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発表・本作り

小説同人誌の本文レイアウト|文字サイズ・行間・余白を決める手順

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この記事の答え

本文レイアウトは、判型と本文量を前提に、文字サイズ・1行の字数と行数・行送り・余白を一組で決め、実寸で試し刷りして直すのが手順です。

  • 文字の大きさだけを変えず、行送り(行の間隔)と余白を同時に見る。行間がルビより狭いと、ルビのある行が崩れやすい
  • 綴じ側の余白(ノド)は、製本方法と本の厚さで必要な広さが変わる。数値は印刷所の案内を下限として確かめる
  • 画面で決めず、原寸で印刷して手に持って読む。会話の多いページとルビの多いページで必ず確かめる
目次

小説同人誌の本文を組もうとして、文字は何ポイントか、余白は何ミリか、と正解の数値を探していないでしょうか。本文の読みやすさは一つの数値では決まらず、判型、文字の大きさ、行の間隔、余白、製本方法の組み合わせで決まります。この記事では、同じ自作の場面を文庫判で三通りに組んで数値を比べ、どこを変えると何が変わるかを示します。最後に、実寸の試し刷りで自分の設定を直す手順をまとめます。

判型と本文量から、組み方の前提を決める

レイアウトの数値を決める前に、二つの前提をはっきりさせます。

  • 判型:文庫判(A6)、B6、A5など、仕上がりの紙の大きさ。これが余白と版面(文字を置く範囲)の外枠になる
  • 本文量:収録する作品の合計字数と、目標とするページ数の幅

この二つが決まっていないと、文字を大きくすればページが増えすぎ、小さくすれば読みにくい、という行き来が終わりません。たとえば6万字の短編集を文庫判で作るなら、「本文は150〜180ページくらいに収めたい」という幅を先に決めておくと、設定を比べるときの基準になります。

製本方法も前提に入ります。シメケンプリントでは、くるみ製本(背を糊で固めて表紙でくるむ製本)は50ページ以上に対応し、中綴じ(中央をホチキスで留める製本)はページ数が多いと使えません。どちらで作るかで、次に見るノドの余白の考え方が変わります。

判型そのものをまだ決めていない場合は、小説同人誌のサイズの選び方で、同じ本文を三つの判型に置いて比べてから戻ってきてください。

縦書き・段数・1行の字数を決める

縦書きか横書きか

小説同人誌は、縦書きの右綴じのほか、横書きの左綴じで作ることもできます。縦書きと横書きでは、本を開く方向と、ページの左右の並びが逆になります。右綴じ(縦書き)の場合、本文は左ページから始まります。ページ番号や綴じ側の余白を左右で変える設定は、この並びに合わせて作ります。

1段組か2段組か

1行の字数(字詰め)が多すぎると、行の終わりから次の行の頭へ目を戻すのが大変になります。判型が大きいほど1行が長くなるので、A5判などでは1ページを上下二段に分ける2段組も使われます。緑陽社のWord原稿テンプレートでは、A5・B6・新書判に1段組と2段組の2種類が用意されています。

判型 段組の候補 考えること
文庫判(A6) 1段組 紙が小さいので、余白を削りすぎると窮屈になる
新書判・B6 1段組、または2段組 1段なら行が長めになる。2段なら1行が短く、ページあたりの字数が増える
A5 2段組、または1段組 1段組では行がかなり長くなるので、文字を大きめにするか余白を広げる

段組の決まりがあるわけではありません。長編を少ないページに収めたいなら2段組、一行ずつゆったり読ませたいなら1段組、というように本文量と読ませ方で選びます。

作例:同じ場面を三通りに組んで比べる

ここからは、架空の短編集の一場面を使って、同じ文庫判(105×148mm)に三通りの設定で組んだ場合を比べます。縦書き・1段組・くるみ製本を前提にしています。

作例作例の場面(「速達」より・389字)

朝の便が着く前に、三上(みかみ)は局のシャッターを半分だけ上げた。坂の下から吹き上げてくる風に、潮のにおいが混じっている。
「おはようございます。まだ開いてませんよね」
シャッターの隙間から、制服の少年がのぞいていた。胸に白い封筒を抱えている。
「窓口は八時半から。急ぎ?」
「速達でお願いしたいんです。隣町(となりまち)の病院まで」
三上は封筒を受け取って、宛名を見た。几帳面(きちょうめん)な字で、病棟の番号まで書いてある。差出人の欄は空いていた。
「名前、書かなくていいんですか」と三上が聞くと、少年は少し迷ってから首を振った。
「書いたら、読んでもらえない気がするので」
三上はそれ以上聞かなかった。秤の上に封筒をのせ、針が止まるのを待つ。坂の上で、始業のチャイムが鳴りはじめた。
「間に合わなくなるよ」
「はい。……お願いします」
少年は頭を下げると、坂を駆けのぼっていった。三上はシャッターを最後まで上げ、封筒に赤い判(はん)を押した。

