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都々逸

都々逸の作り方|七七七五のリズムと題材・結びの基本

この記事の答え

都々逸は七・七・七・五の四句、二十六音で作ります。音は書いた文字ではなく、読みのかなで数えます。

  • 数が合ったら、各句を「三・四」「四・三」「三・四」「五」で区切って声に出し、句の切れ目が語の途中に来ていないかを確かめる
  • 題材は恋に限らない。日常の一場面から「言ったことと思っていること」のような対比を一つ選ぶ
  • 第一句で場面、第二・第三句で対比、最後の五音で結ぶ。結びは、しみじみ残す(情感)か、ひねって落とす(機知)かを比べて選ぶ
目次

都々逸を作ってみたいけれど、七七七五の数え方も、どこで息を継げば都々逸らしく聞こえるのかも分からない。この記事では、まず音の数え方と句の中の区切りを確かめ、そのあと日常の題材から対比を一つ選び、最初の七音から最後の五音まで組み立てる手順を、自作の二篇で示します。読み終えたら、身の回りの一場面から一篇を作り、声に出して調子を確かめられます。

都々逸は七・七・七・五、二十六音の短い詩

都々逸は、七音・七音・七音・五音の四つの句でできた短い詩です。辞典では「7・7・7・5の4句26文字」の俗謡の形式で、江戸の終わりごろ、天保9年(1838年)に初代の都々逸坊扇歌が寄席で歌って広まったとされています(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)。もとは三味線に合わせて歌うもので、男女の情愛や人情の機微を歌ったものが多いと説明されています。

この記事では、節を付けて歌う方法ではなく、文芸として一篇を書く方法を扱います。

ほかの短い定型と並べると、形の違いが分かります。

形式 句と音数 合計 始まり方
川柳・俳句 五・七・五 17音 五音で始まる
短歌 五・七・五・七・七 31音 五音で始まる
都々逸 七・七・七・五 26音 七音で始まり、五音で終わる

都々逸は七音で始まり、七音が三つ続いてから、最後に短い五音で終わります。長い七音を重ねて話を運び、最後の五音でくるりと結ぶ。この「最後だけ短い」形が、都々逸の調子を生む要の一つです。

音の数え方:書いた文字ではなく、読みのかなで数える

辞典や解説では「26文字」と書かれることがありますが、数えるのは書いた文字の数ではなく、読みをかなで書いたときの音の数です。たとえば「写真」は二文字ですが、読みは「しゃしん」で三音です。

種類 数え方 例(読み → 音数)
拗音(ゃ・ゅ・ょ など小さい字) 前の字と合わせて1音 写真(しゃしん)→ 3音
促音(っ) 1音 切手(きって)→ 3音
撥音(ん) 1音 パン(ぱん)→ 2音
長音(ー) 1音 コーヒー(こーひー)→ 4音

漢字は読み方で音数が変わります。「今日」は「きょう」なら2音、「こんにち」なら4音です。作るときは、自分が読ませたい読みを決めて、句ごとにかなで書き出してから数えます。かなで書いた読みを入れて数えるには、かな入力の音数確認が使えます。読みの句の中に「・」を入れると、区切りごとの音数も表示されます。ただしこの道具は入力した読みの音数を数えるだけなので、読み方の正しさや、次に説明する句の中の区切りの自然さは、自分で声に出して確かめます。

句の中を「三・四/四・三/三・四/五」で区切って声に出す

都々逸は、七七七五の数が合うだけでは、都々逸らしい調子になりません。もう一つ確かめたいのが、句の中の区切りです。辞典では、四つの句の中が「3・4,4・3,3・4,5となる場合が多い」と説明されています(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)。

つまり、第一句は三音と四音、第二句は四音と三音、第三句はまた三音と四音に分かれ、最後の五音はひと続きに読む、という形です。声に出すと、句の中の小さな区切りで軽く息が止まり、第二句だけ前が長くなることで、調子に揺れが生まれます。

この記事の作例の一篇を、句の中の区切りが見えるように示します。よみの「・」が句の中の区切りです。

作例・都々逸作例:返信を待つ夜(情感で結ぶ)

