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発表・本作り

小説同人誌の表紙を依頼する方法|イラスト・デザインの範囲と依頼文

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この記事の答え

表紙の依頼は、まず絵だけを頼むのか、題名の文字組みと印刷用データまで頼むのかを決め、その範囲で依頼先に同じ条件を渡します。

  • 伝える仕様は、判型、綴じ方向、ページ数と背幅(確定前なら見込みと確定日)、塗り足し、印刷所のテンプレート、表1・背・表4に入れる文字
  • 決めておく条件は、納期、ラフと修正の回数、追加費用、使ってよい範囲(告知・通販・電子版・増刷)、著作権の扱い、実績公開の時期、納品形式
  • 見積もりは頼む範囲をそろえて比べる。文字だけの表紙で足りる本なら、外注しない選択もある
目次

小説同人誌の表紙を誰かに頼みたいと思っても、「イラストを描いてもらえば表紙になる」と考えて依頼すると、題名の文字、背表紙、塗り足し、入稿データが誰の作業なのか分からないまま進みがちです。この記事では、架空の短編集『坂の上の郵便局』を例に、頼む範囲の決め方、作品の雰囲気と文字情報の伝え方、印刷所の仕様の渡し方、使用範囲や修正の決め方を順に示し、そのまま使える依頼文と見積もりの比較表を作ります。

表紙の作業を「絵・文字・印刷用データ」に分ける

表紙は一つの作業に見えますが、中身は性質の違う作業の組み合わせです。

作業 何をするか 担当する人の例
表紙イラスト 表紙に使う絵を描く イラストレーター
文字のデザイン 題名・筆名の書体、大きさ、位置を決める。題名をロゴのように作ることもある デザイナー、または自分
表紙デザイン 絵と文字を表1(おもて表紙)・背・表4(うら表紙)に配置し、全体を整える デザイナー、または自分
入稿データの作成 印刷所の指定するサイズ・塗り足し・形式にして書き出す デザイナー、または自分

イラストを描く人がデザインまで受けることもあれば、絵だけを描く人もいます。「表紙をお願いします」だけでは、どこまで返ってくるかが依頼先によって変わります。最初に、次のどの形で頼むかを決めます。

頼み方 受け取るもの 自分に残る作業 向いている場合
A:イラストだけを頼む 文字のないイラストの画像 題名・筆名の配置、背と表4、入稿データ 絵は描けないが、文字の配置は自分で決めたい
B:表紙一式を頼む イラスト入りの入稿用データ 依頼内容と仕様を正確に伝えること、受け取ったデータの確認 表紙作りを任せたい。背幅や塗り足しの作業に不安がある
C:デザインだけを頼む 自分の絵・写真、または文字だけで組んだ入稿用データ 絵や写真を用意し、使ってよいものか確かめる 絵はあるが、文字と全体の配置を整えてほしい
D:頼まない ― すべて 文字だけの表紙で作品に合う。予算や日程を本文に回したい

どの形でも、表紙のデータが印刷所の仕様に合っているかを最後に確かめるのは自分です。本文の校正や組版は表紙とは別の作業なので、表紙の依頼先に頼んでも本文は整いません。組版を頼むかどうかは小説同人誌の組版は自作か外注かで比べています。

作例の『坂の上の郵便局』は、全体の計画を立てた段階で「A:イラストだけを頼み、文字入れは自分でする」と決めていました(小説同人誌の作り方の企画表)。この記事では、Bの表紙一式で頼む場合と比べながら進めます。

頼まなくてよい場合を先に確かめる

外注は必須ではありません。次のような本では、文字だけの表紙を自分で作るほうが合うこともあります。

  • 題名の言葉そのものが作品の印象を担っていて、絵を足すと読み手の想像を狭めそうな本
  • 友人や家族に数冊だけ配る本、まず試しに一冊作ってみる本
  • 入稿締切まで日が浅く、依頼先とのやり取りに使える時間がない本
  • 表紙に回す予算を、部数や本文用紙、組版の依頼に使いたい本

反対に、即売会で通りがかった人に手に取ってもらいたい、シリーズの雰囲気を絵で見せたい、背幅や塗り足しのデータ作りを自分でする時間がない、という場合は依頼を考える理由になります。

