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学び方・選び方

詩の書き方を学ぶ本|創作入門・詩人の考え方・鑑賞を目的別に選ぶ

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この記事の答え

詩の本は、書くことの意味や進め方を説く本、詩人の考え方を聞く本、詩を読み解く本、課題で練習する本で役割が違います。題名に「詩を書く」とあっても練習帳とは限らないので、目次で選びます。

  • 何を書けばいいか分からない、書く理由を考えたい → 創作の入口を説く本や、詩人のインタビュー
  • どんな詩があるのか知らない、自分の詩が狭い気がする → 詩を選んで読み解く鑑賞の本
  • 手を動かす課題がほしい → 章末に課題がある本。ただし詩向けかどうかを確かめる
目次

詩の書き方を本で学ぼうとすると、詩集、詩人のエッセイ、詩の入門書、文章教室の本が同じ棚に並んでいて、どれが「書き方の本」なのか分かりにくいものです。題名に「詩を書く」とあっても、手順を教える本とは限りません。この記事では、詩の本の役割を目次で見分ける方法を示し、四冊を目的別に比べます。最後に、本を読みながら自分の素材で一篇を作る練習を付けます。

詩の本は「何を受け取る本か」で四つに分ける

詩を学ぶ本は、読者が受け取るものによって、おおまかに四つの役割に分かれます。

本の役割 受け取れるもの 受け取りにくいもの 向く悩み
創作の入口を説く本 詩を書く意味、書くまでの心の動き、書き始め方の考え方 一行ずつの直し方、課題の量 何を書けばいいか分からない。書く理由がほしい
詩人の考え方を聞く本(インタビュー・エッセイ) 実際に書いている人が、何を見て、どう言葉にしているか 読者が順に試せる手順 自分の詩が小さくまとまっている気がする
詩を読み解く本(鑑賞) いろいろな詩と、その読み方 自分の詩への助言 どんな詩があるのか知らない。読む力をつけたい
課題付きの練習帳 章ごとの課題と、手を動かす時間 詩人の背景や、詩を読む楽しみ 読むだけで終わってしまう

一冊がきれいに一つの役割に収まるとは限りません。創作の入口を説く本に詩の鑑賞が入っていたり、インタビューの本に詩が収録されていたりします。大事なのは、今の自分の悩みに対して、その本のどの部分が使えるかを見分けることです。

目次の言葉で、本の役割を見分ける

本の役割は、題名より目次に表れます。書店や出版社のページ、書誌データベースで目次を開き、次の手がかりを探します。

目次の手がかり 考えられる役割 確かめること
「書く」「直す」「言葉を選ぶ」など、作業を表す見出し 創作の入口・練習 見出しの中に、読者が試す課題があるか
詩の題と詩人の名前が並ぶ 鑑賞 解説がどのくらい付いているか。収録詩だけの詩集か
語られた内容の要約のような見出し、「インタビュー」の語 詩人の考え方 手順の説明があるか、語りが中心か
「練習問題」「課題」「ワーク」が章ごとにある 課題付きの練習帳 課題が詩向けか、散文(小説)向けか

ただし、目次の言葉も見たままに受け取らないでください。たとえば後で紹介する『詩のこころを読む』の目次には「練習問題」という言葉が出てきますが、これは課題ではなく、取り上げられている詩の題です。言葉が見出しなのか、作品の題なのかまで確かめると、取り違えを防げます。

目次で判断がつかない場合は、出版社のページの試し読みや、図書館で実物の最初の章と最後の章を開いて確かめます。

四冊を、目的別に比べる

四冊を比べます。順位ではなく、どの悩みに向くかで並べています。

書名 主な内容 向く悩み 向かない悩み
詩を書くってどんなこと? こころの声を言葉にする(若松英輔、平凡社) まだ詩を書いていない読者との対話の形で、詩を書く意味とプロセスを伝える本。目次に「詩を書く」「詩を書く2」「詩を読む」「詩を贈る」など 書きたい気持ちはあるが、何を書けばいいか分からない 改行や比喩の技法を、一つずつ練習したい
詩を書くということ 日常と宇宙と(谷川俊太郎、PHP文庫) 生い立ちから詩作の裏側まで語ったインタビューと、11作品の収録。内容の項目に「詩が生まれる瞬間」「詩と日常生活」など 詩人が日常の何から詩を書くのかを知りたい 手順どおりに課題をこなしたい
詩のこころを読む(茨木のり子、岩波ジュニア新書) 目次は「生まれて」「恋唄」「生きるじたばた」「峠」「別れ」の五章で、各章に多くの詩人の詩の題が並ぶ どんな詩があるのか知りたい。自分の詩の幅を広げたい 自分の詩の書き方を直接教わりたい
文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室(フィルムアート社) 小説を書く人向けの手引書で、各章末に練習問題、付録に合評会。章に「自分の文のひびき」「繰り返し表現」など 言葉の音や反復を、課題で手を動かして確かめたい 詩の形式(改行や連)を学びたい。詩向けの本ではない

