小説同人誌のサイズの選び方|文庫・新書・A5とページ数を考える
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この記事の答え
小説同人誌の判型は、どう読まれる本か(持ち運び・文字の大きさ)、本文量とページ数、注文する印刷所が対応しているかの三つで選びます。
- 文庫判(A6)は持ち歩きやすく、A5は2段組にすると少ないページに多くの字数が入る。B6や新書判はその中間
- ページ数は「字数÷(1行の字数×行数×段数×埋まり具合)」で見積もる。設定と会話の量で変わるので、字数だけで一律には決まらない
- 新書判は印刷所によって寸法が違い、対応していない印刷所もある。候補の判型で見本を実寸で刷って比べる
目次
小説同人誌のサイズを文庫にするかA5にするか迷うとき、「小説なら文庫」「長編ならA5」と決めつける前に、自分の本文を実際にそれぞれの大きさへ置いてみるのが確実です。この記事では、架空の短編集(5作・合計6万字)を文庫判、B6、A5の三つの判型に置き、1ページの字数、ページ数、持ち運びの違いを比べます。ページ数の計算式と、見本を実寸で刷って選ぶ手順も示します。
小説同人誌でよく使う判型と寸法
判型は、仕上がった本の紙の大きさです。小説同人誌では、次の判型がよく使われます。
| 判型 | 仕上がり寸法(幅×高さ) | 印刷所ごとの表記と注意 |
|---|---|---|
| 文庫判(A6) | 105×148mm | 緑陽社は「文庫」、シメケンプリントは「A6」と表記 |
| 新書判 | 緑陽社は114×182mm、ウエーブは105×173mm | 印刷所によって寸法が違う。扱わない印刷所もある |
| B6 | 128×182mm | 緑陽社・シメケンプリントとも同じ寸法 |
| A5 | 148×210mm | 緑陽社・シメケンプリントとも同じ寸法 |
小説の主な判型はA6(文庫本)、新書、B6、A5で、A5は漫画やイラスト集にも使われます。B5(182×257mm)は漫画・イラスト集・写真集向けの判型で、小説の主な判型には入りません。
ここで気をつけたいのは新書判です。A判・B判の寸法は印刷所が違っても同じですが、新書判は上の表のように印刷所で寸法が違います。新書判で作る場合は、注文する印刷所の寸法で原稿を作ってください。
読まれ方から候補をしぼる
判型を選ぶときは、まず「この本がどう読まれるか」を考えます。
| 判型 | 向いている本 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 文庫判 | 持ち歩いて読んでもらいたい本。長編を一冊にまとめる本 | 紙が小さく、余白を削ると窮屈になる。表紙の絵は小さく見える |
| 新書判 | 文庫より1行を長く取りたい本 | 寸法が印刷所で違う。対応する印刷所を先に確かめる |
| B6 | 文庫より文字を大きくしたいが、A5ほど大きくしたくない本 | 1段組で1行が長めになる |
| A5 | 2段組で多くの字数を少ないページに収めたい本。挿絵を大きく見せたい本 | かさばり、持ち歩きには向きにくい。1段組では行がかなり長くなる |
たとえば、即売会で手に取った人が帰りの電車で読むような短編集なら文庫判、写真や挿絵を大きく入れたい本ならA5、大きめの文字で読みたい家族に贈る本ならB6やA5の1段組、というように候補をしぼれます。
短歌や俳句の作品集は、ここで扱う小説とは判型の考え方が違います。1ページに何首・何句を置くか、余白をどれだけ取るかがページ数を決めるからです。歌集は歌集の作り方、句集は句集の作り方で扱っています。
字詰め・行数・余白とページ数の関係
判型が変わると、1ページに入る字数が変わり、それに応じてページ数が変わります。ただし、同じ判型でも、文字の大きさ、1行の字数と行数、段数、余白の設定でページ数は大きく変わります。判型だけでページ数は決まりません。
ページ数の見積もりは、次の式で出します。
要点ページ数の見積もり方
本文のページ数 ≒ 各話の字数 ÷(1行の字数 × 1ページの行数 × 段数 × 埋まり具合)
- 各話は新しいページから始まるので、話ごとに切り上げてから合計する
- 埋まり具合は、改行や会話で行の下が空くぶんの割合。作品の書き方と1行の長さで変わる
- 本文のページ数に、扉・目次・あとがき・奥付などのページを足し、最後に印刷所のページ単位に合わせる
