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推敲・相談

小説の添削を頼む前に|未公開原稿の守秘・著作権・取扱条件を確認する

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この記事の答え

未公開の原稿を渡す前に、誰が読むか、いつまで保管するか、どう削除するか、実績として公開するか、外部のAIに入れるかを確かめます。サービス名や「守秘義務あり」の一言だけで、すべてが守られるとは考えないでください。

  • 公募の「未発表」、依頼先の「守秘」、法律上の「著作権」は、確かめる先が別々
  • 規約で分からない点は依頼前に質問し、回答と送った原稿の版を記録に残す
  • 法律上の判断や個別の契約の有効性は、この記事では扱わず、専門家に相談する
目次

まだどこにも出していない小説を、添削や講評のために人に渡すのが不安な人に向けた記事です。何を不安に思えばよいのかを「未発表」「守秘」「著作権」に分けたうえで、原稿の保管、実績としての公開、修正案の扱い、外部AIへの入力について、依頼前に確かめる項目を挙げます。架空の取扱条件を三つ比べて同意が必要な箇所を示し、問い合わせの文例六つと記録の残し方まで用意しました。法律上の結論は出さず、確認の方法と、作者が判断するための材料に絞っています。

「未発表」「守秘」「著作権」は、別々に確かめる

原稿を人に渡すときの不安には、三つの違う問題が混ざっていることがあります。問題ごとに、決めている人と確かめる先が違います。

問題 何を決めているか 確かめる先
未発表 その作品で公募に応募できるか。どんな公開が「発表」に当たるか 応募する公募の応募要項
守秘 依頼先が、原稿や依頼の内容をほかの人に見せたり使ったりしないか 依頼先の規約・説明、個別の約束や契約
著作権 作品を誰がどう使えるか。依頼によって権利の扱いが変わるか 法律の一般的な説明と、依頼先の規約・契約の権利に関する条項

たとえば、依頼先が守秘を約束していても、応募先の規定で何が「発表」に当たるかは別の問題です。逆に、応募先の規定に問題がなくても、依頼先が講評の見本として原稿の一部をネットに載せれば、その掲載が応募先の規定に触れないかを改めて確かめる必要が出てきます。公募の「未発表」の確かめ方は小説公募の「未発表」とは?で扱っています。

著作権について、一般的に知っておくこと

著作権について、文化庁の解説資料では次のように説明されています。

  • 著作権は、登録などの手続を必要とせず、著作物が創られた時点で自動的に与えられる。
  • 著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)は、著作者に専属する権利で、譲渡はできない。公表権は「公表するかしないかを決定できる権利」と説明されている。
  • 財産的な権利としての著作権は、土地の所有権などと同様に、譲渡や相続ができる。

つまり、作品を書いた時点で権利は作者にあり、財産的な権利は契約によって人に移すこともできる、という仕組みです。そのため、依頼先の規約や契約に「著作権」「譲渡」「利用を許諾」といった言葉がある場合は、何についての権利を、誰に、どの範囲で認めることになるのかを読みます。特に、作者の原稿についての条項なのか、依頼先が書いた講評文や修正案についての条項なのかで、意味は大きく変わります。条項の読み方に迷ったり、個別の契約が有効かどうかを判断したりする必要がある場合は、弁護士などの専門家に相談してください。この記事は、その判断を代わりにするものではありません。

守秘の対象と例外を確かめる

「守秘義務あり」「秘密厳守」と書かれていても、何を、誰に対して、どこまで守るのかは依頼先によって違います。確かめるのは次の点です。

  • 守る対象:原稿の本文だけか。あらすじ、設定資料、依頼文に書いた作品の意図、作者の個人情報も含むか。
  • 原稿を読む人:講評者本人だけか。講座なら事務局や別の講師、仲介サイトなら運営が、トラブル対応などで取引の内容を確認することがあるか。講評者がさらに別の人に作業を任せる(再委託する)ことはあるか。
  • 例外:法令にもとづいて開示を求められた場合など、守秘の例外として書かれている場合があるか。
  • 期間:取引が終わったあとも守秘が続くのか。

