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発表・本作り

Web小説の改行・空白の入れ方|スマホで読みやすい段落を作る

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この記事の答え

Web小説の改行と空行は、区切りの強さを段階に分けて使います。

  • 改行(段落の区切り)は意味のまとまりと話者の交代で、空行は話題や時間の区切りで、記号や複数の空行は視点や場面の大きな切り替えで使う
  • 一文ごとに空行を入れると、すべての区切りが同じ強さになり、場面の切り替えや強調したい一文が目立たなくなる
  • 正解の行数はない。投稿先のプレビューで、スマホ幅と文字を大きくした表示の両方を見て、話者と場面の切れ目が追えるかで決める
目次

Web小説を投稿しようとして、「スマホでは一文ごとに改行したほうが読みやすい」「空行が多すぎると薄く見える」という反対の意見を見て、どちらに合わせればよいか迷っている人に向けた記事です。架空の場面を一つ用意し、長い段落、空行過多、意味のまとまりに沿う改行の三案に書き分けて比べます。スマホ幅での見え方と投稿サイトの表示設定も確かめるので、読み終えたら自作の改行を自分で判断して直せます。

改行・空行・字下げの役割を分ける

まず、言葉をそろえておきます。Web小説の「改行」の悩みには、次の三つが混ざっていることがあります。

用語 ここでの意味 主な役割
改行(段落の区切り) 行を改めて次の段落を始めること 意味のまとまりの区切り。話者の交代
空行 何も書かない行を一行以上入れること 話題・時間・場所の区切り。画面上の息継ぎ
字下げ 段落の頭を一字空けること ここから新しい段落だと示す。改行と組み合わせて使う

紙の本の本文では、段落の頭を一字下げ、段落の間に空行は入れない組み方が多く見られます。空行は、場面が変わるところに取っておかれます。一方、横書きのWeb小説では、段落の間に空行を入れて画面に余白を作る書き方も見られます。

どちらかが正解というわけではありません。大事なのは、区切りの強さに段階を作り、作品の中で一貫させることです。この記事では、区切りを次の三段階に分けて考えます。

要点区切りの強さの三段階

  • 弱い区切り(改行):段落が変わる。会話で話者が変わる
  • 中くらいの区切り(空行一つ):話題や動作のまとまりが変わる。短い時間が飛ぶ
  • 強い区切り(記号や複数の空行):視点人物が変わる。場所や時間が大きく変わる

この三段階を決めておくと、読者は空白の大きさだけで「ここから何が変わったか」を感じ取れます。

同じ場面を三つの改行案で比べる

ここでは、架空の場面「深夜のコインランドリー」を使います。大学生の真帆が、毎週同じ時間に来る老人と言葉を交わし、最後に視点が老人(井口)に移る場面です。内容はまったく同じで、改行と空行だけを変えています。

案1:長い段落にまとめた場合

 深夜零時を過ぎたコインランドリーには、真帆のほかに客が一人しかいなかった。奥の乾燥機の前で、灰色のカーディガンの老人が文庫本を読んでいる。毎週木曜の夜、いつも同じ椅子に座っている人だ。洗い終えた洗濯物をかごに移していて、真帆は靴下が片方足りないことに気づいた。洗濯機の中をのぞき、扉のゴムの溝まで指でなぞったが、見当たらない。「探し物かい」と老人が文庫本から顔を上げた。「靴下が、片方だけなくて」「ああ、ここの三番は食うんだよ。去年はわたしもハンカチを一枚やられた」「食う?」「ドラムの裏に落ちるらしい。店の人に言えば、月末にまとめて出してくれる」
 真帆は三番の洗濯機を見た。白い扉に、誰かがマジックで小さく「くいしんぼう」と書いている。思わず笑うと、老人も少しだけ口の端を上げた。三十分後、乾燥機が止まった。真帆は温かい洗濯物を抱えて店を出ながら、来週もこの時間に来ようと思った。
 井口は、若い女が出ていくのを窓越しに見送った。三番の洗濯機がハンカチを食ったという話は、本当ではない。去年の秋、ハンカチを一枚なくしたのは、妻の病室だった。

会話が地の文の中に続けて書かれているため、「食う?」がどちらの発言なのかを、読者は前後から推測しなければなりません。また、「三十分後」という時間の省略が段落の途中にあり、「井口は」で始まる段落も普通の段落と同じ扱いなので、視点が老人に移ったことに気づくのが遅れます。

