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発表・本作り

小説の紹介文の書き方|ネタバレを抑えて読みたいと思ってもらう

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この記事の答え

紹介文は、まだ読んでいない人が読むかどうかを決めるための文章です。結末まで要約する応募用あらすじとは目的が違います。

  • 「誰が・どんな状況で・何に阻まれ・どんな問いを抱えるか」の四つに絞り、設定の説明は読むのに必要な分だけにする
  • 結末と、結末に直結する主人公の選択は書かない。中盤の発見は、読者を呼ぶ材料になるかで出すかを決める
  • キャッチコピーは一覧で目を止める一行、紹介文は読む前の判断材料。どちらも本文にない魅力や読者の反応を足さない
目次

書き上げた小説の紹介文を書こうとすると、最初から最後まで筋をなぞった要約になったり、設定の説明だけで欄が埋まったりしがちです。この記事では、架空の短編「九時の伝言」を一つ使い、結末まで書く応募用あらすじ、設定を詰め込みすぎた紹介文、直した紹介文の長短二案、キャッチコピーを並べて、何を残し何を省くかを比べます。読み終えたら、自作の紹介文を公開先の欄に合わせて書けます。

紹介文と応募用あらすじは、読む人が違う

紹介文と応募用あらすじは、どちらも「作品の内容を短くまとめた文章」ですが、読む人と目的がまったく違います。

公開ページの紹介文 公募の応募用あらすじ
読む人 まだ本文を読んでいない読者 本文と一緒に作品を評価する選考者
目的 読むかどうかを決めてもらう 筋の全体と構成を短時間で把握してもらう
結末 書かない 結末まで書く
長さの例 数十字〜数百字 集英社ノベル大賞の応募要項では「800文字~2000文字程度」
文体 作品の雰囲気に合わせてよい 事実を順に、分かりやすく

紹介文が応募用あらすじのようになってしまうのは、「作品を正確に伝えなければ」と考えるからかもしれません。けれども紹介文の読者が知りたいのは、この話は自分が読みたい種類の話か、そして続きが気になるかの二つです。筋の全部ではありません。

ここから使う作例の短編を、まず応募用あらすじの形で示します。結末まで書いてあるので、紹介文と比べるための材料として読んでください。

作例作例の短編「九時の伝言」の応募用あらすじ(架空・結末まで)

高校二年の佐伯湊は、夏休みに、亡くなった祖母・澄江の家の片付けを手伝う。海辺のその家は、月末に取り壊されることが決まっている。ある晩、湊は古い留守番電話に、知らない老人の声で「三四、歩」とだけ残された伝言を見つける。伝言は毎晩九時に一件ずつ増えていくが、残される言葉はいつも同じだ。番号は非通知で、母は気味悪がって一週間後に電話を解約すると決める。
押し入れを片付けていた湊は、将棋盤と、日付と指し手が三年分書き込まれたノートを見つける。祖母は毎晩九時、電話で一手ずつ将棋を指していたのだ。湊はノートから盤面を並べ、九時に鳴った電話を取って、祖母の代わりに次の一手を伝える。声の違いに気づいた相手は、祖母の小学校の同級生、戸田と名乗った。湊が祖母の死を告げると、戸田は少し黙ってから、この一局を最後まで指してくれないかと頼む。
湊は駒の動かし方を覚えながら、解約の日まで毎晩一手ずつ指し続ける。最後の夜、湊は負けを認め、受話器に向かって「参りました」と言う。戸田は「澄江さんと同じ言い方だ」と笑う。湊は祖母のノートの最後の行に、その日の日付と指し手を書き込む。

この中には、紹介文に使える材料と、紹介文に書いてはいけない情報が混ざっています。次の節から、その分け方を順に見ていきます。結末まで書くあらすじそのものの書き方は、この記事の後半で案内します。

主人公・状況・障害・問いを一行ずつ取り出す

紹介文の材料は、四つの問いで作品から取り出します。

取り出すもの 問い 「九時の伝言」での答え
誰が 読者が付いていく人物は誰か 高校二年の湊
どんな状況で 物語が動き出す時点で、何が起きているか 亡くなった祖母の家を片付けている。家は月末に取り壊される。留守番電話に毎晩九時、知らない老人の声で短い伝言が残る
何に阻まれ 主人公が望みをかなえるのを難しくしているものは何か 番号は非通知でかけ直せない。母は一週間後に電話を解約すると決めた
どんな問いを抱えるか 読者が「どうなるのか」と思う点は何か この伝言は何なのか。相手は祖母の死を知っているのか。解約の日までに湊は答えられるのか

