小説公募の二重投稿とは?同時応募・結果待ち・改稿作の確認方法
PRこの記事には広告リンクを含みます。広告と紹介の基準
この記事の答え
二重投稿は、同じ作品を、選考が終わっていない別の賞にも出すことを指すのが一般的です。同じ賞に別の作品を複数出す「複数応募」とは別の問題です。禁止の範囲や扱いは賞ごとに違うので、要項の文で確かめます。
- 作品の版ごとに、応募先・応募日・結果発表の予定・結果・取り下げ・改稿の内容を記録する
- 結果が出るまでは、その作品は「選考中」として扱い、次の応募先の規定と照らす
- 題名を変えた、一部を書き直した、というだけで別の作品として扱われるとは限らない。迷えば応募する前に主催者に確かめる
目次
同じ小説を別の賞にも出してよいのか、結果を待っている間に次の賞の締切が来たらどうするのか、落選した作品を書き直して出すのは二重投稿になるのか。この記事は、応募した作品の扱いで迷っている人に向けて、実在の要項の文を並べ、架空の三つの時系列で判断の分かれ目を示します。最後に、作品の版ごとに応募履歴を管理する表と、主催者への問い合わせ文を用意しました。
「二重投稿」と「複数応募」と「再送信」を分ける
応募の重複には、言葉が似ていても別の問題が三つあります。
| 何が重なっているか | よく使われる呼び方 | 主に確かめる要項の項目 |
|---|---|---|
| 同じ作品を、別の賞に同時に出す | 二重投稿、二重応募、同時応募 | 他の賞との関係(二重投稿・選考中の作品の扱い) |
| 別の作品を、同じ賞に複数出す | 複数応募 | 1人あたりの応募数の上限 |
| 同じ作品を、同じ賞に二度送る | 再送信、重複送付 | 送り直したときの扱い |
この記事の中心は一つめの、同じ作品を別の賞に出す場合です。ただ、二つめと三つめも要項に定めがある場合があるので、あわせて確かめます。
別々の作品を、別々の賞に同じ時期に出すことは、ここでいう二重投稿には当たりません。問題になるのは、同じ作品が二つの選考に同時にかかっている状態です。
実在の要項で、他の賞との関係と応募数の書き方を比べる
まず、実在の要項で、他の賞との関係と、同じ賞への応募数がどう書かれているかを見ます。いずれも、記事の作成時に確認した回の要項です。
| 賞(回) | 他の賞との関係 | 同じ賞への応募数・送り直し |
|---|---|---|
| 集英社短編小説新人賞(第241回) | 「同じ作品による他の文学賞への二重応募は認めません。」 | 「応募は一人3作品までとなります。」 |
| 2027年集英社ノベル大賞 | 「ほかの文学賞等で選考中の作品、入選した作品を応募することはできません。」 | 一人3作品まで。同じ作品を2回以上投稿した場合は「先にご応募された作品を採用」 |
| 小説すばる新人賞(第40回) | 「当『小説すばる新人賞』の受賞作発表より前に発表予定がある作品、他賞との二重応募となる作品も選考の対象外とします。」 | 「応募は各回1人1作までとします。」 |
| 講談社ラノベ文庫新人賞(第24回) | 「他の公募に応募中の作品は応募を受け付けません。」 | 「複数応募可。ただし、1作品ずつ別送信のこと。」 |
| 日経「星新一賞」(第14回・受付は終了) | 「他の文学賞等との二重投稿はご遠慮ください。」 | 一般部門・ジュニア部門ともに1人1作品まで |
どの要項も、同じ作品を他の賞と同時に選考にかけることを禁じるか、控えるよう求めています。ただし、書き方には違いがあります。
- 何を禁じているか:「二重応募」と書く要項、「選考中」「応募中」の作品と書く要項があります。2027年集英社ノベル大賞は、選考中の作品に加えて、ほかの賞で入選した作品も応募できないとしています。