案2:一文ごとに空行を入れた場合

深夜零時を過ぎたコインランドリーには、真帆のほかに客が一人しかいなかった。

奥の乾燥機の前で、灰色のカーディガンの老人が文庫本を読んでいる。

毎週木曜の夜、いつも同じ椅子に座っている人だ。

洗い終えた洗濯物をかごに移していて、真帆は靴下が片方足りないことに気づいた。

洗濯機の中をのぞき、扉のゴムの溝まで指でなぞった。

見当たらない。

「探し物かい」

老人が文庫本から顔を上げた。

「靴下が、片方だけなくて」

「ああ、ここの三番は食うんだよ。去年はわたしもハンカチを一枚やられた」

「食う?」

「ドラムの裏に落ちるらしい。店の人に言えば、月末にまとめて出してくれる」

真帆は三番の洗濯機を見た。

白い扉に、誰かがマジックで小さく「くいしんぼう」と書いている。

思わず笑うと、老人も少しだけ口の端を上げた。

三十分後、乾燥機が止まった。

真帆は温かい洗濯物を抱えて店を出ながら、来週もこの時間に来ようと思った。

井口は、若い女が出ていくのを窓越しに見送った。

三番の洗濯機がハンカチを食ったという話は、本当ではない。

去年の秋、ハンカチを一枚なくしたのは、妻の病室だった。

一文ずつ区切られているので、一つひとつの文は読みやすく見えます。けれども、すべての区切りが同じ空行一つなので、時間の省略も、視点の切り替えも、ふつうの文の区切りと同じ強さになってしまいました。最後の「妻の病室だった」は場面の中で最も重い一文ですが、どの文も一行ずつ独立しているため、特別には見えません。

一文で改行するために、「なぞったが、見当たらない」を「なぞった。」「見当たらない。」の二文に分けたことにも注意してください。「見当たらない」は強調したい情報ではないのに、一行を独占しています。

案3:意味のまとまりに沿って改行した場合

 深夜零時を過ぎたコインランドリーには、真帆のほかに客が一人しかいなかった。奥の乾燥機の前で、灰色のカーディガンの老人が文庫本を読んでいる。毎週木曜の夜、いつも同じ椅子に座っている人だ。

 洗い終えた洗濯物をかごに移していて、真帆は靴下が片方足りないことに気づいた。洗濯機の中をのぞき、扉のゴムの溝まで指でなぞったが、見当たらない。

「探し物かい」
 老人が文庫本から顔を上げた。
「靴下が、片方だけなくて」
「ああ、ここの三番は食うんだよ。去年はわたしもハンカチを一枚やられた」
「食う?」
「ドラムの裏に落ちるらしい。店の人に言えば、月末にまとめて出してくれる」

 真帆は三番の洗濯機を見た。白い扉に、誰かがマジックで小さく「くいしんぼう」と書いている。思わず笑うと、老人も少しだけ口の端を上げた。

 三十分後、乾燥機が止まった。真帆は温かい洗濯物を抱えて店を出ながら、来週もこの時間に来ようと思った。

   ◇

 井口は、若い女が出ていくのを窓越しに見送った。
 三番の洗濯機がハンカチを食ったという話は、本当ではない。

 去年の秋、ハンカチを一枚なくしたのは、妻の病室だった。

三案で何が変わったか

見るところ 案1 長い段落 案2 一文ごとに空行 案3 まとまりに沿う
話者が追えるか 会話が続けて書かれ、推測が必要 一行ずつ分かれていて追える 一行ずつ分かれ、会話全体が一つのかたまりに見える
時間の省略 段落の途中に埋もれる ほかの文と同じ区切り 空行と「三十分後、」で始まる段落で分かる
視点の切り替え 普通の段落と同じ ほかの文と同じ区切り 記号「◇」で、ここから別の人物だと分かる
最後の一文の重さ 段落の最後に流れる 他の文と同じ重さ 直前に空行を置き、一つだけ独立させている
スクロールの量 少ない 多い 中くらい

案3では、三段階の区切りを次のように使っています。

  • 改行:会話の一行ごと、会話に付く動作(「老人が文庫本から顔を上げた」)。段落の中の文は改行しない
  • 空行一つ:情景→探し物→会話→洗濯機を見る→三十分後、という動作や話題のまとまりの間
  • 記号:真帆から井口への視点の切り替え

そして最後の一文だけは、ふだんの規則から外して空行を置き、独立させました。区切りの規則が一貫していると、規則を破った一か所が強調として働きます。案2のようにすべてを独立させると、この効果は使えません。

