小説同人誌の組版は自作か外注か?作業範囲・費用条件・依頼準備を比べる
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この記事の答え
組版を頼むかどうかは、組版と校正を分けたうえで、自分に残る作業と頼める作業を先に決めて判断します。
- 組版は本文を本の形に配置する作業で、誤字を直す校正や、内容を良くする添削とは別。頼んでも文章の中身は直らない
- ルビや章扉が少ない短編集は自作しやすく、ルビ・章扉・短詩・図版が多い本ほど組む手間が増える。1話を組んで時間を計ると判断しやすい
- 依頼するなら、ページ数、原稿の状態、ルビの量、修正回数、納品形式(入稿用PDFだけか、編集用データも付くか)をそろえて見積もりを比べる
目次
小説同人誌の本文を自分で組むか、人に頼むか。決める前に、組版で何をするのか、頼んだら何が返ってくるのかを具体的にしておくと判断しやすくなります。この記事では、ルビの少ない短編集とルビや章扉の多い長編という二つの架空の本で、原稿の整理から入稿データまでの作業を比べます。そのうえで、依頼するときの仕様書と、見積もりを同じ条件で比べる表を示します。
組版・校正・添削は、頼む作業が違う
まず、似た作業を分けます。組版を頼むかどうかを決める前に、ここが混ざっていると、頼んだのに期待したものが返ってこない、ということが起きます。
| 作業 | 何をするか | 返ってくるもの | 組版との関係 |
|---|---|---|---|
| 添削・講評 | 構成や表現について意見や修正案を出す | 講評や書き直しの提案 | 組版の前に終わらせる |
| 校正 | 誤字・脱字、表記の揺れを見つけて直す | 赤字(直し)と疑問出し | 組版の前と後の二回行うのが基本 |
| 組版 | 本文を判型・文字の大きさ・行数に合わせてページに配置し、扉・目次・ノンブルを整える | 組んだ本文(確認用PDF、入稿用PDFなど) | ― |
| 表紙デザイン | 題名や絵を配置し、背表紙を含む表紙データを作る | 表紙データ | 背幅は組版で決まったページ数から出す |
組版を頼んでも、文章の誤りや内容は直りません。組版は、渡された原稿をそのまま本の形にする作業だからです。組版と校正を一緒に受けている依頼先もありますが、その場合も校正は別の作業として範囲と料金を確かめます。
印刷所の確認も、校正の代わりにはなりません。たとえば緑陽社でWord入稿したときに行われる校正は、文字化けなどシステム的な不具合の確認で、文章の修正はできません。誤字の点検を人に頼む場合の範囲と料金の見方は小説の校正サービスの選び方で扱っています。
自分で組むときに必要な作業
組版を自作する場合、組む操作そのものより、その前後の作業に時間がかかります。
手順自作の組版で行う作業
- 原稿を整理する。表記の揺れを直し、ルビや傍点を付ける語を決め、改行や空行、字下げの使い方をそろえます。
- 本文の設定を決める。判型、文字の大きさ、1行の字数と行数、余白、ノンブルの位置を決めます。
- 流し込んで組む。原稿を組版の道具に入れ、話ごとにページを改めます。
- 扉・目次・奥付を作る。目次のページ番号は、組み終わってから入れ直します。
- ルビ・禁則・記号を確かめる。ルビの欠けやずれ、行頭の句読点、横に寝た半角記号を探します。
- 試し刷りして直す。実寸で刷って読み、直したらその後ろのページ数と目次を確かめ直します。
- 入稿用のPDFを書き出す。フォントの埋め込みと用紙サイズを確かめます。
使う道具は、作る本と手持ちの環境で選びます。
| 道具 | 向いている本 | 確かめること |
|---|---|---|
| Wordと印刷所のテンプレート | 文字中心の短編集・長編 | テンプレートの判型と段組。緑陽社はA5・B6・新書・A6(文庫)のWordテンプレートを配布し、A5・B6・新書は1段組と2段組がある |
| 印刷所の無料の組版ツール | 文字中心で、細かな調整を求めない本 | 対応する判型と記法。シメケンプリントの小説PDFメーカーは、テキストを貼り付けて縦書きの入稿用PDFを作れ、ルビ・改ページ・空白ページ・目次の点線などをタグで指定する |
