小説公募の「未発表」とは?ネット公開・同人誌・限定公開の確認方法
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この記事の答え
「未発表」の範囲は主催者ごとに違い、Webや同人誌での公開を応募可とする賞もあれば、それも含めて未発表を求める賞もあります。
- 作品ごとに、公開した場所・読めた人の範囲・有料かどうか・時期・今の状態を書き出し、応募する回の要項の文と照らす
- 削除や非公開にしただけで未発表に戻るとは限らない。削除の扱いは要項の文で確かめる
- 要項の文から判断できない点は、公開履歴を添えて主催者に問い合わせ、回答を保存する
目次
投稿サイトに載せた小説、即売会で頒布した同人誌の小説、合評のために限られた人に見せた小説を、新人賞に出してよいのか迷う人に向けた記事です。「未発表」という言葉は多くの要項に出てきますが、その範囲は賞ごとに違います。ここでは実在の要項の文を並べて違いを確かめたうえで、自分の公開履歴を書き出す表と、要項に照らして判断を分ける方法、判断できない点を問い合わせる文例を示します。
「未発表」の範囲は、要項ごとに書き方が違う
まず、実在の要項で「未発表」がどう書かれているかを見ます。いずれも、記事の作成時に確認した回の要項です。
| 賞(回) | 要項の文 | Web・同人誌の扱い |
|---|---|---|
| 集英社短編小説新人賞(第241回) | 「日本語で書かれた、自作未発表の作品。」「(Webや同人誌等に個人的に発表したものは応募可とします)」 | 個人的な発表は応募できる |
| 講談社ラノベ文庫新人賞(第24回) | 「営利を目的とせず運営される各種ウェブサイトや同人誌等での作品掲載は、未発表と見なし応募を受け付けます。」「(掲載したサイト名または同人誌名を明記のこと)」 | 条件付きで未発表と見なし、掲載先の明記を求める |
| 小説すばる新人賞(第40回) | 「応募原稿は、未発表作品に限ります(WEBサイトや同人誌への掲載を含む)。」 | WEBサイトや同人誌への掲載も「発表」に含めると読める(掲載した作品は対象外) |
| 日経「星新一賞」(第14回・受付は終了) | 「不特定または特定多数が閲覧可能な状態に置かれた作品は『発表済み作品』とみなします。」 | 閲覧できる人の範囲で「発表済み」を判断する |
| 2027年集英社ノベル大賞 | 「自作、未発表のものに限ります。」 | 要項に記載なし |
同じ集英社の賞でも、集英社短編小説新人賞はWebや同人誌での個人的な発表を応募可とし、小説すばる新人賞はWEBサイトや同人誌への掲載も含めて未発表を求めています。「未発表」という言葉が同じでも、指している範囲は同じではありません。ある賞で応募できた作品が、別の賞でも応募できるとは限らないということです。
要項を読むときは、「未発表」という言葉そのものより、その前後にある範囲を決める言葉に注目します。
| 要項にある言葉 | 何によって範囲を決めているか | 自分の作品で確かめること |
|---|---|---|
| 個人的に発表した | 誰が発表したか | 自分で載せたのか、出版社や団体の媒体に載ったのか |
| 営利を目的とせず運営される | 載せた場所の性格 | 掲載先の運営や販売の形 |
| 不特定または特定多数が閲覧可能 | 読めた人の数と範囲 | 誰でも読めたか、限られた人だけか、何人くらいか |
| 掲載を含む | 掲載という行為そのもの | 一度でも載せたことがあるか |
範囲を決める言葉がなく「未発表」とだけ書かれている要項もあります。その場合は、Webや同人誌での公開がどう扱われるかを要項の文からは決められないので、主催者のよくある質問や案内を探し、なければ問い合わせます。
作品ごとに、公開履歴を書き出す
要項と照らす前に、自分の作品をどこで、どのように公開したかを書き出します。記憶で済ませず、投稿サイトの管理画面や、同人誌の奥付、SNSの投稿日を見ながら埋めます。