秘密保持契約(NDA)を結べる依頼先もありますが、契約書があれば安心というわけではありません。秘密保持の契約は「ほかの人に漏らさない」ことが中心で、保管期間、削除の方法、外部AIへの入力、実績としての公開まで書かれているとは限りません。契約や規約の文面で足りない部分は、次の各項目で確かめます。

原稿の保管期間と、削除の方法を確かめる

渡した原稿がいつまで、どこに残るのかを確かめます。

  • 講評が終わったあと、原稿のファイルはいつ削除されるか。削除を依頼できるか。
  • 仲介サイトのメッセージに添付したファイルは、取引が終わったあとも残るか。自分で削除できるか。
  • 郵送した紙の原稿は返却されるか、処分されるか。

郵送で原稿を出す場合は、自分の手元にも控えを残します。公募スクールの添削講座の受講規定にも、「不測の事故など万一のときのため、作品の控えを残しておいてください」とあります。紙でもデータでも、送った版を日付入りで保存しておくことは、あとで講評と原稿を照らし合わせるときにも役立ちます。

実績としての公開と、講評文の転載を確かめる

講評や添削の提供者が、仕事の見本として過去の講評や添削の例を公開していることがあります。自分の原稿がその見本に使われる可能性があるかを確かめます。

  • 講評文や添削の例を、提供者のサイト・SNS・講座案内に載せることがあるか。
  • 載せる場合、事前に許可を求めるか。題名や作者名は伏せるか。原稿の本文の一部も載るか。
  • 「依頼を受けた作品」として題名を挙げることがあるか。

原稿の一部がネットに載ると、応募先によっては、その掲載が規定上の公開に当たるかどうかを確かめる必要が出てきます。公募に出す予定の作品なら、見本としての公開は断ると最初から伝えておくほうが確実です。

反対に、作者のほうが受け取った講評文をSNSなどに載せたい場合もあります。講評文は講評者が書いた文章なので、転載してよいか、引用の範囲ならよいかを先に聞いておきます。依頼先によっては、受け取った感想や講評の転載に条件を付けていることがあります。

修正案と講評文の扱いを確かめる

添削では、講評者が書いた修正案の文が返ってきます。作品に反映することを前提にしたサービスですが、念のため次の点を確かめておくと迷いません。

  • 修正案の文を、そのまま作品に取り入れて発表・応募してよいか。
  • 修正案を取り入れたことを、作品のどこかに書く必要があるか(条件があれば先に知っておきます)。
  • 講評や修正案を受けて改稿した作品を、別の依頼先に見せてよいか。

公募によっては、応募者本人の創作であることを応募の条件にしているものがあります。添削の修正案を大きく取り入れた場合の扱いや、AIの利用を含む応募の条件は、応募する回の応募要項で確かめてください。AIの利用に関する応募規定の確かめ方はAIを使った小説は公募に応募できる?で扱っています。

外部AIへの入力の有無を確かめる

講評者や添削者が、作業の補助として生成AIのツールに原稿を入力することがあり得ます。誤字の確認、要約の作成、講評の下書きなど、使い方はさまざまです。未公開の原稿をAIのツールに入れてほしくない場合は、依頼の前に確かめ、必要なら断ります。

確かめるのは次の点です。

  • 原稿をAIのツールに入力することがあるか。あるなら、どの作業で使うか。
  • 使うツールで、入力した内容がツールの提供者の学習に使われる設定になっていないか。
  • AIを使わない形で依頼できるか。

AIと著作権の関係について、文化庁は「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)や「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)を公開しています。ただし、個別の原稿の扱いが問題になるかどうかの判断は、この記事では行いません。依頼者としてできることは、使うかどうかを事前に聞き、使ってほしくなければそう伝えて記録を残すことです。AIによる添削と人の講評の使い分けは小説のAI添削と人の講評はどう使い分ける?で扱っています。