| DTPソフト(Adobe InDesignなど) | ルビ・章扉・図版が多い本、細かく調整したい本 | ソフトの費用と、操作を覚える時間 |
小説PDFメーカーで作ったものを他の印刷所で使う場合は、その印刷所の規定に従います。どの道具を使う場合も、組版の設定の決め方は小説同人誌の本文レイアウトで、同じ場面を三通りに組んで比べています。
1話を組んで、時間を計る
自作で間に合うかは、一番短い話か、ルビの多い話を1本組んでみて、かかった時間を計るのが確実です。その時間を全体の字数やルビの量で掛け合わせると、残りの作業時間の見当がつきます。1本目は設定を決める時間が入るので、2本目からは短くなります。逆に、1本目で設定がなかなか決まらない、ルビの調整に何度も手が止まる、という場合は、外注を考える合図です。
作例:二つの本で作業量を比べる
ここからは、条件の違う二つの架空の本で、作業を比べます。
| 項目 | 本1:『坂の上の郵便局』 | 本2:『塩の都の書記官』 |
|---|---|---|
| 内容 | 短編5作の短編集 | 全12章の長編ファンタジー |
| 字数 | 約6万字 | 約18万字 |
| 判型・組み方 | 文庫判、1段組 | A5、2段組 |
| ルビ | 人名・難読語に約20か所 | 造語の地名・役職名に300か所以上。同じ語に何度も振る |
| 章扉 | 各話の扉5ページ(題名のみ) | 各章の扉12ページ(章番号・章題・短い引用文) |
| 特別な要素 | なし | 冒頭に地図1枚、作中の歌(短歌の形)が4首 |
| 締切までの期間 | 入稿の8週間前に原稿確定 | 入稿の6週間前に原稿確定 |
工程ごとの作業を並べると、違いがはっきりします。
| 工程 | 本1を自作する場合 | 本2を自作する場合 | 本2の組版を頼む場合に自分に残る作業 |
|---|---|---|---|
| 原稿の整理 | 表記をそろえ、ルビ20か所を印にする | 造語のルビの振り方(初出だけか、章ごとか)を決め、300か所以上に印を付ける | 同じ。ルビの一覧と振り方の決まりを作って渡す |
| 組版 | テンプレートに流し込み、扉5ページを作る | 2段組の設定、章扉12ページの体裁、地図の配置、短歌の行の扱いを決めて組む | 仕様書を作り、組み上がりを確認する |
| 校正 | 組版の前と後に自分で読む | 同じだが、ルビの誤りと造語の表記揺れの確認に時間がかかる | 同じ。組版を頼んでも校正は自分(または校正の依頼先)が行う |
| 修正 | 自分で直して書き出し直す | 2段組では1行の修正が段の終わりまで響くので、直すたびにページの終わりを確かめる | 修正を依頼先に伝え、反映を確かめる。回数の上限に注意 |
| 入稿データ | PDFに書き出し、フォント埋め込みを確かめる | 同じ。地図の解像度も確かめる | 納品されたPDFを、入稿前に自分で確かめる |
本1は、ルビが少なく章扉も題名だけなので、Wordとテンプレートで組める範囲です。時間にも余裕があるので、自作が合っています。
本2は、ルビの量、章扉の体裁、地図、作中の短歌と、組む作業に判断が多く、締切までの期間も短めです。組版を頼む候補になります。ただし表の右の列のとおり、頼んでも原稿の整理と校正、仕上がりの確認は自分に残ります。
ルビ・短詩・画像がある本で増える作業
本2のような要素は、それぞれ組む手間を増やします。
- ルビが多い:ルビの付け方(親文字ごとか、語全体か)、同じ語に何度振るか、行末でルビが詰まったときの処理を決める必要がある。依頼する場合は、ルビの一覧と振り方の決まりを渡す
- 作中に短歌・俳句・詩がある:小説の地の文と同じ字下げ・改行では収まりが悪いことがある。前後の空き、行頭の位置、1首を1行にするか区切るかを決める。歌集や句集のように短詩が中心の本の配置は歌集の作り方や句集の作り方で扱っている