詩を書くってどんなこと? こころの声を言葉にする

『詩を書くってどんなこと? こころの声を言葉にする』は、平凡社の「中学生の質問箱」の一冊で、四六判232ページ、2019年3月の刊行です。詩を書くことは特別なことではないとし、まだ詩を書いていない読者との対話の形で、書く意味とプロセスを伝えます。目次は「詩と出会う」から始まり、「詩を書く」「詩を書く2」「詩を読む」を経て、最終章が「詩を贈る」、巻末にこれから詩を書く人へのブックリストがあります。

書く前の「なぜ書くのか」「何が詩になるのか」に時間を使いたい人に向きます。改行や比喩などの技法を項目ごとに練習したい場合は、中身を確かめてから選ぶと安心です。

詩を書くということ 日常と宇宙と

『詩を書くということ 日常と宇宙と』は、2025年4月に発売されたPHP文庫です。谷川俊太郎が生い立ちから詩作の裏側までを語ったインタビューと、「かっぱ」「生きる」を含む11作品を収録しています。NHK BSの番組「100年インタビュー」で語られた言葉を書籍化したものです。

題名に「詩を書く」とありますが、読者が手順どおりに書いて一篇を完成させる練習帳ではありません。一人の詩人が日常の何に目を留め、どう言葉にしてきたかを聞く本として使うと、目的とずれません。

詩のこころを読む

岩波ジュニア新書の一冊で、1979年刊、新書判224ページです。五つの章に、それぞれ多くの詩人の詩の題が並んでいます。詩を書く手順の本ではなく、いろいろな詩を読み、その読み方に触れる本です。

自分の書く詩がいつも同じ調子になってしまう人が、詩の幅を知るために使えます。刊行から年数がたっているので、手に入れ方は書店や図書館で確かめてください。

文体の舵をとれ

四六判256ページ、2021年8月発売の、小説を書く人に向けた手引書です。各章の末尾に練習問題があり、付録に合評会の進め方が収められています。出版社のページで、ためし読みも公開されています。

詩の本ではありません。ここで比べたのは、課題付きの練習帳とはどういう本かを示す例としてです。「自分の文のひびき」「繰り返し表現」の章のように、言葉の音や反復を課題で確かめる部分は、詩を書く人にも参考になる可能性がありますが、改行や連といった詩の形式は扱っていないと考えて選んでください。

自由詩・散文詩・改行・比喩・推敲の扱いを照らし合わせる

自分が学びたい項目が、その本に入っているかを目次で照らし合わせます。次の表は、上の四冊の目次の見出しに、それぞれの項目が出ているかを照らし合わせたものです。「—」は見出しに出ていない項目で、本文で触れている場合もあります。

学びたい項目 詩を書くってどんなこと? 詩を書くということ 詩のこころを読む 文体の舵をとれ
書く理由・題材の見つけ方 章題にあり(詩と出会う、詩情とは何か) 項目にあり(詩が生まれる瞬間、詩と日常生活) — 対象外(小説)
いろいろな詩を読む 章題にあり(詩を読む) 収録詩11作品 中心(五章に多くの詩) 対象外(実例は小説などの散文の名文)
言葉の音・反復 — — — 章題にあり(文のひびき、繰り返し表現)
改行・連・散文詩 — — — 扱いなし(小説向け)
比喩・推敲 — — — —(付録に合評会)
読者が試す課題 — — — 各章末に練習問題

表を見ると、改行・連・散文詩・比喩を項目として練習する本は、この四冊の目次の見出しには見当たりません。こうした技法は、本で考え方をつかんだうえで、自分の詩で一つずつ試してみてください。改行と連の切り方は詩の改行と連の分け方、改行に頼らない形は散文詩の書き方、書いた詩の直し方は詩の推敲のやり方で、それぞれ作例を使って扱っています。

本を読みながら、自分の素材で一篇を作る

本を読んで終わりにしないために、読んだ日に一つ、自分の素材で短い詩を作ります。本の言葉を写したり、収録詩をまねたりするのではなく、自分が見たものから始めるのがこの練習のポイントです。

手順自分の素材で一篇を作る手順(30分)

  1. 素材を一つ決めて、見たことを五つ書く(10分)。今日見た物を一つ選び、色・形・音・場所・時間など、目で確かめられることだけを箇条書きにします。気持ちを表す言葉は、最後に一つだけ別に書き、詩の中には入れないでおきます。
  2. 段落で書く(5分)。五つのメモを、改行せずにつながった文章にします。
  3. 同じ内容を行分けで書く(10分)。どこで改行するか、どこで連を分けるかを決めながら書き直します。段落にはなかった一行が生まれたら、残してかまいません。
  4. 二つを声に出して読み比べる(5分)。どちらのほうが、見たものがはっきり立ち上がるか。止まって読みたい箇所はどこか。気づいたことを一行メモします。

