川柳の作り方を学ぶ本|発想・表現・添削例から入門教材を選ぶ
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この記事の答え
川柳の本は、作品を読んで味わう本と、作り方・直し方を学ぶ本で役割が違います。今つまずいている工程で選びます。
- 何から作ればよいか分からない → 作り方の総合入門書(例:『川柳の理論と実践』『川柳入門 人間を詠む 自然を謳う 社会を裏返す』)
- 句はできるが説明っぽい、助詞や止め方に迷う → 文法・表記の本や、添削例を読む本(例:『よい句をつくるための川柳文法力』『添削から学ぶ川柳上達法』)
- よい句の感覚をつかみたい、題詠の句を見比べたい → 秀句の鑑賞書や課題別の句集
添削例の本は、掲載された句の添削を読む本で、自分の句を見てもらえるものではありません。自分の句への返答がほしいときは、句会や添削を選びます。
目次
川柳を作ってみたいけれど、自分の句が標語や時事の一言のようになってしまう。入門書を探すと、作品集、句集、作り方の本が並んでいて、どれが作るための本なのか分からない。この記事では、川柳の本を学べることの違いで五つに分け、7冊を比べます。最後に、一つのお題で発想・表現・推敲を順に試す練習計画を示します。
標語・時事の一言と、川柳の違いを先に押さえる
本を選ぶ前に、何を学びたいのかをはっきりさせます。作り始めのつまずきの一つに、五七五にはなっても、標語や時事の感想に寄ってしまうことがあります。同じ題材で三つを並べます。
作例・川柳標語に寄った句
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| マイバッグ | まいばっぐ | 5音 |
| 持って出かけて | もってでかけて | 7音 |
| エコな街 | えこなまち | 5音 |
合計17音(5・7・5)/川柳の基準どおり
作例・川柳時事の一言に寄った句
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| レジ袋 | れじぶくろ | 5音 |
| 有料化には | ゆうりょうかには | 7音 |
| 困ったね | こまったね | 5音 |
合計17音(5・7・5)/川柳の基準どおり
作例・川柳人の姿で見つけたことを詠んだ句
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| マイバッグ | まいばっぐ | 5音 |
| 畳むのだけが | たたむのだけが | 7音 |
| うまくなる | うまくなる | 5音 |
合計17音(5・7・5)/川柳の基準どおり
一つ目は、読む人に行動を呼びかけています。二つ目は、世の中の出来事への感想を述べています。三つ目は、マイバッグを使う人の姿の中に、畳むのは上手になったが持ち歩くのは忘れがち、という可笑しさを見つけています。辞書でも、川柳は人間の感情や社会、人生の機微を口語でとらえる短詩と説明されます。標語や時事の題材が悪いのではなく、人の姿や気持ちの中に何を見つけたかが句の中心にあるかどうかが違いです。
この違いを身につけるには、「よい句をたくさん読む」ことと、「自分の句を直す手順を知る」ことの両方が要ります。本を選ぶときは、どちらを補いたいのかを決めておきます。
川柳の本は、学べることで五つに分かれる
| 種類 | 主に学べること | 作り方の説明 | 向く段階 |
|---|---|---|---|
| 作り方の総合入門書 | 川柳とは何か、題材の見つけ方、表現、作句の手順 | ある | これから作る、作り始めたところ |
| 文法・表記の本 | 助詞、動詞の形、句の止め方、リズム、文字の使い分け | 言葉の選び方に特化 | 句はできるが、言い回しに迷う |
| 添削例の本 | 原句と添削後の句の比較、直した理由 | 直し方として学べる | 自分の句を直したいが、手がかりがない |
| 秀句の鑑賞書 | よい句の読み方、選ばれる句の条件 | 少ない(読む力を育てる) | 句を読む目を育てたい |
| 課題別の句集 | 同じ題で詠まれた多くの入選句 | ほとんどない | 題詠でほかの人の発想と比べたい |
