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発表・本作り

AIを使った小説は公募に応募できる?規定・申告・利用範囲の確認方法

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この記事の答え

応募できるかどうかは、応募する賞の規定で決まります。本文の生成を認めず補助的な使用に限る賞、使い方の説明を求める賞、記録の保存まで求める賞、何も書いていない賞があり、ひとまとめには言えません。

  • まず、AIを使った工程を「調べもの・構想の相談・表記の確認・表現の提案・本文の生成」に分けて記録する
  • 記録を要項の文と照らし、禁止に当たるか、申告が必要か、要項から判断できないかを分ける。判断できなければ応募の前に問い合わせる
  • 著作権の問題や、KDPなど出版サービスのAI申告は、公募の応募規定とは別に確かめる
目次

小説を書く途中で、調べものや構想の相談、誤字の確認に生成AIを使い、その作品を新人賞に出してよいのか迷っている人に向けた記事です。答えは賞ごとに違います。この記事では、実在の要項でAIの扱いがどう書かれているかを比べ、自分のAI利用を工程ごとに記録する表を作って、許可・禁止・申告の条件と照らす方法を示します。申告文と問い合わせ文の例、著作権や電子書籍サービスの申告との違いもまとめました。法律上の判断は扱わず、確認の手順に絞っています。

応募できるかは、賞ごとの規定で決まる

まず、実在の要項でAIの扱いがどう書かれているかを見ます。記事の作成時に確認した回の要項で、受付を終えた回はその旨を付けています。

賞(回) AIについての要項の記載 規定の型
集英社短編小説新人賞(第241回) 「生成AIを使用して本文を書くことは認めません。」「用途は調べもの・推敲補助といった、創作過程の一部における補助的使用に限ります。」 本文の生成は不可。補助的な使用に限る
小説すばる新人賞(第40回) 「AIを部分的に使用した場合(プロット作成、文章表現の補助等)は、WEB応募フォームの備考欄に、どのようにAIを使用したか説明を記載してください。」 部分的な使用は、使い方を説明する
講談社ラノベ文庫新人賞(第24回) 「小説制作にAIサービスを使用している場合は、その旨をご記入ください。」 使用していれば申告する
松本清張賞(第34回・受付は終了) 「創作の際、AIを利用した場合は、どのようにAIを用いたか(文章表現の手助け、校正、翻訳など)を応募原稿の表紙に分かるように記載してください。」 使い方を原稿の表紙に書く
日経「星新一賞」(第14回・受付は終了) 「人間以外(人工知能等)の応募作品も受付けます。」。生成AIを使う場合は、生成された文章をそのまま使わず人が加筆・修正し、プロンプトと出力などを記録し、応募フォームに利用した生成AIと制作過程を500文字以内で書くよう求めていた 利用を認め、記録と説明を求める
2027年集英社ノベル大賞 要項に記載なし 主催者の案内を探し、なければ問い合わせる

同じ「AIを使った」でも、ある賞では本文の生成が認められず、別の賞では使い方を説明すれば応募でき、さらに別の賞ではAIの関わる作品そのものを受け付けています。ある賞の規定を、ほかの賞に当てはめることはできません。

例として挙げられている使い方の言葉も、賞によって違います。集英社短編小説新人賞は補助的な使用の例に「調べもの・推敲補助」を、小説すばる新人賞(第40回)は説明が必要な部分的使用の例に「プロット作成、文章表現の補助等」を、松本清張賞(第34回)は「文章表現の手助け、校正、翻訳など」を挙げています。自分の使い方がどの言葉に当たるかを判断するには、まず自分が何にAIを使ったかを、具体的に言える状態にしておく必要があります。

AIを使った工程を、五つに分けて書き出す

「AIを使った」と一言で言っても、使い方によって作品への関わり方がまったく違います。次の五つに分けると、要項の言葉と照らしやすくなります。

工程 使い方の例 本文との関係
調べもの 職業の手順、時代の風俗、地名や制度について質問する 本文は自分で書く。事実関係の参考
構想の相談 筋の案、結末の候補、人物名の候補を出させる。プロットの矛盾を指摘させる 筋や設定にAIの案が影響する
表記の確認 誤字脱字、表記ゆれ、文法の誤りを指摘させる 自分の文を自分で直す
表現の提案 文の言い換え案や描写の案を出させ、採用する AIが出した文が本文に入ることがある
本文の生成 場面や章、続きをAIに書かせる AIが出した文が本文の土台になる