ポイントは、物語が動き出す時点の情報だけを使うことです。表の「状況」は、物語の最初の四分の一ほどで分かることに限っています。将棋のノートの発見や、相手が誰かという情報は、まだ表に入れていません。

四つのほかに、もう一つ書き出しておくと便利なのが読み味です。読み味とは、読者がこの作品から受け取れる体験の種類のことで、「謎を追う」「静かに切ない」「笑える」などの言葉で表します。「九時の伝言」なら「小さな謎をたどる、家族と死別をめぐる静かな話」です。読み味は、読者が自分の好みに合う話かを判断する材料になります。ただし「泣ける」「感動する」のように、読者の反応を約束する言葉にはしません。

練習自作から四つの要素と読み味を取り出す(10分)

  1. 自作の最初の四分の一だけを読み返し、主人公・状況・障害・問いを一行ずつ書きます。
  2. 四分の一より後で分かる情報が混ざっていたら、印を付けて外します。
  3. 読み味を十〜二十字で書きます。「泣ける」「衝撃の」のような読者の反応の言葉は使わず、話の種類を表す言葉で書きます。

四つのうち「障害」や「問い」がうまく書けない場合は、紹介文より先に、作品の筋そのものがはっきりしていない可能性があります。主人公の目的と、それを阻むものの因果を整理したいときは小説のプロットの書き方が使えます。

魅力と対立を一つに絞る

四つの要素がそろったら、紹介文の中心に置くものを一つに絞ります。作品の魅力をすべて紹介しようとすると、どれも印象に残りません。

絞るときは、次の二つを組み合わせます。

  • この作品にしかない要素:「九時の伝言」なら「毎晩九時、留守番電話に残る知らない声の短い伝言」。祖母の死や家の取り壊しは、多くの作品に出てくる要素です。
  • 主人公が向き合う対立:「解約まで一週間で、伝言に答えられるか」。期限があると、読者は「間に合うのか」という問いを持ちやすくなります。

逆に、作品にとって大事でも紹介文には入れなくてよいものもあります。たとえば、祖母が元教師だったことや、湊が中学に入ってから祖母の家に来なくなった理由は、本文で効いてくる設定ですが、読むかどうかの判断には関係しません。

次の作例は、絞らずに書いた紹介文です。

設定の説明を詰め込んだ紹介文を、要素を絞って直す

修正前(設定説明が中心)

佐伯湊は十七歳の高校二年生。父は単身赴任中で、母と二人で暮らしている。祖母の澄江は元小学校教師で、町の人からは「すみ先生」と呼ばれていた。湊は小学生のころ、毎年夏休みを海辺の祖母の家で過ごしたが、中学に入ってからは一度も訪ねていなかった。その祖母が七十九歳で亡くなり、築五十年の家は月末に取り壊されることになった。母に頼まれて片付けに通い始めた湊は、ある晩、古い留守番電話に伝言が残っていることに気づく。

修正後(状況・障害・問いに絞る)

祖母が亡くなった夏、取り壊しの決まった海辺の家で、高校二年の湊は片付けを手伝っていた。
毎晩九時、古い留守番電話に、知らない老人の声が短い伝言を残していく。番号は非通知で、かけ直すこともできない。母は一週間後に電話を解約すると決めた。
相手は、祖母がもういないことを知らないのかもしれない。

変更の理由

  • 修正前は200字ほど使っても、伝言の話が最後の一文まで出てきません。読者は「何の話か」が分からないまま読むのをやめてしまいます。
  • 父の単身赴任、祖母の元の職業、年齢や築年数は、本文では意味があっても、読むかどうかの判断には使われないので削りました。
  • 「解約まで一週間」という障害と、「相手は知らないのかもしれない」という問いを足しました。読者が続きを気にする理由は、設定の量ではなく問いです。
  • 人物関係や世界の仕組みが読む前に分からないと話についていけない作品(架空の世界の長編など)では、設定を一、二文入れるほうが親切な場合もあります。その場合も、問いより先に長く置かないようにします。

ネタバレの線を、作品ごとに引く

紹介文で伏せる情報は、「結末だけ」と決めておけばよいわけではありません。作品の中で読者が驚いたり納得したりする場面が、どこにあるかで線を引きます。

情報の種類 紹介文での扱い 「九時の伝言」の場合
物語が動き出す時点の状況 書く 祖母の家、留守番電話の伝言、解約の期限
中盤の発見・正体 読者を呼ぶ材料になるなら書いてよい。驚きの中心なら伏せる 伝言が将棋の指し手だという発見。伏せる案と、ほのめかす案を下で比べる
結末に直結する主人公の選択 書かない 湊が祖母の代わりに一手を返し、最後まで指すこと
結末 書かない 「参りました」と言い、ノートの最後の行を書くこと
読者が避けたい要素 必要なら、紹介文か注意書きの欄に書く 身近な人の死別が描かれること

