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俳句

夏の俳句の作り方|夏の季語と音・熱・生活の場面を詠む

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この記事の答え

夏の句は「暑い」と書く代わりに、暑さのせいで人や物がどう動いたか、何が鳴ったかを一つ選ぶと場面が見えます。

  • 俳句の夏は立夏(5月6日ごろ)から立秋の前日(8月6日ごろ)まで。七夕・花火(きごさい歳時記では初秋)や台風(仲秋)のように、夏の行事や天気でも秋の季語があるので歳時記で確かめる
  • 熱は「何に触れなかったか」、音は「何が、いつ鳴ったか」、行事は「一人と一つの物」まで小さくして書く
  • 季語を句の主役にするか、場面と組み合わせるかを決め、季語と同じ意味の「暑い」「涼しい」は十二音から外す
目次

夏の句を作ると、「暑い」「汗」「じりじり」と温度の話ばかりになり、どこで誰が何をしていたのかが見えなくなる。暑さそのものは目に見えません。見えるのは、暑さのせいで人や物がどう動いたか、どんな音がしたかです。この記事では、架空の夏の三場面(昼の公園、夜の部屋、祭の帰り)を使い、夏の範囲の確認から、熱・音・行事を一句にするまでを見せます。

俳句の夏は「立夏から立秋の前日まで」

NPO法人季語と歳時記の会が公開している「きごさい歳時記」の「夏」の項では、夏を立夏から立秋の前日までの約三か月としています。同じ項の説明では、初夏は爽やかな暑さ、仲夏は梅雨どきの蒸し暑さ、晩夏は炎暑の時期です。同じ「暑さ」でも、区分によって質が違うことを覚えておくと、季語を選ぶときに役立ちます。

区分 二十四節気での範囲 新暦の目安 季語の例(きごさい歳時記の区分)
初夏 立夏から芒種の前日まで 5月6日ごろ〜6月5日ごろ 薄暑
仲夏 芒種から小暑の前日まで 6月6日ごろ〜7月6日ごろ 梅雨
晩夏 小暑から立秋の前日まで 7月7日ごろ〜8月6日ごろ 炎天、極暑、盛夏、手花火、冷房
三夏 夏の全体 5月6日ごろ〜8月6日ごろ 暑し、涼し、扇風機、金魚、祭、浴衣

初夏と仲夏の範囲は、きごさい歳時記の「夏の季語」一覧の見出しによります。晩夏は、晩夏の季語として載っている小暑(7月7日ごろ)から、夏の終わりである立秋の前日までです。日付は芒種(6月6日ごろ)・小暑・立秋(8月7日ごろ)などの項にある目安で、年によって一日ほど前後します。

立秋を過ぎると、まだ真夏の暑さでも、歳時記の上では秋です。8月のお盆や夏休みの後半の暑さを書くときは、秋の季語を探すことになります。その扱いは秋の俳句の作り方で確かめています。

夏の行事や天気でも、季語の季節は別に確かめる

夏の句で取り違えやすいのは、行事と天気の言葉です。行われる時期と、歳時記で置かれている季節が一致しないことがあります。

言葉 暮らしの感覚 きごさい歳時記での扱い
七夕 7月7日の夏の行事 初秋
花火/手花火 どちらも夏休みの楽しみ 花火は初秋、手花火は晩夏
踊(盆踊りを含む) 夏祭りと同じころ 初秋
台風 7月から来る 仲秋
真夏日・猛暑 天気予報の言葉 真夏日は「盛夏」(晩夏)の傍題、猛暑は「極暑」(晩夏)の傍題
熱中症 夏の言葉 きごさい歳時記の検索では見出しも傍題も見つからなかった
氷 麦茶に入れる夏の物 晩冬(夏の季語は「氷水」など)

天気予報の言葉には、真夏日のように傍題として歳時記に入っているものもあれば、見当たらないものもあります。夏に聞く言葉だから夏の季語、と印象で決めず、使う前に一度引きます。区分の示し方や見出しにする言葉は歳時記によって違うことがあるので、句会や投稿先が歳時記を指定していればそれに合わせます。

「暑い」と書くと、夏の場面が消える

暑さを書こうとすると、「暑い」「熱くなる」「じりじり」と温度そのものを言いたくなります。けれど、温度は目に見えません。「すべり台が熱い」と書いても、読む人に渡るのは熱いという情報だけで、その公園で誰が何をしていたかは浮かびません。しかも、炎天のような夏の季語は、強い日差しや暑さをすでに一語で伝えています。そこへ温度の説明を足すと、季語と十二音が同じことを言う句になります(この形の初稿と直し方は、あとの作例1で比べます)。