この場面は12段落で、会話の段落が半分を占めます。ルビも四か所あります。三つの設定の数値は次のとおりです。

設定 A:詰めすぎ B:余白を取りすぎ C:調整後
文字サイズ 8pt(約2.8mm) 10pt(約3.5mm) 9pt(約3.2mm)
1行の字数×行数 46字×22行 28字×11行 38字×15行
行送り(行の中心から次の行の中心まで) 約4.2mm 約5.6mm 約5.1mm
行間(行送りから文字の幅を引いた空き) 約1.3mm 約2.1mm 約2.0mm
余白(天・地) 9mm・9mm 25mm・24mm 14mm・13mm
余白(ノド・小口) 8mm・7mm 25mm・20mm 20mm・10mm
1ページに入る最大の字数 1,012字 308字 570字
この場面が使う行数 16行(約0.7ページ) 19行(約1.7ページ) 17行(約1.1ページ)

行送りは、版面の幅(紙の幅からノドと小口を引いた長さ)から1行分の文字の幅を引き、行数から1を引いた数で割って出しています。Cなら、(105−20−10−3.2)÷14=約5.1mmです。行数は、地の文の段落は1字下げ、会話の段落は下げない前提で、段落ごとに字数を1行の字数で割って切り上げました。

Aは「入る字数」は多いが、読む負担が大きい

Aは1ページに1,000字以上入り、ページ数は一番少なくなります。その代わり、問題が三つ重なっています。

  • 1行46字は文庫判には長く、行の終わりから次の行の頭へ目を戻すたびに、行を取り違えやすい
  • 行間が約1.3mmしかない。ルビを本文の半分の大きさ(4pt=約1.4mm)で付けると、ルビが行間からはみ出し、隣の行に触れるか、ソフトによってはルビのある行だけ行送りが広がって行の並びが不ぞろいになる
  • ノドが8mmしかない。くるみ製本の本は綴じ側が開ききらないので、ノド側の行が沈んで読みにくい

Bは読みやすそうに見えるが、本が厚くなりすぎる

Bは文字が大きく、行間も余白もゆったりしています。一見読みやすそうですが、1ページに入るのは308字だけです。この場面だけで2ページ近くを使い、1行28字なので会話の多い場面では行が細かく折り返されます。

本全体で考えると差がはっきりします。この場面と同じ書き方の文章が6万字続くと仮定すると、Aは約112ページ、Bは約266ページ、Cは約175ページになります。Bでは本が厚くなり、背幅も印刷代も増えます。

ただし、Bに近い設定が合う場合もあります。収録作が少なく薄い本になりすぎるとき、大きめの文字で読みたい人に届けるときは、文字と余白を大きくする選択には意味があります。

Cでは、変えた理由を一つずつ説明できる

Cは、AとBの問題を一項目ずつ直した設定です。

Aの設定からCの設定へ

A:詰めすぎ

8pt、46字×22行、行間約1.3mm
天9mm・地9mm、ノド8mm・小口7mm

C:調整後

9pt、38字×15行、行間約2.0mm
天14mm・地13mm、ノド20mm・小口10mm

変更の理由

  • 文字を1pt大きくし、1行を38字に縮めて、行の頭へ戻る目の動きを短くした。
  • 行間をルビ(4.5pt=約1.6mm)より広い約2.0mmにして、ルビのある行も行送りがそろうようにした。
  • ノドを20mmにした。シメケンプリントの小説原稿の解説では、くるみ製本のとじしろは「10mm程度でぎりぎり読める程度」で、読みやすくするには20mm以上を推奨している。この案内に合わせた。
  • 小口は10mmにした。仕上がりの断ち切りで文字が切れない範囲を保ちつつ、ノドを広げたぶんの幅をここから出した。
  • 6万字で175ページ前後という本文量の目安にも収まる。

ここで大事なのは、Cの数値をそのまま使うことではありません。どの項目を、何のために変えたかを説明できる状態にしておくと、自分の判型や印刷所で数値が変わっても、同じ考え方で直せます。

会話が多いと、ページ数の見積もりがずれる

作例の場面は389字ですが、Cでは17行、つまり38字×17行=646字分の場所を使っています。実際に埋まっているのは約6割です。会話の段落は短く、行の下が空くからです。行の長いAでは埋まり具合が約5割、行の短いBでは約7割でした。

