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小説

二次創作小説の書き方|人物らしさと独自の場面を両立する

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この記事の答え

二次創作では、原作に書かれていることと、自分がそこから読み取った解釈と、自分で足した新しい状況を分けて組み立てます。人物らしさは設定の説明ではなく、新しい状況での人物の選択で見せます。

  • 書く前に、原作の権利者が示す方針と、投稿先の二次創作の条件を両方確かめる
  • 原作の記述を書き出し、解釈には「どの記述からそう読んだか」の根拠を付ける
  • 原作にない出来事を一つ置き、原作で知られている性格のまま人物が何を選ぶかを書く。読者が知っている設定の説明は省く
目次

好きな作品の二次創作を書こうとして、気づくと原作の人物紹介を書き写したような文章になっている。人物の性格を説明するばかりで、場面が動き出さない。この記事では、実在の作品を使わず、この記事のために作った架空の原作と設定資料を使って、原作の情報と解釈を分け、原作にない会話場面を一つ組み立てるまでを見せます。読み終えたら、自分の好きな原作で、人物らしさを保ったまま独自の場面を書けます。

書く前に、権利者の方針と投稿先の条件を確かめる

二次創作は、原作の人物や世界を借りて書く創作です。どの原作で、どこまで書いてよいか、どこに公開できるかは、原作ごと、公開先ごとに違います。書き始める前に、次の二つを別々に確かめます。

一つ目は、原作の権利者の方針です。原作の出版社や作者、制作会社などが、二次創作やファン活動の扱いについて方針を公開していることがあります。公開されている場合は、少なくとも次の点を読みます。

確かめる点 読むときの見方
対象 小説(文章による二次創作)が含まれているか
公開の方法 Webでの公開、同人誌での頒布など、どの方法が認められているか
有償か無償か 有料での頒布や販売を認めているか
禁止事項 禁止されている表現や使い方、原作の文章や画像の扱い
表記 二次創作であることや原作名の表示について、決まりがあるか

二つ目は、公開先の条件です。投稿サイトは、受け付ける二次創作をそれぞれ決めています。

投稿先 公式ヘルプが示していること
小説家になろう オリジナル作品の投稿サイトで、二次創作は「一部」受け付けている。投稿前に二次創作ガイドラインと受付対象の案内を確認するよう求めている。作品分類で「二次創作」を選び、受付中の版権作品なら管理キーワードを選び、小説家になろうグループに投稿されている他のユーザーの作品が原作なら原作のNコードを入力する(あらすじに原作者の許可とNコードの記載が必要)。それ以外は、ガイドラインで許可されている二次創作に限る
カクヨム 二次創作ができるのは「二次創作許諾タイトル一覧」にあるタイトルだけで、一覧にない商業作品の二次創作は掲載できない。許諾は本サイトへの投稿に限る。シリーズの紹介ページに載っていても著者が異なる外伝などのタイトル、複数のタイトルの人物が登場するクロスオーバー(許諾タイトル同士でも)、「著しく原作の設定およびキャラクター性を損なう描写」は許諾の範囲外

権利者の方針と投稿先の条件は、どちらか一方を満たせばよいものではありません。両方を読み、両方に合う形で公開します。カクヨムのように、クロスオーバーや原作の人物性を大きく損なう描写を範囲外としているサイトでは、作品の設計そのものが条件に関わります。書き上げてから確かめるのではなく、何を書くかを決める前に読んでおきます。

注意この記事が扱わないこと

この記事は、ある二次創作が法的に許されるかどうかを判断するものではありません。権利者の方針が見つからない、読んでも自分の作品が当てはまるか分からない、という場合は、権利者や投稿先の問い合わせ窓口で確かめるか、必要に応じて専門家に相談してください。判断がつかないまま公開しない、という選択もあります。また、この記事の作例は全年齢向けの創作技法に限っています。

例に使う架空の原作と設定資料

ここからの作例には、この記事のために作った架空の原作を使います。実在の作品とは関係ありません。二次創作を書くときは、自分の好きな原作について、同じ形の資料を作ってみてください。

作例架空の原作『星図書院の写し手』の設定資料

作品:全五巻の小説シリーズ(この記事のための架空の作品)