迷うときは、先に文字だけの表紙を一案だけ自分で作ってみると判断しやすくなります。作ってみて物足りなければ依頼に切り替えればよく、その試作は依頼先に「文字の雰囲気はこう」と伝える見本にもなります。作り方は文字だけの同人誌表紙の作り方で、同じ題名の三案を比べています。

作品の雰囲気と、表紙に載せる文字を決める

依頼先は原稿を全部読むとは限りません。短い言葉と具体的な場面で、何を描いてほしいかを伝えます。

雰囲気は「場面・色・避けたいこと」で伝える

「やさしい雰囲気で」「エモい感じで」のような形容だけでは、描く人によって思い浮かべる絵が違います。作品の中の具体的な物と場面、色、避けたいことを書くと、ずれが小さくなります。

作例『坂の上の郵便局』の雰囲気メモ

どんな本か:海辺の町の小さな郵便局を舞台にした短編集。局員の三上と町の人の五つの話。大きな事件は起きず、手紙や小包をきっかけに人の距離が少し変わる。
描いてほしいもの:坂を上りきったところにある小さな局舎と、そこから見下ろした朝の海。人物を入れる場合は小さく、後ろ姿で。
色:薄い青と生成り(白に近い薄い茶)を中心に、郵便の赤を一か所だけ。
避けたいこと:人物の顔を大きく描くこと(読者が局員の顔を自由に思い描けるように)。夜の場面。
参考にしてほしいもの:依頼先の過去の作品のうち、人物より風景の比重が大きいもの。

参考画像を添える場合は、依頼先自身の過去作の中から選ぶのが無難です。他の本の表紙を見せて「これと同じ構図で」と頼むと、他人の作品に似せた表紙になりかねません。依頼文に紹介文を添えると、話の筋を短く伝えられます。読者向けの紹介文の書き方は小説の紹介文の書き方で扱っています。

表1・背・表4に入れる文字を一覧にする

表紙に入れる文字は、依頼の前に確定させておきます。依頼のあとで題名や筆名を変えると、デザインのやり直しになるからです。

場所 入れる文字 『坂の上の郵便局』の記入例
表1 題名、筆名。必要ならサークル名、副題 坂の上の郵便局/筆名
背 題名、筆名(背が細いときは題名だけにすることもある) 坂の上の郵便局/筆名
表4 紹介文、サークル名。成人向けの内容なら印刷所が求める表記 紹介文(約120字)/サークル名

文字の表記(漢字か、ひらがなか、ルビを付けるか)や、筆名の読みも一緒に伝えます。成人向けの本では、トム出版の入稿前チェック項目のように、表紙に「成人向」などの表記があるかを確認項目にしている印刷所もあります。

印刷所の判型・背幅・塗り足しを確かめてから頼む

表紙を印刷に使えるデータにするには、本の大きさと背の幅が必要です。ここが曖昧なまま頼むと、完成した絵が印刷所のサイズに合わない、ということが起きます。

表紙は「表4・背・表1」をつなげた一枚で作る

くるみ製本(背を糊で固めて表紙でくるむ製本)の表紙は、表1・背・表4を一続きにしたデータで作るのが基本です。緑陽社の原稿作成の基本では、表紙・裏表紙・背表紙を1つのファイルで作るよう案内し、別のファイルにする場合は背表紙の有無と、背を表1・表4のどちらから取るかを明記するよう求めています。

サイズは、仕上がりの大きさに塗り足し(断ち落としで白い縁が出ないよう、外側に延ばしておく部分)を加えます。緑陽社とトム出版の案内では、どちらも周囲3mmの塗り足しを求めています。緑陽社はA5判の表紙を「タテ216mm、ヨコ302mm+背幅」と示しています。

作例の文庫判で計算すると、次のようになります。

項目 計算 寸法
仕上がりの横幅 表4 105mm+背 9mm+表1 105mm 219mm
仕上がりの高さ 文庫判の高さ 148mm
塗り足しを含む横幅 219mm+左右3mmずつ 225mm
塗り足しを含む高さ 148mm+上下3mmずつ 154mm