もう一つ気をつけたいのは、暑さ・涼しさを表す言葉の多くが、それ自体で夏の季語だということです。きごさい歳時記では「暑し」も「涼し」も三夏の季語です。ほかの季語がある句に「暑い夜」「涼しい風」と書くと、季語が二つ並ぶことにもなります。

夏の細部を、熱・音・道具・行事から拾う

夏の観察では、温度を感じたその瞬間に、何がどう動いたかを書き留めます。観察の候補を、拾う感覚ごとに分けておきます。

拾うもの 見つけ方の問い 書き留める例
熱 何に触れられなかったか。どう持ったか、どう避けたか 手すり、車のハンドル、ベンチの座面
照り返し・影 光はどこから来たか。人はどこを選んで歩いたか 帽子のつばの下の明るさ、建物の影の幅
音 部屋の中と外で、何が、いつ鳴ったか 扇風機の首振り、網戸の外の音
道具と動作 夏にだけ出す物を、どう使ったか 団扇、浴衣の帯、打ち水のバケツ
行事 大勢の中の一人、たくさんの物の中の一つは何か 祭の帰りの一人、手に持った一つの物

架空の観察メモ

七月下旬の一日に書いた、という設定のメモです。

作例観察メモ(架空・七月下旬)

[昼・団地の公園]すべり台の階段を、子どもが手すりをつかまずにのぼっていく。両手を胸の前に浮かせたまま一段ずつ。ベンチには誰も座っていない。地面の照り返しで、帽子のつばの下まで明るい。
[夜・二階の部屋]窓は網戸。古い扇風機が首を振り、端まで行くたびに「かちり」と鳴る。そのたび机のプリントの角が浮く。遠くで踏切が鳴っている。
[夜・神社の祭の帰り]駅は浴衣の人で混んでいる。前を歩く子が、金魚の入った袋を頭の上まで持ち上げて、改札を抜けていった。
感想:暑くて外にいられない。夜は少し涼しい。祭はにぎやかで楽しかった。

感想の欄には「暑い」「涼しい」「にぎやか」「楽しい」が並んでいます。どれも句の言葉にはしません。そう感じた瞬間に見ていたもの(手すりに触れない手、鳴る扇風機、持ち上げた袋)が、句の材料です。

季語を確かめる

メモの場面に合う季語を、きごさい歳時記で確かめます。

季語 区分・分類 解説の要点 メモとの合い方
炎天 晩夏・天文 日差しが強く、焼け付くような真夏の空。傍題に炎天下 七月下旬の昼の公園
扇風機 三夏・生活 羽根の回転で風を起こし、夏の涼をとる器具 夜の部屋の古い扇風機
祭 三夏・行事 単に祭といえば都市の神社の夏祭。境内や門前に夜店が並ぶ。傍題に夏祭、宵宮、祭笛など 神社の祭の帰り
金魚 三夏・動物 尾鰭を翻して泳ぐ姿が涼しげなことから夏の季語。「金魚掬い」は項に載っていない 夜店ですくった金魚

祭の場面には、祭・浴衣・金魚と、夏の季語が三つも入っています。行事の場面は季語の候補が多くなりやすいので、どれを主役にするかを後で決めます。

熱は「触れ方」で見せる

最初の場面は、炎天の公園です。温度を言う代わりに、メモにある子どもの手の動きを使います。

温度の説明から、動きで見せる句へ

温度を説明した初稿

作例・俳句初稿:すべり台

炎天やすべり台まで熱くなる
句よみ音数
炎天やえんてんや5音
すべり台まですべりだいまで7音
熱くなるあつくなる5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

子どもの手の動きを書いた句

作例・俳句作例1:手すり(取り合わせ)

炎天や手すりに触れずのぼる子ら
句よみ音数
炎天やえんてんや5音
手すりに触れずてすりにふれず7音
のぼる子らのぼるこら5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※季語:炎天(晩夏)

変更の理由

  • 「炎天」は、きごさい歳時記で「焼け付くような真夏の空」と説明される季語です。初稿の「すべり台まで熱くなる」は、その炎天が何を熱くしたかを報告しているだけで、季語の続きを言っています。「熱くなる」と結果まで言うので、読む人は考えることがありません。
  • 修正後は「熱い」と一度も言っていません。手すりにつかまらずに階段をのぼる子どもたちの姿から、手すりが触れないほど熱いことを読む人が見つけます。両手を浮かせて慎重にのぼる、少しおかしみのある姿も浮かびます。
  • 「炎天や」の「や」で一度切り、空の大きな景から、子どもの手元へ目を移しています。季語と十二音を組み合わせるこの形を取り合わせといいます。
  • 熱さを伝える動きは、ほかにもあります。車のハンドルを指先だけで持つ、ベンチに座らず立ったまま待つ、など。メモに書いた動きの中から、その日にしか見られなかったものを選びます。