画面伏せても光が漏れる隠すつもりの胸の内
句よみ音数
画面伏せてもがめん・ふせても7音3・4
光が漏れるひかりが・もれる7音4・3
隠すつもりのかくす・つもりの7音3・4
胸の内むねのうち5音

合計26音(7・7・7・5)/都々逸の基準どおり

声に出すときは、「がめん、ふせても/ひかりが、もれる/かくす、つもりの/むねのうち」と、読点のところでほんの少し間を置きます。区切りがどれも語の切れ目に来ているので、つかえずに読めます。

比べるために、同じ内容の二十六音の文章を、七・七・七・五で機械的に切ってみます。

作例・都々逸比較:音数だけ合わせた文

画面を伏せても光が見えるので返事が気にかかる
句よみ音数
画面を伏せてがめんを・ふせて7音4・3
も光が見えも・ひかりが・みえ7音1・4・2
るので返事がる・ので・へんじが7音1・2・4
気にかかるきにかかる5音

合計26音(7・7・7・5)/都々逸の基準どおり

※「画面を伏せても光が見えるので返事が気にかかる」という一文を、音数だけで切ったもの。

合計は二十六音、各句の音数も七・七・七・五で、数の上では基準どおりです。ところが、第二句は「伏せて/も」、第三句は「見え/る」と、語の途中で句が切れています。句の中の区切りも、第一句は三・四ではなく四・三、第二句・第三句は一・四・二、一・二・四と崩れています。声に出すと、句の切れ目でつかえて、ただの説明文を区切って読んでいるように聞こえます。

都々逸を作るときは、次の二つを別々に確かめます。

  1. 音数:読みをかなで書き、七・七・七・五になっているか
  2. 調子:句の中を三・四/四・三/三・四/五で区切って声に出し、区切りが語の切れ目に来ているか、つかえずに読めるか

注意句の中の区切りは「多い形」

辞典の説明も「場合が多い」となっているとおり、句の中の区切りは決まりというより、都々逸らしく聞こえやすい形の目安で、ほかの区切り方になる作品もあります。初めのうちは三・四/四・三/三・四/五に合わせて作り、慣れてきたら、崩したときに調子がどう変わるかを声で比べてみてください。

題材を選び、残したい対比を一つ決める

都々逸というと恋の歌の印象が強いかもしれません。たしかに男女の情愛を歌ったものが多いのですが、百科事典には、時代が下るとさまざまな題材の歌が現れ、明治期には自由民権運動と結びついた歌もあったことが紹介されています(日本大百科全書)。恋に限らず、日常のおかしみや、言いにくい本音も題材になります。

二十六音は短いので、場面を説明しているとすぐに音が尽きます。そこで、題材を決めたら、一篇の中で向かい合わせる二つのもの(対比)を一つ決めます。二つのもののあいだに、言わずにおいた気持ちが入ります。

題材(架空の場面) 向かい合わせる二つ 残したい気持ち
好きな人の返信を待つ夜 画面を伏せる/それでも光が漏れる 隠しても隠しきれない
引っ越しの荷造り 箱に書いた「割れ物注意」/本当に割れて困るもの 家を出る心細さ
塩を入れすぎた味噌汁 入れすぎた塩/言いすぎた一言 謝りそびれ
職場のエレベーター 鏡の中の笑顔/扉が閉まったあとの顔 一日の疲れ

どの行も、片方は目に見える物や動作で、もう片方は見えない気持ちや事情につながっています。この「見える物と見えない気持ち」の組み合わせが、短い四句の中で働きます。

題材が浮かばないときは、今日あったことを三つ書き出し、それぞれに「本当はどう思っていたか」を一言付けてみます。言ったことと思ったことがずれている場面が見つかれば、それが対比になります。

最初の七音から最後の五音へ組み立てる

対比が決まったら、四つの句に役割を割り振って組み立てます。次の表は、初めて作るときの目安です。すべての都々逸がこの形ではありませんが、迷ったときの道筋になります。

