都々逸の推敲のやり方|七七七五・句内の区切り・結びを見直す
この記事の答え
都々逸の推敲は、残したい内容を一文で決め直す→読みをかなで書いて七七七五を数える→句の中の区切りを声で確かめる→意味のつながりと結びを比べるの順に進めます。
- 音数が合っても、句の中の区切りが語の途中に来たり、三・四と四・三の揺れがなかったりすると、声に出したときに都々逸らしく響かない
- 同じ音数で言葉を置き換えた案を二つ以上作り、意味がどう変わるかを比べて選ぶ
- 字余りは、残すなら何のために長くしたかを説明できるときだけ残す
目次
都々逸を一篇作ってみたものの、声に出すとどこかつかえる、意味は通るのに締まらない、どこから直せばよいか分からない。この記事では、架空の初稿を一つ用意し、読みと音数、句の中の区切り、言葉の置き換え、結びの五音を順に見直します。直し方の違う三つの修正案を並べ、音数と意味がどう変わるかを示すので、読み終えたら自分の一篇に同じ順番で手を入れられます。
七七七五の数え方や、題材と対比の決め方から確かめたい場合は、先に都々逸の作り方を読んでおくと、この記事の手順が追いやすくなります。
直す順番を先に決めておく
推敲で迷いやすいのは、音数・意味・響きを一度に直そうとするときです。一か所を直すと別の句の音数がずれ、それを直すと意味が変わる、ということが起きます。次の順に、一つずつ確かめます。
手順都々逸を直す順番
- 残したい内容を一文で書く。何を一番伝えたかったかを決め直します。ここが決まらないと、どの案を選ぶかの基準がありません。
- 読みをかなで書き、七七七五を数える。字余り・字足らずの句に印を付けます。
- 句の中の区切りを確かめる。三・四/四・三/三・四/五で区切って声に出し、語の途中で切れていないかを見ます。
- 同じ音数で言葉を置き換えた案を作る。音数を合わせる案を二つ以上作り、意味の違いを比べます。
- 意味のつながりと調べを、声に出して確かめる。四句を続けて読み、説明に寄った言葉や、つかえる箇所を探します。
- 結びの五音を比べる。最後の五音を差し替えた案を並べ、何が残るかで選びます。
- 字余りを残すか決める。残すなら、その効果を説明できるかを確かめます。
- 公表する前に、自作であること・出典・募集規定を確認する。
見直す初稿
ここからは、次の架空の初稿を直していきます。別れたあと、預かっていた合鍵を返しに行った帰り道、という場面です。
作例・都々逸初稿:合鍵
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 合鍵返して | あいかぎ・かえして | 8音4・4字余り(基準7音) |
| 軽いポケット | かるい・ぽけっと | 7音3・4 |
| なのに心は | なのに・こころは | 7音3・4 |
| 重いまま | おもいまま | 5音 |
合計27音(8・7・7・5)/基準は7・7・7・5
意味は通ります。けれども、声に出すと第一句が長く、全体が「説明」に聞こえます。どこが問題かを、順番に確かめていきます。
一篇で残したい内容を、一文で決め直す
最初にするのは、音数を数えることではなく、この一篇で何を残したいのかを一文で書くことです。初稿を書いたときの気持ちと、読み返したときに本当に残したいと思うことが、ずれている場合があるからです。
初稿は「ポケットは軽い、なのに心は重い」という、軽いと重いの対比で組み立てられています。分かりやすい対比ですが、軽いと重いは真っ先に思いつきやすい組み合わせなので、読む人には先が読めてしまいます。
読み返して考え直すと、この場面で残したいのは、心が重いことより、ポケットが軽くなったこと自体がこたえるという感じでした。合鍵がなくなって軽くなる、その軽さが、関係が終わったことを知らせてくる。そこで、残したい内容を次の一文に決め直しました。
要点決め直した一文
合鍵を返してポケットが軽くなった。その軽さが、かえってこたえる。
この一文が、あとで修正案を選ぶときの基準になります。
読みをかなで書き、七七七五を点検する
次に、各句の読みをかなで書き、音数を数えます。読みが二通りある語は、どちらで読ませたいかを決めて書きます。
| 句 | 表記 | 読み | 音数 | 気づいたこと |
|---|---|---|---|---|
| 第一句 | 合鍵返して | あいかぎかえして | 8 | 基準の7音より1音多い(字余り) |
| 第二句 | 軽いポケット | かるいぽけっと | 7 | 促音「っ」も1音で数える |
| 第三句 | なのに心は | なのにこころは | 7 | 「心」は「こころ」と読む(「しん」と読むと6音になる) |
| 第四句 | 重いまま | おもいまま | 5 | 基準どおり |