- 地図・挿絵がある:印刷所の求める解像度で用意する。緑陽社のWord原稿作成マニュアルでは、スミ1色は600dpi、フルカラーは350dpiとし、Wordの標準設定では画像が220ppiに変換されるので「ファイル内のイメージを圧縮しない」にチェックを入れるよう案内している
- 特別な記号や書体:緑陽社のPDFの不具合の解説では、フリー配布のフォントや印刷用途を想定していないフォントはPDFに埋め込めない場合があるとしている。自作でも依頼でも、使う書体が埋め込めるかを先に確かめる
依頼する範囲と、納品されるものを決める
組版を頼むと決めたら、どこからどこまでを頼み、何を受け取るかを決めます。ここが曖昧なまま頼むと、見積もりを比べられません。
| 決めること | 選択肢の例 | 確かめる理由 |
|---|---|---|
| 組む範囲 | 本文のみ/本文と扉・目次・奥付/前付け・後付けまですべて | 扉や目次を別料金にしている依頼先がある |
| 原稿の渡し方 | テキストファイル/Wordファイル | 受け付ける形式と、ルビの指定方法が依頼先で違う |
| 本の仕様 | 判型、段組、文字の大きさ、行数、余白、書体 | 自分で決めて渡すか、依頼先に提案してもらうか |
| 校正 | 含まない/組版後の簡単な確認のみ/校正として別に依頼 | 組版の料金に校正が含まれるとは限らない |
| 納品形式 | 入稿用PDF/確認用PDF/編集用のデータ(InDesignなど) | 後で自分で直したい場合は編集用データが要る |
| 書体 | 依頼先の持っている書体/自分で指定 | 編集用データを受け取っても、同じ書体がなければ自分の環境では正しく開けない |
| 修正 | 回数、修正の範囲(誤字の直し/設定の変更) | 回数を超えた修正や、組み直しになる変更は追加料金になることがある |
| 納期 | 原稿を渡してから初回の確認用PDFまで、修正後の納品まで | 印刷所の入稿締切から逆算して間に合うか |
依頼先には、個人の出品者のほか、組版を有料で受ける印刷所もあります。たとえば緑陽社には、テキストやイラストを印刷可能な原稿データに組版する有料サービスがあります。作業範囲や料金は、問い合わせて確かめてから頼みます。
修正と再入稿の扱いを先に決める
組版のあとに文章を直すと、改行の位置が動き、ページの終わり、目次、ページ数、背幅まで変わることがあります。依頼する場合は、次のことを見積もりの段階で確かめておきます。
- 料金に含まれる修正の回数と、何を1回と数えるか
- 誤字の直しと、文字の大きさや行数を変える「組み直し」を分けて扱うか
- 印刷所から入稿データの不備を指摘されたとき、直したデータを出し直してもらえるか
原稿は、校正まで終えて「これ以上内容を変えない」状態にしてから渡すのが、修正を少なくするいちばんの方法です。
依頼仕様書を作る
依頼先に伝える内容を一枚にまとめておくと、複数の依頼先に同じ条件で見積もりを頼めます。本2の例で書くと、次のようになります。
ひな形組版の依頼仕様書(記入例:『塩の都の書記官』)
【作品】長編小説『塩の都の書記官』(全12章、約18万字) 【原稿の状態】校正済み。これ以上内容は変えない予定です 【原稿の形式】Wordファイル(章ごとに12ファイル)。ルビはWordのルビ機能で設定済み 【本の仕様】A5判、縦書き、2段組、右綴じ 文字の大きさ・行数・余白は、ご提案いただけると助かります(参考に希望の見本ページを添付します) 【組む範囲】本扉、目次、各章の扉(章番号・章題・引用文)、本文、あとがき、奥付 【特別な要素】 ・ルビ:造語の地名・役職名に300か所以上。各章の初出に振ります(ルビ一覧を添付) ・地図:1枚(600dpiのモノクロ画像を用意済み)。本扉の次の見開きに置きたいです ・作中の短歌:4首。前後を1行空け、本文より2字下げで、1首を1行にしたいです 【書体】本文は明朝体。PDFに埋め込める書体でお願いします 【納品形式】入稿用PDF(フォント埋め込み済み)と確認用PDF。編集用データの納品が可能かも教えてください 【修正】料金に含まれる修正回数と、追加の場合の扱いを教えてください 【印刷所】◯◯印刷の小説本向けの注文(A5・無線綴じ)で入稿予定(入稿締切:◯月◯日) 【希望納期】初回の確認用PDFを◯月◯日まで、最終データを◯月◯日まで 【見積もりで知りたいこと】総額、料金の単位、追加料金が出る条件、納期