400字詰め原稿用紙に換算した枚数(6万字なら150枚)は、本のページ数とは別のものです。原稿用紙の換算は応募原稿の長さを測るためのもので、本のページ数は判型と組み方の設定で決まります。
作例:同じ短編集を三つの判型に置く
架空の短編集『坂の上の郵便局』(5作、合計6万字)を、三つの判型に置く設定を作りました。どれも縦書きで、くるみ製本を前提にノド(綴じ側の余白)を20mmにしています。
| 判型 | 文字の大きさと組み方 | 余白(天・地・ノド・小口) | 1ページの最大字数 |
|---|---|---|---|
| 文庫判(105×148mm) | 9pt、1段組、38字×15行 | 14・13・20・10mm | 570字 |
| B6(128×182mm) | 9.5pt、1段組、43字×18行 | 18・19・20・12mm | 774字 |
| A5(148×210mm) | 9pt、2段組、26字×22行×2段(段の間は約9.5mm) | 18・17・20・12mm | 1,144字 |
1ページの最大字数は「1行の字数×行数×段数」です。実際には改行や会話で行の下が空くので、この字数がすべて埋まるわけではありません。
A5を2段組にしたのは、1段組では行が長くなりすぎるからです。同じ余白でA5を1段組にすると、9ptでは1行が55字になります。文字を10.5ptに上げても47字です。A5を1段組で作るなら、文字をさらに大きくするか、天地の余白を広げて1行を短くします。
埋まり具合の仮定で、ページ数がどれだけ動くか
この三つの設定で、本文のページ数を二通りに見積もりました。一つは埋まり具合を一律7割と仮定したもの、もう一つは作品の一場面(会話が半分を占める389字の場面)を実際に各設定へ流し込み、使った行数から埋まり具合を出したものです。
| 判型 | 場面を流し込んだ結果 | 本文ページ(7割と仮定) | 本文ページ(場面の埋まり具合で計算) |
|---|---|---|---|
| 文庫判 | 17行を使用、埋まり具合 約6割 | 154ページ | 177ページ |
| B6 | 16行を使用、埋まり具合 約5.7割 | 114ページ | 140ページ |
| A5(2段組) | 20行を使用、埋まり具合 約7.5割 | 77ページ | 74ページ |
二つの表から読み取れることは三つあります。
- 判型と組み方で、同じ6万字が74ページにも177ページにもなる。表紙の背幅や印刷代はページ数で変わるので、判型の選択は費用にも影響する
- 会話の多い作品は、1行が長い設定ほど埋まり具合が下がる。文庫判やB6の1段組では、一律7割の仮定より20ページ以上多くなった
- A5の2段組は1行が短いので、会話の多い場面でも行の空きが少ない。見積もりは7割の仮定とほぼ同じになった
本文のページ数に、本扉と目次(白ページを含めて4ページ)、各話の扉と裏の白ページ(10ページ)、あとがきと奥付(2ページ)の合計16ページを足すと、文庫判では170〜193ページ、B6では130〜156ページ、A5では90〜93ページになります。この幅のどこに収まるかは、実際に組んでみるまで分かりません。
印刷所のページ単位に合わせる
最後に、印刷所が受け付けるページ数の単位に合わせます。この単位も印刷所と製本方法で違います。
- シメケンプリントでは、中綴じは4の倍数、くるみ製本は2の倍数で本文を作ります。注文は4の倍数ページで行い、くるみ製本なら注文より2ページ少なく入稿できます。くるみ製本は50ページ以上に対応しています。
- 緑陽社の小説本セット(無線とじ)は、本文16〜800ページを2ページ単位で発注します。
- ペンタローの無線綴じ製本は、本文16〜300ページを1ページ単位で注文でき、奇数ページなら最後に白ページが入ります。
ページ数が単位に合わないときは、白ページを足して調整します。
ページ数は背幅にも響く
くるみ製本の本の背幅は、ページ数と本文用紙の厚さで決まります。緑陽社の小説本セットでは、本文用紙のクリーム書籍用紙72.5kgと上質70kgの紙厚は0.1mmです。紙1枚は表と裏の2ページなので、本文だけの厚さは「ページ数÷2×紙厚」でおおよそつかめます。
| 判型(作例) | 総ページ数のめやす | 本文だけの厚さのめやす(紙厚0.1mm) |
|---|---|---|
| 文庫判 | 170〜193ページ | 約8.5〜9.7mm |
