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小説

小説のテンポが悪いときの直し方|場面の順番と描写量を見直す

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この記事の答え

テンポの悪さは文字数ではなく、場面の始めと終わりで何も変わらない部分が続くことから生まれます。

  • 移動の実況、同じ反応の繰り返し、読者が知っている説明は、一文の要約に縮める
  • 目的や締切は場面の頭へ、回想はそれが必要になる場面の直前へ移す
  • 人物が選び、関係が変わる場面は、削るのではなく詳しくする。直したあとは、移した情報に頼る文がないか因果を確かめる
目次

読み返すと進みが遅いのに、どこを削ればよいか分からない。そう感じるときに、長い段落から順に削っていくと、必要な情報まで消えてしまうことがあります。この記事では、目的へ向かう三場面の初稿を作り、場面ごとに「何が変わったか」を点検してから、削る・移す・詳しくするの三つの直し方を比べます。読み終えたら、自作の遅い箇所について、どの直し方を選ぶかを決められます。

テンポが悪い原因を、文字数ではなく場面の変化で探す

三千字の場面でも、段落ごとに状況や気持ちが動いていれば速く読めます。反対に五百字の場面でも、始めと終わりで何も変わっていなければ遅く感じます。テンポを点検するときは、まず各場面について次の問いに答えます。

  • この場面で、人物は何をしようとしているか(場面の目的)
  • 場面の始めと終わりで、何が変わったか(状況・情報・人物どうしの関係・人物の決心)

変わったことが一つも書けない場面や、前の場面と同じ変化を繰り返している場面が、遅さの出どころです。原因はおおむね次のどれかに分けられます。

読んだときの症状 考えられる原因 直し方の方向
目的地に着くまでが長い 移動の実況(道順・乗り換え・待ち時間) 要約の一文に縮める
同じ気持ちが何度も書かれる 同じ反応の繰り返し(時計を見る、焦る等) 一度にして、二度目からは別の行動にする
何のための場面か途中まで分からない 目的や締切が場面の後ろにある 目的を場面の頭に移す
回想に入ると本筋が止まる 回想の位置が早すぎる 回想が意味を持つ場面の直前へ移す
読者が知っていることをまた読まされる 説明の重複 二度目を削る
山場があっけない 重要な場面の描写が足りない 詳しくする

最後の行のように、テンポの問題は「長すぎる」だけではありません。大事な場面が短すぎると、読者はその前の長さを「ここに着くための待ち時間だった」と感じ、全体が遅く思えます。

作例:目的へ向かう三場面の初稿

ここからは次の初稿を直していきます。高校三年の陸が、吹奏楽部の大会に出る弟の湊へ、忘れ物のマウスピースを届けに行く話です。初稿は三場面、約880字です。

作例初稿(三場面・約880字)

母から電話があったのは、九時十分だった。「湊がマウスピース忘れたの。机の上にあるから、会館まで届けてくれない?」
陸は湊の部屋に入った。机の上に、銀色のマウスピースが布の袋に入って置いてあった。中学のころ陸が使っていたものだ。陸は袋をポケットに入れ、玄関で靴をはいて家を出た。
家から市民文化会館までは、バスで四十分かかる。陸はまず家の前の通りを駅のほうへ歩き、二つ目の角を曲がって、北町のバス停に着いた。時刻表を見ると、次のバスは九時二十二分だった。陸はベンチに座ってバスを待った。九時二十四分にバスが来た。陸は後ろのほうの席に座った。バスは商店街を抜け、川沿いの道を走り、市役所前で止まった。陸はそこで降りて、文化会館行きのバスに乗り換えた。
窓の外を見ながら、陸は湊が小学四年生だったころのことを思い出していた。あのころ陸は中学の吹奏楽部でトランペットを吹いていて、湊に吹き方を教えてやった。湊はなかなか音が出せず、陸は、マウスピースを手のひらで三回たたいてから吹けば鳴る、というおまじないを教えた。湊はそれを気に入って、何度もまねをした。陸は高校二年の夏に部活をやめた。それから湊とは、部活の話をしていない。
陸は焦っていた。湊の出番は十時四十分だった。