作品名や日付は自分の本に合わせて書き換えてください。見本ページを添えると、文字の大きさや余白の好みが伝わりやすくなります。
見積もりを同じ条件で比べる
見積もりは、金額だけを並べると比べられません。何が含まれていて、何が含まれていないかを同じ表にそろえます。本2で、二つの依頼先から見積もりを取り、自作と並べる場合の表の作り方です(依頼先A・Bは架空の例で、金額は自分の見積もりを書き入れます)。
| 比べる項目 | 依頼先A | 依頼先B | 自作 |
|---|---|---|---|
| 料金の単位 | 基本料金+ページ単価 | 一式(ページ数の上限あり) | 道具の費用と自分の時間 |
| 見積もりの前提のページ数 | 200ページ | 180ページまで。超えると追加 | ― |
| 原稿の状態の条件 | 校正済みの原稿 | 校正済みの原稿 | ― |
| 扉・目次・奥付 | 含む | 目次と奥付は追加料金 | 自分で作る |
| ルビ | 100か所を超えると追加 | 含む | 自分で付ける |
| 地図・短歌の配置 | 含む | 要相談 | 自分で調整する |
| 修正回数 | 2回まで | 1回まで。以降は追加 | 何度でも(自分の時間) |
| 納品形式 | 入稿用PDF、確認用PDF | 入稿用PDF、確認用PDF、編集用データ | ― |
| 納期 | 原稿を渡して3週間 | 原稿を渡して2週間 | 6週間(自分の見込み) |
| 総額 | (見積もりを記入) | (見積もりを記入) | (道具の費用を記入) |
この表に書き入れると、基本料金の安い依頼先が、ルビや目次の追加料金で最終的に高くなる、といったことが見えてきます。総額は、自分の本の条件(ページ数、ルビの数、扉の数、修正の回数)を当てはめて計算した額で比べてください。
自作の列には、道具の費用だけでなく、自分の作業時間も書いておきます。時間の余裕と、組版を覚えたいかどうかも判断の材料です。次の本でも自分で組むつもりなら、今回の手間は次の本の準備にもなります。
自作から外注に切り替えるときの準備
途中まで自分で組んでいて、締切に間に合わないと分かった場合も、外注に切り替えられます。そのときは、組みかけのデータではなく、原稿と仕様を渡すのが基本です。
確認表外注に切り替えるときに渡すもの
-
校正を終えた原稿(ページの区切りや見た目を整えるために入れた改行・空白を取り除いたもの)
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自分で決めた本の設定(判型、文字の大きさ、1行の字数と行数、余白、ノンブルの位置)
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組みかけのページを刷ったもの、または確認用PDF(見本として)
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ルビの一覧と振り方の決まり、表記の決まり
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地図や挿絵の画像ファイル
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扉・目次・奥付に入れる文言
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印刷所名と入稿締切、注文する判型・製本・ページ数の見込み
組みかけのWordファイルに見た目を合わせるための改行や空白が入っていると、別の道具に移したときにかえって崩れます。原稿は整理した状態で、見た目は見本で伝えるほうが、依頼先も作業しやすくなります。