作品集や句集は、作り方の説明を求めて買うと期待とずれます。反対に、総合入門書だけでは、よい句の実例に触れる量が足りないこともあります。今の自分にどちらが足りないかで選びます。
7冊を比べる
ここで比べるのは、川柳総合誌『川柳マガジン』を出している新葉館出版の本です。
| 書名(著者) | 扱う内容 | 向く人 | 向かない人・注意 |
|---|---|---|---|
| 川柳の理論と実践(新家完司) | 『川柳マガジン』連載の書籍化。良い川柳の条件と作り方、作句力を上げる表現と表記、作句法・選句法を、多くの例句で扱う総合入門書 | 作り方から表現・表記まで一冊で通して学びたい | 章立ては書店や図書館で確かめてから選ぶ。326ページあり、すぐ一句目を作りたい人には厚い |
| 人間を詠む 自然を謳う 社会を裏返す 川柳入門(佐藤美文) | 第一章 基礎知識と歴史、第二章『誹風柳多留』ほか古今の秀句紹介、第三章 人間・自然・社会のテーマ別の捉え方と作句のテクニック。巻末に基礎用語と穴埋め川柳クイズ | 川柳とは何かを知り、秀句を読み、作るところまで薄い一冊で触れたい | 題詠・推敲・添削例を詳しく学びたい人は、ほかの本と組み合わせる |
| スピードマスター 川柳の教科書 第三版(堤丁玄坊) | 教室で使われているカリキュラムから要点を集め、基礎と作句に必要な最低限の要素を簡潔に解説する入門テキスト | 分厚い本を避けたい。教室やサークルで使うテキストを探している | 扱う項目は、書店や図書館で目次を見て確かめてから選ぶ |
| よい句をつくるための川柳文法力(江畑哲男) | 第一章 助詞・比喩・形容詞・形容動詞、第二章 句の止め方・リズム・文字表記、第三章 文法的視点から川柳力を上げる方法 | 句はできるが、助詞一字や止め方で迷う | 作り始める前の一冊目には向かない。添削例・練習問題の有無は実物で確かめる |
| 添削から学ぶ川柳上達法(三上博史) | 全3章。第3章が雑詠(自由吟)と題詠(課題吟)の実践で、課題21題の添削実例をもとに作句のノウハウを解説。穿ちの視点、自動詞と他動詞、下五の動詞の止め方、推敲、時事川柳の心得などの項目 | 自分の句を直したいが、何をどう直すかの実例がほしい。題詠の句を作る機会がある | 掲載句の添削を読む本で、自分の句を添削してもらえるわけではない |
| 良い川柳から学ぶ 秀句の条件(新家完司) | 「良い川柳とは何か」をテーマに、古今の名作532句を現代的な視点で解説し、著者の「良い川柳」論を収める。『川柳マガジン』連載の書籍化 | よい句を読む目を育てたい。自分の句の物足りなさの理由を探したい | 中心は秀句の鑑賞と考察で、作句の手順書ではない |
| 課題別秀句集 川柳歳事記 六(川柳マガジン編集部) | 全国の句会・大会の上位入選作から、2,179題・6,156句を課題別に編集した2020〜2021年度版。課題吟への向き合い方や近年の入選作の傾向を学ぶための句集 | 題詠の句を作る前に、同じ題でどんな句が選ばれているかを見たい | 作り方の解説書ではない。出版社ページに「在庫切れ」と「残部僅少」の両方の表示があり、入手方法を確かめる |
| 書名 | 刊行 | 判型・頁数 | 表示価格 |
|---|---|---|---|
| 川柳の理論と実践 | 2011年3月 | 四六判326頁 | 1,600円 |
| 川柳入門(佐藤美文) | 2018年6月 | 四六判144頁 | 1,400円 |
| 川柳の教科書 スピードマスター 第3版 | 2018年10月 | A5判114頁 | 1,000円 |
| よい句をつくるための川柳文法力 | 2017年2月 | 四六判210頁 | 1,600円 |
| 添削から学ぶ川柳上達法 | 2020年11月(207頁、19cm) | 下の注意を参照 | 1,500円 |
| 良い川柳から学ぶ 秀句の条件 | — | A5判288頁 | 1,700円 |
| 課題別秀句集 川柳歳事記 六 | — | 文庫判584頁 | 1,600円 |
価格は出版社の通販ページの表示で、税の扱いはページに書かれていませんでした。刊行の欄が「—」の本は、刊行年を書店や図書館で確かめてください。
注意『添削から学ぶ川柳上達法』の書誌について