句 音数と区切り 役割
第一句 七(三・四) 場面や物を出す
第二句 七(四・三) 動きで話を進める。対比の片方
第三句 七(三・四) 向きを変える。対比のもう片方、または気持ちの側へ
第四句 五 結ぶ。余韻を残すか、ひねって落とす

最初の作例「返信を待つ夜」を、この順に作っていきます。

手順作例の組み立て

  1. 題材と対比を決める。好きな人の返信を待つ夜(架空)。スマートフォンを裏返して机に置いたのに、通知のたびに縁が光る。「伏せる(隠す)」と「漏れる(隠しきれない)」を向かい合わせる。
  2. 第一句で場面を出す。最初は「スマホを伏せて(すまほを・ふせて)」と書いたが、区切りが四・三になる。「画面伏せても(がめん・ふせても)」にすると三・四になり、「ても」で次の句へ逆の向きにつながる。
  3. 第二句で動かす。伏せたのに光る、という動きを「光が漏れる(ひかりが・もれる)」の四・三で置く。「漏れる」は、次の句で気持ちの側にも響く言葉として選んだ。
  4. 第三句で向きを変える。画面の話から自分の話へ移る。「隠すつもりの(かくす・つもりの)」で、伏せたのは画面だけではないことを示す。
  5. 第四句で結ぶ。五音で何を残すかを決める。最初の案は「胸の内(むねのうち)」。ほかの結びは次の節で比べる。

できた初稿は、前の節で示した「画面伏せても/光が漏れる/隠すつもりの/胸の内」です。

初稿ができたら、意味と調べを分けて読み直します。

確認表初稿を読み直す確認表

  • 【音数】読みをかなで書き、七・七・七・五になっているか
  • 【調べ】句の中を三・四/四・三/三・四/五で区切って声に出し、区切りが語の途中に来ていないか
  • 【調べ】二回続けて声に出して、つかえる句、息が足りなくなる句はないか
  • 【意味】四句を続けて一つの文として読んだとき、意味が通るか
  • 【意味】対比の二つが、両方とも一篇の中にあるか
  • 【意味】最後の五音が、前の三句の言い直しになっていないか

作例では、音数と区切りはそろっています。意味の上でも、伏せた画面から漏れる光が、隠した気持ちにつながって読めます。

結びの五音で、情感と機知を比べる

都々逸では、最後の五音が一篇の印象を大きく左右します。同じ三句でも、結びを変えると、一篇の性格が変わります。ここでは、結びの方向を大きく二つに分けて考えます。

  • 情感:しみじみとした気持ちを残す結び。読後に、気持ちの余韻が続く
  • 機知:思いがけない角度でひねり、「なるほど」と笑わせる結び。読後に、軽い驚きが残る

最初の作例の結びを、機知の方向へ変えてみます。第三句の「の」を「が」に変え、最後の五音を差し替えます。

作例・都々逸作例:返信を待つ夜(機知で結ぶ)

画面伏せても光が漏れる隠すつもりが顔に出る
句よみ音数
画面伏せてもがめん・ふせても7音3・4
光が漏れるひかりが・もれる7音4・3
隠すつもりがかくす・つもりが7音3・4
顔に出るかおにでる5音

合計26音(7・7・7・5)/都々逸の基準どおり

もう一つ、気持ちの名前をそのまま置く結びも作れます。「隠すつもりの/恋心(こいごころ)」です。三つを並べると、違いがはっきりします。

結び 第三句とのつながり 読後に残るもの 向き
胸の内 隠すつもりの胸の内 光と同じように、気持ちが外へ漏れていくしみじみした感じ 情感
恋心 隠すつもりの恋心 何を隠しているかがはっきり分かる。分かりやすいが、謎は残らない 情感(直接)
顔に出る 隠すつもりが顔に出る 画面は伏せても、自分の顔は伏せられないというおかしみ 機知

「顔に出る」は、画面の光から自分の顔へ、見えるものを横滑りさせたところに機知があります。「胸の内」は、光が漏れることと気持ちが漏れることを重ねて、しみじみと終えています。どちらが正しいということはありません。読んだ人に、笑ってほしいのか、少し胸を詰まらせてほしいのかで選びます。

