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言葉・表現

小説で同じ語尾が続くときの直し方|意味を変えずに文を整える

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この記事の答え

過去の出来事を語る小説で「た」が続くこと自体は誤りではありません。単調に聞こえるのは、語尾だけでなく文の形と重さまで同じ文が並ぶときです。直すときは語尾を差し替えず、次の三つから選びます。

  • 文を結ぶ:続けて起きた動作を「〜と」「〜て」でつなぎ、文の数を減らす
  • 視点人物が見ている状態や考えを書く:その文は「〜ない」「〜だ」で終わっても、時間の流れがずれない
  • 構文を変える:文頭に来る語や、何を述語にするかを変える

一度きりの動作の文だけを現在形や体言止めに替えると、出来事の前後や語り口が崩れます。同じ語尾の反復が場面の効果になっているなら、残します。

目次

推敲中に文末を見ると「〜た。〜た。〜た。」と並んでいる。気になって「〜る。」や名詞止めに替えてみたら、今度は出来事の順番があやふやになった。この記事では、新人の飼育員が早朝のペンギン舎に入る一段落を使い、語尾が「た」ばかりの初稿を三つの方法で直します。語尾だけを替えた不自然な修正例と、同じ語尾を残したほうがよい例も並べるので、どこを直し、どこを残すかを自分で決められるようになります。

「た」が続くこと自体は誤りではない

過去の出来事を語る小説では、文末の多くが「た」になります。これは自然なことです。日本大百科全書(ニッポニカ)は、日本語に時制を認めるかどうかについて議論が定まっていないとしたうえで、「ル形は未完了、タ形は完了を示すという説」を紹介しています。百科事典マイペディアも、日本語を「現在・未来が未分化の非過去と過去のみを基本的に区別する言語」と説明しています。つまり、出来事を一つずつ「終わったこと」として語れば、文末は「た」に集まります。

「同じ語尾を三回続けてはいけない」といった言い方を見かけることもありますが、句読点や送り仮名のような表記の決まりとは違い、語尾の並びは書き手が選ぶものです。回数だけで直すかどうかは決まりません。

直す必要があるのは、次のような場合です。

見分ける点 直したほうがよい重複 残してよい反復
文の形 「〇〇は△△した。」と同じ形の文が並ぶ 形をそろえる意図がある
文の重さ 大事な出来事も小さな動作も同じ一文で並ぶ 並べること自体に意味がある(くり返しの毎日、手順)
反復のあと 何も変わらずに次へ進む 反復を破る一文が来る
音読したとき 文末だけが耳に残り、中身が入ってこない リズムとして聞こえる
書き手の説明 なぜ同じなのか説明できない なぜそろえたか説明できる

作例:文末が「た」ばかりの段落

新人飼育員の芽衣が、早朝のペンギン舎で一羽に気づく場面です。視点は芽衣に寄った三人称です。

作例初稿

芽衣は六時に動物園の通用門をくぐった。まだ誰も来ていなかった。ペンギン舎の鍵を開けた。冷たい空気が流れ出た。ペンギンたちは岩の上に並んでいた。芽衣はバケツに水をくんだ。デッキブラシで床をこすった。一羽が近づいてきた。足環の色は黄色だった。昨日、先輩が「ハナ」と呼んでいた個体だった。

十の文が、すべて「た」(「くんだ」の「だ」を含む)で終わっています。しかも多くが「〇〇は△△した。」という同じ形で、通用門をくぐることも、ハナに気づくことも、同じ重さの一文です。この段落でいちばん大事なのは最後の「ハナ」に気づく所ですが、そこまでの九文と同じ調子で読み流されてしまいます。

この初稿を、三つの方法で直します。どの方法でも、出来事の順番、時間(すべて朝六時台の過去の出来事)、視点(芽衣)は変えません。

直し方1:続けて起きたことを、一つの文に結ぶ

一つめは、続けて起きた動作や、原因と結果の関係にある文をつなぐ方法です。

作例直し方1 文を結ぶ

芽衣が六時に動物園の通用門をくぐったとき、まだ誰も来ていなかった。ペンギン舎の鍵を開けると、冷たい空気が流れ出た。ペンギンたちは岩の上に並んでいた。芽衣はバケツに水をくみ、デッキブラシで床をこすった。一羽が近づいてきた。足環の色は黄色で、昨日、先輩が「ハナ」と呼んでいた個体だった。