作例:同じ素材を、段落と行分けの二案にする

この記事のために作った作例です。素材は「夜中に開けた冷蔵庫の明かり」です。

作例素材メモ

・夜中の二時、水を飲みに台所へ行った
・冷蔵庫を開けると、中だけが明るい
・卵が三つと、昨日の煮物
・扉を閉めると、台所はまた暗い
・明かりが消えるときに、音はしない
(気持ち:自分だけが起きている心細さ……この言葉は詩に入れない)

作例案1:段落で書く

夜中の二時に水を飲みに起きて、冷蔵庫を開けた。台所は暗いのに、冷蔵庫の中だけが明るい。卵が三つと、昨日の煮物が並んでいる。扉を閉めると、台所はまた暗くなった。明かりが消えるときには、音がしない。

作例・詩案2:行分けで書く

夜中の二時
冷蔵庫をあけると
そこだけが明るい

卵が三つ
昨日の煮物
みんな起きていた

扉を閉める
明かりは
音を立てずに消える

二つを比べると、違いがはっきりします。

比べる点 案1 段落 案2 行分け
読む速さ 出来事の順に、一定の速さで進む 連の空きで止まり、「そこだけが明るい」の後に間ができる
生まれた一行 なし 「みんな起きていた」。並べた物を見ているうちに出てきた一行
気持ちの伝わり方 説明の「台所は暗いのに」で場面を説明している 説明の語がなく、卵や煮物が「起きていた」ことで、ひとりの夜が伝わる
残る課題 段落のまま散文詩として磨く道もある 「明かりは」の一語だけの行が効いているか、声に出して確かめる

どちらかが正解というわけではありません。段落の形のまま、音や言葉の密度を整えて散文詩にする道もあります。この練習で大事なのは、同じ素材でも形を変えると、読まれ方が変わると自分の手で確かめることです。

一か所だけ直す

二案を比べたら、一か所だけ直してみます。

最終連の一語だけの行を見直す

行分け案の最終連

作例・詩最終連(直す前)

扉を閉める
明かりは
音を立てずに消える

直した最終連

作例・詩最終連(直した後)

扉を閉める
明かりは消えるとき
音を立てずに消える
何も言わない

変更の理由

  • 「音を立てずに消える」は、素材メモをそのまま写した説明に近い行でした。「何も言わない」にすると、二連目の「起きていた」とつながり、冷蔵庫の中の物と明かりが、同じように人のふるまいで見えてきます。
  • 「明かりは」の一語だけの行は、間としては効いていましたが、直した形では「明かりは消えるとき」と一行にまとめ、最終行の「何も言わない」を一行で立たせています。
  • 人に見立てる表現が続くと甘くなる場合もあります。元の「音を立てずに消える」のほうが、冷たい台所の感じが残ると考えるなら、直さない選択もあります。

この練習で一篇の形が見えたら、次は本で読んだ考え方を手がかりに、題材選びから一篇を仕上げるところまで進めます。

本のあとに、詩集・詩誌・講評へ学びを広げる

入門の本を一冊読んだあとは、目的に合わせて次の学び方を選びます。

次にしたいこと 選ぶもの 使い方
好きな詩人を見つけたい 鑑賞の本で出会った詩人の詩集 一冊を通して読み、並び順や連の切り方にも目を向ける
いま書かれている詩を読みたい 詩誌(詩の雑誌) 特集や投稿欄の入選作を読み、自分の詩と何が違うかをメモする
自分の詩への返答がほしい 講評・感想の依頼、詩の会の合評 何を聞きたいかを決めてから頼む
費用をかけずに続けたい 図書館 刊行から年数のたった本や、品切れの本も読めることがある

本や詩誌の投稿欄は、他人の詩を読む教材にはなりますが、自分の詩への返答は返ってきません。自分の詩がどう読まれたかを知りたくなったら、詩の添削・講評はどこに頼む?で、公開選評と個別の講評の違い、依頼文の書き方を確かめてください。短歌の入門書も比べたい場合は短歌のおすすめ入門書があります。

目的別に一冊を選ぶ

ここまでの比較から、目的別の選び方をまとめます。どの本も、書店や図書館で目次と最初の章を開いてから決めてください。

  • 詩を書く理由や入口を、対話を読むように考えたい人には、『詩を書くってどんなこと?』。章題が「詩と出会う」から「詩を贈る」まで、書く前から書いたあとまでを順にたどる構成です。
  • 一人の詩人が日常の何から詩を書いてきたかを聞きたい人には、『詩を書くということ』。インタビューと収録詩の本として読むと、目的に合います。
  • 詩の幅を知りたい人には、『詩のこころを読む』。手に入りにくい場合は図書館も候補です。