背の9mmは、170ページの本文から見込んだ仮の値です。実際の背幅は、確定したページ数と本文用紙の厚さから、注文する印刷所の計算で出します。シメケンプリントには、用紙(小説用の紙を含む)とページ数を選んで背幅を出す背幅計算機と、背の長さを指定できる表紙テンプレートがあります。緑陽社にも背幅計算ツールと原稿テンプレートがあります。

右綴じと左綴じでは、表1と表4の左右が逆になります。縦書きの小説に多い右綴じでは、表紙を広げて外側から見たとき、左が表1、右が表4です。シメケンプリントの案内でも、この左右の違いに注意するよう書かれています。依頼先が横書きの本の表紙を多く手がけている場合もあるので、綴じ方向は必ず伝えます。

文字と大事な絵柄を置かない範囲を伝える

断ち落としの位置は、製本のたびにわずかにずれます。緑陽社の案内では、断ち切り線から2mm付近に大事な文字や絵柄を置かず、5mm以上内側に入れると余裕が生まれるとしています。表紙一式を頼むなら依頼先が配慮する部分ですが、イラストだけを頼む場合は、自分が文字を置く位置に細かな描き込みが来ないよう、構図の段階で伝えておきます。

背幅が決まる前に絵を頼むときの工夫

小説同人誌の作り方の工程表では、表紙イラストの依頼は入稿の10週前、背幅の確定は3週前でした。依頼先の予定を押さえるには早く頼む必要がありますが、背幅はページ数が決まるまで分かりません。この順番のずれは、次のように扱います。

  • 背幅は「見込みの値」と「確定値を伝える日」を最初に伝える
  • 絵が背や表4まで続く構図なら、背幅が少し増えても足りるよう、横幅に余裕を持たせて描いてもらう
  • 背と表4を単色や模様にして、絵は表1に収める構図にすると、背幅の変更に強い
  • 表紙一式を頼む場合は、背幅が変わったときの調整が料金に含まれるかを見積もりの段階で確かめる

電子書籍の表紙と紙の表紙は寸法が違う

電子版も出す予定があるなら、紙の表紙をそのまま使えるとは限りません。たとえばKindle ダイレクト・パブリッシングの表紙画像の案内では、推奨寸法を高さ2,560×幅1,600ピクセル、理想的な縦横比を1.6:1以上、色はRGBとしています。文庫判の表1は148÷105で約1.41:1なので、そのまま当てはめると縦横比が合いません。電子版にも使うなら、使用範囲に電子版を入れ、別サイズの書き出しやトリミングの可否を最初に相談します。電子書籍の作り方全体は小説を電子書籍にする方法で扱っています。

納期・修正・使用範囲・実績公開・納品形式を決める

仕様と並んで、取り決めておく条件があります。ここを依頼文の段階で書いておくと、見積もりを同じ条件で比べられ、あとで「そこまでは含まれていない」という食い違いが起きにくくなります。

決めること 決める内容の例 決めておく理由
納期 ラフ(構図案)、完成、背幅確定後の調整、それぞれの日付 入稿締切から逆算して、間に合うか確かめるため
ラフと修正 ラフの案数、修正の回数、どの段階で何を直せるか 完成後の構図変更は、描き直しに近い作業になることがある
追加費用 背・表4まで描く場合、文字なし版、急ぎ、回数を超えた修正 基本料金に何が含まれるかは依頼先で違う
使用範囲 同人誌の表紙、増刷、通販の商品画像、SNSの告知、お品書き、電子版、グッズ 範囲の外の使い方には、別に了解が必要になる
著作権の扱い 使用範囲を決めて使うことを認めてもらうのか、権利そのものを移すのか 依頼先によって前提が違い、条件や料金にも関わる
加工の可否 トリミング、色の調整、文字を重ねること 文字入れを自分でするなら必ず確かめる
実績公開とクレジット 依頼先が作品として公開してよい時期、奥付などでの名前の表記 頒布前に表紙が出回るのを避けたい場合がある
納品形式 ファイル形式、寸法(原寸+塗り足し)、解像度、色の形式、文字なし版の有無 印刷所の指定に合わないと、変換や作り直しが要る
支払いとキャンセル 支払いの時期、途中でやめる場合の扱い 本の計画が変わることもある