出版社の商品ページでは、確認時、判型・頁数・ISBNの欄が同社の『課題別秀句集 川柳歳事記 六』と同じ表記(文庫判584頁、ISBN 978-4-8237-1038-4)になっていました。国立国会図書館の書誌では、2020年11月刊、207ページ、19cm、ISBN 978-4-8237-1044-5です。書店で注文するときは、書名と著者名で確かめ、ISBNの違いに注意してください。
ほかにも、「どのタイプの選者にも入選する句の作り方」に特化し、句会で上位に入ることを目指す『入選にとことんこだわる 川柳の作り方』(阿部勲)があります。句会や大会に出ている人には目的が合いそうですが、比べる表には入れていません。章立ては、書店や図書館で確かめてから選ぶと安心です。
目次を見るときの確認表
書店や図書館で本を手に取ったら、次の項目が目次や本文にあるかを確かめます。目次が公開されていない本は、ここで見比べます。
確認表川柳の入門書の目次を読む確認表
-
観察:日常のしぐさや出来事から題材を見つける方法が書かれているか
-
題詠:課題(お題)で作るときの考え方や、課題吟の例があるか
-
自由吟(雑詠):題のない句の作り方も扱っているか
-
言葉の省略:説明の言葉を削る、気持ちを言わずに伝える方法があるか
-
推敲:初案と直した案を並べ、直した理由を説明しているか
-
表記:助詞、句の止め方、漢字とかなの使い分けを扱っているか
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例句の役割:例句が「よい句の見本」だけか、「直す前と後」も載っているか
-
練習:読者が試す課題やクイズがあるか
-
版:改訂版・新版の違い、品切れかどうか
全部がそろっていなくてもかまいません。自分が一番困っている項目が、目次の見出しに入っている本を選ぶと、読みっぱなしになりにくくなります。
題詠と雑詠の課題・解説があるかを確かめる
川柳の句会や大会では、題(課題)を出して句を募る題詠がよく行われます。題詠を学びたい人は、本の中で題詠と自由吟が分けて扱われているかを確かめます。
上の7冊のうち、題詠を扱うことがはっきりしているのは、第3章で雑詠(自由吟)と題詠(課題吟)の実践を扱う『添削から学ぶ川柳上達法』と、課題別に入選句を集めた『川柳歳事記 六』です。前者は直し方を、後者はほかの人がどう詠んだかを見る本で、役割が違います。ほかの本で題詠をどこまで扱っているかは、目次で確かめてください。
お題の語を入れるかどうか、題からどこまで離れてよいかといった題詠の手順そのものは、お題のある川柳の作り方で、架空のお題を使って説明しています。
添削例は、自分の句に当てはまる所だけ採る
添削例の本を読むときは、添削後の句を「正解」として覚えるより、何を、なぜ変えたかを読み取ります。次の順に読むと、自分の句に使える手がかりが残ります。
手順添削例の読み方
- 添削後の句を手で隠し、原句だけを読んで、どこが気になるかを自分で考えます。
- 添削後の句と比べ、変わった語に印を付けます。
- 変えた理由を、「説明の言葉を削った」「語順を変えた」「助詞を替えた」「動詞を替えた」「題に寄せた」などの言葉で一行にまとめます。
- 自分の句に同じ問題があるかを確かめ、あれば同じ種類の直し方を試します。
- 納得できない添削は、「保留」として理由と一緒に書き留めます。作者が何を詠みたかったかによって、添削が合わない場合もあるからです。
添削は、添削者の好みや流儀も反映します。複数の本や選者の考え方に触れると、どの直し方が自分の句に合うかを選べるようになります。
説明的な句を、一つのお題で見直す練習
本で読んだことは、自分の句で一度試すと身につきます。ここでは架空のお題「窓」で、説明的な初案を直す例を示します。
作例場面メモ
内見で、窓からの眺めが気に入って部屋を決めた。住み始めてみると、外から部屋の中が見えるのが気になり、昼もカーテンを閉めている。
気持ちの説明から、その後の姿へ
初案
作例・川柳初案
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 眺めいい | ながめいい | 5音 |
| 窓のある部屋 | まどのあるへや | 7音 |
| うれしいな | うれしいな | 5音 |