| B6 | 130〜156ページ | 約6.5〜7.8mm |
| A5(2段組) | 90〜93ページ | 約4.5〜4.7mm |
これは表紙の厚さを含まない、判型を比べるためのめやすです。入稿する表紙の背幅は、印刷所の背幅計算で出した値を使います。A5の2段組のように背が5mm前後になると、背表紙に入れられる題名の文字はかなり小さくなります。背表紙に題名を大きく見せたいかどうかも、判型を選ぶ材料の一つです。
印刷所の対応サイズを確かめる
候補の判型を、注文する予定の印刷所が扱っているかを確かめます。同じ「小説本」のメニューでも、選べる判型は違います。
| 確かめること | シメケンプリント(小説同人誌) | 緑陽社(小説本セット) | ペンタロー(無線綴じ製本) |
|---|---|---|---|
| 選べる判型 | A5、B6、A6、A5正方形 | A5、B6、新書(114×182mm)、文庫。B6〜文庫の寸法の範囲なら変形サイズも追加料金なし | A5、B6、A6(文庫)、新書(103×182mm)。ほかにA4・B5 |
| 部数 | 1冊から | 30部から | 1部から(文庫サイズの注文画面で確認) |
| 印刷方式 | オンデマンド | オフセット | オンデマンドかオフセット(部数と納期で印刷所が決める) |
| ページの単位 | 中綴じは4の倍数、くるみは2の倍数(50ページ以上) | 2ページ単位(本文16〜800ページ) | 1ページ単位(本文16〜300ページ) |
たとえば新書判で作りたい場合、シメケンプリントの小説同人誌メニューには新書判がなく、緑陽社の小説本セットとペンタローの無線綴じ製本では選べます。ただし緑陽社のセットは30部からで、寸法も緑陽社は114×182mm、ペンタローは103×182mmと違います。同じ「新書判」でも印刷所で寸法が違うので、印刷所を決めてからその寸法で組みます。判型・部数・ページ数の三つを同時に満たす印刷所を探す、という順番で考えると、後から判型を変える手戻りが減ります。
印刷所の対応サイズに合わない場合でも、変形サイズとして受け付けている印刷所もあります。その場合は仕上がりサイズの指定方法を印刷所の案内で確かめてください。
見本を実寸で刷って比べる
計算で候補を二つほどにしぼったら、実際の大きさで見本を刷って比べます。画面では、どの判型も同じ大きさに拡大されて見えるため、持ったときの大きさや文字の印象が分かりません。
手順判型の見本を作って比べる手順
- 収録作から、会話の多い場面と地の文が多い場面を一つずつ選びます。
- 候補の判型ごとに、上の作例のような設定(文字の大きさ、1行の字数と行数、段数、余白)を決めて、2〜4ページ分を組みます。緑陽社などの印刷所が配るWordテンプレートを使うと、判型ごとの用紙設定から始められます。
- 印刷の倍率を100%にして刷ります。文庫判とB6は見開き2ページ分がA4用紙に収まります。A5の見開きはA4とほぼ同じ大きさになるので、家庭用プリンターでは1ページずつ刷ると端が切れません。
- 仕上がりの線で切り、手元にある同じくらいの大きさの本と並べます。片手で持てるか、鞄に入るか、文字を読み続けて疲れないかを確かめます。
- 組んだページ数から、その作品全体のページ数を出し直し、本全体のページ数を見積もります。
確認表判型を決める前に確かめること
-
届けたい読者の読み方(持ち歩く、机で読む、文字の大きさ)に合っている
-
見積もったページ数が、印刷所の製本方法で受け付ける範囲に入っている
-
注文する予定の印刷所が、その判型と寸法を扱っている(新書判は寸法も確かめる)
-
実寸の見本を、会話の多いページと地の文の多いページの両方で読んだ
-
ページ数から背幅が変わることを、表紙を作る人と共有できる
作例の『坂の上の郵便局』では、持ち歩いて読んでもらいたいことを優先して文庫判を選び、ページ数は170〜190ページ台になる前提で印刷所を比べることにしました。
仕様が決まったら、同じ条件で見積もりを取る
判型・ページ数のめやす・部数・締切がおおよそ決まったら、印刷所に見積もりを出してもらえる段階です。比べるときは、判型、製本方法、ページ数、部数、本文用紙、表紙の色数と加工、納期をすべて同じ条件にそろえて入力します。一社だけ条件が違うと、総額の差が判型によるものか、条件によるものか分からなくなります。印刷所の比べ方と見積もりの読み方は小説同人誌の印刷所の選び方で扱っています。