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小説

Web小説は一話何文字がよい?区切り方と読みやすい一話の作り方

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この記事の答え

確認した投稿サイトの公式ヘルプには、どの長さなら読まれるという推奨字数は書かれていません。決められているのは入力できる上限で(小説家になろうは本文70,000文字以内)、読みやすい長さとは別のものです。

  • 先に「この話で何が一つ進むか」と「どこで終えるか」を決め、字数はその結果として受け入れる
  • 切れ目は、会話の途中・主人公の決断の直後・出来事の一区切りのどれかで選ぶ。強い引きを毎回作る必要はない
  • 書いたらスマホのプレビューで通して読み、最後の画面に終わりの一文が来ているか確かめる
目次

Web連載を始めると、「一話は何文字にすればいいのか」で手が止まりがちです。ただ、字数だけを先に決めると、出来事の途中で機械的に切れたり、何も進まない回ができたりします。この記事では、投稿サイトの公式ヘルプで確かめられる字数の決まりと、読みやすさの考え方を分けたうえで、架空の連載の同じ三場面を三通りに切って比べます。読み終えたら、自作の一話の終点と分量を、字数だけに頼らず決められます。

投稿サイトが決めているのは上限で、推奨字数ではない

まず、投稿サイトが公式に示している字数の決まりを確かめます。

投稿先 公式ヘルプで確かめられたこと
小説家になろう ヘルプ「新規エピソード作成」に、本文は「70,000文字以内」、前書き・後書きは「20,000文字以内」、エピソードタイトルは「100文字以内」とある。超える場合は複数の下書きに分けるよう案内している。下限の記載はない
カクヨム ヘルプ「エピソードを執筆する」「文字数を確認する」とFAQ「エピソードの執筆について」には、一話の上限・下限の記載がない。編集画面の文字数は、一定の文字数を超えると「約◯◯◯文字」と概算で表示され、正確な字数はプレビュー画面の上部で確かめるよう案内している

小説家になろうの70,000文字は、一回の投稿に入れられる量の上限です。この長さが読みやすいという意味ではありません。カクヨムについても、確認したヘルプには一話の推奨字数は書かれていません。投稿サイトのコンテストに出す場合は、作品全体の字数の条件が別に決められていることがあるので、そのコンテストの募集ページで確かめます。

「一話◯字が正解」と言い切れない理由

投稿者向けの解説では、一話の目安としてさまざまな字数が挙げられます。ただ、どの字数なら読まれやすいかを示した公式のデータは見当たりません。字数だけでは読みやすさが決まらない理由は、少なくとも三つあります。

理由 具体的には
読者の画面が一人ずつ違う たとえばカクヨムでは、読者が文字サイズや背景色、組み方向(横組み・縦組み)を自分の画面用に変えられる。同じ字数でも、ある人には画面三枚、別の人には六枚になる
同じ字数でも読む負担が違う 短い会話が続く回はすぐ読めるが、世界の仕組みを説明する回は同じ字数でも重く感じる
更新の間隔で求められる量が変わる 毎日更新なら短い回でも次がすぐ読める。週に一度なら、一回で何かが進んだと感じられる量が要る

そのため、この記事では字数の正解を出す代わりに、一話の中身と終点を先に決め、字数はその結果として見るという順番を勧めます。

一話で「何が一つ進むか」を決める

一話を書く前に、その回で物語の何が進むのかを一行で書きます。進むものは大きな事件でなくてもかまいません。主人公が何かを知る、決める、失う、誰かとの関係が変わる。そのうち一つが起きれば、読者は「この回を読んだ」と感じられます。

ひな形一話の設計メモ(一話ごとに書く)

話数:
この話で一つ進むこと(知る/決める/失う/関係が変わる):
始まりの場面(前の話のどこから続くか):
終わりの一文(この話を何で閉じるか):
読者に残る問い(次の話で答えるもの):
書いたあとの字数:

最後の「字数」の欄は、書き終えてから埋めます。書く前に字数を決めるのではなく、書いた結果を記録しておき、ほかの回と比べて極端に長い・短い回がないかを見るために使います。各話の字数は文字数・段落数カウンターで、改行や空白を数えるかどうかを切り替えて確かめられます。

