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発表・本作り

ペンネームの決め方|覚えやすさ・検索・公開範囲を確認する

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この記事の答え

ペンネームは、響きの好みだけでなく、読めるか・打てるか・探せるか・本名とつながらないかを確かめてから決めます。

  • 候補は型を変えて複数作り、声に出して名乗る。読みが一つに決まり、スマホで入力でき、表記の揺れが起きにくいものを残す
  • 同名・類似名は、検索エンジン・投稿サイト・SNS・図書館の検索で調べる。見つからなくても「誰も使っていない」「権利の問題がない」という保証にはならない
  • 本名の一部、誕生日、地域、私用のSNSのIDなど、名前の周りの公開情報から身元がつながらないかも点検する
目次

響きのよいペンネームは浮かんでも、「同じ名前の人がいたら」「本名とつながったら」と不安になって決めきれない。この記事では、架空の三つの候補を、読み・入力・検索・表記揺れ・本名との結び付きで比べ、決めるまでの手順を示します。最後に、公開前の確認リストと、名前を変えるときの整理の仕方もまとめます。作品の中の登場人物の名前については、小説のキャラクターの名前の付け方で扱っています。

使う場面と期間を先に決める

候補を考える前に、その名前をどこで、どれくらいの期間使うかを書き出します。使う場面が多く、期間が長いほど、点検の項目は増えます。

決めること 例 名前選びへの影響
使う場面 投稿サイト、SNS、公募への応募、同人誌の奥付、即売会での名乗り 声に出す場面があるなら言いやすさ、SNSで使うならIDとの一致も見る
使う期間 一作だけ試しに/何年も書き続ける 長く使うなら、同名の確認と表記の固定を丁寧にする
本名との距離 家族や職場には知られたくない/知られてもかまわない 知られたくないなら、名前の周りの公開情報まで点検する
ジャンルの幅 一つのジャンルだけ/小説と短歌など複数 名義を分けるか、一つにまとめるかを考える

たとえば「投稿サイトで連載し、SNSで更新を知らせ、いずれ新人賞にも応募したい。職場には知られたくない」という人なら、言いやすさ・SNSとの一致・同名の確認・本名との切り離しのすべてを点検します。

型を変えて候補を作る

候補は一つに絞り込む前に、型の違うものを複数作ると比べやすくなります。

型 例の作り方 向きやすいこと 気をつけること
名字+名前(漢字) 好きな植物や道具の漢字を名字に、短い名前を組み合わせる 落ち着いた印象。署名として収まりがよい 本名らしく見えるので、同名の一般の人と混同されやすい
名字+名前(かなを混ぜる) 名字は漢字、名前はひらがな 読みを示しやすい 名前のかなが一般的な語だと検索で埋もれやすい
一語・造語型 季節や天気の語を組み合わせる 覚えやすく、ほかと重なりにくいことがある 区切りや空白の有無で表記が揺れやすい

候補の材料は、好きな言葉、作品によく出てくるもの、響きの好きな音などから集めます。一方で、本名の一部、誕生日、出身地や住んでいる地域、最寄り駅、学校や勤務先、家族やペットの名前から作るのは避けます。知っている人が見れば、ペンネームから本人にたどり着けることがあるからです。

練習型を変えて候補を六つ作る(15分)

  1. 好きな言葉を十個書き出します(植物、天気、道具、色、音など)。個人情報につながる語は入れません。
  2. 上の表の三つの型で、二つずつ候補を作ります。
  3. 六つの候補を、それぞれ「〇〇と申します」「〇〇さんの新作」と声に出して言います。言いにくいもの、聞き取りにくいものに印を付けます。

架空の三候補を比べる

ここからは、静かな文芸寄りの短編を投稿サイトで発表し、SNSで更新を知らせ、いずれ新人賞にも応募したいという架空の書き手が、三つの候補を比べる例です。候補はこの記事のために作った架空の名前で、実在の人物を指すものではありません(同じ名前の人がいる可能性はあり、今後使われる可能性もあります)。

  • 候補A:榊 透子(さかき・とうこ)
  • 候補B:白樺 灯(しらかば・あかり/ともり)
  • 候補C:こよみ雨(こよみあめ)
確かめること 候補A 榊 透子 候補B 白樺 灯 候補C こよみ雨
読み 一つに決まる 「灯」が「あかり」「ともり」「ひ」と読めて一つに決まらない 一つに決まる。ただし「こよみ・あめ」と切るのか「こよみあめ」と続けて読むのかを示す必要がある
入力のしやすさ 「さかき」で「榊」が出るかを使う環境で確かめる。「とうこ」は「透子」以外の字が先に出ることがある 「しらかば」「あかり」で変換できる ひらがなと「雨」だけで入力しやすい
検索での見つかりやすさ 名字と名前の組み合わせで探しやすい。同名の一般の人がいる可能性はある 「白樺」は樹木の名前で、文学史の用語にも使われる語なので、検索結果が埋もれやすい 「こよみ」「雨」はどちらも一般的な語で、完全一致で探さないと埋もれやすい
表記揺れ 「榊透子」「榊 透子」の空白の有無 「白樺灯」「白樺あかり」とかなで書かれる可能性 「こよみ雨」「こよみ 雨」「暦雨」と揺れやすい
SNSのIDとの一致 sakaki_toko など。綴りの揺れ(toko/tohko)を決める必要がある shirakaba_akari など koyomiame など
本名との結び付き 本名のように見えるため、本名だと思われやすい(自分の本名と無関係なら問題は小さい) 低い 低い
作品との相性 静かな文芸作品と並べて違和感が少ない 叙情的な印象 柔らかく、短詩やエッセイにも使いやすい

