詩の反復とリズムの作り方|音読で言葉の響きを選ぶ
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この記事の答え
反復は、同じ言葉を重ねるだけでなく、形を保ったまま一部を変えて戻すことで、強調や変化を生みます。読者が型を覚えたところで一語を変えると、変えた語が際立ちます。
- 同じ詩を「反復なし」「同じ行の繰り返し」「一部を変える反復」の三案にして声に出す
- 繰り返すたびに意味が増えているか、同じことを言っただけかを印で分け、単調になった回を外す
- 音の重なり、読点や一字あき、行の長さもリズムを作る。反復や韻を入れないほうがよい詩もある
目次
詩に繰り返しを入れてみたものの、読み返すと同じ言葉が並んでいるだけで、くどく聞こえる。どの繰り返しが効いていて、どれが余計なのかは、目で読むだけでは判断しにくいものです。この記事では、架空の詩「たたむ」を、反復なし、同じ行の繰り返し、一部を変える繰り返しの三案に書き分け、声に出して比べます。読み終えたら、自分の詩で繰り返しを入れる案と省く案を作り、残す箇所を音読で選べます。
反復は「型を覚えさせて、変えたところを見せる」
国語辞典(デジタル大辞泉)は、修辞法としての反復法を「同一または類似の語句を繰り返すもの」と説明しています。「同一」だけでなく「類似」も含まれている点が大事です。詩の反復には、まったく同じ言葉を戻す形と、形を保ったまま一部を変える形があります。
詩の各節の終わりなどで同じ詩句を繰り返すことは、リフレーン(リフレイン)とも呼ばれます。辞典では「詩や楽曲で、各節の終わりなどに同一の詩句・楽句を繰り返すこと」と説明され、「折り返し」「畳句」という言い方も挙げられています。
名前を覚えるより、反復が読者に何をするかを押さえておくと使いやすくなります。
| 繰り返すもの | 例(この記事の作例から) | 読者に起きること |
|---|---|---|
| 同じ語 | 「たたむ」を何度も置く | 動作が続いている時間を感じる。多すぎると単調になる |
| 同じ形の文(構文) | 「〇〇をたたむ」の〇〇だけ替える | 型を覚え、替わった語に注目する |
| 同じ行(リフレーン) | 「母のやり方で たたむ」を連の終わりに戻す | 戻ってくる行を待つようになる。前の行が変わると、同じ行の意味も変わる |
| 同じ音 | 「畳の上で たたむ」の「た」 | 意味とは別に、耳に残る響きが生まれる |
型を保って一部を変える例
著作権の切れた詩から、構文の反復の例を一つ見ます。宮沢賢治〔雨ニモマケズ〕の書き出しの三行です。
引用・詩宮沢賢治〔雨ニモマケズ〕冒頭三行
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
(宮沢賢治〔雨ニモマケズ〕、青空文庫より。底本は『【新】校本宮澤賢治全集』第十三巻(上)覚書・手帳 本文篇)
一行目と二行目は「〇ニモマケズ」の形をそのまま保ち、前の名詞だけを替えています。二行で型ができたところで、三行目は名詞が二つに増えて行が長くなり、語尾も「マケズ」から「マケヌ」に変わって、次の行へ続いていきます。同じ形を二度示し、三度目で崩すと、崩れたところで読みが前へ進みます。この記事の作例でも、この「型を作って、変える」動きを使います。
作例:同じ詩を三つの形で書く
ここからは、次の場面から書いた架空の詩を使います。
作例場面のメモ
母が検査入院して三日目の夕方。取りこんだ洗濯物を、畳の上でたたむ。父のワイシャツ、弟の体操服、母のパジャマ。パジャマは明日、病院へ持っていく。洗濯物はいつも母がたたんでいた。袖を後ろに回して四角くする母のたたみ方をまねるが、どれも四角くならない。
同じ場面と同じ材料で、三つの案を書きました。
案1:反復なし
作例・詩案1:反復なし
夕方 取りこんだ洗濯物を
畳の上に広げる
父のワイシャツは袖を背中に回して
弟の体操服は胸の名前が見えるように
母のパジャマは 明日病院へ持っていく
どれも母のやり方をまねたけれど
四角くは ならなかった