回の種類によって、向く長さは変わる

一話に入る出来事の種類によって、短めにまとめたほうがよい回と、長くなってもよい回があります。

回の種類 長さの考え方 区切りの置き方
会話が中心の回 長くなっても読み進めやすい。やり取りが同じ話題を回り始めたら切りどき 相手の答えが出た直後か、話題が変わる直前
山場・対決の回 途中で切ると続きを待つ時間が長く感じられる。山場の決着までを一話に入れるか、決着の直前で切るかを選ぶ 決着の直前(次を急いで出せるとき)、または決着の直後
説明が必要な回 説明だけの回は重くなりやすい。説明を短くし、出来事と組み合わせる 説明を受けた主人公が何かを決めたところ
連載の第一話 主人公・状況・最初の問いが伝わるまでを入れる。設定の紹介だけで終えない 最初の出来事が一区切りついたところ

説明が長い回は、二つに分けるより、説明を削って出来事の中に混ぜるほうが効くこともあります。読んでいて回の進みが遅いと感じる場合は、場面の順番と描写の量を小説のテンポが悪いときの直し方で見直せます。

同じ三場面を、三つの位置で切って比べる

ここからは、架空の連載『夜間返却ポスト』の冒頭の三場面を使います。大学生のアルバイト・相沢晴が、閉館後の図書館の返却ポストで、五十年前に貸し出された本を見つける話です。見本は記事の中で読みやすいように短く書いてあり、一場面が数百字です。実際の連載では一場面がこの数倍になることもありますが、切る位置の考え方は同じです。

本文の途中にある【切れ目A】【切れ目B】【切れ目C】が、それぞれの案で第一話を終える位置です。

作例『夜間返却ポスト』冒頭の三場面(見本)