下は、架空の三作品で作った記入例です。作品名と経緯はすべて架空です。
| 確認項目 | 作品A「冬の渡し舟」 | 作品B「硝子の庭」 | 作品C「夜行バスの手紙」 |
|---|---|---|---|
| 公開した場所と形 | 小説投稿サイトに連載(第3話まで、約9,000字) | 個人誌(同人誌)に収録し、即売会で頒布。同人誌の通販サイトでも販売 | 文章サークルの合評用に、リンクを知る人だけが読めるURLで共有。SNSの鍵アカウントに冒頭400字ほどを画像で投稿 |
| 読めた人の範囲 | 誰でも読める全体公開。閲覧数は約300 | 購入した人。頒布数は約60部 | サークルの8人。鍵アカウントのフォロワー約40人 |
| 有料・無料 | 無料 | 有料(1冊500円) | 無料 |
| 時期 | 2年前に公開、半年後に下書きへ戻した | 1年前に頒布、通販は現在も販売中 | 3か月前 |
| 今の状態 | 非公開(下書き)。外部サイトへの転載は把握していない | 販売中 | 共有URLは無効化。SNSの投稿は残っている |
| 応募予定の原稿との違い | 第3話までを土台に約12万字の長編へ書き直した。冒頭の場面はほぼ同じ | 同じ短編をほぼそのまま応募予定 | 合評後に後半を書き直した |
書き出すと、「公開した」と一言で言っていた経験が、場所、読めた人の数、販売の有無、今の状態でかなり違うことが分かります。要項の言葉と照らすのは、この表の一つひとつの欄です。
ひな形公開履歴の記入表(コピーして使えます)
作品名(公開時の題名と、応募予定の題名): 公開した場所と形(サイト名・誌名・URL・頒布した場など): 読めた人の範囲(全体公開/限定公開/購入者のみ など)と、おおよその人数・部数: 有料・無料(価格、販売中かどうか): 公開した時期(始めた日・やめた日): 今の状態(公開中/非公開/削除/販売中 など): 応募予定の原稿との違い(題名・人物・筋・字数・書き直した範囲): 控え(スクリーンショット、奥付の写真、投稿日の記録など):
公開の場所ごとに、要項のどの言葉に当たるかを見る
投稿サイトとSNS
誰でも読める状態で投稿サイトに載せた作品は、「不特定または特定多数が閲覧可能」という基準なら発表済みに当たり、「WEBサイトへの掲載を含む」とする要項なら未発表の条件を満たさないと読めます。一方、集英社短編小説新人賞のように個人的なWebでの発表を応募可とする要項では、応募できると読めます。
講談社ラノベ文庫新人賞(第24回)の「営利を目的とせず運営される各種ウェブサイト」のような言葉は、利用した投稿サイトがそれに当たるかを、応募する人が自分で判断しにくい表現です。迷う場合は、サイト名を添えて問い合わせます。この要項は掲載したサイト名の明記も求めているので、当てはまる場合は応募時に必ず書きます。
SNSに冒頭や一部だけを載せた場合も、要項の多くは「一部」の扱いまでは書いていません。作品Cの鍵アカウントへの投稿のように、載せた範囲が一部で、読めた人も限られている場合でも、要項の文から決められなければ問い合わせ候補にします。
投稿サイトが主催や協力に入っている公募では、扱いが逆になることもあります。カクヨムから応募できる第25回角川ビーンズ小説大賞の応募要綱は、カクヨムに公開済みの作品から応募する手順を示したうえで、「応募作品を非公開・削除すると、当該作品は選考対象外となります。」としていました。この賞では、選考中に作品を公開しておくことが応募の条件の一つです。どの公募にも当てはまる決まりではなく、その回の要綱の定めです。
同人誌・有料販売・電子書籍
同人誌は、集英社短編小説新人賞では個人的な発表として応募可、小説すばる新人賞(第40回)では同人誌への掲載も含めて未発表を求める、と扱いが分かれます。講談社ラノベ文庫新人賞(第24回)の「営利を目的とせず運営される各種ウェブサイトや同人誌等」という文については、有料で頒布した同人誌がこれに含まれるかを、要項の文だけで決めるのは難しいところです。作品Bのように有料で頒布し、今も販売している場合は、問い合わせ候補の筆頭になります。