会館に着いたのは十時五分だった。陸は時計を見た。あと三十五分しかない。陸は焦った。
入口の受付で、出演者の控室に行きたいと言うと、係の人は「出演者以外の方は控室には入れません」と言った。陸は時計を見た。十時八分だった。陸はますます焦った。湊に電話をかけたが、出なかった。出演者のスマートフォンは、先生が預かっているのかもしれない。陸はもう一度時計を見た。十時十分。焦りで、手のひらに汗がにじんだ。
「白石じゃないか」
振り向くと、湊の部の顧問の岡先生が立っていた。陸が中学で部にいたころの顧問でもあった。事情を話すと、岡先生は「こっちだ」と言って、陸を舞台袖へ続く廊下に連れていった。

廊下の先に湊がいた。陸はマウスピースを渡した。
「ありがとう」と湊は言った。
「がんばれよ」と陸は言った。
陸は客席に向かった。

この初稿を、場面ごとに点検します。

場面 字数と目的 始めと終わりで変わったこと 遅さの原因と判断
1 家〜バス 約530字。マウスピースを持って会館へ向かう 家にいた陸が、バスの中にいる 乗り換えの実況と回想で本筋が止まる。締切が最後に出る→削る・移す
2 受付 約290字。控室へ入る方法を見つける 入れなかった陸が、顧問の案内で廊下へ入る 「時計を見る」「焦る」が三回ずつ続く→削る
3 舞台袖の手前 約60字。弟に渡す 渡した、という事実だけ 話の中心なのに、兄弟の間で何も変わらない→詳しくする

字数の配分を見ると、会館へ向かうまでの場面1に五百字あまりを使い、話の中心である受け渡しには六十字ほどしか使っていません。初稿が遅く感じる理由は、場面1が長いことだけでなく、この配分の逆転にあります。

移動・同じ反応・重複を要約に縮める

移動や待ち時間は、物語の中で時間を進めるために必要ですが、その間に何も変わらないなら、一つ一つを実況する必要はありません。要約(一文で時間を進める書き方)に切り替えます。

移動の実況を、一文の要約にする

修正前

家から市民文化会館までは、バスで四十分かかる。陸はまず家の前の通りを駅のほうへ歩き、二つ目の角を曲がって、北町のバス停に着いた。時刻表を見ると、次のバスは九時二十二分だった。陸はベンチに座ってバスを待った。九時二十四分にバスが来た。陸は後ろのほうの席に座った。バスは商店街を抜け、川沿いの道を走り、市役所前で止まった。陸はそこで降りて、文化会館行きのバスに乗り換えた。

修正後

会館まではバスを乗り継いで四十分かかる。

変更の理由

  • 道順・時刻表・座席・乗り換えの場所は、どれもこの話の後の展開に使われていません。残す必要があるのは「四十分かかる」という時間の情報だけで、これが本番に間に合うかどうかの緊張を支えます。
  • 削ったのではなく、場面として書いていたものを要約に切り替えた、と考えます。時間の経過は一文で伝わります。
  • 直さなくてよい場合もあります。移動の途中で人物の気持ちが変わる(引き返そうか迷う、誰かに会う)なら、移動そのものが場面の目的を持つので、実況を残してかまいません。また、乗り換えの遅れが後で間に合わない原因になるなら、その一点だけは書いておきます。

同じ反応の繰り返しも、要約と同じ考え方で縮めます。「焦った」を三回書いても、焦りが三倍伝わるわけではありません。

同じ反応の繰り返しを、一度と別の行動にする

修正前

会館に着いたのは十時五分だった。陸は時計を見た。あと三十五分しかない。陸は焦った。
入口の受付で、出演者の控室に行きたいと言うと、係の人は「出演者以外の方は控室には入れません」と言った。陸は時計を見た。十時八分だった。陸はますます焦った。湊に電話をかけたが、出なかった。出演者のスマートフォンは、先生が預かっているのかもしれない。陸はもう一度時計を見た。十時十分。焦りで、手のひらに汗がにじんだ。