場面1 見つける

午後九時。閉館した市立図書館の裏口で、相沢晴は返却ポストの鍵を回した。

鉄の扉の向こうには、今日も本が小さな山になっている。絵本、料理の本、旅行ガイド。一冊ずつバーコードを読み取って、台車に積んでいく。

その手が、最後の一冊で止まった。

茶色い布張りの表紙。背表紙の文字は、ほとんど消えている。そして、どこにもバーコードのラベルが貼られていない。

「森下さん、これ、うちの本ですか」

カウンターで業務日誌を書いていた司書の森下さんが、眼鏡を押し上げてこちらへ来た。本を受け取り、裏表紙をめくる。

内側には紙のポケットが貼られていて、一枚のカードが差してあった。

「……懐かしい。貸出カードよ。昔はこれで貸し借りを記録してたの」

カードには、手書きの日付と名前が何行も並んでいる。森下さんの指が、いちばん下の行で止まった。

「最後の貸出日は――五十年前の十月」

【切れ目A】

「五十年前って」

「返却期限は、その二週間後。つまりこの本は、五十年延滞して、今夜帰ってきたことになるわね」

森下さんは、冗談とも本気ともつかない顔で言った。

場面2 調べて、決める

二人で本を事務室に運び、棚から古い蔵書目録を下ろした。紙の目録は、データを移したあとも捨てられずに残っていたものだ。

書名は『灯台守の冬』。目録には確かに載っていた。ただ、備考欄に赤いペンで「不明・除籍」とある。

「借りた人が返さなかったから、なくなった扱いにしたのね」

「借りた人って、カードの最後の名前ですよね」

いちばん下の行には、子どもが書いたような大きな字で〈みずの ゆうこ〉とあった。

晴はカードをポケットから抜き出した。裏に、鉛筆で何か書いてある。薄くて、蛍光灯にかざさないと読めない。

〈おそくなってごめんなさい。つづきをかりにきます〉

「続き?」

森下さんが目録をめくる。『灯台守の冬』の次の行に、『灯台守の春』。同じ作者の続巻だ。こちらの備考欄は空白で、今も書庫にあることになっている。

「でも、続きを借りたいなら、開いている時間に来ればいいのに」

「来られない理由があるのかもしれないわね」

晴は、裏口の方を振り返った。返却ポストに本が入るのは、図書館が閉まっている間だけだ。

「森下さん。今夜、ポストの前で待ってもいいですか」

【切れ目B】

場面3 待つ

午前零時を回ると、裏口の外灯だけが点いていた。

晴は返却ポストの横に折りたたみ椅子を置き、膝の上に『灯台守の春』を載せて座っていた。書庫から出してきた続巻だ。来た人に、そのまま渡せるように。森下さんは「無理はしないこと」と言い残して、先に帰った。

一時。二時。誰も来ない。

まぶたが重くなり、晴は一度だけ目を閉じた。

がたん、と金属の蓋が鳴った。

跳ね起きると、膝の上が軽かった。『灯台守の春』がない。椅子の下にも、足元にもない。通りを見渡しても、濡れたアスファルトに外灯の光が広がっているだけだった。

震える手でポストの扉を開けると、底に紙が一枚落ちていた。

『灯台守の春』の貸出カードだった。いちばん下の行に、大きな字で名前が書き足されている。

〈みずの ゆうこ〉

隣の日付欄には、今日の日付があった。

【切れ目C】

三つの案の比べ方

それぞれの位置で第一話を終えた場合を比べます。字数は場面見出しと【切れ目】の印を除き、改行と空白を含めずに数えた本文の実字数です。

案 第一話に入る範囲と字数 読者に残る問い 第二話の書き出しに必要なこと
A 会話の途中で切る 場面1の途中まで(370字) 五十年前の本が、なぜ今夜返ってきたのか 森下さんの台詞の続きから、会話の途中で始める
B 決断の直後で切る 場面1と2(909字) 晴が待っていたら、誰が来るのか 待つ場面から、時間を飛ばして自然に始められる
C 出来事の一区切りで切る 場面1〜3(1,252字) 「みずの ゆうこ」とは誰なのか。次は何が起きるのか 翌朝、森下さんに報告する場面など、新しい場面から始められる

案Aは最も短く、問いも強く見えます。ただ、森下さんは答えをすでに知っていて、第二話の最初の数行で「五十年延滞して帰ってきた」と明かされます。作者が切れ目のために台詞を止めた形なので、これが毎話続くと、読者は引き延ばされていると感じやすくなります。一方で、毎日短く更新する連載なら、次の話がすぐ読めるので、この切り方でも待たせる時間は短くて済みます。

案Bは、主人公が自分で決めた直後に終わります。読者の「誰が来るのか」という問いと、晴の問いが一致しているので、引きが無理なく残ります。第二話を「待つ」場面から始められるのも利点です。

案Cは、「待つ→物音→本が消える→貸出カードが残る」という出来事が一話の中で一区切りつきます。読者は一つの答え(続きは借りられていった)を受け取ったうえで、新しい問いを持ちます。満足感と引きの両方がある代わりに、三案の中で最も長くなります。

要点どの案を選ぶか

  • 短い回を頻繁に更新するなら、案Aや案Bのように場面の途中や決断で切っても、待つ時間が短いので負担が少ない。
  • 更新の間隔が空くなら、案Cのように出来事を一区切りさせ、待っている間も「一話分読んだ」と感じられる形が合う。
  • 連載の第一話は、主人公と最初の問いが伝わるまでを入れる。見本なら、少なくとも案Bの位置までは入れたい。
  • 同じ連載の中で案を混ぜてかまわない。字数をそろえるより、各話に「一つ進むこと」があるかをそろえる。

場面の途中で切ってよいとき、避けたいとき

案Aのような「場面の途中で切る」終わり方は、使いどころを選べば効果があります。判断の目安を表にしました。

場面の途中で切ってよいとき 避けたいとき
次の話をすぐ出せる(予約投稿で翌日に公開するなど) 次の更新まで間が空き、読者が場面の流れを忘れてしまう
視点人物もまだ答えを知らない(物音がした、扉が開いた) 視点人物がすでに知っている答えを、作者の都合で止めている
切れ目の直後に、場面の空気が変わる出来事がある 次の話の冒頭一行で、あっさり答えが出てしまう
山場の直前で、読者の期待が十分に高まっている 説明や会話がだらだら続いた途中で、字数が来たから切っている