架空の取扱条件を三つ比べて、同意が必要な箇所を見つける

規約や説明の読み方を、架空の三つの依頼先で練習します。以下の条件はすべてこの記事のために作った架空のもので、実在のサービスの規約ではありません。

確認項目 条件X(個人の講評者・架空) 条件Y(通信講座・架空) 条件Z(仲介サイトの出品・架空)
原稿を読む人 講評者本人のみ 担当講師と事務局 出品者。トラブル時は運営が取引内容を確認することがある
保管と削除 納品後30日で削除 記載なし 取引メッセージの添付ファイルは取引後も残る
実績・見本としての公開 しない 講評の一部を、作者名を伏せて講座案内に使うことがある 依頼者の許可を得た場合のみ
外部AIへの入力 記載なし 使用しない 誤字の確認にAIツールを使う場合がある
原稿の著作権 記載なし 作者に帰属する 記載なし
講評文・修正案の利用 作品への反映は自由。講評文の転載は不可 作品への反映は自由 講評文の公開は出典を示せば可

この表で、依頼の前に質問や同意が必要な箇所は次のとおりです。

  • 条件Xの「外部AIへの入力:記載なし」:書かれていないことは、使わないという意味とは限りません。使うかどうかを質問します。
  • 条件Yの「保管と削除:記載なし」:講評の返却後に原稿が残るのかを質問します。
  • 条件Yの「講評の一部を講座案内に使うことがある」:作者名を伏せても、原稿の一部が載るなら、公募に出す予定の作品では断りたい条件です。申し込む時点で、使わないでほしいと伝えられるかを確かめます。
  • 条件Zの「添付ファイルは取引後も残る」:自分で削除できるか、削除を頼めるかを確かめます。
  • 条件Zの「AIツールを使う場合がある」:使ってほしくなければ、使わない形で受けてもらえるかを確かめます。
  • 条件XとZの「原稿の著作権:記載なし」:権利について何も書かれていないとき、扱いを自分で判断できなければ、質問して回答を残します。

「記載なし」の項目は、問題がないという意味ではなく、質問すべき項目だと読みます。

規約や説明を読むときの確認表

実在の依頼先の規約や説明を読むときは、次の言葉を探すと、関係する条項を見つけやすくなります。ページ内検索で一語ずつ探し、該当する文を書き写します。

確認表規約・説明で探す言葉と、確かめること

  • 「秘密」「機密」「守秘」:守る対象、期間、例外が書かれているか
  • 「第三者」「開示」「再委託」:原稿を読む人の範囲が書かれているか
  • 「保存」「保管」「削除」「破棄」:原稿がいつまで残り、どう消されるか
  • 「実績」「サンプル」「ポートフォリオ」「掲載」:講評や原稿を見本に使うことがあるか
  • 「著作権」「譲渡」「許諾」「利用」:作品や講評文の権利について何が書かれているか
  • 「AI」「自動」「学習」「ツール」:原稿を外部のツールに入れることがあるか
  • 「転載」「引用」:受け取った講評を公開してよいか
  • 見つからなかった項目を、問い合わせの一覧に書き出した

仲介サイトを使う場合は、サイト全体の利用規約と、個々の出品ページの説明(出品者が書いた注意事項)の両方を読みます。サイトの規約に書かれていないことが、出品ページに書かれていることもあります。

そのまま使える確認文六例

規約や説明で分からなかった項目は、依頼の前に質問します。必要な項目だけを選んで、一通にまとめて送ってもかまいません。【 】の部分は自分の条件に書き換えます。

ひな形1 原稿を読む人の範囲を確かめる

ご依頼の前に一点確認させてください。
お送りする原稿は、ご担当の方以外(事務局の方、別の講評者の方、作業を手伝う方など)がご覧になることはありますか。ある場合は、どの範囲の方かを教えていただけますか。

ひな形2 保管期間と削除を確かめる

お送りした原稿のファイルは、講評の納品後、どのくらいの期間保管されますか。
納品後に削除をお願いすることはできますか。可能であれば、削除が済んだらお知らせいただけると助かります。