ページ数を字数だけで見積もると少なく出ることが多いのはこのためです。会話の多い章と、地の文の多い章を一つずつ組んでみて、実際のページ数を確かめてから全体を見積もると、ずれが小さくなります。

文字サイズと行送りを決める

文字サイズは、判型と読む人で決めます。作例のCでは文庫判に9ptを使いましたが、これは作例の判型と行数での選択です。同じ9ptでも書体によって大きく見えたり小さく見えたりしますし、大きめの文字で読みたい人に届ける本なら10pt以上にする判断もあります。手元にある同じ判型の本を一冊測り、自分の設定と並べて試し刷りを読むと、数値より実際の読みやすさで決められます。

行送りは、文字サイズとセットで決めます。

見ること 目安の考え方
行間が狭すぎないか 縦書きでは、ルビは行の右側の行間に入る。ルビを付けるなら、行間をルビの大きさより広くする
行間が広すぎないか 行と行が離れすぎると、次の行を探しにくくなり、ページ数も増える
ソフトでの指定方法 Wordでは「文字数と行数を指定する」と、字数と行数から字送りと行送りが自動で決まる。余白を変えると行送りも変わる

Wordで組む場合は、用紙サイズ、余白、文字サイズ、1行の字数と行数を決めると、行送りが自動で計算されます。数値を確かめたいときは、上の作例と同じ計算をしてみると、行間がどれくらい残っているかが分かります。

書体と、その使ってよい範囲を確かめる

本文の書体は、長い文章を読みやすい明朝体が多く使われます。市販やフリーのフォントを使う場合は、そのフォントの利用規約で、印刷物への使用やPDFへの埋め込みが認められているかを確かめます。緑陽社のPDF原稿の不具合の解説では、フリー配布のフォントや印刷用途を想定していないフォントは、PDFに埋め込めない場合があると案内しています。

また、同じ解説では、「ー」「!」「…」などの記号の向きや位置がずれた場合に、その記号だけ別のフォントに変える対処を挙げています。書体を決めたら、記号の多いページも一緒に試し刷りします。

ノド・小口・天・地の余白を決める

本の余白には、それぞれ名前があります。

余白 場所 決めるときに見ること
天 ページの上 柱(ページの端に入れる題名など)を入れるか
地 ページの下 ノンブル(ページ番号)を下に置くか
ノド 綴じ側 製本方法と本の厚さ。くるみ製本では開ききらない
小口 綴じない側の端 断ち切りで文字が切れない距離と、指で持つ位置

ノドの広さは、印刷所の案内でも幅があります。

  • シメケンプリントの小説原稿の解説では、くるみ製本のとじしろは10mm程度でぎりぎり読める程度で、20mm以上を推奨しています。中綴じは内側まで開くので、とじしろは不要としています。
  • 緑陽社の原稿作成の基本では、ノド側10mm以内に大事な文字や絵柄を置かないことを勧めています。同じく、断ち切り線から2mm付近には大事な文字を置かず、5mm以上内側に入れると余裕が生まれるとしています。
  • 緑陽社の分厚い同人誌のコラムでは、小説原稿なら概ね25mm程度の余白があれば問題ないとしつつ、手元の分厚い本を測って自分が読みやすい幅を探すことも勧めています。

これらは、それぞれの印刷所が自社の製本を前提に出している案内です。注文する印刷所の案内を下限として守り、そのうえで読みやすい幅を試し刷りで決める、という二段階で考えると混乱しません。ページ数が多く厚い本ほど、ノドは広めにします。

天と地は、上下同じにする方法も、ノンブルを入れる側を少し広くする方法もあります。作例のCでは天を14mm、地を13mmにしてほぼ同じにし、ノンブルは地の余白に入れました。

扉・目次・ノンブルを配置する

本文の設定が決まったら、本文以外のページの扱いを決めます。

ノンブル(ページ番号)

ノンブルは、読者のためだけでなく、印刷所がページ順を確かめるためにも使われます。緑陽社の原稿作成の基本では、本文の全ページにノンブルが必要で、見せたくないページにも小さな「隠しノンブル」を入れるよう案内しています。同社の入稿原稿チェックリストでは、ノンブルを6pt以上で断ち切り線の内側に入れることを求めています。条件は印刷所ごとに違うので、注文先の案内で確かめてください。