分けるときの目安は、本文の中に、AIが出した文がどれだけ残っているかです。調べものと表記の確認では、AIの文は本文に入りません。表現の提案と本文の生成では、AIの文が本文に残ることがあります。構想の相談はその中間で、文は入らなくても、筋や設定にAIの案が影響します。

AI利用記録表を作る

書き出した工程は、作品ごとに記録表にまとめます。下は、架空の短編「雨の日の配達員」(約1万字)で作った記入例です。作品と記録の内容は架空です。

工程 何をしたか(入力したもの) 出力をどう使ったか 本文への反映
調べもの 郵便配達の一日の流れと、雨の日の装備について質問した 流れをつかみ、郵便事業者の公開資料で確かめ直した AIの文は入っていない。描写は自分の文
構想の相談 自分で書いた筋のメモを入力し、結末の案を三つ出させた 一案の「手紙を届けずに持ち帰る」という方向を参考にし、結末の場面は自分で考えた 結末の方向にAIの案が影響している
表記の確認 完成稿を入力し、誤字と表記ゆれを指摘させた 指摘12件のうち9件を自分で直した 文の修正のみ
表現の提案 冒頭の一段落を入力し、言い換え案を出させた 案の中の一文をほぼそのまま採用した AIが出した一文が冒頭に残っている
本文の生成 使っていない ― ―

この例では、四つめの「表現の提案」が、要項と照らすときの分かれ目になります。記録は、使ったツールの名前、使った日、入力した原稿の範囲と一緒に残します。

ひな形AI利用記録表(コピーして使えます)

作品名:
使ったツール(サービス名・版)と、使った期間:
【調べもの】何を質問したか/出力をどう使ったか/本文への反映:
【構想の相談】何を入力したか/採用した案と採用しなかった案/本文への反映:
【表記の確認】入力した範囲/指摘をどう直したか:
【表現の提案】入力した文/採用した提案(採用した文をそのまま写す)/本文のどこに残っているか:
【本文の生成】使ったか/使った場合、生成させた範囲と、自分で加筆・修正した内容:
入力した原稿や資料に、他人の文章が含まれていないか:
記録の保存場所(やり取りの書き出し、スクリーンショットなど):

採用した提案や生成した文は、採用した文そのものと、自分で手を入れたあとの文を両方残しておきます。日経「星新一賞」(第14回)の案内は、「加筆・修正した前後の文章は、必ず記録してください。」と求めていました。ほかの賞で同じことを求められていなくても、あとで説明を求められたときに答えられます。

記録を要項の文と照らす

記録表ができたら、工程ごとに、応募する賞の要項の文と照らします。上の記入例の五つの工程を、確認できた三つの要項に照らすと次のようになります。

工程 集英社短編小説新人賞(第241回) 小説すばる新人賞(第40回) 講談社ラノベ文庫新人賞(第24回)
調べもの 補助的使用の例に「調べもの」があり、認められる範囲と読める 「部分的に使用」に当たるかは書かれていない。説明を書くか確かめる 「小説制作にAIサービスを使用」に当たれば記入する
構想の相談 「創作過程の一部における補助的使用」に含まれるかは明記がない(確認) 例示の「プロット作成」に近い。備考欄に説明する 記入する
表記の確認 「推敲補助」に当たると読める 「文章表現の補助等」に近い。備考欄に説明する 記入する
表現の提案(AIの一文を採用) 「本文を書く」に当たるかが分かれ目。要項からは判断できない(確認) 「文章表現の補助」として備考欄に説明する 記入する
本文の生成 「本文を書くことは認めません」に当たり、応募できないと読める 「部分的に使用」の範囲を超えるかは書かれていない(確認) 記入は求めているが、可否は書かれていない(確認)

表から分かるのは、次の三つです。

  • 禁止に当たるか:集英社短編小説新人賞では、本文の生成は認められていません。
  • 申告が必要か:小説すばる新人賞(第40回)と講談社ラノベ文庫新人賞(第24回)は、使った場合に記入や説明を求めています。講談社ラノベ文庫新人賞の要項は、どの欄に書くかまでは明記していないので、応募フォームの入力欄で確かめます。
  • 要項から判断できないか:表で「確認」とした欄は、主催者に問い合わせる候補です。