使用範囲と著作権は、呼び方ではなく中身を決める

表紙の絵を「買い取る」と言っても、その言葉だけでは何ができるのかがはっきりしません。文化庁の「誰でもできる著作権契約マニュアル」では、契約の形を次の二つに分けて説明しています。

  • 利用許諾:著作権を移さず、利用方法を定めて、その利用方法に限って利用を認める
  • 著作権の譲渡:著作権そのものが相手に移る。全部ではなく一部だけを譲渡することもできる

同じマニュアルでは、著作者人格権は譲渡や相続の対象にならず、著作権が移っても著作者の了解なく作品を修正することはできない、と説明しています。第2章にはイラストの契約書の例と作成上の留意点も載っています。表紙の依頼に当てはめると、どちらの形をとる場合でも、何に使うか(使用範囲)と、こちらでどこまで手を加えてよいか(トリミング・色調整・文字を重ねる等)を、文面で具体的に決めておくことが大切だと分かります。

増刷、通販の商品画像、SNSでの告知のように、頒布の準備で表紙を使う予定がある場面は、依頼文の段階で使用範囲に入れておきます。グッズやポスターへの転用、電子版、のちの総集編への再録など、予定が決まっていない使い方は「使う場合は改めて相談する」と書いておくと、範囲が曖昧なまま話が進むのを防げます。

注意権利の判断について

ここで示したのは、依頼の前に取り決めておく項目です。個別の取り決めがどのような効力を持つか、食い違いが起きたときにどう扱われるかは、取り決めの内容と事情によります。判断に迷う場合は、契約に詳しい専門家に相談してください。

実績公開とクレジットも条件のうち

イラストレーターやデザイナーは、手がけた表紙を自分の作品として公開することがあります。公開すること自体を断る理由がなければ、時期を決めておくと双方が動きやすくなります。たとえば「頒布日以降なら公開してよい」とすれば、発表前に表紙が出回ることを避けられます。奥付に「表紙イラスト:◯◯」のように名前を載せるか、どの名義で載せるかも一緒に確かめます。

納品形式は印刷所の指定から決める

納品されるファイルの形式、寸法、解像度、色の形式(RGBかCMYKか)は、印刷所の指定に合わせます。緑陽社の原稿作成の基本では、フルカラーの表紙はRGBでもCMYKでも作成できるとしています。トム出版の入稿前チェック項目では、解像度が正しいか、画像が統合されているか(レイヤーが「背景」になっているか)を確認するよう求めています。このように、指定の内容も書き方も印刷所で違うので、注文する印刷所の入稿案内のURLを依頼文に添えるのが確実です。

イラストだけを頼む場合は、文字のない画像を、仕上がりより大きな寸法で受け取ります。文字入れを自分でするので、レイヤーを分けたデータが要るか、統合した画像でよいかも確かめます。表紙一式を頼む場合も、告知や電子版に使える「文字なしのイラスト画像」を一緒にもらえるかを聞いておくと、あとで使い道が広がります。

作例:条件表と依頼文を作る

ここまでの内容を、『坂の上の郵便局』で条件表と依頼文にまとめます。

本の条件表

項目 『坂の上の郵便局』の記入例
判型 文庫判(A6、105×148mm)
綴じ方向・製本 右綴じ(縦書き)、くるみ製本
総ページ 本文170ページの予定。組版後に確定
背幅 約9mmの見込み。確定値は本文確定後、印刷所の背幅計算で出して伝える
表紙の寸法 仕上がり219×148mm、塗り足し込み225×154mm(背幅9mmの場合)
表紙の印刷 カラー、表面加工なし。表2・表3には何も印刷しない
入稿先 決定済みの印刷所。表紙テンプレートと入稿案内を添付
部数 30部
表紙に入れる文字 表1・背:題名と筆名/表4:紹介文とサークル名
日程 ラフは入稿の8週前、背幅確定は3週前、完成データは2週前

依頼文(表紙一式の場合)

依頼先がイラストからデザイン、入稿データまで受けている場合の依頼文です。最初の連絡でこれだけ書いておくと、依頼先は引き受けられるか、いくらかかるかを判断できます。