修正後

会館に着いたのは十時五分だった。
受付で控室に行きたいと言うと、係の人は「出演者以外の方は入れません」と首を振った。湊に電話をかけても、呼び出し音が続くだけだった。出演者のスマートフォンは、きっと先生が預かっている。陸はロビーの時計を見上げた。十時十分。

変更の理由

  • 時計を見る動作は最後の一回だけにし、「焦った」という言葉は使っていません。受付で断られる、電話がつながらない、という出来事が続いたあとに時計を見るので、読者は陸の焦りを自分で受け取れます。
  • 一度目の「あと三十五分しかない」は、場面1の頭に締切を移したので不要になりました(次の節)。
  • 反応を繰り返すのが効果的な場合もあります。焦りがだんだん強まる過程そのものを読ませたいなら、同じ動作を繰り返しながら、間隔を短くしたり反応を変えたりして、段階が分かるようにします。

読者がすでに知っている説明の繰り返しも、ここで削ります。作例の初稿では、陸が中学の吹奏楽部にいたことを場面1の回想で書き、場面2でも「陸が中学で部にいたころの顧問でもあった」と説明しています。陸と岡先生の関係は、どこか一か所で書けば足ります。説明そのものが長すぎることが遅さの原因だと分かった場合は、この記事の最後で案内する、説明の残し方の記事が役に立ちます。

情報と場面の順番を入れ替える

削らなくても、順番を変えるだけで速く感じることがあります。初稿の場面1には、順番の問題が二つあります。

  • 締切が最後にある。「湊の出番は十時四十分だった」が場面1の最後に出てくるため、読者はそれまで、陸が何を急いでいるのか分からないまま移動を読みます。
  • 回想が早すぎる。湊に吹き方を教えた思い出は、バスの中ではまだ何にもつながりません。この回想が意味を持つのは、湊にマウスピースを渡す場面3です。

締切を頭に、回想を後ろの場面へ

修正前(場面1の最初と最後)

母から電話があったのは、九時十分だった。(中略)
窓の外を見ながら、陸は湊が小学四年生だったころのことを思い出していた。(回想が続く)
陸は焦っていた。湊の出番は十時四十分だった。

修正後(場面1全体)

湊の出番は十時四十分だった。
母から電話が来たのは九時十分。「湊がマウスピース忘れたの。机の上にあるから、会館まで届けてくれない?」
湊の机の上の布袋には、銀色のマウスピースが入っていた。中学のころ陸が使っていたものだ。陸は袋をポケットに押し込んで家を出た。中学で岡先生に教わったトランペットを、陸は一年前にやめていた。岡先生は今、湊の部の顧問だ。
会館まではバスを乗り継いで四十分かかる。

変更の理由

  • 締切を一行目に置いたので、読者は最初から「間に合うか」を気にしながら読みます。同じ情報でも、出す位置で場面の緊張が変わります。
  • 回想は消さずに、場面3の受け渡しの直前へ移しました(次の節の修正後を参照)。
  • 回想を移すと、場面2で岡先生に声をかけられる理由(陸が中学で岡先生の教え子だったこと)が場面1から消えてしまいます。そのため、その関係と、陸が楽器をやめたことを伝える二文だけを場面1に残しました。移す前に、その情報に頼っている文がほかの場面にないかを確かめます。

場面ごと入れ替える場合

情報だけでなく、場面そのものの順番を入れ替える方法もあります。たとえば作例を、場面2の受付で断られるところから始め、電話を受けて家を出た経緯は一、二文で振り返る形にすると、冒頭から出来事の途中に入れます。

並べ方 読み味 合う場合 注意
起きた順(電話→移動→受付→受け渡し) 時間に沿って追いやすい 経緯そのものに意味がある話 前半に変化の少ない場面が来やすい
途中から始める(受付→経緯の振り返り→受け渡し) 冒頭から緊張がある 前半の経緯が単純な話 振り返りが長いと、結局遅くなる
結果を先に見せる(客席で演奏を聴く陸→その朝の出来事) 「どうしてここにいるのか」が引きになる 経緯より、なぜそうなったかが中心の話 時間の行き来を読者が追えるよう、切り替えを明示する