もう一篇、恋ではない題材で作った作例です。

作例・都々逸作例:荷造り

箱に大きく割れ物注意割れて困るは皿じゃない
句よみ音数
箱に大きくはこに・おおきく7音3・4
割れ物注意われもの・ちゅうい7音4・3
割れて困るはわれて・こまるは7音3・4
皿じゃないさらじゃない5音

合計26音(7・7・7・5)/都々逸の基準どおり

引っ越しの荷造りで、食器の箱に「割れ物注意」と大きく書く。第二句までは、ただの作業の場面です。第二句は、箱に書いた文字をそのまま置いたので、「書く」と言わなくても書いている手元が見えます。第三句で「割れて困るは」と、書いた言葉を繰り返しながら向きを変え、最後の五音で「皿じゃない」と打ち消します。何が割れて困るのかは言っていません。家を出る自分の心細さか、離れて暮らす家族との間柄か、読む人が補います。打ち消しで結ぶと機知が立ちますが、その裏に情感も残る形です。

同じ三句に「この暮らし(このくらし)」と結べば、割れて困るものを言い切ることになり、情感の方向へ寄ります。言い切ると分かりやすくなり、打ち消すと読む人の想像に任せる部分が増えます。

練習:日常の一場面から一篇作る

練習対比を決めて一篇作る(30分)

  1. 今日か昨日の出来事を三つ書き出し、それぞれに「本当はどう思っていたか」を一言付けます。
  2. 言ったこと・したことと、思ったことがずれている場面を一つ選び、向かい合わせる二つ(見える物や動作/見えない気持ちや事情)を決めます。
  3. 第一句に場面か物を置きます。読みをかなで書き、七音で三・四に区切れるか確かめます。
  4. 第二句(四・三)で話を動かし、第三句(三・四)で向きを変えます。
  5. 最後の五音を、情感の結びと機知の結びの二通り作ります。
  6. 二つの案を、句の中の区切りで小さく間を置きながら声に出して読み、確認表で音数・調べ・意味を確かめます。

都々逸を学ぶ資料の探し方と、掲載作品・解説の読み分け

もっと多くの都々逸を読んだり、成り立ちを知ったりしたいときは、資料の種類によって分かることが違います。

資料の種類 分かること 読むときの注意
辞典・百科事典(コトバンクに収録された「都々逸」の項など) 形式、成り立ち、句の中の区切りの傾向 「場合が多い」と幅を持たせた説明を、守らなければならない規則に読み替えない
新聞・雑誌の都々逸の欄(例:日本老友新聞の「老友都々逸」) いま書かれている作品の題材や調子 掲載作品は作者の作品。書き写して自作に使わない。投稿したい場合は、その媒体の現在の募集規定を確認する
図書館の本(「都々逸」「どどいつ」「俗曲」などで検索) 古い歌詞の集成、芸能の歴史、作り方の解説 歌詞集・芸能史・作り方の本は目的が違う。目次と出版年を見て、自分が知りたいことに合う本を選ぶ
寄席や演奏の記録 節を付けて歌う都々逸 歌い方・節回しはこの記事の範囲外。文芸として書くときの音数とは別に考える

資料を読むときは、掲載作品と解説を分けて読むと、学びやすくなります。

  • 掲載作品は、題材の選び方や結びの付け方を観察する材料です。気に入った作品があれば、どこに対比があるか、結びの五音が情感か機知かを、自分の言葉でメモします。作品そのものを言い換えて自作にしないでください。
  • 解説は、形式や成り立ちの説明です。辞典の説明と、個人が書いた作り方の「決まり」とでは、確かさが違います。個人の解説は一つの考え方として読み、迷ったら辞典の説明に戻ります。
  • 作者の分からない古い歌詞は、伝わるうちに言葉が変わっていることがあります。文章の中で紹介するときは、どの資料に載っていた形かを示し、必要な分だけにとどめます。

都々逸と同じように、日常の一場面を短い定型にする形として、五七五の川柳の作り方もあります。七七七五より短い十七音で、場面を切り取る練習になります。