ひな形表紙一式の依頼文(記入例:『坂の上の郵便局』)

はじめまして。◯◯(筆名)と申します。
小説同人誌の表紙を、イラストから文字のデザイン、入稿用データの作成まで一式でお願いできないかと思い、ご連絡しました。お引き受けいただけるかどうかと、お見積もりを教えてください。

【作品】
短編集『坂の上の郵便局』(短編5作)。海辺の町の小さな郵便局を舞台に、局員と町の人を描いた静かな話です。紹介文を添付します。

【お願いしたい範囲】
・表紙イラスト(表1。背と表4を単色にするか、絵を続けるかはご提案ください)
・題名と筆名の文字のデザイン(表1・背)
・表4の文字の配置(紹介文とサークル名。文章はこちらで用意します)
・印刷所の指定に合わせた入稿用データの作成

【本の仕様】
・判型:文庫判(A6、105×148mm)、縦書き・右綴じ、くるみ製本
・本文:170ページの予定。◯月◯日に確定します
・背幅:約9mmの見込みです。確定値は本文確定後、印刷所の背幅計算で出してお伝えします
・表紙:カラー、表面加工なし。表2・表3は印刷しません
・印刷所:◯◯(表紙テンプレートと入稿案内のURLを添付します)
・塗り足し:印刷所の指定は周囲3mmです

【表紙に入れる文字】
表1:坂の上の郵便局/◯◯(筆名、読みは◯◯)
背:坂の上の郵便局/◯◯(筆名)
表4:紹介文(約120字、添付)/サークル名「◯◯」

【雰囲気】
・坂の上の小さな局舎と、そこから見下ろす朝の海。人物を入れる場合は小さく、後ろ姿で
・色は薄い青と生成りを中心に、郵便の赤を一か所だけ
・避けたいこと:人物の顔を大きく描くこと、夜の場面

【日程】
・入稿締切:◯月◯日
・ラフ(構図案):◯月◯日ごろまでに拝見できると助かります
・完成データ:背幅の確定後、◯月◯日まで

【使用範囲】
・同人誌の表紙(初版30部と、同じ内容での増刷)
・通販ページの商品画像、SNSでの頒布の告知、イベントのお品書き
・電子版を出す場合の表紙(別の寸法が必要です。可否と条件を教えてください)
・上記以外(グッズなど)に使う場合は、改めてご相談します

【確認させてください】
・お見積もりの総額と、含まれる作業
・ラフの案数、修正の回数と段階、追加費用が出る条件
・背幅が変わった場合の調整の扱い
・著作権の扱い(使用範囲での利用の許諾か、譲渡か)と、トリミングや色の調整などこちらでの加工の可否
・実績としての公開の可否と時期(頒布日以降だと助かります)、奥付でのお名前の表記
・納品形式:入稿用データ(形式・解像度・色の形式は印刷所の指定に合わせて)と、文字なしのイラスト画像
・お支払いの時期と、キャンセルの場合の扱い

イラストだけを頼む場合に書き換える箇所

『坂の上の郵便局』の当初の計画どおり、イラストだけを頼んで文字入れを自分でする場合は、上の依頼文の次の箇所を書き換えます。

項目 表紙一式の場合 イラストだけの場合
お願いしたい範囲 イラスト、文字のデザイン、表4、入稿用データ 表紙イラストのみ。文字入れと入稿用データは自分で作ると明記する
構図の指定 文字の位置はデザインと一緒に提案してもらう 題名を縦に置く表1の右側には細かな描き込みを置かない、背には大事なものを描かない、などを指定する
寸法 入稿用データの寸法 塗り足しを含む寸法以上。背や表4まで描くなら、背幅が増えても足りる横幅
納品形式 入稿用データと文字なしの画像 文字なしの画像。レイヤーを分けるか統合するか、解像度と色の形式
確認すること 背幅変更の調整の扱い こちらで文字を重ね、トリミングしてよいか。文字を入れた完成形を依頼先に見せるか

