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詩

詩の書き方|感覚と言葉から自由詩を一篇作る初心者向けの手順

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この記事の答え

自由詩は音数を自由にできる代わりに、どの物を見せ、どの言葉を残し、どこで行を切り、どこで終えるかを自分で選ぶ詩です。

  • 気持ちの名前から書き始めず、一つの場面で見えた物・聞こえた音・触れた感じ・自分の動きを先にメモする
  • メモから「その場面にしかない細部」を三つほど選び、最初と最後で視線や動作が動くように並べる
  • 行と連は仮に置き、声に出して読む。気持ちを説明し直した行は、削るか、像や動作に置き換える
目次

詩を書こうとすると、「さびしい」「うれしい」と気持ちをそのまま書いて終わるか、ふつうの文章を途中で改行しただけになってしまう。この記事は、そこから一篇の詩へ進むための手順です。架空の場面「誰もいない食卓」を使い、感覚のメモから言葉を選び、行と連を置き、声に出して直すまでを、一篇の詩で通して見せます。読み終えたら、同じ手順で自分の場面から短い自由詩を一篇書けます。

自由詩で自由なのは形。言葉と順番は自分で選ぶ

自由詩は、辞典では「伝統的な詩の韻律・形式にとらわれず、自由な内容や形式で作る詩」(デジタル大辞泉)と説明されています。日本では明治の終わり(1907年)の川路柳虹の口語詩から始まったとされ、五七調などの定型の音数によらない近現代の詩を指します。辞典によっては、現在は「現代詩」と呼ぶのが一般的だと補足しています。

形が決まっていないぶん、定型の詩なら形が決めてくれることを、書き手が自分で決めることになります。

決めること 短歌・俳句など定型の詩 自由詩
長さ 五七五七七、五七五などの音数で決まる 何行でもよい。一篇の長さを自分で決める
行の区切り 句の切れ目がおおよその区切りになる どこで改行するか、どこで連を分けるかを自分で決める
終わり方 最後の句で終わる どの行で終えるかを自分で決める
調子 決まった音数が調子を作る 語の選び方、行の長さ、間の置き方で調子を作る

つまり自由詩の「自由」は、何を書いてもよいという意味より、選ぶことが多いという意味に近いものです。選ばないまま書くと、思ったことを順に書いて改行した文章になります。それも詩の一つの形ですが、読者が受け取るのは出来事の報告と作者の感想だけになりがちです。

この記事では、選ぶ手がかりとして「場面の物と感覚」を使います。気持ちを直接書く詩もありますし、詩に一つの正しい作り方があるわけではありません。ただ、最初の一篇では、感覚から入るほうが自分の言葉が見つかりやすく、読み直したときに直す箇所も分かりやすくなります。

一篇を作る流れを先に見ておく

全体の流れは五つです。初めてなら一時間ほどを目安にしてください。

手順感覚から自由詩を一篇作る手順

  1. 場面を一つ決める(5分)。「家族」「孤独」のようなテーマではなく、「夜十時の台所」のように、いつ・どこが一言で言える場面にします。
  2. 物と感覚をメモする(10分)。見えた物、聞こえた音、触れた感じ、におい、自分の動きを、文にせず短く書き出します。
  3. 残す言葉を選び、並べる順を決める(10分)。メモから像(読んだ人の目や耳に浮かぶ具体的な物・音・感触)になる細部を三つほど選び、最初と最後で何が動くかを決めます。
  4. 行と連を仮に置く(10分)。一行に一つの像か動作を置き、視線が移るところで連を分けます。
  5. 声に出して読み、説明に戻った行を直す(15分〜)。気持ちの名前や言い直しの行に印を付け、削るか置き換えます。

場面を一つ決め、物と感覚をメモする

最初に決めるのは、書きたい気持ちではなく場面です。「さびしさを書きたい」から始めると、さびしいという言葉以外が出てきません。「夜遅く帰ったら、台所に夕飯が残っていた」という場面なら、そこにある物や音から書き始められます。

場面を選ぶときの目安は三つです。

  • 場所が一か所で、時間が短い(数分から十数分)
  • 自分がその場で何かをしている(ただ思い出すだけの場面より書きやすい)
  • 細かいところまで思い出せる(今日か昨日の場面だと楽です)