音は「何が、いつ鳴るか」まで書く

夜の部屋の場面では、扇風機を使って、季語を句の主役にする場合と、季語を場面と組み合わせる場合を比べます。同じ季語でも、句の中での役目がまったく変わります。

まず、よくある書き方です。

作例・俳句作例:決まった音の言葉で書いた句

扇風機ぶんぶん回る暑い夜
句よみ音数
扇風機せんぷうき5音
ぶんぶん回るぶんぶんまわる7音
暑い夜あついよる5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

「ぶんぶん回る」は扇風機なら何でもそうなる音で、この部屋の扇風機の音ではありません。「暑い夜」は、季語の「暑し」を重ねたうえに、扇風機が回っている理由を説明しています。

案A:扇風機を主役にする(一物仕立て)

作例・俳句作例2:扇風機(一物仕立て)

首振りの端でかちりと扇風機
句よみ音数
首振りのくびふりの5音
端でかちりとはしでかちりと7音
扇風機せんぷうき5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※季語:扇風機(三夏)

メモの「端まで行くたびに『かちり』と鳴る」を使いました。首を振りきった端で、決まって一度だけ鳴る音です。古い扇風機であることも、部屋が静かでその音が聞こえることも、言わずに伝わります。季語になる物そのものを見つめて一句にする形を、一物仕立てといいます。

案B:扇風機を場面と組み合わせる(取り合わせ)

作例・俳句作例:扇風機(取り合わせ)

踏切の音の遠さや扇風機
句よみ音数
踏切のふみきりの5音
音の遠さやおとのとおさや7音
扇風機せんぷうき5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※季語:扇風機(三夏)

こちらは、メモの「遠くで踏切が鳴っている」を主役にしました。扇風機は部屋の空気を受け持ち、句の中心は遠くの音です。網戸の窓を開けた夏の夜、遠くの音まで届くほど静かな時間が、扇風機という季語と並ぶことで見えてきます。

どちらを選ぶか

比べる点 案A(主役) 案B(組み合わせ)
句の中心 扇風機の音と動き 遠くの踏切の音
季語の役目 見つめる対象そのもの 夏の夜の部屋という時間と空気
読む人の目の動き 部屋の中の一点に寄る 部屋の中から、窓の外の遠くへ
向いている場面 季語の物に、自分だけの発見があった 季語とは別のところで心が動いた

選ぶ基準は、その夜に何に心が動いたかです。かちりと鳴る音に気づいた夜なら案A、遠くの踏切の音に耳が向いた夜なら案Bを選びます。どちらが正しいということはありません。季語の物を深く見つめる作り方は一物仕立ての俳句の作り方で、季語と十二音の距離の取り方は俳句の取り合わせとは?で詳しく扱っています。

行事は「一人と一つの物」まで小さくする

祭のように大勢が集まる行事は、目に入る物が多く、季語も多く入りがちです。全体を一句に収めようとすると、こうなります。

行事の全体から、一人の一瞬へ

祭の全体を並べた初稿

作例・俳句初稿:夏祭り

夏祭り浴衣の子らと金魚かな
句よみ音数
夏祭りなつまつり5音
浴衣の子らとゆかたのこらと7音
金魚かなきんぎょかな5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

帰りの改札の一瞬にしぼった句

作例・俳句作例3:金魚の袋

改札を金魚の袋高く抜け
句よみ音数
改札をかいさつを5音
金魚の袋きんぎょのふくろ7音
高く抜けたかくぬけ5音

合計17音(5・7・5)/俳句の基準どおり

※季語:金魚(三夏)

変更の理由

  • 初稿には、夏祭(祭の傍題)・浴衣・金魚の三つの季語が並んでいます。祭のパンフレットの写真のように、どれも「ありそうな物」で、作者がどの瞬間に立ち会ったのかが分かりません。
  • 修正後は、祭の帰りの駅で、前を歩く子が袋を頭上に持ち上げて改札を抜けた一瞬だけを書きました。「祭」とは書いていませんが、金魚の袋と混んだ改札から、祭の帰りの人波が浮かびます。袋を高く持つ手つきから、つぶされないように守る気持ちも伝わります。
  • 季語は「金魚」一つにしました。祭を季語として残したいなら、「祭」かその傍題(祭笛、宵宮など)を季語にして、残りの十二音で祭の中の一人の動作や一つの物を書き、金魚や浴衣のほうを句から外します。