毎回の終わりに強い引きを作る必要はありません。案Cのように出来事を閉じて、静かな一文で終える回があってもかまいません。「この話で何かが進んだ」という手応えも、次の話を開く理由になります。

書き上げた原稿を本のように章で区切りたい場合は、Webの一話とは単位が違います。場面・時間・視点の切り替えで章を分ける考え方は小説の章の分け方で扱っています。

長くなりすぎた回を二つに分ける

書いてみたら一話が長くなりすぎた、ということもあります。そのときは字数の真ん中で切るのではなく、回の中にある「決断」と「出来事の区切り」を探します。

手順長い回を分ける手順

  1. その回の場面を、起きた順に一行ずつ書き出します。
  2. 主人公が何かを決めた箇所と、出来事が一区切りついた箇所に印を付けます。
  3. 印のうち、前半と後半それぞれに「一つ進むこと」が残る位置を選びます。
  4. 前半の終わりの一文を、決断か区切りが伝わる文に整えます。
  5. 後半の書き出しで、前の話の最後を長く繰り返していないか確かめます。前の話を読んだ人には一行の手がかりで足ります。

見本の三場面を一話で書いたものの長すぎると感じたら、【切れ目B】で分けるのが手順どおりの答えです。前半には「見つけて、調べて、待つと決める」、後半には「待って、本が借りられていく」が残ります。

スマホのプレビューで、一話を通して読み直す

一話が書けたら、投稿する前にスマホで通して読みます。パソコンの編集画面では一画面に収まっていた終わり方が、スマホでは別の見え方になるからです。小説家になろうにもカクヨムにもプレビューの機能があり、カクヨムのヘルプは正確な字数もプレビュー画面の上部で確かめるよう案内しています。

特に見ておきたいのが、最後の画面です。終わりの一文が段落の途中に埋もれていると、せっかくの区切りが読者に届きません。

終わりの一文を、最後の画面に一行で置く

決断の台詞のあとに説明が続く

「森下さん。今夜、ポストの前で待ってもいいですか」
晴がそう言うと、森下さんは少し驚いたような顔をしたが、やがてうなずいた。窓の外では、また雨が強くなってきていた。二人は事務室の明かりを消して、カウンターへ戻った。

決断の台詞で終える

晴は、裏口の方を振り返った。返却ポストに本が入るのは、図書館が閉まっている間だけだ。

「森下さん。今夜、ポストの前で待ってもいいですか」

変更の理由

  • 修正前は、決断の台詞のあとに三つの文が続き、スマホでは台詞が最後の画面から押し出されることがあります。読者の目に最後に残るのは「カウンターへ戻った」という動作になります。
  • 修正後は、台詞の直前に「なぜ待つのか」の手がかりを置き、台詞で終えました。森下さんがうなずいたかどうかは、第二話の冒頭で一行書けば足ります。
  • 余韻のある情景で終えたい回なら、修正前のように説明を続ける終わり方も選べます。その場合は、最後の一文そのものを情景の一文にします。

読み直すときは、次の項目を確かめます。

確認表スマホで一話を読み直すときの確認表

  • 冒頭の数行で、前の話のどこから続いているかが分かる
  • 読み終えたとき、「この話で何が一つ進んだか」を一行で言える
  • 終わりの一文が、最後の画面に読める形で残っている
  • 後書きを付ける場合、本文の終わりの余韻を消すほど長くなっていない
  • 途中で、同じ説明や同じ会話の繰り返しが続く箇所がない
  • 前の話の最後を、次の話の冒頭で長く繰り返していない
  • 字数を記録し、ほかの回と比べて極端に長い・短い回がないか見た

どの投稿サイトで連載を始めるかがまだ決まっていない場合は、作品のジャンルや公開の目的から小説の投稿サイトを比較で選べます。