合計は27音で、第一句が字余りです。「心」のように、読み方で音数が変わる語は、読みを決めておかないと数え間違えます。逆に、「空いた」を「あいた」と読むか「すいた」と読むかのように、音数は同じでも響きが変わる語もあります。読ませたい読みが伝わりにくい語には、発表するときにふりがなを付けることも考えます。
句の中の区切りを、三・四/四・三/三・四/五で確かめる
都々逸の四つの句は、句の中が「3・4,4・3,3・4,5となる場合が多い」と説明されています(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)。音数を数えたら、各句を区切って声に出し、この形に照らしてみます。
| 句 | 読みの区切り | 句の中 | 目安の形 | 見立て |
|---|---|---|---|---|
| 第一句 | あいかぎ・かえして | 4・4 | 3・4 | 字余りのうえ、前半が長い |
| 第二句 | かるい・ぽけっと | 3・4 | 4・3 | 続く第三句と同じ3・4になり、四・三の揺れがない |
| 第三句 | なのに・こころは | 3・4 | 3・4 | 形は合っている。ただし前の三音が接続の言葉 |
| 第四句 | おもいまま | 5 | 5 | 合っている |
第二句を見ると、音数は七で合っています。けれども句の中が三・四なので、第三句の三・四と同じ調子が続き、声に出すと平板になります。第二句だけ前が長い四・三になることで生まれる揺れが、ここでは消えています。
音数を数える道具は、自分で入れた区切りごとの音数を示すことはできても、どこで区切るのが自然かまでは判定しません。区切りの位置に小さく間を置いて、二、三回声に出して読み、つかえる場所、平板に聞こえる場所に印を付けます。辞典の説明が「多い」となっているとおり、この形は絶対の決まりではありません。ただ、推敲では、この形からずれている句を見つけて、ずらしたままにする理由があるかを考える手がかりになります。
三つの修正案:言葉・句の中の区切り・結びを変える
ここまでで見つかった問題を、三つの方向から直してみます。案Aと案Bは初稿の一句だけを変えた案、案Cは二つの直しを生かしたうえで結びの二句を差し替えた案です。
修正案A:言葉を替えて、第一句の字余りを直す
第一句の8音を7音にするには、言葉を置き換えます。音数が同じになる案は一つではありません。ここでは二つ作って比べます。
作例・都々逸修正案A-1:「鍵を返して」
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 鍵を返して | かぎを・かえして | 7音3・4 |
| 軽いポケット | かるい・ぽけっと | 7音3・4 |
| なのに心は | なのに・こころは | 7音3・4 |
| 重いまま | おもいまま | 5音 |
合計26音(7・7・7・5)/都々逸の基準どおり
作例・都々逸修正案A-2:「返す合鍵」
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 返す合鍵 | かえす・あいかぎ | 7音3・4 |
| 軽いポケット | かるい・ぽけっと | 7音3・4 |
| なのに心は | なのに・こころは | 7音3・4 |
| 重いまま | おもいまま | 5音 |
合計26音(7・7・7・5)/都々逸の基準どおり
| 比べる点 | A-1 鍵を返して | A-2 返す合鍵 |
|---|---|---|
| 音数と区切り | 7音・3・4 | 7音・3・4 |
| 意味の変化 | 「合」が消え、ただの鍵になる。誰の鍵か、二人の関係が見えにくい | 「合鍵」が残り、二人の間柄が伝わる |
| 次の句へのつながり | 「返して」で動作が次の句へ流れる | 名詞で止まるので、第二句も名詞止めの「軽いポケット」だと、ぶつ切れに聞こえる |
音数も区切りも同じなのに、意味と流れが変わります。決め直した一文には「合鍵」が欠かせないので、A-2を選びます。その代わり、第二句とのつながりを次の案で直す必要があります。
修正案B:句の中の区切りを変えて、第二句に揺れを戻す
第二句「軽いポケット(3・4)」の語順を入れ替えて、「ポケット軽い(4・3)」にします。
作例・都々逸修正案B:第二句の語順を替える
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 合鍵返して | あいかぎ・かえして | 8音4・4字余り(基準7音) |
| ポケット軽い | ぽけっと・かるい | 7音4・3 |
| なのに心は | なのに・こころは | 7音3・4 |
| 重いまま | おもいまま | 5音 |
合計27音(8・7・7・5)/基準は7・7・7・5
※第一句は初稿のまま。第二句の区切りだけを3・4から4・3に変えた案。