文は十から六に減りました。語尾はすべて「た」のままですが、「た」が鳴る回数が減り、一文ごとの長さに差が出たので、単調さは薄れます。

結ぶときに気をつけたいのは、つなぎの言葉が意味を足していないかです。

つなぎ方 足される意味 この場面で使えるか
鍵を開けると、空気が流れ出た 前の動作のすぐあとに起きた 使える。初稿の順番どおり
鍵を開けたので、空気が流れ出た 原因と結果 間違いではないが、理由を強調する必要はない
鍵を開けたが、空気が流れ出た 予想と違う結果 使えない。意味が変わる
水をくみ、床をこすった 続けてした動作 使える

何でも結べばよいわけではありません。最後の「一羽が近づいてきた。」は、あえて独立させています。前の文と結ぶと、ハナが近づく瞬間が掃除の手順の一部に埋もれてしまうからです。文の長さと止まる場所の関係は、小説の文章のリズムの整え方で詳しく比べています。

直し方2:視点人物が見ている状態と、考えたことを書く

二つめは、視点人物がその瞬間に見ている状態や考えたことを、そのまま文にする方法です。動作の文は「た」のままにして、状態や判断の文だけが、その性質に合った形で終わります。

作例直し方2 視点人物の見ていることと考えを書く

芽衣は六時に動物園の通用門をくぐった。駐輪場に、自転車は一台もない。一番乗りだ。ペンギン舎の鍵を開けると、冷たい空気が流れ出た。ペンギンたちは岩の上に並んでいた。芽衣はバケツに水をくみ、デッキブラシで床をこすった。一羽が近づいてくる。黄色い足環が見えた。昨日、先輩が「ハナ」と呼んでいた個体だ。

九つの文のうち、「た」で終わるのは五つ(くぐった、流れ出た、並んでいた、こすった、見えた)です。残りの四つは、次の理由でほかの形になっています。

文 文末 なぜ時間がずれないか
駐輪場に、自転車は一台もない ない 芽衣がその場で見ている状態。「誰も来ていなかった」を、芽衣の目に入った手がかりで言い直した
一番乗りだ だ 芽衣の頭に浮かんだ判断(心の声)
一羽が近づいてくる くる 芽衣が見ている間も続いている、まだ終わっていない動き
昨日、先輩が「ハナ」と呼んでいた個体だ だ 芽衣が気づいた瞬間の判断

この方法は、語尾を散らすために文末を替えたのではありません。文の中身を、語り手の報告から、視点人物の目と頭に移した結果、文末が変わっています。そのため、読者は芽衣のすぐそばで朝のペンギン舎を見ることになります。

ただし、この方法が合うのは、視点人物に寄った語り(一人称や、一人に寄る三人称)です。語り手が人物から距離を置いて全体を語る作品では、「一番乗りだ」のような心の声が急に入ると、語りの位置が揺れて感じられます。どの方式で語っているかを確かめてから使ってください。語り方の方式ごとに書ける情報の範囲は、三人称小説の書き方で比べています。

直し方3:語順と構文を変える

三つめは、文頭に来る言葉や、何を述語にするかを変えて、文の形を変える方法です。

作例直し方3 構文を変える

芽衣が動物園の通用門をくぐったのは、六時だった。まだ誰も来ていなかった。鍵を開けたペンギン舎から、冷たい空気が流れ出た。岩の上には、ペンギンたちが並んでいた。芽衣はバケツに水をくんで、デッキブラシで床をこすった。近づいてきた一羽は、黄色い足環をつけていた。昨日、先輩が「ハナ」と呼んでいた個体だった。

七つの文は、すべて「た」で終わっています。それでも初稿ほど単調に聞こえないのは、文の始まり方と形がそれぞれ違うからです。

初稿 直し方3 変えたこと
芽衣は六時に通用門をくぐった 芽衣が通用門をくぐったのは、六時だった 「〜のは〜だった」の形にして、時刻を述語にした
ペンギン舎の鍵を開けた。冷たい空気が流れ出た 鍵を開けたペンギン舎から、冷たい空気が流れ出た 一つめの文を、場所を説明する修飾に変えた
ペンギンたちは岩の上に並んでいた 岩の上には、ペンギンたちが並んでいた 場所から書きはじめ、見た順にした
一羽が近づいてきた。足環の色は黄色だった 近づいてきた一羽は、黄色い足環をつけていた 動作を修飾に変え、一羽を主語にした

語尾の単調さは、文の形の単調さから生まれていることがあります。「芽衣は」「ペンギンたちは」「一羽が」と主語から始まる文が続くと、文末も同じ形にそろいがちです。文頭を場所や時間、物に替えるだけで、語尾を変えなくても耳に残る調子は変わります。