この表は要項の文から読み取れることを整理した例で、応募の可否や申告の要否を最終的に決めるのは主催者です。

「確認」となった点は、作品の側を直して要項の文に確実に収める方法もあります。たとえば、AIの提案から採用した一文を本文から外し、自分で書き直すことです。ただし、申告を求める賞では、表現の提案に使ったという事実は、書き直したあとも申告の対象になり得ます。直したことで、使った事実まで消えるわけではありません。

申告は「どこに・何を・どれだけ」書くかを確かめる

申告を求める賞でも、書く場所と分量は違います。

賞(回) 書く場所 書く内容と分量
小説すばる新人賞(第40回) WEB応募フォームの備考欄 どのようにAIを使用したか
講談社ラノベ文庫新人賞(第24回) 要項では欄を特定していない(応募フォームで確認) AIサービスを使用している旨
松本清張賞(第34回・受付は終了) 応募原稿の表紙 どのようにAIを用いたか
日経「星新一賞」(第14回・受付は終了) 応募フォーム 利用した生成AIと制作過程などを具体的に500文字以内。審査で詳しい説明やプロンプト・出力の記録の提出を求められることがある

申告文は、記録表から事実だけを短くまとめます。上の記入例をもとにした例です。

ひな形AI利用の申告文の例(記録表から作る)

構想の段階で、自分で作った筋のメモを対話型の生成AI(【サービス名】)に入力し、結末の案を出させて方向の参考にしました。結末の場面と本文は自分で書いています。
完成稿の誤字・表記ゆれの指摘に同じAIを使い、修正は自分で行いました。
冒頭の段落の一文は、AIが出した言い換え案をもとにしています。
本文の生成には使用していません。調べものに使った内容は、公開資料で確かめました。

申告は、AIの利用が見抜かれるかどうかで決めるものではありません。日経「星新一賞」(第14回)の案内は、AIの利用を応募フォームに書かずに応募し、利用が明らかになった場合は、受賞の取り消しなどの対象になるとしていました。申告を求める賞では、記録表にある使い方を正直に書きます。

要項に記載がないときは、案内を探して問い合わせる

2027年集英社ノベル大賞の要項のように、AIについて何も書かれていない場合もあります。記載がないことは、自由に使ってよいという意味とは限りません。次の順で確かめます。

  1. 主催者のよくある質問、お知らせ、応募フォームの入力欄に、AIについての案内がないかを探す
  2. 同じ出版社やレーベルの別の賞の要項に方針が書かれていても、それは別の賞の規定として扱い、応募する賞に当てはめない
  3. 見つからなければ、記録表の要点を添えて問い合わせる

要項に「選考に関する問い合わせには応じない」とある場合、それが選考の経過や評価についての質問だけを指すのか、応募条件の質問も含むのかは、主催者によって違います。条件の質問を受け付ける窓口があるかを確かめてから送ります。

ひな形AIの利用について問い合わせる文(例)

【賞の名前と回】への応募を検討している者です。生成AIの利用について確認させてください。

応募を考えている作品の執筆で、次のように生成AIを使いました。
・構想:自分で作った筋のメモから、結末の案を出させて参考にした(本文は自分で執筆)
・推敲:完成稿の誤字・表記ゆれを指摘させ、自分で修正した
・表現:冒頭の一文に、AIが出した言い換え案をもとにした文がある
・本文の生成:使っていない

このような使い方をした作品は、貴賞に応募できますでしょうか。
応募できる場合、AIの利用について記載や申告が必要か、必要であればどこに書けばよいかも教えていただけますと幸いです。

【筆名(または氏名)】
【連絡先】

回答は日付とともに、記録表と一緒に保存します。回答はその賞のその回についてのもので、ほかの賞や次の回にはそのまま当てはまりません。答えが得られない場合は、要項の文から確実に応募できると言える形に作品を直すか、AIの扱いが明記された別の賞を選びます。