注意三段階の決め方は作品ごとに変えてよい

案3の決め方は一例です。段落の間に空行を入れず、字下げだけで段落を区切り、空行は時間や場所が変わるところだけに使う書き方もあります。その場合、視点の切り替えには空行を二つ以上入れるか、記号を使います。どの方式でも、一つの作品の中で同じ区切りを同じ意味で使っていれば、読者は迷いません。

会話と地の文を切り替えるときの改行

会話の前後は、話者を見失いやすいところです。次の三つを決めておくと迷いが減ります。

  1. かぎかっこ一つで一行にする。話者が変わったら必ず改行します。同じ人物が話し続けるときも、間に動作が入るなら改行します。
  2. 会話に付く動作は、会話のすぐ下か上に置く。案3の「老人が文庫本から顔を上げた」のように、誰が話したかを示す一文は、その会話と同じかたまりに入れます。空行で離すと、どちらの会話に付く動作か分からなくなります。
  3. 会話のかたまりと地の文の段落の間に、中くらいの区切りを置く。案3では、会話全体の前後に空行を入れました。会話の連続を一つの場面のまとまりとして見せるためです。

会話が四往復以上続いて、誰の発言かを読者が数えなければならないときは、改行だけでは足りません。発言の内容や言葉づかいで話者が分かるようにする工夫は小説のセリフを書き分ける方法で扱っています。

地の文の段落が長くなりすぎる場合も、まず改行の位置を探す前に、その段落に描写・説明・心の声のどれが混ざっているかを見ると、切れ目が見つかります。地の文の組み立て方は小説の地の文の書き方を参考にしてください。

スマホ幅とPC幅で、段落の見え方を確かめる

同じ段落でも、画面の幅によって行数が大きく変わります。PCの横幅で書いていると、スマホで読んだときに思ったより長い文字のかたまりになっていることがあります。

次の見本は、案1の冒頭(場面の最初から「探し物かい」まで、186字)を、1行15字で折り返した画面として示したものです。文字を大きくしたスマホ表示を想定しています(禁則処理は簡略化しています)。

 深夜零時を過ぎたコインランド
リーには、真帆のほかに客が一人
しかいなかった。奥の乾燥機の前
で、灰色のカーディガンの老人が
文庫本を読んでいる。毎週木曜の
夜、いつも同じ椅子に座っている
人だ。洗い終えた洗濯物をかごに
移していて、真帆は靴下が片方足
りないことに気づいた。洗濯機の
中をのぞき、扉のゴムの溝まで指
でなぞったが、見当たらない。
「探し物かい」と老人が文庫本か
ら顔を上げた。

同じ内容を案3の区切りにすると、次のようになります。

 深夜零時を過ぎたコインランド
リーには、真帆のほかに客が一人
しかいなかった。奥の乾燥機の前
で、灰色のカーディガンの老人が
文庫本を読んでいる。毎週木曜の
夜、いつも同じ椅子に座っている
人だ。

 洗い終えた洗濯物をかごに移し
ていて、真帆は靴下が片方足りな
いことに気づいた。洗濯機の中を
のぞき、扉のゴムの溝まで指でな
ぞったが、見当たらない。

「探し物かい」
 老人が文庫本から顔を上げた。

行数は増えていますが、段落の切れ目が二か所あり、会話が始まる位置もすぐに分かります。画面の幅による違いを数字で比べると、次のとおりです。

段落 字数 1行15字の画面 1行36字の画面
案1の冒頭(一段落) 186字 13行 6行
案3の第1段落 93字 7行 3行
案3の第2段落 72字 5行 2行

1行あたりの字数は、端末の画面幅だけでなく、読者が選ぶ文字サイズでも変わります。上の15字・36字は比べるための仮の数字で、実際の表示は投稿先と端末で確かめてください。

段落の長さに決まりはありませんが、確かめるときの目安として、スマホの一画面の中に段落の切れ目が一つも見えない状態が続いていないかを見ます。続いている場合は、その段落の中に話題の変わり目がないかを探します。反対に、どの段落も一、二行しかなく画面が空白ばかりなら、案2のように区切りの強さがそろってしまっていないかを確かめます。

一文ごとに区切るのが合う場面もある

案2の書き方が、いつも悪いわけではありません。緊張が高まる場面や、時間がゆっくり流れる瞬間を見せたい場面では、短い行を続けることで読む速度を変えられます。大切なのは、それを作品全体の標準にせず、効果が必要な場面に限ることです。