舞台:山頂の星図書院。夜ごと星の位置を手で写し取り、星図を作る「写し手」たちが暮らす。年に一度、写した図を実際の空と照らし合わせる「星合わせ」がある。

灯(あかり):十七歳。港町で荷運びをしていたが、一巻で書院に入る。字を書くのが速いが、線が雑だとよく叱られる。高い所が苦手で、観測塔の梯子を一段ずつ数えて登る(一巻)。師匠には敬語を使わないが、柾にだけは敬語で話す(一巻)。

柾(まさき):十九歳。灯の指導役(一巻)。口数が少なく、灯を「おまえ」と呼ぶ。三年前の星合わせで一度だけ図を誤ったと、灯に話す(二巻)。配られた菓子を、黙って人に渡す場面が二度ある(三巻)。

主な出来事:二巻で灯が初めて星図を一枚任される。四巻で二人は嵐で壊れた観測塔を直す。五巻で灯は星合わせに合格し、柾は書院を出て旅の写し手になる。

原作に書かれていることと、自分の解釈を分ける

二次創作で人物が「らしくない」と言われる原因の一つは、自分の解釈を原作の事実のように扱ってしまうことです。逆に、原作の記述だけをなぞると、人物紹介の書き写しになります。まず、原作に書かれていることと、そこから自分が読み取ったことを分けて書き出します。

原作に書かれていること 自分の解釈 別の読み方もできる
柾は配られた菓子を、黙って人に渡す(三巻で二度) 自分が何かを受け取ることに慣れていない 単に甘い物が苦手なだけ
柾は三年前の星合わせで一度だけ図を誤ったと話す(二巻) その失敗を今も気にしていて、だから灯の雑な線に厳しい 失敗から立ち直った話として、励ますつもりで話した
灯は柾にだけ敬語で話す(一巻) 柾を、師匠よりも「追いつきたい相手」として見ている 柾が怖くて距離を取っている
灯は梯子を一段ずつ数えて登る(一巻) 怖さを数でごまかす人で、怖いとは口にしない 慎重な性格というだけ

右端の列を書いておくのは、解釈が一つではないことを自分で確かめるためです。同じ原作を読んだ人でも、受け取り方は違います。解釈はどれを選んでもかまいませんが、どの記述からそう読んだのかを言えるものにしておくと、場面で人物を動かしたときに原作から離れすぎません。

練習自分の原作で、記述と解釈を分ける(20分)

  1. 書きたい人物を二人選び、原作で書かれている性格・癖・口調・過去の出来事を、巻や話数と一緒に五つずつ書き出します。記憶ではなく、できれば原作を開いて確かめます。
  2. それぞれに「自分はここから何を読み取ったか」を一文で書きます。
  3. 同じ記述から読める別の解釈を一つずつ書きます。思いつかない場合は、その解釈が原作の記述に近いということです。

二人の関係の前提を、原作のどの時点かで決める

二人の人物を書く場合は、二人の関係が原作のどの時点のものかを先に決めます。同じ二人でも、出会った直後と物語の終盤では、呼び方も、互いに知っていることも違うからです。作例の前提は次のとおりです。

項目 作例の記入
時点 三巻と四巻の間。灯が書院に来て二年目の秋
互いに知っていること 灯は柾の星合わせの失敗を聞いている(二巻)。柾は灯が高い所を怖がることを知っている
まだ起きていないこと 嵐の観測塔の修理(四巻)、柾の旅立ち(五巻)
呼び方・話し方 柾から灯へは「おまえ」、灯から柾へは敬語
二人の距離(解釈) 指導役と見習い。灯は追いつきたいと思い、柾はまだ一人前と認めていない

「まだ起きていないこと」の欄は大切です。四巻より前の場面なのに、四巻の修理を経たあとの打ち解けた会話を書くと、原作を読んだ人には時間がずれて見えます。原作の結末を知っている人物として書くのか、知らない時点の人物として書くのかも、ここで決まります。

原作にない出来事を一つ置く

人物らしさを見せるには、原作で知られている性格のまま、原作にない状況で人物が何を選ぶかを書きます。そのために、原作にない出来事を一つ置きます。候補を並べて、原作と矛盾しないか、人物の選択を引き出すかで選びます。