比べた結果の判断

この書き手は、次のように判断しました。

  • 候補Bは「読みを一つに固定する」なら残す:名前を「ともり」と決め、プロフィールと作品ページに「白樺 灯(しらかば・ともり)」とふりがなを書く。それでも「白樺」で検索が埋もれる弱点は残る。
  • 候補Cは表記の規則を決めれば使える:空白を入れない「こよみ雨」を正式な表記と決め、SNSのIDも koyomiame にそろえる。読者が「こよみ 雨」と書いても見つけてもらえるよう、プロフィールに読みを書いておく。
  • 候補Aは最も迷いが少ない:読みも入力も安定し、名字と名前の組み合わせで探しやすい。同名の一般の人がいても不思議ではない形なので、検索で目立つ同名がいないかを確かめる。

最終的にこの書き手は、新人賞への応募も考えて、署名として収まりのよい候補Aを選び、SNSのIDは sakaki_toko に決めました。ただし、これは「静かな文芸作品」「職場に知られたくない」「応募も考える」という条件での判断です。短詩やエッセイを中心に、柔らかい印象で発表したい人なら、候補Cのほうが合います。どの型が正しいかではなく、自分の条件で弱点を許せるかで選びます。

同名・類似名を検索する

候補が二、三に絞れたら、使い始める前に同名や似た名前を探します。調べる場所と方法は次のとおりです。

手順同名・類似名の確かめ方

  1. 検索エンジンで、候補をダブルクォーテーション(" ")で囲んだ完全一致と、囲まない形の両方で検索する。空白を入れた形と入れない形、ひらがなの読み、ローマ字の綴りでも検索する。
  2. 使う予定の投稿サイトで、作者名やユーザー名を検索する。小説家になろうにはユーザー検索の機能がある。
  3. 使う予定のSNSで、表示名とIDの両方を検索する。IDが空いているかもここで確かめる。
  4. 書籍の著者として使われていないかを、国立国会図書館サーチや書店のサイトで著者名から探す。国立国会図書館サーチは、国立国会図書館と連携する各地の図書館の所蔵資料をまとめて検索でき、著者・編者で絞り込める。
  5. 見つかった同名・類似名について、ジャンル・活動の場・活動時期をメモする。

検索して同名や似た名前が見つかったとき、どう判断するかの目安です。

見つかったもの 考えること
同じジャンルで、同じ場(投稿サイト・SNS)で活動している同名 読者が取り違えやすいので、別の候補にするか、表記を変えることを考える
書籍の著者として出版されている同名 作品が混同される可能性が高いので、別の候補を優先する
ジャンルも活動の場も違う同名 混同は起きにくいが、検索で自分が見つけてもらいにくいことは考えておく
一字違いや読みが同じ類似名 意図せず似せたと受け取られないか、読者の目で確かめる
何も見つからない 使ってよいという保証ではない。検索に出ない活動や、今後使い始める人もいる

注意商標やなりすましが気になる場合

名前と同じ文字列が商標として登録されていないかは、特許庁などの情報を無料で検索できるJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)で調べられます。ただし、検索で見つかった・見つからなかったことだけで、その名前を使えるか、使えないかが決まるわけではありません。商標や、他人の名前と紛らわしいことによる問題について判断が必要な場合は、弁理士や弁護士などの専門家に相談してください。この記事では、法的な判断は扱いません。

本名や生活と切り離す公開情報を点検する

ペンネームで活動しても、名前の周りに出す情報から本名や生活がつながることがあります。検索して自分の本名が出てこないことは、身元が分からないことの保証にはなりません。点検するのは名前そのものより、名前と一緒に公開される情報です。

確認表名前の周りの公開情報を点検する

  • ペンネームに本名の一部(読み替え・並べ替えを含む)や誕生日、地域の名前が入っていない
  • 私用のSNSと、作者用のSNSで同じIDや似たIDを使っていない
  • 作者用のアカウントに、私用と同じメールアドレスや電話番号を登録した場合、知り合いのおすすめに表示される設定などになっていないかを確かめた
  • プロフィールに、学校・勤務先・最寄り駅・家族構成など、組み合わせると個人が絞り込める情報を書いていない
  • 投稿する写真に、位置情報や、住所・学校名が分かるものが写っていない
  • エッセイや作品のあとがきで、実際の地名や出来事を具体的に書きすぎていない
  • 投稿サイトのプロフィールで、公開される欄と非公開の欄の区別を確かめた(カクヨムのアカウント設定には、ペンネームのほか「公開プロフィール」と「非公開プロフィール」の欄がある)