合計17音(5・7・5)/川柳の基準どおり
推敲案
作例・川柳推敲案
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 惚れた窓 | ほれたまど | 5音 |
| 住めばカーテン | すめばかーてん | 7音 |
| 閉めたまま | しめたまま | 5音 |
合計17音(5・7・5)/川柳の基準どおり
変更の理由
- 初案は「うれしいな」で気持ちを言い切り、眺めのいい窓がある、という説明で終わっています。読む人が見つけるものがありません。
- 場面メモの「その後」に目を向けると、眺めで選んだ窓を、住んでからは閉めているという人の姿が見つかりました。気に入った理由と実際の暮らしのずれが、この句の発見です。
- 「住めば」の一語で時間の流れを示し、最後に「閉めたまま」を置いて、ずれが句の終わりで分かるようにしました。
- 初案の喜びをそのまま詠みたいなら、「うれしい」と言わずに、窓辺で何をしたかを書く別の方向もあります。
四週間の練習計画
本を一冊決めたら、次のように、読む章と自分の句でやることを組み合わせます。章の名前は本によって違うので、近い内容の部分を当てはめてください。
| 週 | 本で読む部分 | 自分の句でやること |
|---|---|---|
| 1週目 | 総合入門書の「題材」「作り方」に当たる章 | 一週間、人のしぐさや言い間違いなど、気づいたことを毎日一つメモする |
| 2週目 | 題詠・課題吟を扱う章、または課題別の句集の一つの題 | お題を一つ決め、物・たとえ・行動の三方向で場面を選び、三句作る |
| 3週目 | 文法・表記の章(助詞、止め方、リズム) | 三句のうち一句について、助詞か止め方を替えた案を二つ作り、声に出して比べる |
| 4週目 | 添削例、または推敲を扱う章 | 上の「添削例の読み方」の順で二例を読み、自分の句に当てはまる直し方を一つ試す。初案と推敲案を並べて保存する |
一冊を通読してから作り始める必要はありません。一週ごとに一つの章と一つの作業を組み合わせると、読んだことを自分の句で確かめられます。説明の言葉、助詞と語順、字余りの直し方を作例で見たい場合は、川柳の推敲のやり方が使えます。
本より、無料の入門や個別の指導が向く場合
本を買う前に、無料で読める入門から始めることもできます。
- 新葉館出版「川柳入門講座」(web版川柳入門):同社サイトで読める入門講座で、「難しいことは考えず、まずは作る」「リズムを味方につけよう」「課題のある川柳を作る心構え」「読み手が理解できる川柳を作る」「川柳のネタ、題材について」などの回が並んでいます。
- 福岡大学「川柳の作り方」:同大学が主催する全国高校生川柳コンクールの案内ページで、口語・現代仮名遣いで詠むこと、句のどこかに人間を登場させること、詰め込みすぎず説明しすぎないこと、声に出して推敲することなどを説明しています。高校生向けの案内ですが、初めての人が基本を確かめるのにも読めます。
- 図書館:入門書は、購入前に図書館で目次と例句の量を確かめられます。品切れの本や、版の古い本を確かめるのにも便利です。
一方、本ではかなわないこともあります。本の添削例は、ほかの人の句への添削です。自分の句がどう読まれるか、自分の句をどう直せばよいかを知りたいときは、句会に参加するか、川柳に対応した添削や講座を選びます(川柳の添削の受け方)。最初の一句の作り方そのものを無料で確かめたい場合は、川柳の作り方から始められます。
目的別の選び方
| 今の困りごと | まず手に取る候補 | 次に組み合わせる候補 |
|---|---|---|
| 川柳が何かから知りたい | 川柳入門(佐藤美文)、またはweb版の入門講座 | 秀句の条件で、よい句を読む |
| 作り方を一冊で通して学びたい | 川柳の理論と実践 | 添削から学ぶ川柳上達法で直し方の実例を見る |
| 薄いテキストで要点だけ押さえたい | 川柳の教科書 スピードマスター | 文法力の本で言葉の選び方を補う |
| 説明っぽさ、助詞や止め方に迷う | よい句をつくるための川柳文法力 | 添削から学ぶ川柳上達法 |
| 題詠の句を作る機会がある | 添削から学ぶ川柳上達法(題詠の実践の章) | 川柳歳事記で同じ題の入選句を見る |