出来事の候補 原作と矛盾しないか 人物の選択を引き出すか 判断
二人で星合わせに出る 五巻の灯の合格の場面と重なる 原作の場面の書き直しになりやすい 採らない
雨で観測できない夜、書庫で古い星図の虫食いを二人で直す 三巻と四巻の間に入れられる 直す図が柾の誤った三年前の図なら、柾は話すか黙るかを選ぶことになる 採る
灯が書院を辞めると言い出す 原作の灯の決意と食い違う 大きな選択を引き出すが、原作と違う展開になる 書くなら、原作と違う展開であることを冒頭で示す

作例では二つ目を採りました。「星合わせで一度だけ誤った」という原作の記述(二巻)に、「その図が書庫に残っている」という独自の設定を足し、柾が自分の失敗に向き合わざるを得ない状況を作っています。

原作と違う展開(いわゆるif)を書くこと自体は、二次創作の楽しみの一つです。ただし、その場合は読者が原作の事実だと思い込まないよう、前書きや注意書きで示しておきます。

設定の説明から始めず、場面で人物らしさを見せる

出来事が決まったら、場面を書きます。書き出しで場面が止まってしまう形の一つが、人物の設定を並べてから場面に入る書き方です。

設定を並べた導入から、場面から始める導入へ

設定を並べた導入

星図書院の写し手・柾は、口数が少なく、後輩の灯を「おまえ」と呼ぶ十九歳の先輩だ。三年前の星合わせで一度だけ図を誤ったことがあり、配られた菓子はいつも人に渡してしまう。灯はそんな柾に、書院に来た日から敬語で話している。雨の夜、二人は書庫で星図を直すことになった。

場面から始めた導入

雨は日が暮れても止まなかった。星の出ない夜、写し手たちは書庫で古い星図を直す。

灯は、虫に食われた一枚を机に広げた。紙の端に、写し手の名前が小さく記してある。

〈柾〉

変更の理由

  • 修正前の四文は、すべて原作を読んだ人がすでに知っている情報です。場面が始まる前に設定の確認が続き、読者は「知っている話」を読まされます。
  • 修正後は、雨の夜・書庫・星図という状況だけを置き、柾の名前を「図に記された名前」として登場させました。柾の失敗という原作の記述が、説明ではなく出来事として場面に入ってきます。
  • 菓子を人に渡す癖や「おまえ」という呼び方は、説明しなくても、場面の後半で柾が実際にそうすれば伝わります。
  • 原作を知らない人にも読んでもらいたい作品なら、最低限の状況説明を入れる判断もあります。その場合も、人物の性格の説明ではなく、いつ・どこで・誰が、に絞ります。

この導入から書いた場面の全体です。

作例二次創作の作例「削り跡」(約550字)