ひな形3 実績・見本としての公開を断る

この作品は今後、公募への応募を考えている未発表の作品です。
講評や原稿の一部を、実績や見本として公開することはお控えいただけますか。題名を挙げることも含めて、公開は控えていただけるとありがたいです。

ひな形4 外部AIへの入力を確かめる

講評や確認の作業で、原稿を生成AIなどの外部のツールに入力することはありますか。
ある場合、どの作業で、どのツールを使うかを教えていただけますか。できれば、外部のツールには入力しない形でお願いしたいと考えています。対応が難しい場合は、その旨を教えてください。

ひな形5 講評文と修正案の扱いを確かめる

いただく修正案の文を、そのまま作品に取り入れて応募・発表してもよろしいでしょうか。
また、いただいた講評の一部を、【SNS/自分のサイト】で紹介してもよいか、その場合の条件(出典の示し方など)があれば教えてください。

ひな形6 確認した内容を文面で残してもらう

ここまでお答えいただいた内容(【原稿を読む方の範囲/納品後の削除/公開しないこと/外部ツールに入力しないこと】)について、お手数ですが、取引のメッセージ上で改めて一文いただけますか。後から見返せるように記録しておきたいと考えています。

質問の文面は、相手を疑っているように書く必要はありません。「未発表の作品で、応募を考えている」と理由を添えると、依頼先も答えやすくなります。質問に答えてもらえない、または答えがあいまいなまま依頼を急がされる場合は、ほかの依頼先も検討してください。

確認した内容を記録に残す

確認した内容は、依頼が終わるまで、場合によっては応募の結果が出るまで残しておきます。

  • 規約・説明の該当箇所:確認した日付と一緒に、ページを保存するか、文を書き写します。規約は変わることがあるので、依頼した時点の内容を残すのが目的です。
  • やり取りのメッセージ:仲介サイトや講座のメッセージ欄で質問し、回答もそこで受け取ります。外部の連絡手段に移ると、記録が分散します。
  • 送った原稿の版:ファイル名に日付と「講評用」などを入れて、送ったものと同じファイルを保存します。
  • 削除の完了:削除を頼んだ場合は、完了の連絡も保存します。

確認した結果は、次のような依頼前確認表にまとめておくと見返しやすくなります。下は架空の記入例です。

項目 確認した内容(架空の記入例) 確認元
原稿を読む人 講評者本人のみ。再委託なし 出品ページの説明、メッセージでの回答
保存期間・削除 納品後14日で削除。依頼すれば即時削除し、完了を連絡 メッセージでの回答
実績公開 しない(依頼時に断り、了承の返事あり) メッセージでの回答
外部AIへの入力 使わない形で受けてもらえる メッセージでの回答
著作権 サイトの規約に作品の権利を移す条項は見当たらない 規約の該当箇所の書き写し
修正案の利用 作品への反映は自由。講評文の転載は要相談 出品ページの説明
送った原稿 「作品名_講評用_日付.pdf」で保存 自分のフォルダ

ひな形依頼前確認表(コピーして使えます)

依頼先:
確認日:
原稿を読む人(再委託の有無):
保存期間・削除の方法:
実績・見本としての公開:
外部AIへの入力:
原稿の著作権に関する記載:
修正案・講評文の利用条件:
送った原稿のファイル名:
未回答・あいまいな項目:

注意この記事で扱わないこと

規約や契約の条項が法律上有効か、個別の事案で権利の侵害に当たるかといった判断は、この記事では扱いません。トラブルになった場合や、契約書の内容を判断する必要がある場合は、弁護士などの専門家に相談してください。仲介サイトでの取引の問題は、まずサイトの問い合わせ窓口に、記録した内容を添えて相談します。

確認が済んだら、依頼先に送る依頼文の中で、確認した条件(公開しないこと、AIに入力しないことなど)を改めて書いておくと、作業の前に双方で条件をそろえられます。どの依頼先に頼むか自体を見直したい場合は、小説の添削はどこに頼む?で作業の範囲と依頼先の選び方を整理できます。