説明になりやすい夏の言葉を置き換える

三つの作例で外した言葉を、置き換えの方向と一緒にまとめます。初稿を見直すときの手がかりにしてください。

説明になりやすい言葉 説明になる理由 置き換えの方向
暑い・熱い・じりじり 温度は目に見えない。炎天・暑しなど季語がすでに言っていることが多い 何に触れなかったか、どう持ったか、どこを避けたか
涼しい 「涼し」自体が夏の季語。ほかの季語と並ぶと二つになる 風で動いた物(プリントの角、カーテンの裾)
うるさい・にぎやか 音の量の感想で、何の音かが分からない 何が、いつ、どこで鳴ったか
楽しい・うれしい 行事の感想で、誰でも書ける 大勢の中の一人の動作、一つの物
ぶんぶん・みんみん 誰もが使う決まった音の言葉 その場でしか聞こえなかった鳴り方(端で一度だけ、など)

感想の言葉を使ってはいけないわけではありません。景がはっきりした句の中に一語だけ置くと、かえって効くこともあります。初稿の段階では、まず置き換えられないかを試し、置き換えて景が弱くなるなら戻します。

三句の記録

句 拾った細部と形 季語・区分 よみと音数
炎天や手すりに触れずのぼる子ら 熱・取り合わせ 炎天(晩夏)/きごさい歳時記 えんてんや/てすりにふれず/のぼるこら(5・7・5)
首振りの端でかちりと扇風機 音・一物仕立て 扇風機(三夏)/きごさい歳時記 くびふりの/はしでかちりと/せんぷうき(5・7・5)
改札を金魚の袋高く抜け 行事を小さく切る 金魚(三夏)/きごさい歳時記 かいさつを/きんぎょのふくろ/たかくぬけ(5・7・5)

三句とも「暑い」「夏」の字を使っていません。読みをかなで入力して音数を確かめたいときはかな入力の音数確認が使えます。

夏の句を見直す確認表

確認表夏の句の見直し

  • 「暑い」「熱い」「涼しい」を、動きや物に置き換えられないか
  • 暑し・涼し・汗のように、それ自体が季語の言葉を、ほかの季語と並べていないか
  • 季語の解説に書いてあること(焼け付く空、涼をとる道具)を十二音で言い直していないか
  • 行事・天気の言葉(七夕、花火、踊、台風、氷)の季節を歳時記で確かめたか
  • 立秋(8月7日ごろ)を過ぎた場面に、夏の季語を使っていないか
  • 音は「何が、いつ鳴るか」まで書いたか。決まった擬音語で済ませていないか
  • 行事の句は、一人の動作か一つの物までしぼったか
  • 季語を主役にするか、場面と組み合わせるかを決めたか
  • 読みをかなで書き、五・七・五を数えたか

季語と具体性に加えて、助詞や語順まで順に直したいときは俳句の推敲のやり方の手順が使えます。

練習「暑い」を使わずに夏の一句を作る(20分)

  1. 今日、暑いと感じた瞬間を一つ思い出し、場所と時刻を書きます。
  2. その瞬間に、自分やまわりの人が何に触れなかったか、何を避けたか、何を持ち上げたかを三行書きます。
  3. 同じ場所で聞こえた音を一つ、「何が・いつ鳴ったか」の形で書きます。
  4. 季語の候補を出し、歳時記で季節を確かめます。七夕・花火・台風など、季節を取り違えやすい言葉に注意します。
  5. 季語を主役にする案と、場面と組み合わせる案を一句ずつ作り、何に心が動いたかで一つを選びます。

夏の季語を手元で引くなら

この記事の季語は、無料で引けるきごさい歳時記で確かめました。季節別の文庫なら、『俳句歳時記 第五版 夏』(角川ソフィア文庫)は夏の季語だけを収めた一冊です。夏は、薫風や梅雨のような自然の季語と、夏服や納涼のような生活の季語が多い季節で、この巻には夏の行事・忌日、「読めますか 夏の季語」、索引も収めています。

ただ、この記事で見たように、夏の句では七夕・花火・台風のような「秋の巻に載っている言葉」を確かめる場面があります。夏の巻一冊では引けないので、『合本俳句歳時記 第五版』(KADOKAWA)のように全季節を一冊で引ける歳時記があると迷いが減ります。歳時記の種類ごとの違いは俳句の入門書と歳時記で比べています。