どこまで切り離すかは、人によって違います。家族に知られても困らない人なら、ここまで厳しく点検する必要はありません。反対に、職場や家族に知られたくない理由がある人は、作品の内容(実在の人物や場所を書いたエッセイなど)からも身元が推測されないかを見直します。

投稿・応募・本で、名前の使い方を分ける

同じペンネームでも、使う場面によって、一緒に出す情報が変わります。

場面 使う名前 確かめること
投稿サイト ペンネーム 作品ごとに表示名を変えられるか、アカウント全体の名前とどう関係するか。複数アカウントの扱い
SNS ペンネーム(表示名)とID 投稿サイトの作者名とそろえているか。プロフィールに読みを書いたか
公募への応募 本名とペンネームの両方を主催者に提出する応募先がある 応募フォームや応募要項で、どの欄に何を書くか。発表時にどちらが公表されるか
同人誌・冊子 ペンネーム 奥付や頒布時の連絡先に、どの名前と連絡先を載せるか

投稿サイトについては、たとえば小説家になろうでは、作品設定の「作者名」で、特定の作品だけユーザ名と異なる名前を表示できます。ただしヘルプによると、別の作者名を設定しても、マイページや「同一作者の作品」には同じアカウントの作品が表示されます。名義を変えても、同じアカウントで書けば同じ人の作品だと分かる、ということです。

名義を完全に分けるために別のアカウントを作ろうと考える人もいますが、サイトによっては規約で禁止されています。カクヨムの利用規約は、一人が複数のアカウントを持つことを禁止しています。別名義で活動したい場合は、使うサイトの規約で、アカウントと名義の扱いを確かめてください。

公募への応募では、ペンネームで応募する場合も、主催者には本名や連絡先をあわせて伝える形になっていることがあります。たとえば集英社短編小説新人賞の応募フォームでは、本名・ふりがな・ペンネーム・ペンネームのかな・住所・電話番号・生年月日・職業・略歴・応募歴・メールアドレスなどがすべて必須の項目で、ペンネームがない場合は本名を書くよう案内されています。受賞や選考の結果を発表するときにどの名前が載るかは、賞ごとの応募要項や発表のページで確かめます。応募要項の項目を順に読む方法は小説新人賞の応募要項の読み方にまとめています。

名前を変えるときの整理

一度決めた名前を、あとから変えたくなることもあります。同名の書き手に気づいた、作風が変わった、本名に近すぎると感じた、などの理由です。変えることはできますが、その前に、旧名義で読んでくれていた読者や、応募中の作品との関係を整理しておきます。

手順ペンネームを変えるときの手順

  1. 旧名義を使っている場所をすべて書き出す(投稿サイト、SNS、個人サイト、応募中の公募、発行済みの冊子)。
  2. 旧名義とのつながりを読者に示すかどうかを決める。続けて読んでほしいなら、プロフィールに「旧名義:〇〇」と書く。切り離したい理由があるなら、書かない。
  3. 投稿サイトとSNSの表示名を変える。小説家になろうでは作者名を変えてもユーザIDは変わらないので、過去の作品へのリンクはそのまま使える。
  4. 応募中や選考中の作品がある場合は、主催者の要項や問い合わせ先で、名前の変更をどう伝えるかを確かめる。
  5. 発行済みの冊子など、変えられないものは記録として残し、今後の告知では新しい名前に統一する。

名前を変えたあとしばらくは、旧名義で検索してくる読者もいます。続けて読んでほしい場合は、旧名義のアカウントをすぐ削除せず、新しい名前への案内を残しておくと、読者が迷いません。

公開前の最終確認

最後に、決めた名前を使い始める前の確認をまとめます。

確認表ペンネームを使い始める前の確認リスト

  • 声に出して名乗り、他の人にも読んでもらって、読みが一つに決まることを確かめた
  • スマホとPCで入力し、変換できること、表示が崩れないことを確かめた
  • 正式な表記(漢字・かな・空白の有無)を一つに決め、メモに残した
  • 検索エンジン・投稿サイト・SNS・図書館の検索で同名と類似名を調べ、見つかったものをメモした
  • SNSのIDと投稿サイトの作者名をそろえた(または、そろえない理由を決めた)
  • 名前の周りの公開情報から、本名や生活がつながらないかを点検した
  • 応募するときに、本名とペンネームをどの欄に書くかを応募要項で確かめる予定を立てた

このリストのメモは、名前を変えるときや、別のサイトで活動を始めるときにも使えます。