- 公開の予定まで含むか:小説すばる新人賞(第40回)は、二重応募に加えて、受賞作の発表より前にほかで発表する予定がある作品も選考の対象外にしています。結果を待つ間にWebで公開する予定がある作品は、この文に当たると読めます。公開と未発表の関係は小説公募の「未発表」とは?で扱っています。
- 同じ賞に出せる作品の数:1人1作の賞と、3作まで、複数可の賞があります。
この表で分かるのは、確認した五つの要項の書き方です。ほかの賞でも同じとは限らないので、応募する賞ごとに要項の文を確かめます。
結果待ちの間は、その作品は「選考中」と考える
同時応募で迷うのは、多くの場合、結果待ちの期間です。新人賞の選考は長く、締切から結果発表まで半年以上かかることも珍しくありません。小説すばる新人賞(第40回)を例にすると、締切は2027年3月31日、一次選考の通過作は「小説すばる」2027年9月号、最終候補作と受賞作は同年11月号に掲載される予定です。この間、応募した作品はその賞の選考にかかっています。
結果待ちの作品を別の賞に出したくなったときは、次の順で確かめます。
- 先に出した賞の結果は出たか:最終結果が出ていれば、その賞での選考は終わっています。
- 途中の選考で落選が確認できるか:一次選考の通過作を発表する賞では、通過作に自分の作品がなければ、その時点で落選が分かります。ただし、途中の落選で「選考中」でなくなるとまで書いた要項は、今回確認した中にはありませんでした。発表の記録(掲載号や発表ページ)を残し、次の賞の締切が最終発表より前なら、念のため確かめます。
- 次に出す賞の規定は何を禁じているか:「選考中の作品」「応募中の作品」を禁じる要項では、先の賞の選考が続いている間は応募できません。
- 先に出した賞の規定にも当たらないか:先に出した賞の要項が「二重応募は認めません」と定めている場合、後から別の賞に出したことで、先の賞の規定にも触れることになります。後から出す側の要項だけを読んで判断しないようにします。
架空の時系列三例で、判断の分かれ目を見る
ここからは、架空の応募先二つと、架空の作品一つで、時系列の例を三つ作ります。賞の名前・規定・日付はすべて架空です。
| 架空の応募先 | 締切 | 結果発表 | 要項の定め(架空) |
|---|---|---|---|
| 青嵐小説賞(架空) | 1月15日 | 5月下旬に一次選考通過作、8月下旬に受賞作を公式サイトで発表 | 他の文学賞で選考中の作品、入選した作品は応募できない |
| 白鷺文芸新人賞(架空) | 3月31日 | 11月に受賞作を発表 | 他賞との二重応募は選考の対象外 |
作品は、長編「灯台守の娘」です。最初に書き上げた版を「第1版」と呼びます。
例1:結果待ちの作品を、そのまま別の賞に出す
| 日付 | できごと |
|---|---|
| 1月5日 | 「灯台守の娘」第1版を青嵐小説賞に応募 |
| 3月20日 | 結果を待つ間に、同じ第1版を白鷺文芸新人賞にも応募 |
| 8月下旬 | 青嵐小説賞の受賞作発表 |
3月20日の時点で、第1版は青嵐小説賞の選考中です。白鷺文芸新人賞の「他賞との二重応募は選考の対象外」に当たります。さらに、青嵐小説賞の側から見ても、選考中の作品が別の賞にも出された状態になります。同じ作品を同時に二つの選考にかけているので、典型的な二重投稿です。この場合、白鷺文芸新人賞の締切には、別の作品で応募するのが確実です。
例2:落選を確かめてから、改稿して次の回に出す
| 日付 | できごと |
|---|---|
| 1月5日 | 第1版を青嵐小説賞に応募 |
| 5月下旬 | 一次選考の通過作が発表され、「灯台守の娘」の名前がないことを確認。発表ページを保存 |
| 8月下旬 | 受賞作発表。青嵐小説賞での選考が終わる |
| 9月〜翌年2月 | 改稿して第2版を作る(中盤の二章を削り、結末の場面を書き直す) |
| 翌年3月25日 | 第2版を白鷺文芸新人賞に応募 |