場面が決まったら、メモを取ります。ここでは架空の場面を一つ用意しました。

作例感覚メモ「誰もいない食卓」(架空の場面)

場面:平日の夜十時すぎ。帰ると家族はもう寝ていて、台所の明かりだけがついている。
見える:ラップをかけた皿(焼き鮭、ほうれん草)。ラップの内側に細かい水の粒。椅子が一脚だけ少し引いてある。箸が箸置きにそろえてある。冷蔵庫に「みそ汁は鍋」のメモ。
聞こえる:冷蔵庫の低い音。電子レンジの中で皿が回る音。二階の床が一度だけきしむ。
触れる:皿の縁が冷たい。ラップをはがすと指に張りつく。
におい:焼き魚。
自分の動き:鞄を床に置く。皿を電子レンジに入れる。立ったまま待つ。鳴る前に扉を開ける。
気持ち:さびしい。ありがたい。申し訳ない。少しほっとする。

メモで気をつけるのは、文にしないことと、自分の動きも書くことです。文にすると「家に帰ると家族は寝ていた」のように説明の形になり、細部が抜け落ちます。自分の動きは、あとで一篇の終わり方を決めるときに役立ちます。

気持ちを書いてもかまいません。ただし、最後の欄にまとめて書きます。気持ちは詩の材料ではなく、どの像を選ぶかの基準として使うからです。

一つの物から連想を広げる方法や、記憶とのつなげ方など、題材そのものの探し方は詩の題材とイメージの見つけ方で扱っています。

説明の言葉と、像になる言葉を分けて選ぶ

メモができたら、どの言葉を詩に残すかを選びます。メモの言葉は、だいたい三つに分けられます。

  • 気持ちの名前:さびしい、ありがたい、など
  • 事情の説明:家族はもう寝ていた、夕飯が残っていた、など
  • 像:目に見え、耳に聞こえ、手に触れる細部。ラップの内側の水の粒、など

詩の中心にするのは像です。気持ちの名前や事情の説明は、読者がすでに知っている言葉なので、書いた瞬間に意味が決まってしまいます。像は、読者が自分で場面を思い浮かべ、そこから気持ちを受け取る余地を残します。

作例のメモを、この三つで仕分けると次のようになります。

メモの言葉 種類 詩での扱い
さびしい/ありがたい/申し訳ない 気持ちの名前 本文には書かない。像から伝わるかを読み直しで確かめる
家族はもう寝ている 事情の説明 一行で言わず、自分の動き(音を立てない)で伝える
ラップの内側の水の粒 像 残す。少し前まで温かかったこと、作ってから時間がたったことが分かる
少し引いてある椅子 像 残す。誰かが自分のために用意したことが分かる
冷蔵庫の「みそ汁は鍋」のメモ 像 外す。家族の気づかいを言う点で椅子と重なるので、一つに絞る
電子レンジの中で回る皿 像と時間 残す。待っている時間の長さを見せられる
鳴る前に扉を開ける 自分の動き 残す。最後の行の候補

選ぶときの基準は三つです。

  1. その場面にしかない細部か。「温かい料理」より「ラップの内側の水の粒」のほうが、この夜のこの食卓にしかありません。
  2. ほかの像と同じことを言っていないか。椅子とメモは、どちらも「家族が自分のことを考えてくれた」を伝えます。両方置くと、同じことを二度言うことになります。
  3. 最初と最後で何かが動くか。短い詩でも、最初の行と最後の行で、視線・時間・自分の動作のどれかが変わっていると、読者は一篇を通り抜けた感じを持てます。作例では「見る(水の粒・椅子)→待つ(回る皿)→動く(扉を開ける)」と動かすことにしました。

言葉そのものは、ふだん自分が使う語のままでかまいません。詩らしくしようとして「哀愁」「刹那」のような語に置き換えると、かえって場面が遠くなります。ひらがなで書くか漢字で書くか(「わたし」「私」)も、目で見たときの印象を決める選択の一つです。