自分で文字を入れる場合は、題名と筆名を置いた完成形を依頼先に一度見せると、絵の大事な部分に文字がかかっていないかを確かめてもらえます。

同じ範囲で見積もりを取り、比べる

複数の依頼先に相談するときは、同じ依頼文を送ります。依頼先ごとに伝える内容が違うと、返ってきた金額の差が、範囲の差なのか料金の差なのか分かりません。

返答は、次のような表に書き写して比べます。依頼先A・Bと記入内容は説明のための架空の例で、金額は自分が受け取った見積もりを入れます。

比べる項目 依頼先A(イラストのみ) 依頼先B(表紙一式) 比べるときの注意
含まれる作業 表1のイラスト。背・表4まで描く場合は追加 イラスト、文字、表4、入稿用データ Aには、文字入れと入稿データ作りの手間(自分の時間か、デザインの別依頼)を足して比べる
ラフ 2案 1案 案の数より、ラフで構図と文字の位置を確かめられるかを見る
修正 ラフで2回、完成後は色の調整1回 各段階1回 完成後に何を直せるかを確かめる
背幅の変更 背まで描く場合は描き足しが追加 調整1回まで料金に含む 背幅確定が遅い日程ほど重要
使用範囲 表紙と告知。電子版は相談 表紙、告知、通販、電子版 依頼文の使用範囲と一つずつ照らす
著作権の扱い 描き手に残し、範囲内の利用を許諾 返答に記載なし 記載がなければ質問して文面で残す
実績公開 完成後すぐ 頒布日以降 時期の希望を伝えて調整できるか
納品形式 文字なしの画像(原寸+塗り足し) 入稿用データ、文字なしの画像 印刷所の指定に合うか
納期 依頼から4週間 依頼から5週間 背幅確定後の調整日まで含めて入稿に間に合うか
総額 (見積もりを記入) (見積もりを記入) 追加費用が出る条件を当てはめた額で比べる

この表に書き写すと、Aは基本の金額が低くても、背や表4まで描いてもらうと追加になり、文字入れの作業も自分に残る、といったことが見えてきます。Bは表紙作りを任せられる一方、著作権の扱いが返答に書かれていないので、依頼前に質問する必要があります。どちらがよいかは金額だけでなく、自分に残る作業を引き受けられるかと、使いたい範囲に合っているかで決めます。

「◯円の依頼先が安い」と金額だけで並べる比べ方はしないでください。基本料金に含まれる範囲は依頼先ごとに違い、同じ範囲にそろえて初めて比べられます。

イラストだけを頼みたい場合は、同じココナラでも「同人誌 表紙 イラスト」の検索結果のように、絵だけを描く出品とデザインまで受ける出品が混ざって並びます。出品の題名だけで判断せず、納品物に文字やデザインが含まれるかを確かめてください。

依頼してから入稿までの進め方

依頼先が決まったあとの流れです。表紙一式でも、イラストだけでも、最後の確認は自分に残ります。

手順依頼から入稿まで

  1. 合意した条件を文面で残す。見積もりの返答と依頼文を見比べ、範囲、総額、修正回数、使用範囲、著作権の扱い、実績公開の時期が一致しているかを確かめます。食い違いがあれば、着手前に直してもらいます。
  2. ラフで構図と文字の位置を確かめる。この段階が、構図を大きく変えられる最後の機会です。背と表4の扱い、題名を置く場所に描き込みがないかを見ます。
  3. 本文を確定させ、背幅を伝える。ページ数が決まったら、印刷所の背幅計算で出した値をすぐ依頼先に伝えます。
  4. 完成データを印刷所のテンプレートに重ねる。仕上がり線、背の線、塗り足しの線が合っているか、表1と表4の左右が綴じ方向に合っているかを確かめます。
  5. 実寸で刷って本文に巻く。文庫判の表紙は、塗り足し込みでもA4用紙の横向きに収まります。本文の試し刷りに巻き、背の文字の位置を見ます。
  6. 頒布後の約束を守る。実績公開の時期やクレジットの表記を、取り決めどおりにします。

手順4・5で確かめる項目は、本文の確認と合わせて小説同人誌の入稿前チェックの表紙のチェック表にまとめています。依頼先から受け取ったデータでも、入稿前にそのファイルそのものを開いて確かめてください。