第2版を出す時点で、青嵐小説賞の選考は最終発表まで終わっています。白鷺文芸新人賞の架空の要項は、他の賞で落選した作品の応募を禁じていないので、この順なら二重応募には当たらないと読めます。ただし、実在の要項の中には、2027年集英社ノベル大賞のように、ほかの賞で入選した作品の応募を認めないものがあります。落選ではなく佳作などに入った作品を次の賞に出すときは、入選の扱いも確かめます。
例3:題名を変え、一部を書き直して、結果待ちの間に出す
| 日付 | できごと |
|---|---|
| 1月5日 | 第1版を青嵐小説賞に応募 |
| 2月 | 主人公の年齢を変え、二章を書き足し、題名を「北の岬の灯」に変えた第2版を作る。筋と結末は同じ |
| 3月30日 | 第2版を白鷺文芸新人賞に応募しようと考える |
題名も分量も変わっていますが、筋と結末が同じで、多くの文が第1版から残っています。要項には、どこまで書き直せば別の作品になるかは書かれていません。題名や一部の書き直しだけで、別の作品として扱われるとは限りません。この状態で出せば、二重投稿と判断される可能性があります。出したいなら、少なくとも次のどちらかを先に済ませます。
- 白鷺文芸新人賞に、第1版と第2版の違いを具体的に示して、応募できるかを問い合わせる
- 青嵐小説賞に、第1版の応募を取り下げられるかを問い合わせ、取り下げが受け付けられたことを文面で確かめてから応募する
改稿・改題・一部抜粋の扱いを確かめる
例3のように、作品の形が変わっても、元の作品との関係は残ります。要項にない場合は自分で「別の作品だ」と決めず、違いを具体的に書き出して確かめます。
| 変え方 | 起きやすい迷い | 確かめること |
|---|---|---|
| 改題 | 題名が違えば別作品と思ってしまう | 本文が同じなら、同じ作品として扱われると考えておく |
| 改稿 | どこまで直せば別作品になるのか | 残っている場面・文、変えた筋・結末、増減した分量を書き出す |
| 一部抜粋 | 長編の一章だけを短編の賞に出す | 抜粋した部分が、選考中の長編に含まれているか |
| 合本・分割 | 二つの短編をつないで長編にする/長編を二つに分ける | 元になった作品が、それぞれどこかで選考中でないか |
書き出す内容は、小説公募の「未発表」とは?で公開版と応募版の違いを整理するときと同じ考え方です。応募した版の原稿ファイルを、改稿後のファイルと別に残しておけば、何をどれだけ変えたかをあとから示せます。版ごとの保存のしかたは小説原稿のバックアップ方法で扱っています。
取り下げは、手続きを主催者に確かめる
一度応募した作品を、選考の途中で取り下げたい場合もあります。たとえば、別の賞に出したくなった、改稿した版で出し直したい、別の形で発表することになった、といった場合です。
今回確認した要項には、応募の取り下げの手続きを書いたものはありませんでした。2027年集英社ノベル大賞の要項には、同じ作品を2回以上投稿した場合は「先にご応募された作品を採用」とあるので、少なくともこの賞では、送り直しても後の版に差し替わるわけではないと読めます。
取り下げたいときは、次の点を主催者に確かめます。
- 取り下げを受け付けているか。受け付ける場合、どの窓口に、何を書いて連絡するか
- 取り下げが完了したことを、文面で知らせてもらえるか
- 取り下げた作品を、別の賞や同じ賞の次の回に出すことに制限はないか
取り下げの連絡をしただけで、受け付けられたかが分からないまま別の賞に出すのは避けます。受付番号や確認メールがある賞では、その番号を添えて連絡すると、どの応募かがすぐに伝わります。
結果発表後に、同じ作品を出すときに確かめること
最終結果が出て選考が終わった作品は、例2のように、次の応募先を考えられます。ただし、結果によって確かめることが変わります。