声に出すと、行ごとに形も長さも違い、説明を聞いているように進みます。誰の服をどうたたんだかがよく分かり、場面の情報はいちばん多い案です。その代わり、耳に残る言葉はあまりなく、最後の「四角くは ならなかった」も、ほかの行と同じ調子で読み流されます。
案2:同じ行をそのまま繰り返す
作例・詩案2:同じ行をそのまま繰り返す
父のシャツをたたむ
母のやり方で たたむ
弟の体操服をたたむ
母のやり方で たたむ
母のパジャマをたたむ
母のやり方で たたむ
タオルをたたむ
母のやり方で たたむ
靴下をたたむ
母のやり方で たたむ
「母のやり方で たたむ」が五回、一字も変えずに戻ってきます。声に出すと、手を動かし続ける一定の拍が生まれ、祈りや唱えごとのようにも聞こえます。
面白いのは三回目です。「母のパジャマをたたむ/母のやり方で たたむ」。行そのものは同じなのに、前の行が母の服になったことで、母のものを、母の代わりに、母のやり方でたたむ、という意味が加わります。同じ行でも、前の行が変わると意味が変わるのが、完全な繰り返しの強みです。
一方、四回目のタオル、五回目の靴下では、新しい意味が何も加わりません。ここから先は、同じ音を聞かされているだけになり、単調さが勝ちます。
案3:形を保って一部を変える
作例・詩案3:形を保って一部を変える
父のシャツをたたむ
袖を背中に回して
弟の体操服をたたむ
胸の名前が見えるように
母のパジャマをたたむ
明日 病院で着られるように
母のやり方で たたんだのに
どれも 四角くならない
「〇〇をたたむ」の行は同じ形を保ち、その次の行だけを毎回変えています。変わる行は、たたみ方(袖を背中に回して)、弟のため(名前が見えるように)、母のため(病院で着られるように)と、少しずつ人に向かい、重くなっていきます。最後の連で「たたむ」が「たたんだのに」に変わり、型が崩れます。読者は型を覚えているので、崩れたところで立ち止まり、そこに置かれた「四角くならない」が強く残ります。
三案を並べて比べる
| 案 | 音読で残る音 | 意味の変わり方 | 繰り返す位置 |
|---|---|---|---|
| 1 反復なし | 特に残らない。説明の調子 | 情報は最も多い。気持ちの山がはっきりしない | なし |
| 2 同じ行の繰り返し | 「たたむ」の拍。唱えごとのような一定の調子 | 三回目で意味が深まり、四回目から単調になる | 二行ごとに同じ行が戻る |
| 3 一部を変える反復 | 「〇〇をたたむ」の型と、最後の「たたんだのに」 | 変わる行が少しずつ重くなり、型が崩れた行で山が来る | 型は前半、崩しは最終連 |
三つのうち、どれが正解ということはありません。案1は場面を正確に渡したいとき、案2は動作の繰り返しそのもの(終わらない家事、考えないように手を動かすこと)を聞かせたいとき、案3は繰り返しの先にある一点を際立たせたいときに向いています。
少し変えて繰り返すと、変えたところが際立つ
案3のように一部を変える反復は、読者が型を覚えていることを利用しています。何をどう変えるかで、効き方が違います。
| 変え方 | 作例での形 | 効き方 |
|---|---|---|
| 名詞を替える | 父のシャツ→弟の体操服→母のパジャマ | 型が同じなので、替わった物が順に浮かぶ |
| 添える行を替える | 袖を背中に回して→名前が見えるように→病院で着られるように | 少しずつ意味を重くしていける |
| 語尾を変える | たたむ→たたんだのに | 時間や気持ちの向きが変わったことを、一語で知らせる |
| 行の長さを変える | 型の行より長い行、短い行を一つだけ置く | 拍が乱れたところで、読む速さが変わる |
変える回数が多すぎると、型そのものが見えなくなります。案3では、変え方を「添える行」と「最後の語尾」の二つに絞りました。どこで型を崩すかは、詩の中で一番言いたい場所と重ねます。
音の重なりを聞く
反復は、言葉の単位だけでなく音の単位でも起きます。辞典は頭韻を「詩歌・韻文などの句頭・語頭に、同一の音をもった語を繰り返して用いること」と説明しています(デジタル大辞泉)。日本大百科全書は、日本の詩歌は音数律によっているため、早くから頭韻の効果が用いられてきたとしています。