位置は、下の中央、下の外側(小口側)、上の外側などから選びます。小口側に置くと、ページをめくりながら番号を探しやすくなります。

扉と目次

  • 本扉:書名と作者名だけのページ。本文の前に置く
  • 各話の扉:短編集で、作品ごとに題名だけのページを入れるか決める。入れるとページ数が増える
  • 目次:作品名と開始ページを並べる。ページ番号は組版が終わるまで動くので、最後に入れ直す

各話を奇数ページから始めるか、前の話の続きのページから始めるかも決めます。奇数ページ始まりにそろえると見た目が整いますが、白ページが増えることがあります。扉の追加やPDFの結合で左右のページが入れ替わることがあると、シメケンプリントの解説でも注意しています。扉を足したら、見開きで左右を確かめ直します。

収録作の順番や目次の案を作品名だけで並べ替えたいときは、作品集の目次整理が使えます。

ルビと禁則を確かめる

ルビと禁則(行の頭や終わりに来てはいけない文字の処理)は、画面ではうまく見えても、組み方を変えると崩れやすい部分です。

確かめること 起きやすい崩れ 直し方の例
ルビと行間 行間が狭く、ルビが隣の行に触れる。ルビの行だけ行送りが広がる 行間をルビより広くする。行数を1行減らす
長いルビ 親文字より長いルビが前後の字にかかる 前後の字にかけてよいか決める。気になる箇所だけ語を開く
行頭の句読点・閉じ括弧 「。」「、」「」」が行の頭に来る ソフトの禁則処理を有効にする
行末の開き括弧 「「」が行の最後に残る 同上
「……」「――」 二つの記号が行をまたいで分かれる 分かれないように処理されているか確かめ、必要なら手で調整する
数字・半角の記号 縦書きで半角数字や「!?」が横に寝る 全角にする、縦中横(数字を横に並べて一字分に収める処理)を使う

小説PDFメーカーでも、半角の「!」「?」を連ねると横向きになるので、全角で入力します。どのソフトで組む場合も、ルビの多いページと、会話や記号の多いページを一枚ずつ選んで確かめると、崩れを見つけやすくなります。

原稿の段階でのルビの付け方(Wordや投稿サイトの記法の違い)は、小説原稿のルビ・傍点の付け方で扱っています。

実寸で試し刷りし、一項目ずつ直す

設定が決まったら、必ず原寸で印刷して読みます。画面の拡大表示では、文字の大きさも余白の印象も実際と変わるからです。

手順実寸の試し刷りの手順

  1. 組んだ本文をPDFにし、印刷の倍率を100%(拡大縮小なし)にして印刷します。文庫判なら、見開き2ページ分(210×148mm)がA4用紙に収まります。
  2. 仕上がりの線で紙を切るか、線を引いて、実際の本の大きさにします。
  3. 2ページを見開きに並べ、ノド側を少し丸めて持ちます。くるみ製本の本が開ききらない状態に近づけるためです。
  4. 会話の多いページ、ルビの多いページ、地の文が続くページを、それぞれ声に出して1ページずつ読みます。
  5. 読みにくかった点を一つ書き出し、その原因になっている項目を一つだけ変えて、もう一度刷ります。

確認表試し刷りで見ること

  • 行の終わりから次の行の頭へ、目が迷わずに移れる
  • ノド側の行が、本を持った状態でも読める
  • ルビが隣の行に触れていない。ルビのある行だけ間隔が変わっていない
  • 行頭に句読点や閉じ括弧が来ていない。「……」が行をまたいで分かれていない
  • ノンブルが読める大きさで、仕上がりの内側にある
  • 扉、白ページ、各話の始まりが、予定どおりの左右に来ている
  • 想定した本文量で、目標のページ数の幅に収まっている

一度に複数の項目を変えると、どの変更が効いたのか分からなくなります。「行が長くて読みにくい」なら字数だけ、「ノドが沈む」ならノドの余白だけ、というように原因と変える項目を一対一で対応させるのがこつです。

本文と表紙をそろえたあと、入稿の直前に印刷所の指定と照らし合わせる確認は、小説同人誌の入稿前チェックで扱っています。

自分で組むか、組版を頼むか

ここまでの設定を自分で組むなら、Word、印刷所の配布するテンプレート、組版用のツールなどが使えます。たとえばシメケンプリントの小説PDFメーカーは、テキストを貼り付けて縦書きの入稿用PDFを作れる無料のツールで、A6・B6・A5などの判型、段組、とじしろの有無、ノンブルの位置、ルビの指定に対応しています。ほかの印刷所に入稿する場合は、その印刷所の規定に従います。

一方、章扉が多い長編、ルビが多い作品、短詩を組み込む作品などは、組む作業そのものに時間がかかります。組版だけを人に頼む方法もあります。