説明を改行した版と、像をつないだ版を比べる

同じ場面から作った二つの初稿を並べます。一つ目は、思ったことを順に書いて改行した版です。

作例・詩初稿A:説明をそのまま改行した版

夜遅く家に帰ると
家族はもうみんな寝ていて
食卓にはわたしの分の夕飯が
ラップをかけて置いてあった
さびしいけれど
ありがたいと思った

二つ目は、選んだ像を並べた版です。

作例・詩初稿B:像をつないだ版

ラップの内側に
水の粒がならんでいる

椅子が一脚だけ
引いてある

電子レンジの中で
皿がゆっくり回る
誰も見ていない一分を
わたしだけが見ている

家族のやさしさが
しずかに胸にしみる

比べる点 初稿A(説明の改行) 初稿B(像をつないだ版)
読者が受け取るもの 出来事の報告と、作者の結論 水の粒・椅子・回る皿の三つの像
気持ち 「さびしい」「ありがたい」と書いてあり、読者が考える余地がない 第三連までは書いていない。椅子から、用意してくれた人の手が想像できる
改行 文の途中で切っただけ。つなげると一つの文章に戻る 一行に一つの像か動き。連が変わると視線が移る
動き 帰る→思う 見る→待つ。ただし最終連で気持ちの説明に戻っている

初稿Aを読むと、場面の事情はよく分かります。けれども、つなげて書けば日記の一文と変わりません。初稿Bは、像を並べたことで場面が目に浮かぶようになりました。一方で、最後の連でまた「やさしさ」「胸にしみる」と気持ちを言ってしまっています。像を並べたあとで最後に気持ちをまとめたくなるのは自然なことです。ここは次の読み直しで直します。

なお、初稿Aのように気持ちをはっきり言う書き方が、いつも悪いわけではありません。像を十分に重ねたあと、一度だけ短く言い切ると強く響く詩もあります。最初の一篇では、まず像だけで書いてみて、言い切る一行が本当に必要かを読み直しで判断するほうが、選択の幅が広がります。

行と連を仮に置く

行と連は、最初から正解を決めなくてかまいません。初稿では次の三つを目安に仮に置きます。

  • 一行に、像か動作を一つ。二つ入っていたら分けてみます。
  • 視線・時間・場所が変わるところで連を分ける。作例では「ラップ」「椅子」「電子レンジ」と視線が移るところで分けています。
  • 迷ったら短く切っておく。つなげるのは読み直しのときでもできます。

同じ言葉でも、行の切り方で読む速さが変わります。

作例・詩一行で書いた場合

電子レンジの中で皿がゆっくり回るのを立ったまま見ている

作例・詩三行に分けた場合

電子レンジの中で
皿がゆっくり回るのを
立ったまま見ている

一行で書くと、一つの出来事として一息に読み流されます。三行に分けると、行が変わるたびに小さな間ができて、皿が回る時間が少し長く感じられます。待っている時間を見せたいなら三行、場面をすばやく通り過ぎたいなら一行、というように、何を見せたいかで選びます。どちらが正しいということはありません。

声に出して読み、説明に戻った行を直す

初稿を書き終えたら、声に出して読みます。小さな声でかまいません。目で読むと気づかない言い直しや、息が詰まる行が、声に出すと分かります。

確認表読み直しで印を付ける行

  • 気持ちの名前(さびしい・うれしい・切ない・やさしさ など)が出てくる行
  • 「〜と思った」「〜と感じた」「〜のだ」で終わる行
  • 前の行で見せたことを、別の言葉で言い直している行
  • 最後の連が、感想・まとめ・教訓になっていないか
  • 誰の物か、何をしているのかが分からず、像が浮かばない行
  • 声に出すと息が続かない行、逆にどこで切っても同じに聞こえる行

作例の初稿Bでは、三か所に印が付きました。いちばん大きいのは最終連です。

最終連を、気持ちの説明から動作へ

初稿B

家族のやさしさが
しずかに胸にしみる

改稿

鳴る前に
扉を開ける

変更の理由

  • 「やさしさ」は、引いてある椅子がすでに見せていることの言い直しです。像のあとで意味を解説すると、読者が自分で受け取る前に答えを渡してしまいます。
  • 電子レンジが鳴ると、寝ている家族を起こしてしまう。だから鳴る前に扉を開ける。この一つの動作で、家族が眠っていること、それを気にかけている自分がいることが伝わります。
  • 「見る→待つ→動く」の最後の「動く」がここで決まり、一篇の動きが閉じました。