語は同じで、並べ方だけを変えました。「軽いポケット」は、ポケットの様子を説明する名詞のまとまりです。「ポケット軽い」は、ポケットが軽くなった、と今起きた変化を言う形になります。声に出すと、三・四、四・三、三・四と揺れが戻り、第二句で「かるい」と言い切ったところに小さな間ができます。
案Aの「返す合鍵」と組み合わせると、名詞で止まる第一句のあとに、「ポケット軽い」と言い切る第二句が来るので、ぶつ切れの感じも消えます。
修正案C:結びを変えて、残したい内容に合わせる
第三句と第四句の「なのに心は/重いまま」は、音数も区切りも合っています。それでも直すのは、意味の上で二つの問題があるからです。
- 「なのに」は、軽いと重いの対比を言葉で説明しています。都々逸は二十六音しかないので、二つのものを並べるだけで対比が伝わるなら、接続の言葉に三音を使うのはもったいない場合があります。
- 「重いまま」は、軽いと重いという、先の読める対比で終わっています。決め直した一文の「軽さがこたえる」とも合いません。
そこで、第三句と第四句をまとめて差し替えた案を、三通り作りました。第一句と第二句は、案A-2と案Bで直した「返す合鍵/ポケット軽い」を使います。
作例・都々逸修正案C-1:気持ちで結ぶ
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 返す合鍵 | かえす・あいかぎ | 7音3・4 |
| ポケット軽い | ぽけっと・かるい | 7音4・3 |
| 軽くなるほど | かるく・なるほど | 7音3・4 |
| 身にしみる | みにしみる | 5音 |
合計26音(7・7・7・5)/都々逸の基準どおり
作例・都々逸修正案C-2:動作で結ぶ
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 返す合鍵 | かえす・あいかぎ | 7音3・4 |
| ポケット軽い | ぽけっと・かるい | 7音4・3 |
| 空いたところに | あいた・ところに | 7音3・4 |
| 手を入れる | てをいれる | 5音 |
合計26音(7・7・7・5)/都々逸の基準どおり
作例・都々逸修正案C-3:ひねって結ぶ
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 返す合鍵 | かえす・あいかぎ | 7音3・4 |
| ポケット軽い | ぽけっと・かるい | 7音4・3 |
| 空いたところに | あいた・ところに | 7音3・4 |
| 小銭入れ | こぜにいれ | 5音 |
合計26音(7・7・7・5)/都々逸の基準どおり
| 結び | 意味のつながり | 読後に残るもの | 決め直した一文との合い方 |
|---|---|---|---|
| C-1 身にしみる | 「軽い」を第三句で受けて、軽さが増すほどこたえる | しみじみした気持ち。言葉ではっきり言うので分かりやすい | 「軽さがこたえる」をそのまま言っている |
| C-2 手を入れる | 鍵のあった場所に、つい手を入れてしまう | 空いた場所を確かめる手の動き。気持ちは言わずに残る | 軽さがこたえることを、動作で見せている |
| C-3 小銭入れ | 空いた場所に、さっそく小銭入れを入れる | 強がりのおかしみ。笑えるが、その裏に寂しさが透ける | 軽さを埋めようとする姿で、こたえていることを裏返しに見せる |
C-1は、しみじみと情感で結ぶ形です。気持ちを言葉で言い切るので、伝わり方は確実ですが、読む人が想像する余地は小さくなります。C-2は、気持ちを言わずに動作で止める形で、余韻が長く残ります。C-3は、思いがけない物を置いて機知で結ぶ形です。笑いを誘いながら、なぜすぐ埋めたのかを考えさせます。
どれを選ぶかは、読む人にどう受け取ってほしいかで決めます。ここでは、決め直した一文の「こたえる」を言葉にせずに伝えられるC-2を選びました。C-3のように笑いの方へ振るのも、都々逸らしい選び方の一つです。
完成稿と、初稿からの変化を並べる
A-2(返す合鍵)、B(ポケット軽い)、C-2(空いたところに/手を入れる)を組み合わせた形、つまり修正案C-2を、そのまま完成稿とします。
作例・都々逸完成稿:合鍵
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 返す合鍵 | かえす・あいかぎ | 7音3・4 |
| ポケット軽い | ぽけっと・かるい | 7音4・3 |
| 空いたところに | あいた・ところに | 7音3・4 |
| 手を入れる | てをいれる | 5音 |
合計26音(7・7・7・5)/都々逸の基準どおり
| 句 | 初稿 | 完成稿 | 変えた理由 |
|---|---|---|---|