どの並べ方も、出来事の因果は変えずに、読者が知る順番だけを変えています。複数の場面をまとめて章にしたり、章の境目で時間や視点を切り替えたりする場合は、小説の章の分け方で区切り方を扱っています。

重要な場面を詳しくする

テンポを直すときは、削るだけでなく、話の中心となる場面をむしろ詳しくします。詳しくする場面と要約でよい場面は、次のように分けられます。

詳しくする(場面として書く) 要約でよい(一文で進める)
人物が何かを選ぶ、決める 移動、待ち時間、準備
人物どうしの関係が変わる 前の場面と同じ反応
結末に関わる物や言葉が出る 読者がすでに知っている事情
読者が初めて見る場所で、後でまた使う場所 一度しか出ない場所の道順

作例の場面3は、左の列の三つに当てはまります。兄が自分のやめた部へ弟を送り出し、二人の間の何かが変わる場面です。

受け渡しの場面を詳しくする

修正前(約60字)

廊下の先に湊がいた。陸はマウスピースを渡した。
「ありがとう」と湊は言った。
「がんばれよ」と陸は言った。
陸は客席に向かった。

修正後(約380字)

廊下の先、非常口の緑の明かりの下に湊がいた。演奏用の黒いシャツに着替えて、両手を握ったり開いたりしている。
「ほら」
陸が布袋を差し出すと、湊はひったくるように受け取り、マウスピースを取り出した。それから、ためらうように陸の顔を見た。
小学四年の夏、ベランダで湊にトランペットを教えたことを、陸は思い出した。どうしても音が出なくて泣きそうになっていた湊に、マウスピースを手のひらで三回たたいてから吹けば鳴る、と教えた。根拠のない、思いつきのおまじないだった。
湊はマウスピースを左の手のひらに当て、一回、二回とたたいて、手を止めた。
「三回目、兄ちゃんがやって」
陸は少し笑って、弟の手のひらの上のマウスピースを、指先で軽くたたいた。
「出番、何番目」
「次の次」
湊はうなずいて、廊下の奥の暗がりへ戻っていった。陸は客席へ向かう扉の前で、空になった布袋を握りしめた。

変更の理由

  • 場面1から移した回想を、受け渡しの直前に置きました。おまじないの思い出が、すぐあとの「三回目、兄ちゃんがやって」につながるので、回想が本筋を止めずに、場面の意味を作ります。
  • 「ありがとう」「がんばれよ」という気持ちを言葉で言う会話を、おまじないという行動に置き換えました。部をやめた兄が、弟の三回目をたたく。この動作で二人の関係の変化を見せています。
  • 場面3の字数は約6倍になりましたが、場面1と2を縮めたので、全体は初稿の約880字から約770字へ、少し短くなっています。詳しくするときは、その分をどこから持ってくるかも合わせて考えると、全体が重くなりません。
  • 静かに終わる話であれば、修正前のように短い受け渡しで突き放す書き方も選べます。その場合も、読者が二人の関係を想像できる材料(おまじないの回想など)を、それまでの場面に置いておく必要があります。

三つの直し方で、読み味を比べる

三つの直し方をすべて当てた版は、場面1が「締切を頭に、回想を後ろの場面へ」の修正後、場面3が「受け渡しの場面を詳しくする」の修正後、場面2が「同じ反応の繰り返し」の修正後に次の二行を続けた形で、合わせて約770字です。

作例修正後の場面2の後半

「白石じゃないか」
振り向くと、岡先生が立っていた。陸は目をそらしかけて、ポケットの布袋を握り直した。事情を話すと、先生は何も聞かずに「こっちだ」と言った。

岡先生に会ったときの反応は、「目をそらしかけて」の一つだけにしました。教わった楽器をやめた陸の気まずさを、場面1に残した「一年前にやめていた」の一文とつなげるためです。

