝ていない
  • 文字が仕上がりの線の近くにない(断ち切りで切れない位置にある)
  • ノド側の文字が、綴じ側に寄りすぎていない

緑陽社の入稿原稿チェックリストでは、切れてほしくない文字は断ち切りから2mm以上内側に置くこと、PDFの文字原稿ではノド側が詰まりすぎていないかを確かめることを挙げています。

この段階で誤字に気づいたら、直してかまいません。ただし、直したことで改行の位置がずれ、ページの終わりが変わることがあります。一文字でも直したら、そのページ以降のページ数と目次を見直すことを忘れないでください。

フォントと画像

確認表本文:フォントと画像

  • PDFのプロパティで、すべてのフォントに「埋め込みサブセット」と表示されている
  • PDFの用紙サイズが、印刷所の指定するサイズになっている
  • 挿絵がある場合、印刷所の指定する解像度で入っている
  • 文字が別の書体に置き換わっていない(画面と試し刷りの両方で見る)

緑陽社の解説では、Adobe Acrobat ReaderなどでPDFを開き、「ファイル」→「プロパティ」の「概要」で用紙サイズを、「フォント」でフォント名のあとに「埋め込みサブセット」とあるかを確かめる手順を案内しています。PDFにしたときに0.1mm単位でサイズが変わることがありますが、その程度の差ならそのまま入稿できるとしています。

挿絵をWordに貼っている場合は、画像の解像度にも注意します。緑陽社のWord原稿作成マニュアルでは、Wordの標準設定では画像が220ppiに変換されるため、「ファイル内のイメージを圧縮しない」にチェックを入れるよう案内しています。

表紙のチェック表

表紙は本文と別のファイルで、確認する点も違います。

確認表表紙:サイズと背

  • 表紙のサイズが「表1+背幅+表4」に、印刷所の指定する塗り足しを加えた大きさになっている
  • 背幅が、確定したページ数と注文する本文用紙で計算した値になっている
  • 右綴じの場合、表紙を広げて外側から見たとき、左が表1、右が表4の並びになっている
  • 背表紙の文字が背の中央にあり、背の端まで詰まっていない
  • 印刷所のテンプレートを重ねて、仕上がり線・背の線・塗り足しの線が合っている

確認表表紙:絵柄・文字・色

  • 仕上がりの端まである絵柄や背景が、塗り足しの外側まで延びている
  • 題名、筆名などの文字が、仕上がり線の近くで切れない位置にある
  • 成人向けの内容を含む場合、印刷所が求める表記を入れている
  • 色の形式(RGBかCMYKか)が、印刷所の指定に合っている
  • 画像を統合するよう指定されている場合、レイヤーを統合している

背幅は、ページ数と本文用紙の厚さで決まります。シメケンプリントや緑陽社は、サイトに背幅を計算する道具を用意しています。トム出版の入稿前チェック項目でも、表紙のサイズ(表1+背幅+表4+周囲3mmの塗り足し)と、特に背幅の計算が正しいかを最初の項目に挙げています。

右綴じと左綴じで表1と表4の左右が逆になることは、シメケンプリントの表紙の作り方でも説明されています。前に作った本と綴じ方向が違う場合は特に、前の本の並びのまま作っていないかを、注文内容の綴じ方向と照らし合わせます。

表紙のイラストやデザインを人に頼んでいる場合は、確定した背幅と塗り足しの指定を、頼んだ人に正確に伝えたかも確認項目に入れます。依頼のときに伝える項目は小説同人誌の表紙を依頼する方法で扱っています。