一つ注意があります。「〜のは、六時だった」の形は、時刻に重みを置きます。初稿では時刻は単なる情報でしたが、直し方3では「六時」が強調されます。この場面では早朝であることに意味があるので採用しましたが、構文を変えると強調する所も変わることを、直したあとに確かめてください。

語尾だけを現在形や体言止めに替えると、時間が崩れる

同じ初稿を、語尾だけを替えて「た」を減らすと、次のようになります。

語尾だけを差し替えた修正(避けたい例)

初稿

芽衣は六時に動物園の通用門をくぐった。まだ誰も来ていなかった。ペンギン舎の鍵を開けた。冷たい空気が流れ出た。ペンギンたちは岩の上に並んでいた。芽衣はバケツに水をくんだ。デッキブラシで床をこすった。一羽が近づいてきた。足環の色は黄色だった。昨日、先輩が「ハナ」と呼んでいた個体だった。

語尾だけを散らした修正

芽衣は六時に動物園の通用門をくぐったくぐる。まだ誰も来ていなかった。ペンギン舎の鍵を開けた開ける。冷たい空気が流れ出た。ペンギンたちは岩の上に並んでいた並ぶ。芽衣はバケツに水をくんだ。デッキブラシで床をこすったこする。一羽が近づいてきた。足環の色は黄色だった。昨日、先輩が「ハナ」と呼んでいた個体だった。

変更の理由

  • 「た」は十から四に減りましたが、出来事の時間が揺れています。「くぐる」「開ける」「こする」は、一度きりの終わった動作です。現在形にすると、毎朝の習慣のことなのか、これからすることなのかが読み分けにくくなります。
  • 「鍵を開ける。冷たい空気が流れ出た。」では、現在から過去へ時間が戻るように読め、動作の前後関係がぼやけます。
  • 「並んでいた」を「並ぶ」にすると、その朝そこにいた状態が、「いつもそうしている」という意味に変わります。
  • 最後の二文の体言止めは、文がメモのように聞こえます。「だった」が消えたことで、芽衣がそのとき気づいたのか、前から知っていたのかもはっきりしなくなりました。
  • 現在形や体言止めがいけないわけではありません。直し方2の「一羽が近づいてくる」のように、文の中身に合っていれば時間は崩れません。避けたいのは、中身はそのままで語尾だけを替えることです。

語尾を一つ替えただけで変わる意味を、まとめておきます。

初稿 語尾だけ替えた形 変わること
並んでいた 並んだ その時の状態が、その時に並ぶ動作に変わる
流れ出た 流れ出ていた 鍵を開けた瞬間に起きたことが、しばらく続いていた様子のように読める
床をこすった 床をこする 一回の動作が、習慣やこれからの予定に読める
黄色だった 黄色である 語り手の声が急に硬くなり、説明文のように聞こえる
個体だった 個体。 断定の強さと、いつ気づいたかがあいまいになる

時制と視点を、直したあとに点検する

語尾を直したら、最後に時制と視点を確かめます。過去の出来事を語る文章の中でも、次のような文は「た」以外で終わっても時間がずれにくい文です。

「た」以外で終わっても時間がずれにくい文 例
視点人物がその瞬間に見ている状態 駐輪場に、自転車は一台もない
まだ終わっていない、続いている動き 一羽が近づいてくる
視点人物の判断や心の声 一番乗りだ
修飾の中にある、同じ時の状態 まだ誰も来ていない園内を、芽衣は歩いた
物語の中で変わらない事実や決まり この園では、足環の色で一羽ずつ見分ける

反対に、一度きりで終わった動作と、前後の順番が大事な動作の連続は、「た」のままにしておくほうが安全です。

手順語尾を直したあとの点検

  1. 直した文を一つずつ読み、「この出来事は、前の文の出来事より前か、あとか、同時か」を確かめます。初稿と答えが変わっていたら、時制が崩れています。
  2. 「た」以外で終わる文が、上の表のどれに当たるかを確かめます。どれにも当たらない動作の文なら、「た」に戻します。
  3. 「〜だ」「〜ない」で終わる判断や心の声が、視点人物の考えになっているかを確かめます。視点人物以外の考えなら、視点がずれています。
  4. 体言止めの文が二つ以上続いていないかを見ます。続く場合は、強調したい一つを残して元に戻します。
  5. 結んだ文で、「〜ので」「〜が」などのつなぎの言葉が、初稿にない因果や逆接を足していないかを確かめます。