販売を続けている作品は、もう一つ確かめることがあります。集英社短編小説新人賞の要項は受賞作の出版権などが集英社に帰属するとし、講談社ラノベ文庫新人賞(第24回)の要項も受賞作品の出版権等が講談社に帰属するとしています。ほかの場所で販売中の作品が受賞した場合の扱いは、未発表の条件とは別に、主催者に確かめておくべき点です。
電子書籍として個人で配信した作品も、販売の事実が残ります。これから電子書籍での公開を考えている場合は、公開する前に、応募したい賞の要項でその扱いを確かめておくと、あとで迷いません。電子書籍の作り方そのものは小説を電子書籍にする方法で扱っています。
限定公開と、削除・非公開にした作品
リンクを知る人だけが読めるURL、パスワード付きのページ、鍵アカウント、合評会での配布などは、読めた人が限られています。ただ、「限られた人なら発表ではない」と書いた要項は、今回確認した中にはありませんでした。日経「星新一賞」(第14回)のように「特定多数」が閲覧できる状態も発表済みとみなす基準では、人数や共有のしかたによって判断が分かれます。限定公開の場合は、誰に、何人に、どの方法で見せたかを記録しておきます。
添削や講評を頼むために原稿を人に渡すことは、作品の公開とは目的が違いますが、依頼先が講評の見本として原稿の一部をネットに載せれば、それが公開に当たるかという問題が新たに生じます。依頼の前に確かめる点は小説の添削を頼む前にで扱っています。
削除や非公開については、今回確認した要項のうち、削除した作品を未発表として扱うと書いたものはありませんでした。削除や非公開にした作品の扱いを明記していたのは、前述の第25回角川ビーンズ小説大賞(応募作品を非公開・削除すると選考対象外)だけで、これは公開を続けることを求める定めです。削除しても、公開していた期間に読まれた事実や、転載・保存された写しが残ることがあります。「消したから未発表」と自分で決めず、公開していた事実として記録し、要項と照らします。
改稿した作品が「別の作品」になるかは、要項で決まる
公開した作品を書き直して応募したい場合もあります。作品Aのように、公開した第3話までを土台に長編へ書き直した場合、それが公開した作品と同じものか、別の作品かは、今回確認した要項には書かれていませんでした。題名を変えた、字数を増やした、という変化だけで別の作品として扱われるとは限りません。
判断を主催者に委ねるときに伝えられるよう、公開版と応募版の違いを具体的に書き出します。
- 題名:変えたか
- 人物:主人公や主な人物の名前・設定は同じか
- 筋:出来事の順番と結末は同じか
- 文章:公開した文がそのまま残っている部分はどこか(冒頭の場面など)
- 分量:公開した部分は約何字で、応募する原稿は約何字か
「冒頭の場面はほぼ同じ文章で、第4章以降と結末は新しく書いた」のように、残っている部分と書き直した部分を分けて書くと、問い合わせを受けた側も答えやすくなります。
照らした結果を、三つに分ける
公開履歴と要項の文を照らしたら、結果を「要項の文から応募できると読める」「要項の文から対象外と読める」「判断できない」の三つに分けます。架空の三作品を、実在の三つの要項に照らすと次のようになります。
| 作品 | 集英社短編小説新人賞(第241回) | 小説すばる新人賞(第40回) | 講談社ラノベ文庫新人賞(第24回) |
|---|---|---|---|
| 作品A(投稿サイトで全体公開、のち下書きへ。長編に改稿) | 個人的なWebでの発表として応募できると読める。ただし短編の賞なので、長編版は枚数の条件に合わない | WEBサイトへの掲載に当たり、対象外と読める。下書きに戻しても掲載した事実は残る | 投稿サイトが「営利を目的とせず運営される」サイトに当たるかと、改稿の扱いが判断できない(問い合わせ) |