実寸の試し刷りで確かめる

画面では、拡大や縮小をして見ているため、文字の大きさや余白の印象が実際と変わります。入稿する直前のPDFを、倍率100%(拡大縮小なし)で印刷して確かめます。

手順入稿前の試し刷りの手順

  1. 入稿するPDFそのものを、印刷の倍率を100%にして刷ります。文庫判なら見開き2ページ分がA4用紙に収まります。
  2. 少なくとも、本扉、目次、各話の最初のページ、ルビの多いページ、会話の多いページ、奥付を刷ります。時間があれば全ページを刷り、最後の読み直しを紙で行います。
  3. 仕上がりの線で紙を切るか、線を引いて、実際の本の大きさにします。見開きに並べ、ノド側を少し丸めて持って読みます。
  4. 表紙も100%で刷ります。文庫判の表紙なら、表1・背・表4をつなげた展開図(塗り足し込みで横216mm+背幅、縦154mm)がA4の横向きに収まるので、本文の束に巻いて、背の位置と題名の位置を確かめます。
  5. 見つかった不備を記録し、直したら、直した箇所だけでなくその前後のページも刷り直します。

試し刷りで「文字が小さい」「余白が狭い」と感じた場合、それは不備というより設定の問題です。入稿直前に文字の大きさや余白を変えると、ページ数、目次、背幅まで連動して変わります。締切に余裕がない場合は、読めないほどでなければ今回は入稿し、次の本で直す判断もあります。設定から見直すときは小説同人誌の本文レイアウトの手順に戻ってください。

家庭用プリンターの試し刷りでは、製本したときの開き具合や、背の題名の位置までは確かめきれません。部数の多い本や初めての判型では、1冊から受ける印刷所で見本を一冊作ってから本番を注文する方法もあります。見本と本番で印刷所が違うと紙や印刷方式も変わるので、見本で確かめるのは判型の大きさ、組み方、ページの順番、背の位置にとどめます。

ファイル名と最終版を確定する

最後に、「どのファイルを入稿するか」を一つに決めます。修正を重ねると、似た名前のファイルが増え、直す前のファイルを送ってしまう事故が起きます。

手順最終版を確定する手順

  1. 入稿用のフォルダを新しく作り、入稿するファイルだけを入れます。作業中のファイルや、直す前のPDFは入れません。
  2. 印刷所の決まりに合わせてファイル名を付けます。緑陽社の案内では、ファイル名は半角英数字にし、本文はノンブルと同じ数字(100ページ以上なら003のように3桁)にします。PDFは複数ページを1つのファイルにまとめてもよいとしています。
  3. 入稿用フォルダに入れたファイルを、もう一度開き直します。開いたファイルで、ページ数、用紙サイズ、フォントの埋め込み、直した箇所を確かめます。
  4. 注文画面の仕様(判型、綴じ方向、ページ数、部数、用紙)を、入稿するファイルと見比べてから入稿します。
  5. 入稿したファイルの複製を、作業用とは別の場所に保存しておきます。増刷や問い合わせのときに、どのファイルを送ったかが分かります。

直したファイルを開き直すのは、書き出しの設定が前の状態のままになっていたり、保存先を間違えて古いファイルを入稿用フォルダに入れていたりすることがあるからです。作業中の画面で確認したつもりでも、入稿するファイルそのものを見ないと確かめたことになりません。

原稿の版をどう残すか、保存先や履歴の管理は小説原稿のバックアップ方法で扱っています。

確認の記録を残す

複数の人で作る本や、表紙を人に頼んだ本では、誰が何を確かめたかを残しておくと、入稿直前に確認が抜けたかどうかがすぐ分かります。

ひな形入稿前チェックの記録(コピーして使えます)

書名:
印刷所・注文番号:
判型/綴じ方向/製本:
本文ページ数(注文):    本文ページ数(PDF):
背幅(計算値):    表紙データの背幅:

【本文】確認した日・担当・結果(○/要修正)
・ページ数と順番、左右:
・目次とページ番号:
・ノンブル:
・ルビ・禁則:
・フォントの埋め込み:
・用紙サイズ:
・奥付:

【表紙】確認した日・担当・結果
・サイズと背幅:
・表1/表4の左右:
・塗り足し:
・文字の位置:
・色の形式:

【試し刷り】刷った日・刷ったページ・気づいたこと:

【最終版】入稿用フォルダのファイル名:
開き直して確認した日・担当:

作例の『坂の上の郵便局』では、不備1〜6を直したあと、この記録の「最終版」の欄に入稿するファイル名を書き、それ以外のPDFを入稿用フォルダから外してから入稿しました。