作例の直し方を一つずつ当てた場合と、組み合わせた場合を比べると、それぞれの効き方が分かります。

直し方 全体の字数の目安 読み味 残る問題
初稿 約880字(場面1が約530字) 前半が遅く、結末があっけない 配分の逆転
圧縮だけ(実況・反応の反復・回想を削る) 約450字 速く読めるが、軽い話になる 受け渡しが薄いまま。回想まで削ったので、兄弟の関係が伝わらない
順序変更だけ 約900字 締切が頭にあるので前半の緊張が増す。回想が結末とつながる 移動の実況と反応の繰り返しは残る
拡張だけ(回想は場面1のまま) 約1,100字 結末は厚くなる 前半の遅さで、そこまで読み進めてもらいにくい
三つを組み合わせる 約770字 前半は速く、受け渡しで時間がゆっくり流れる なし(因果の確認は次の節)

組み合わせた版は、圧縮だけの版より三百字ほど長く、初稿とは一割ほどしか違いません。それでも読み味が大きく変わるのは、字数の配り方が逆になったからです。テンポを直すとは、全体を短くすることではなく、字数をどの場面に配るかを変えることだと言えます。

遅さが効果になる場合

すべての作品で速い展開が正解というわけではありません。芥川龍之介の短編『蜜柑』は、前半の多くを、語り手の疲れと退屈、汽車の中の様子に使っています。そのうえで、物語の中心となる出来事は次のように書かれています。

するとその瞬間である。窓から半身を乗り出していた例の娘が、あの霜焼けの手をつとのばして、勢(いきおい)よく左右に振ったと思うと、忽(たちま)ち心を躍らすばかり暖な日の色に染まっている蜜柑が凡(およ)そ五つ六つ、汽車を見送った子供たちの上へばらばらと空から降って来た。

(芥川龍之介『蜜柑』、青空文庫より)

出来事そのものは短く書かれています。そのあと語り手は、娘の事情を一瞬で了解したことを述べ、さらに踏切と子供たちと蜜柑の色をもう一度並べ直して、その光景が心に焼きついたと書いています。出来事は速く、受け止めには時間をかける配分です。前半の重さがあるからこそ、この短い出来事の明るさが際立つ、と読むことができます。前半の退屈な描写は、削るべき遅さではなく、対比のための遅さです。

自作の遅い箇所が、このように後の場面のために必要な遅さなのかどうかは、「この場面を要約にしたら、後の場面の意味が弱くなるか」を考えると判断できます。弱くなるなら残し、変わらないなら縮めます。

直したあとで、因果がつながっているかを確かめる

削る・移す・詳しくするのどれを行っても、ほかの場面が前提にしていた情報が動くことがあります。直したあとは、次の点を確かめます。

確認表修正後の因果の確認表

  • 削った文・移した文に頼っている文が、ほかの場面に残っていないか(作例:岡先生が陸に声をかける理由)
  • 要約にした移動で、時間の計算が合っているか(作例:九時十分の電話、四十分の移動、十時五分の到着、十時四十分の出番)
  • 回想を移したことで、人物が「まだ知らないはずのこと」を先に知っている場面ができていないか
  • 同じ反応を削ったあとも、人物の気持ちが読者に伝わる出来事が残っているか
  • 詳しくした場面の結果が、そのあとの場面と食い違っていないか(作例:空になった布袋を握ったまま客席へ向かう)

作例では、回想を場面3へ移したときに、場面2の岡先生の場面が「陸が中学で岡先生に教わっていた」という情報を失いかけました。場面1に二文を残したのは、この確認で見つかった修正です。

一文の長さや読点の位置で読みの速さを整える段階に進む場合は、小説の文章のリズムの整え方で扱っています。場面の配分ではなく、中盤で人物の目的そのものが消えて話が止まっている場合は、小説の中盤が書けないときの直し方で目的から見直すほうが近道です。作品全体の改稿の順番は小説の推敲・改稿のやり方を参考にしてください。

自分で表を作っても、どの場面が遅く感じられるかは、書いた本人には分かりにくいことがあります。原稿があり、具体的な疑問が残っている場合は、読み手に「読む速度が落ちた場面」と「もっと読みたかった場面」を一つずつ挙げてもらうと、削る場所と詳しくする場所の手がかりになります。読み手への頼み方は小説の感想を依頼するには?で扱っています。有料の講評を考える場合は、小説の添削はどこに頼む?で、場面構成まで見てもらえる依頼かどうかを確かめてから選んでください。