中盤の発見をどう扱うかは、作品の性格で変わります。「九時の伝言」の伝言の中身は「三四、歩」という言葉です。将棋を知っている人なら、この言葉だけで将棋の指し手だと分かります。

  • 言葉をそのまま出す案:将棋に関心がある読者には強い引っかかりになります。ただし、伝言の正体を探る楽しみは一部失われます。
  • 「短い言葉」とだけ書く案:謎は保たれますが、将棋の話だと分かれば読みたかった人には届きにくくなります。

この作品の驚きの中心は「伝言の正体」より、「湊が祖母の代わりに一局を引き継ぐこと」にあります。そのため、言葉を出しても結末の体験は損なわれないと判断できます。反対に、正体そのものが最大の仕掛けである推理ものなら、言葉は伏せたほうがよいでしょう。

もう一つ、身近な人の死別のように、読者によっては避けたい内容があります。紹介文にはっきり書くか、サイトに注意書きの欄があればそちらに書くかは作者が決めることです。「九時の伝言」では、冒頭の一文で祖母の死に触れているので、紹介文だけで内容の方向が伝わります。

連載中で、結末がまだ決まっていない場合は?

連載中の作品でも考え方は同じで、物語が動き出す時点の状況・障害・問いを書きます。小説家になろうのヘルプは、あらすじ欄について、完結していない作品では結末を書きたくない人が多いので差し障りのない範囲で自由に書いてよい、作品の傾向が分かる程度でよい、と説明しています。連載が進んで物語の中心が変わったときは、紹介文も書き直します。

キャッチコピーと紹介文の役割を分ける

公開先によっては、紹介文とは別にキャッチコピーやひとこと紹介の欄があります。たとえばカクヨムでは、キャッチコピーは35文字まで、紹介文は最大1万文字まで入力でき、どちらにもルビや傍点は振れません。エブリスタでは、作品説明・あらすじとは別に、60文字以内の「ひとこと紹介文」を設定できます。

二つは、読者が作品に出会う順番で役割が分かれます。

キャッチコピー・ひとこと紹介 紹介文
読者の状態 一覧や検索結果を流し見している 作品ページを開き、読むか考えている
役割 目を止めてもらう 読む判断の材料を渡す
入れるもの この作品にしかない要素か、問いを一点だけ 主人公・状況・障害・問い、読み味、長さ
避けること 紹介文の一文目をそのまま繰り返す キャッチコピーの言い換えだけで終える

「九時の伝言」でキャッチコピーの候補を四つ作り、比べてみます。

候補 字数 判断
祖母の留守番電話に、毎晩九時、知らない声が同じ一手を残していく。 32字 採用候補。作品にしかない要素(九時・留守番電話・知らない声)が一行に入り、「一手」で将棋をほのめかす程度にとどめている
九時の電話は、終わっていない一局の続きだった。 23字 不採用。伝言の正体を言い切っているので、紹介文で伏せた情報と食い違う
涙が止まらない、感動の家族ドラマ。 17字 不採用。読者の反応を約束している。作品の何が特別かも伝わらない
解約まで、あと七日。 10字 条件付きで採用候補。短く期限が伝わるが、何の解約かは紹介文に頼る。タイトルと並んで意味が通るかを一覧の画面で確かめる

キャッチコピーは、作品のタイトルと一緒に読まれることを前提に考えます。タイトル「九時の伝言」と最後の候補「解約まで、あと七日。」が並べば、電話の話だと推測できます。タイトルの付け方から見直したいときは小説のタイトルの付け方で候補の作り方を確かめてください。

長さ別に、何を残すかを決める

公開先の欄の長さはさまざまです。長い版を一つ書いてから削ると、短い版で何を省いたかが自分で分かります。

作例紹介文・長い版(約250字)

祖母が亡くなった夏、取り壊しの決まった海辺の家で、高校二年の湊は片付けを手伝っていた。
毎晩九時になると、古い留守番電話に、知らない老人の声が残る。「三四、歩」――毎晩同じ、意味の分からない短い言葉だけ。番号は非通知で、かけ直すこともできない。母は気味悪がり、一週間後には電話を解約すると決めた。
相手は、祖母がもういないことを知らないのかもしれない。
解約の日までに、湊はこの伝言に答えることができるのか。
祖母が家族の誰にも話さなかった、毎晩九時の習慣をたどる短編です。(約1万字・完結済み)

作例紹介文・短い版(約100字)