| 作品B(有料の同人誌、通販で販売中) | 同人誌での個人的な発表として応募できると読める。販売中の作品の受賞後の扱いは主催者に確かめる | 同人誌への掲載に当たり、対象外と読める | 有料頒布の同人誌が「営利を目的とせず」に含まれるか判断できない(問い合わせ) |
| 作品C(8人に限定共有、鍵アカウントに冒頭を投稿) | 個人的な発表を応募可としているので、応募できると読める | 限定公開や一部の投稿が「掲載」に当たるか判断できない(問い合わせ) | 非営利の場での限定的な共有と読めるが、掲載先の明記が必要かは確認したい |
この表は、要項の文から読み取れることを整理した例で、応募の可否を決めるのは主催者です。「読める」と書いた欄でも、自分の事情に要項にない特徴(販売中、転載されている、など)があれば、確かめてから応募します。表の「判断できない」の欄が、問い合わせる内容になります。
問い合わせに必要な情報と、文例
問い合わせでは、主催者が公開履歴を一度で把握できるように、事実を具体的に書きます。公開歴を軽く見せたり伏せたりすると、正しい回答が得られません。
- 賞の名前と回
- 関係する要項の文(そのまま写す)
- 公開した場所(サイト名・誌名)、読めた人の範囲と人数・部数、有料か無料か、公開した時期、今の状態
- 応募予定の原稿と公開版の違い
- 答えてほしいこと(応募できるか、応募する場合に申告が必要か)
架空の作品Bについて、講談社ラノベ文庫新人賞への応募を考えた場合の文例です。【 】の部分を自分の事情に書き換えます。
ひな形公開歴について問い合わせる文(例)
【賞の名前と回】への応募を検討している者です。応募作品の公開歴について確認させてください。 要項には「【営利を目的とせず運営される各種ウェブサイトや同人誌等での作品掲載は、未発表と見なし応募を受け付けます。】」とあります。 応募を考えている作品は、以下のように公開したことがあります。 ・公開の形:【個人誌(同人誌)に収録し、即売会で頒布】 ・価格と部数:【1冊500円、約60部】 ・時期:【20XX年X月に頒布。同人誌の通販サイトで現在も販売中】 ・応募する原稿との違い:【誤字の修正のみで、内容は同じ】 この作品は、要項の「未発表と見なし」の範囲に含まれ、応募できますでしょうか。 応募できる場合、販売を停止しておく必要があるか、また応募の際に同人誌名のほかに書き添えるべきことがあれば、あわせて教えていただけますと幸いです。 【筆名(または氏名)】 【連絡先】
回答は、受け取った日付とともに保存します。回答はその賞のその回についてのもので、別の賞や次の回にそのまま当てはまるとは限りません。次の回に応募するときは、要項の文が変わっていないかを確かめ直します。
問い合わせ先が見つからない場合や、締切までに回答が得られない場合は、その作品はその回への応募を見送り、未発表の範囲がはっきり書かれた別の賞を選ぶか、公開していない新しい作品で応募することも考えます。
これから公開する作品は、応募の予定と合わせて決める
まだどこにも出していない作品をネットや同人誌で公開するか迷っている場合は、公開の前に、その作品で応募したい賞があるかを考えます。今回見たように、Webや同人誌での公開を応募可とする賞もあれば、それも含めて未発表を求める賞もあります。応募したい賞が決まっているなら、その要項を先に読み、公開してよいかを確かめてから公開します。
応募したあとの公開にも注意が要ります。小説すばる新人賞(第40回)の要項は、「受賞作発表より前に発表予定がある作品」も選考の対象外としています。結果を待つあいだに同じ作品を投稿サイトや同人誌で出す予定がある場合は、その予定も要項と照らしておきます。
公開する場所の選び方は小説の投稿サイトを比較で扱っています。公開した場合は、上の記入表に、その日のうちに場所と日付を書いておくと、あとで応募を考えたときに履歴をたどれます。