| 結果 | 次の応募の前に確かめること |
|---|---|
| 落選(どの段階でも) | 次の応募先の要項が、他の賞に応募したことのある作品を制限していないか |
| 選考途中の通過作として名前や題名が公表された | 名前や題名の公表が、次の応募先の「未発表」の条件に関わらないか |
| 佳作・奨励賞などに入った | 次の応募先の要項が「入選した作品」の応募を認めているか。入選した賞の側で、作品の権利や発表について定めがないか |
| 受賞した | 受賞作の出版権などの扱いは、その賞の要項の定めに従う(集英社短編小説新人賞の要項は、受賞作の出版権などが集英社に帰属するとしている)。ほかの賞へ出すことは前提にしない |
同じ賞の次の回に、改稿した作品を出し直す場合も、その回の要項を読み直します。前の回で許されていたことが、次の回でも同じとは限りません。
応募履歴を、作品の版ごとに管理する
二重投稿を避けるいちばん確実な方法は、どの作品のどの版が、いまどこの選考にかかっているかを一目で分かるようにしておくことです。作品が一つでも、版が変われば別の行にします。下は、例2の流れを記録した架空の記入例です。
| 作品と版 | 応募先と回・応募日 | 結果発表の予定と結果 | 状態と記録 |
|---|---|---|---|
| 灯台守の娘・第1版(約11万字) | 青嵐小説賞(架空)第8回・1月5日 | 一次通過作は5月下旬、受賞作は8月下旬。一次で落選 | 選考終了(8月下旬の発表で確認)。発表ページを保存。受付番号あり |
| 灯台守の娘・第2版(約10万字。中盤二章を削除、結末を改稿) | 白鷺文芸新人賞(架空)第12回・翌年3月25日 | 11月に受賞作発表予定 | 選考中。この版はほかに出さない |
| 夏至の家・第1版(約3万字) | 未応募 | ― | 投稿サイトに冒頭を公開済み(公開歴を別に記録) |
「状態」の欄は、選考中/選考終了/取り下げ済み/未応募のどれかで書くと、次の応募先を考えるときに迷いません。
ひな形応募管理表(コピーして使えます)
作品名と版(版の番号・字数・前の版からの主な変更): 応募先と回: 応募日・受付番号: 結果発表の予定(途中選考・最終): 結果(日付と、確認した掲載号・ページ): 状態(選考中/選考終了/取り下げ済み/未応募): 取り下げの記録(連絡した日・受付の返事): この作品について問い合わせた内容と回答:
判断できないときの問い合わせ文
要項の文から判断できないときは、応募する前に主催者に確かめます。改稿した作品について尋ねる場合の文例です。【 】の部分を自分の事情に書き換えます。
ひな形改稿した作品の応募について問い合わせる文(例)
【応募を考えている賞の名前と回】への応募を検討している者です。二重応募の扱いについて確認させてください。 要項には「【他賞との二重応募となる作品も選考の対象外とします。】」とあります。 私は【20XX年X月X日】に、【別の賞の名前と回】へ長編【題名】を応募し、現在【結果待ち(最終発表はX月の予定)】です。 その後、この作品を次のように書き直しました。 ・題名:【変更した(新しい題名)】 ・人物:【主人公の年齢と職業を変更】 ・筋と結末:【大きな流れと結末は同じ】 ・分量:【約11万字から約12万字へ。二章を書き足し】 この書き直した版で貴賞に応募した場合、二重応募に当たりますでしょうか。 当たる場合、先の賞の結果が出たあとであれば応募できるかも、あわせて教えていただけますと幸いです。 【筆名(または氏名)】 【連絡先】
回答は日付とともに、応募管理表の「問い合わせた内容と回答」の欄に残します。回答はその賞のその回についてのもので、ほかの賞には当てはまりません。答えが得られないまま締切が近づいた場合は、その作品の応募を見送るか、選考中の作品とは別の作品で応募します。