一人称の作品では、語り手が出来事を「その場で語る」のか「あとから振り返って語る」のかによって、現在形がなじむ場所も変わります。語る時点の決め方は、一人称小説の書き方で扱っています。

同じ語尾を残したほうが効く場合

同じ語尾の反復が、場面の効果になっていることもあります。直す前に、その反復が場面の中で何をしているかを確かめます。

一つずつ確かめる「ない」の連続は残す

元の文(こちらを残す)

昼を過ぎても、ハナは岩の上から動かなかった。
芽衣は柵の内側にしゃがんだ。ハナは鳴かない。水に入らない。差し出した魚にも、くちばしを向けない。
芽衣は腰の無線を取った。

一文にまとめた案

昼を過ぎても、ハナは岩の上から動かなかった。
芽衣はが柵の内側にしゃがんだ。ハナは鳴かない。水に入らない。差し出した魚にも、くちばしを向けない。で様子を見ると、ハナは鳴きもせず、水にも入らず、差し出した魚にもくちばしを向けなかった。
芽衣は腰の無線を取った。

変更の理由

  • 元の文は「〜ない。」で終わる文を三つ並べています。芽衣が一つ確かめるたびに、心配が一段ずつ積み重なっていく順番が、文の数そのもので伝わります。三つめだけを少し長くして、反復が終わる合図にしています。
  • 三つの「ない」は、直し方2で見たように、芽衣がその場で見ている状態なので、過去の語りの中に置いても時間はずれません。
  • まとめた案は、意味としては同じで、文章としても自然です。ただ、確かめた結果を一度に報告する形になり、芽衣が一つずつ見ていく時間が消えます。続く「無線を取った」の重みも軽くなるので、この場面では元の文を残します。
  • 同じ語尾を並べても、そのあとに何も変わらない場合は、初稿の段落と同じく単調さが残るだけです。残すかどうかは、反復のあとに何が来るかで決めます。

ほかにも、次のような場合は、同じ語尾が続いていても直さずにおくことがあります。

  • 会話が間に入る場面:セリフが文末の並びを区切るので、地の文の「た」は耳に残りにくくなります。
  • 緊迫した動作が続く場面:短い「〜た。」の連続が、一つずつ起きる出来事の速さを伝えます。
  • 語り手の口調が作品の声になっている場合:「〜のだ。」「〜である。」が続くことが語り手の人柄になっているなら、その癖は作品の一部です。ただし、強調の「〜のだ」が段落ごとに続くと強調の効果が薄れるので、本当に強めたい所に絞ります。

同じ語尾ではなく、同じ言葉や同じ名詞が近くで続く場合の、残すか削るかの判断は、小説で同じ言葉を繰り返すときの直し方で扱っています。

自作の段落で語尾を点検する

練習語尾の並びを調べて、一か所だけ直す(15分)

  1. 自作から、地の文が五文以上続く段落を一つ選びます。
  2. 各文の文末を、「た」「る(ない)」「だ」「名詞」などに分けて書き出し、並び方を見ます。
  3. 同じ形の文が続いている所を探し、文頭が同じ形(「〇〇は」など)になっていないかも確かめます。
  4. 一番単調な箇所を一つ選び、結ぶ・視点人物の見ていることを書く・構文を変えるのどれか一つで直します。
  5. 直した文で、出来事の前後関係と、誰の考えかが変わっていないかを確かめます。

確認表語尾を直すときの確認表

  • 語尾の回数ではなく、文の形と重さが同じ文が並んでいる所を直している
  • 結んだ文のつなぎの言葉が、初稿にない因果や逆接を足していない
  • 「た」以外で終わる文は、見ている状態・続いている動き・判断・変わらない事実のどれかに当たる
  • 一度きりの動作を、現在形に替えていない
  • 体言止めが続いて、メモのような文になっていない
  • 心の声として書いた文が、視点人物の考えになっている
  • 反復のあとに変化がある場合は、同じ語尾を残す判断をした

語尾の単調さは、書いた本人が何度も読み返すうちに耳が慣れて、気づきにくくなります。原稿があり、具体的な疑問が残っている場合は、読み手に「同じ調子が続いて退屈に感じた段落」を挙げてもらうと、直す場所を絞れます。尋ね方は小説の感想を依頼するには?で扱っています。講評を頼む場合は、講評・添削の依頼メモに、気になる段落と、試した直し方(結ぶ・見ていることを書く・構文を変える)を書き添えておくと、直した結果について意見をもらいやすくなります。依頼先の違いは小説の添削はどこに頼む?で比べています。