残りの二か所と、題名の変更をまとめます。

箇所 初稿B 改稿 変えた理由
第二連 椅子が一脚だけ/引いてある わたしの椅子だけ/少し引いてある 誰の椅子か分からないと、家族が用意したとは読めない。「少し」で、座りやすいように引いた手つきが見える
第三連 誰も見ていない一分を/わたしだけが見ている 立ったまま見ている 「誰も見ていない」は、一人で待っていることを作者が指さして言っている。座らずに立っている姿勢だけで、落ち着かなさを残した。この二行を手放したくないなら、ほかの行を削って残す選択もある
題名 なし 十時の食卓 時刻を題に置くと、本文で「夜遅く」と説明しなくて済む

改稿した一篇は次のとおりです。

作例・詩改稿:十時の食卓

ラップの内側に
水の粒がならんでいる

わたしの椅子だけ
少し引いてある

電子レンジの中で
皿がゆっくり回るのを
立ったまま見ている

鳴る前に
扉を開ける

改稿では「さびしい」も「ありがたい」も書いていません。それでも、引かれた椅子と、鳴る前に開ける扉のあいだに、メモの最後に書いた気持ちが置かれています。メモの気持ちの欄は、こうしてどの像と動作を選ぶかの基準として使われました。

読み直しで変えなくてよいものもあります。行の長さがそろっていない、文として途中で終わっている、句読点がない、といった点は、自由詩では問題になりません。直すのは、意味を言い直している行と、像が浮かばない行に絞ります。

一篇全体を、抽象語・比喩・改行の順にさらに細かく見直したくなったら、詩の推敲のやり方で手順を確認できます。

もっと短い詩にするときは、像を一つか二つに絞る

三〜五行ほどの短い詩も、同じメモから作れます。短い詩では、像の数をさらに絞り、最後の行にいちばん強い像か動作を置きます。

作例・詩作例:四行の詩

鳴る前に
電子レンジの扉を開ける
二階で
床が一度だけきしむ

この四行では、ラップも椅子も使っていません。残したのは「鳴る前に開ける」という自分の動作と、「二階の床のきしみ」という音だけです。家族を起こさないように気をつけたのに、二階で誰かが動いた。起こしてしまったのか、もともと起きていたのか、書かずに終えています。改稿では使わなかったメモの音の欄から、最後の行を拾いました。

短い詩を作るときの目安です。

  • 像は一つか二つ。同じ場面の中で、性質の違う感覚(見える物と聞こえる音など)を組み合わせると、短くても場面が立体的になる
  • 形容詞と副詞を一つずつ外して読んでみる。外しても像が残るなら外す
  • 最後の行で説明しない。読者が想像を続けられる像か動作で終える

短い詩は、短歌や俳句と同じくらいの長さになることもありますが、音数を数える必要はありません。その代わり、一行一行の切り方と最後の行の選び方が、全体の印象をほとんど決めます。

練習:自分の場面で一篇書く

練習感覚メモから一篇(50分ほど)

  1. 今日か昨日、自分が一人で何かをしていた場面を一つ選び、「いつ・どこで」を一行で書きます。
  2. 見える・聞こえる・触れる・におい・自分の動きの五つの欄に、短い言葉を三つずつまで書きます。文にしないでください。
  3. 気持ちの欄に、その場面で感じたことを一行だけ書きます。これは詩には入れません。
  4. メモから像を三つ、自分の動きを一つ選びます。気持ちの欄を見て、その気持ちが伝わりそうなものを選びます。
  5. 最後に置く行を先に決め、残りを「見る→待つ→動く」のように視線や動作が進む順に並べます。
  6. 一行に一つずつ書き、視線が変わるところで連を分けます。
  7. 声に出して読み、確認表に当てはまる行に印を付け、削るか像に置き換えます。

書き終えた詩が、改行しないほうが言葉の流れが生きると感じたら、段落の形で書く散文詩の書き方も試してみてください。同じ場面でも、改行を手放すと、文の長さや言葉のつながりで調子を作ることになります。

詩の書き方を本で体系的に学びたくなったら、詩人の考え方を読む本と、作り方を練習する本とでは目的が違います。自分が知りたいことに合わせた選び方は、詩の書き方を学ぶ本で比べています。