| 第一句 | 合鍵返して(8音・4・4) | 返す合鍵(7音・3・4) | 字余りを直し、「合鍵」を残した |
| 第二句 | 軽いポケット(3・4) | ポケット軽い(4・3) | 第二句の四・三の揺れを戻し、変化を言い切る形にした |
| 第三句 | なのに心は | 空いたところに | 対比を説明する「なのに」をやめ、鍵のあった場所という具体に替えた |
| 第四句 | 重いまま | 手を入れる | 先の読める軽い・重いの対比をやめ、動作で余韻を残した |
完成稿をもう一度、句の中の区切りで間を置きながら声に出して読み、つかえる場所がないことを確かめます。音数は七・七・七・五、区切りは三・四/四・三/三・四/五です。ただし、数と形がそろったことは、完成の条件の一つでしかありません。最後は、決め直した一文が伝わるかどうかで判断します。
字余りを残すなら、効果を説明できるか
都々逸にも字余りの型があることが、百科事典で紹介されています(改訂新版 世界大百科事典)。字余りは、すべて直さなければならない誤りではありません。ただし、残すなら、何のために長くしたのかを自分で説明できることが条件です。
たとえば、完成稿の結びを次のように伸ばすと、第四句が七音になります。
作例・都々逸比較:結びを伸ばした案
| 句 | よみ | 音数 |
|---|---|---|
| 返す合鍵 | かえす・あいかぎ | 7音3・4 |
| ポケット軽い | ぽけっと・かるい | 7音4・3 |
| 空いたところに | あいた・ところに | 7音3・4 |
| 手を入れたまま | てを・いれたまま | 7音2・5字余り(基準5音) |
合計28音(7・7・7・7)/基準は7・7・7・5
「手を入れたまま」は、ポケットに手を入れたまま立ち止まっている時間を伸ばして見せます。長くなった分だけ、その場から動けない感じが出ます。一方で、七音が四つ続くことになり、「最後だけ短い五音でくるりと結ぶ」という都々逸の調子は失われます。
| 判断の観点 | 字余りを残してよい場合 | 直したほうがよい場合 |
|---|---|---|
| 理由 | 伸びた音に、意味や効果がある(時間の長さ、言いよどみなど) | 言葉を詰め込んだ結果、たまたま長くなった |
| 声に出したとき | 長くなった句で、意図した間が生まれる | 長くなった句でつかえる、早口になる |
| 代わりの案 | 同じ音数の言い換えを試したが、意味が保てない | 同じ音数で意味を保てる言い換えがある |
初稿の第一句「合鍵返して」の字余りは、言葉を並べた結果長くなっただけで、「返す合鍵」という同じ意味の七音の案がありました。そのため直しました。結びの「手を入れたまま」は、効果はあるものの、都々逸の結びの短さを手放すほどの理由はないと判断し、五音の「手を入れる」を選んでいます。同じ字余りでも、判断は一つずつ違います。
公表する前に確認すること
推敲が終わり、投稿欄に送ったり、SNSや作品集に載せたりする前に、次の点を確かめます。
確認表公表前の確認
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【自作】有名な都々逸や歌詞の文句を、無意識に借りていないか。印象に残っている句の言い回しと似ていないかを、ことばで検索するなどして確かめる
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【自作】ほかの人の作品を手本にした場合、言葉を入れ替えただけの作品になっていないか
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【出典】古い都々逸や他人の作品を文章の中で紹介する場合、どの資料に載っていた形かを書き添え、必要な分だけにとどめているか
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【読み】読ませたい読みが伝わりにくい語に、ふりがなが必要ないか
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【募集規定】投稿先が決まっている場合、その回の募集要項で、未発表の条件、一人あたりの作品数、締切、表記の指定を確認したか
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【募集規定】SNSなどに先に載せた作品が、投稿先の「未発表」の条件に当たらないかを、要項の言葉で確認したか
募集の条件は、投稿欄や公募ごとに違います。ある投稿先の条件を、別の投稿先にも当てはまるものとして扱わず、送る先の現在の要項で確かめてください。
推敲の考え方を、都々逸に限らず文章全体で確かめたいときは、推敲とは?で、直す順番の考え方と短い変更例を扱っています。