第三者の権利と、AIに入力する原稿に気をつける

応募規定とは別に、権利の問題があります。この記事では法的な判断はせず、確認先と、応募の前にできることだけを挙げます。

文化庁は「AIと著作権」のページで、「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)や「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)を公開しています。概要資料では、AIで生成したものが既存の著作物の著作権侵害になるかは、既存の著作物との類似性と依拠性によって判断されると整理しています。また、AIで生成したものが著作物に当たるかは、人の「創作意図」があるか、人が「創作的寄与」と認められる行為を行ったかによって判断される、と説明しています。同じ資料は、この「考え方」が法的な拘束力を持つものではないとも明記しています。個別の作品が問題になるかどうかは、弁護士などの専門家に相談してください。

著作権の説明だけで、応募できるかどうかは決まりません。権利の上で問題がなくても、要項が本文の生成を認めていなければ応募できませんし、要項がAIの利用を認めていても、権利の問題は別に残ります。要項の側でも、小説すばる新人賞(第40回)は、第三者の権利を侵害しかねない作品と判断された場合には、選考の対象外や受賞取り消しの可能性があるとしています。

応募の前に、次の点を確かめます。

  • 他人の作品の文章や、作家名・作品名をAIに入力して、似た文章を作らせていないか。日経「星新一賞」(第14回)の案内は、他者の著作物や作家名・作品名を入力に使わないよう求めていました。
  • AIの出力から採用した文に、既存の作品とよく似た表現がないか。特徴のある言い回しは、検索して確かめる。
  • 使ったAIツールの利用規約が、出力の公開や応募、出版などの利用を制限していないか。日経「星新一賞」(第14回)の案内も、「利用する生成AIおよびツールの利用規約・ライセンスに従って応募してください。」としていました。
  • 未発表の原稿をAIツールに入力したとき、入力内容がツールの学習に使われる設定になっていないか。会話の共有機能でリンクを公開すると、原稿の一部が誰でも読める状態になることがある。公開と未発表の関係は小説公募の「未発表」とは?で扱っています。

人に添削や講評を頼む場合に、依頼先が原稿をAIに入力するかどうかを確かめる方法は小説の添削を頼む前にで、AIの指摘と人の講評の使い分けは小説のAI添削と人の講評はどう使い分ける?で扱っています。

KDPのAI申告は、公募の規定とは別の制度

公募に出した作品を、のちに電子書籍として個人で出版することもあるかもしれません。AmazonのKindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)は、コンテンツ ガイドラインで、AIを使ったコンテンツを二つに分けています。

KDPの区分 KDPの説明(要旨) 申告
AI生成 AIベースのツールで作成されたテキスト、画像、翻訳。あとで大幅に編集しても、AI生成として扱う 新しい本を出版するとき、編集して再出版するときに知らせる必要がある
AIアシスト 自分で作成したコンテンツを、AIツールで編集、改良、エラーチェックなどをしたもの。AIでアイデアを得て、テキストは自分で作成した場合も含む 「AI アシスト コンテンツについては開示不要です。」

この区分は、公募の規定とは対応していません。たとえば、自分で書いた文の誤字の確認にAIを使った場合、KDPではAIアシストとして申告は不要ですが、小説すばる新人賞(第40回)のように「AIを部分的に使用した場合」に使い方の説明を求める賞では、備考欄に書く対象になり得ます。KDPの区分で「申告不要」だったことを、公募の申告の判断に使わないでください。

また、電子書籍として販売した作品は、公募の「未発表」の条件にも関わります。先に電子書籍で出すか、公募に出すかを決める前に、応募したい賞の要項を読んでおきます。

規定が変わったら、確かめ直す

AIの扱いは、公募の規定の中でも新しく、回ごとに見直されることがある項目です。日経「星新一賞」(第14回)の案内は、生成AIを利用しての応募についての要項を、事前の告知なく必要に応じて変更する場合があるとしていました。次の時期に、応募する回の要項を読み直します。

  • 書き始めるとき(使ってよい範囲を先に知っておく)
  • 応募の直前(要項やお知らせが更新されていないか)
  • 落選した作品を次の回や別の賞に出すとき(前の回の規定や回答は使わない)

記録表は、応募が終わっても結果が出るまで、受賞した場合はその後も保存します。応募する賞の要項から、AIの利用についての文をそのまま写しておくと、提出前の見直しが楽になります。応募原稿の確認表には「AI利用の規定」の欄があり、写した条件と、自分で確かめたかどうかを一覧にできます。