祖母が亡くなった夏、取り壊し前の家の留守番電話に、毎晩九時、知らない老人の声で短い伝言が残る。電話の解約まで一週間。高校二年の湊は、祖母が誰にも話さなかった習慣をたどり始める。(短編・完結済み)

二つの版で省いたものと、その理由を表にします。

情報 長い版 短い版 短い版で省いた・残した理由
伝言の言葉「三四、歩」 入れる 省く 言葉は将棋を知る読者には強い材料だが、説明なしに置くと短い文の中では意味が通りにくい
番号が非通知 入れる 省く 障害の一つだが、「解約まで一週間」だけで期限の緊張は伝わる
母の反応 入れる 省く 解約という事実があれば、誰が決めたかは読む判断に影響しない
「祖母の死を知らないのかもしれない」という問い 入れる 「習慣をたどる」に置き換える 短い版では問いを一つにしぼり、主人公の行動として書いた
長さ・完結済み 入れる 入れる 読者が時間を見積もる材料。短くても残す

長さごとの目安をまとめると、次のようになります。欄の上限は公開先によって違うので、実際の入力画面で確かめてください。

長さ 置き場所の例 残すもの 省くもの
35字以内 カクヨムのキャッチコピー この作品にしかない要素か問いを一点 人物名、障害の細部
60字以内 エブリスタのひとこと紹介文 状況と引っかかりを一点ずつ 障害の細部、読み味
100字前後 SNSでの告知、短い紹介欄 誰・状況・障害・問い、長さ 中盤の発見、脇役
200〜400字 投稿サイトの紹介文・あらすじ欄 上に加えて、読み味、伏せてよい範囲の発見、注意書き 結末と、結末に直結する選択

カクヨムの紹介文は1万文字まで入りますが、入るからといって長く書く必要はありません。登場人物の一覧や用語の説明を載せたい場合は、紹介文の前半に物語の紹介を置き、人物一覧などはその後にまとめると、作品ページを開いた読者が最初に問いに出会えます。投稿サイトの一覧やSNSの共有では紹介文の冒頭だけが表示される場合もあるので、どう見えるかは公開先のプレビューや実際の画面で確かめます。

本文と一致しているかを確かめる

紹介文を書き終えたら、最後に本文と照らし合わせます。読みたいと思ってもらうために、本文にない魅力を足してしまうことがあるからです。

ジャンルの印象を本文と合わせる

修正前(本文より怖い話に見える)

毎晩九時、死んだ祖母の電話に、得体の知れない声が囁きかける――。取り壊し寸前の家で、少年が知ってしまった、決して触れてはならない秘密とは。

修正後(本文の読み味に合わせる)

毎晩九時、亡くなった祖母の留守番電話に、知らない老人の声で短い伝言が残る。取り壊し前の家で、高校生の湊は、祖母が誰にも話さなかった習慣をたどり始める。

変更の理由

  • 「得体の知れない」「囁きかける」「決して触れてはならない秘密」は、ホラーを期待させる言葉です。本文は怖い話ではないので、ホラーを読みたくて開いた読者は期待と違うと感じ、静かな話を探している読者には届きません。
  • 修正後は、謎の要素(知らない声、短い伝言)は残しつつ、言葉の温度を本文に合わせました。
  • 本文が実際にホラーであれば、修正前のような言葉選びが合います。言葉の強さそのものではなく、本文と一致しているかで判断します。

確認表紹介文を公開する前の確認表

  • 紹介文に書いた出来事は、すべて本文に実際に出てくる
  • 結末と、結末に直結する主人公の選択を書いていない
  • キャッチコピーと紹介文で、伏せた情報が食い違っていない(片方で明かし、片方で伏せていない)
  • 「泣ける」「衝撃の」「話題の」など、読者の反応や評判を約束・創作する言葉を使っていない
  • ジャンルの印象(怖い・笑える・切ない)が本文の読み味と合っている
  • 長さ(字数や話数)と、完結済みか連載中かを書いた
  • 他のサイトにも掲載している場合、公開先が求める表記を入れた(小説家になろうはあらすじ欄に重複投稿である旨を書くよう求めている)
  • 公開先の欄の上限と、ルビが使えるかを入力画面で確かめた

投稿サイトごとの紹介文やあらすじ欄の扱いの違い、どのサイトに載せるかの決め方は小説の投稿サイトを比較にまとめています。

公募に出すときは、結末まで書くあらすじを別に作る

公開用の紹介文ができても、同じ作品を新人賞などに応募するときは、それとは別に応募用のあらすじが必要です。紹介文の「結末を書かない」「問いで終える」という書き方は、選考用のあらすじでは逆効果になります。冒頭で示した「九時の伝言」の応募用あらすじのように、結末まで順を追って書き、主人公の選択とその結果を省きません。