作品全体の標準と、効果をねらう一か所を分ける

修正前(普段の場面も一文ずつ区切っている)

真帆は三番の洗濯機を見た。

白い扉に、誰かがマジックで小さく「くいしんぼう」と書いている。

思わず笑った。

修正後(普段は段落にまとめ、強調は一か所だけ)

真帆は三番の洗濯機を見た。白い扉に、誰かがマジックで小さく「くいしんぼう」と書いている。思わず笑うと、老人も少しだけ口の端を上げた。

(中略)

去年の秋、ハンカチを一枚なくしたのは、妻の病室だった。

変更の理由

  • 洗濯機の落書きを見る動作は、場面の中の小さな出来事です。一文ずつ独立させるほどの重さはないので、一つの段落にまとめました。
  • 一文で独立させるのは、場面の意味が変わる一文(井口がうそをついていた理由が分かる一文)だけにしました。普段の区切りが段落単位だからこそ、ここが目立ちます。
  • 全編を短い行と空行で書く作風もあり、詩に近いリズムをねらう作品では合う場合があります。その場合も、場面転換を示す、より強い区切りを別に用意します。

投稿先の表示設定とプレビューで確かめる

Web小説は、書いた画面と同じ見え方で読まれるとは限りません。読者が表示を変えられるからです。主な投稿サイトの公式ヘルプで確認できた設定は次のとおりです。

投稿サイト 書く側の機能 読者が変えられる表示
小説家になろう 自動字下げ(段落の先頭に全角スペースを一つ入れる。「」の前と、すでに全角スペースがある行は対象外)、プレビュー機能 配色(7種類)、行間(100〜300%)、文字サイズ(50〜300%)。フォントの変更は未実装。設定はすべての作品の閲覧ページに適用される
カクヨム カクヨム記法で段落の字下げ、プレビュー(執筆画面の文字サイズ・背景色・フォント設定が反映される。縦組みでのプレビューも可) 文字サイズ、背景色、フォント、組み方向(初期設定は横組み。縦組みは試用版で、ブラウザのみ。アプリでは組み方向を変えられず、文字サイズは10段階)

ここから分かるのは、作者が一つの見え方を固定することはできないということです。行間を広げて読む人もいれば、文字を大きくする人も、カクヨムで縦組みにする人もいます。空行や字下げは、どの設定でも区切りとして働くように使います。

手順公開前に改行を確かめる手順

  1. 一話分を下書きとして保存し、投稿先のプレビューを開く。
  2. スマホで、文字サイズを初期設定のまま読む。会話の話者、時間の省略、視点の切り替えの三か所が分かるかを確かめる。
  3. 文字サイズを大きくして、もう一度読む。一画面の中に段落の切れ目がまったく見えない区間がないかを見る。
  4. PCの幅でも開き、空行が多すぎて画面がまばらになっていないかを見る。
  5. カクヨムなら縦組みのプレビューも開き、記号や空行が区切りとして働いているかを確かめる。
  6. 手元の原稿から貼り付けた場合は、字下げの全角スペースが消えたり半角になったりしていないかを確かめる。

投稿サイトをまだ決めていない場合は、表示の機能も含めて小説の投稿サイトを比較で候補を比べられます。

公開後に、読者の画面で確かめる

公開した後も、一度は読者と同じ条件で読み返します。作者としてログインしたままのプレビューと、公開ページの見え方が違うことがあるからです。

確認表公開後の確認表

  • ログインしていないブラウザ、またはふだん使わない端末で公開ページを開いた
  • 会話の一行ごとの改行と、会話に付く動作の位置が崩れていない
  • 時間の省略と視点の切り替えが、ふつうの段落の区切りより強く見える
  • 強調のために独立させた一文が、ほかの一行と同じ扱いに埋もれていない
  • 字下げが段落ごとにそろっている(付いている段落と付いていない段落が混ざっていない)
  • 記号(◇など)が文字化けせず、行の中央付近など意図した位置に見える
  • アプリで読める投稿先なら、アプリでも一度開いた

ここで気づいた直しは、公開中の話だけでなく、手元の原稿にも反映します。逆に、Web用に入れた空行や記号は、同じ作品を応募原稿や紙の本にするときには合わないことがあります。手元にはWeb用と提出・印刷用を別のファイルで残しておくと、どちらにも直しやすくなります。紙の本の本文で行間や余白を決める手順は小説同人誌の本文レイアウトで扱っています。