雨は日が暮れても止まなかった。星の出ない夜、写し手たちは書庫で古い星図を直す。

灯は、虫に食われた一枚を机に広げた。紙の端に、写し手の名前が小さく記してある。

〈柾〉

日付は三年前の、星合わせの夜だった。

北の空の一点に、紙を薄く削った跡があった。削った上から、別の線が引き直されている。

「柾さん、これ」

向かいで糊を溶いていた柾が、顔を上げた。図を見て、それから灯を見た。

「おまえが直せ」

「え」

「虫食いは三か所。削り跡のところは紙が薄い。糊は少なめにしろ」

柾は手元に目を戻した。それ以上、何も言わなかった。

灯は筆を取った。削り跡に裏から紙を当てると、ランプの光が透けて、引き直す前の線がうっすらと見えた。今の線より、指一本ぶん北にずれている。

春先に、柾がぽつりと言ったことを思い出した。一度だけ、間違えた。話はそれきりだった。

「……指一本ぶん、ですね」

柾の手が止まった。

「指一本ぶんで、星合わせに落ちた」

灯は紙を押さえる指に力を入れすぎないように気をつけながら、虫食いの穴を一つずつふさいでいった。

夜半、師匠が干し杏を二つずつ配っていった。柾は自分の皿を、いつものように黙って灯の方へ押した。

灯はその皿を、黙って押し返した。

「直した図の、お代です」

柾はしばらく皿を見ていた。それから一つだけつまんで、口に入れた。

場面のどこが原作で、どこが解釈か

書き終えたら、場面の要素を、原作の記述・自分の解釈・独自の設定に分けて確かめます。

場面の要素 原作の記述 解釈・独自の設定
柾の「おまえが直せ」 灯を「おまえ」と呼ぶ。指導役(一巻) 自分の失敗の図に触れたくないが、指導役として灯に任せる(解釈)
灯の「柾さん」「〜ですね」 柾にだけ敬語で話す(一巻) なし
削り跡の図と「指一本ぶん」 三年前の星合わせで一度だけ誤った(二巻) 図が書庫に残っている、ずれの幅、それで星合わせに落ちた(独自の設定)
失敗について多くを語らない 口数が少ない(一巻) 失敗を今も気にしている(解釈)
干し杏の皿を押す 菓子を黙って人に渡す(三巻) 受け取ることに慣れていない(解釈)
灯が皿を押し返す なし 原作にない灯の選択。二人の距離がわずかに変わる(独自の出来事)

この表で見ると、柾は原作の記述から一歩も外れていません。原作のとおり口数が少なく、灯を「おまえ」と呼び、菓子を人に渡します。それでも場面が新しく感じられるのは、原作にない状況(自分の失敗の図)と、原作にない選択(灯が皿を押し返す)があるからです。最後に柾が一つだけ口に入れる動作は、原作の「渡す」癖が、この夜だけ少し変わったことを示しています。

独自の設定は、原作の記述と矛盾しない範囲で足しています。ただし「星合わせに落ちた」は原作に書かれていないことなので、原作の事実だと受け取られたくない場合は、あとがきなどで独自の設定だと書き添える判断もあります。

人物同士の口調の違いを、語尾だけに頼らず書き分ける方法は小説のセリフを書き分ける方法で扱っています。

説明を省く範囲を決める

二次創作は、原作を知っている読者を主な相手として読まれます。そのため、オリジナルの小説よりも説明を省けます。ただ、何でも省けばよいわけではありません。情報の種類ごとに扱いを決めます。

情報 扱い 理由
人物の名前、世界の基本(書院、写し手、星合わせ) 本文では説明しない。場面の中に自然に置く 原作の読者は知っている
原作のどの時点か(三巻と四巻の間) あらすじや前書きで一行示す 本文で説明すると場面が止まる。読者が時点を探さずに済む
原作の出来事への言及(二巻の話) 本文では人物の記憶として一文で 原作の読者には伝わり、知らない読者にも意味が通る
独自の設定(図が残っている、落ちた) 本文では場面として見せる 説明すると、原作の設定のように読まれやすい
原作と違う展開(if) 冒頭の注意書きやあらすじで示す 読者が原作の事実だと思い込まないように

あらすじや前書きにどんな注意書きを入れるかは、投稿先の決まりにも関わります。たとえば小説家になろうでは、小説家になろうグループ内の作品の二次創作の場合、あらすじに原作者の許可と原作のNコードを記載するよう求めています。

公開する前に確かめること

書き上げたら、公開する前にもう一度、作品と条件を照らし合わせます。

確認表二次創作を公開する前の確認表

  • 原作の権利者が示す方針を読み、小説・公開方法・有償無償の条件に合っている
  • 投稿先の二次創作の条件を読み、その原作が受付対象に入っている
  • 投稿先が範囲外としている内容(クロスオーバーなど)を含んでいない
  • 作品分類やキーワード、原作名の表示を、投稿先の指定どおりに設定した
  • 原作の台詞や地の文を長く書き写していない。引用の扱いも方針と照らし合わせた
  • 原作のどの時点の話かを、あらすじや前書きで示した
  • 原作と違う展開や独自の設定を、原作の事実と誤解されない形で示した
  • 判断がつかない点を残したまま公開していない

投稿先をどこにするか自体を比べたい場合は、作品のジャンルや公開の目的から小説の投稿サイトを比較で候補を選べます。二次創作の受付条件は、候補にしたサイトのヘルプや規約で個別に確かめてください。