作例の場面には、音の重なりを作れる言葉がもともと入っていました。同じ意味の行を、言葉を替えて読み比べます。
| 行 | よみ | 重なる音 | 聞こえ方 |
|---|---|---|---|
| 畳の上で たたむ | たたみのうえで たたむ | 「たた」が二度 | 布を手のひらで軽くたたくような、短い音が続く |
| 床の上で たたむ | ゆかのうえで たたむ | なし | 意味は同じだが、音の手ざわりは平らになる |
| しわを伸ばして シャツをたたむ | しわをのばして しゃつをたたむ | 「し」「しゃ」 | 布をこする音に近い、息の多い音が並ぶ |
ただし、音を合わせるために、場面にない物や意味の合わない言葉を持ちこむと、響きのために詩が嘘をつくことになります。作例では、実際に畳の部屋でたたんでいる場面だから「畳の上で」を使えます。音の重なりは、場面にもともとある言葉の中から探すのが基本です。日本語の詩に韻を踏む決まりはないので、重なりが見つからなければ、無理に作らなくてかまいません。
読点・一字あき・行の長さでリズムを変える
同じ言葉でも、どこで息を置くかでリズムが変わります。言葉を足したり替えたりせずに使える調整です。
読点と一字あきで、一か所だけ間を置く
| 書き方 | 読んだときの間 |
|---|---|
| 母のパジャマをたたむ | 間なし。ほかの行と同じ速さで進む |
| 母のパジャマを、たたむ | 「を」のあとで息を継ぐ。文としての区切りがはっきりする |
| 母のパジャマを たたむ | 一字分の空白。読点より軽く、手が一瞬止まるような間 |
案3では、「〇〇をたたむ」の三行のうち、父と弟の行は間なしのまま、母の行だけに一字あきを入れると、母の服に手を伸ばしたときのためらいが、言葉で言わなくても伝わります。同じ型の行の中で間を置くのは一か所に絞ります。型の行すべてに入れると、どの間も同じ重さになり、ためらいが消えます。
行の長さで速さを変える
型を作る行の長さがそろっていると、一定の拍で読み進めます。そこに一行だけ長い行を入れると、読む速さが落ちます。
長くしすぎた行と、元の行
長くした行
作例・詩案3の第一連(一行を長くした形)
父のシャツをたたむ
袖を背中に回して
弟の体操服をたたむ
胸の名前が見えるように
母のパジャマをたたむ
明日の朝 父が病院へ持っていって 母がすぐに着られるように
元の行
作例・詩案3の第一連(元の形)
父のシャツをたたむ
袖を背中に回して
弟の体操服をたたむ
胸の名前が見えるように
母のパジャマをたたむ
明日 病院で着られるように
変更の理由
- 長くした行は、情報としては正確ですが、それまでの短い拍が崩れ、説明を聞く調子に戻ってしまいます。型の行(「〇〇をたたむ」)より長すぎて、読者が覚えた型も見えにくくなります。
- 元の行は、ほかの添える行(袖を背中に回して/胸の名前が見えるように)より少しだけ長い行です。拍を保ったまま、最後の行で少しだけ速さが落ち、次の連へ向かう間ができます。
- 長い行が効く場合もあります。型をわざと壊したいところ(案3なら最終連)に長い行を置けば、拍の乱れそのものが変化の合図になります。
改行の位置そのものを動かして、間や強調を変える方法は、詩の改行と連の分け方で同じ本文を三通りに組んで比べています。
音読で、残す繰り返しと外す繰り返しを選ぶ
三案を作ったら、目で読むのをやめて、声に出して選びます。
手順繰り返しを音読で選ぶ手順
- 反復なし・同じ行の繰り返し・一部を変える反復の三案を書く。同じ場面、同じ材料で書きます。
- 三案を声に出して読み、スマートフォンなどで録音する。自分の声を聞き直すと、目で読んだときに気づかない単調さが分かります。
- 繰り返しが出てくるたびに、印を付ける。意味が加わった回には「+」、同じことを言っただけの回には「=」を付けます。
- 「=」が続いたところから先を、外すか変える。型を読者に覚えさせるには、たいてい二回は要ります。それより後に続く「=」は、単調さの始まりです。
- 型が崩れる場所が、詩で一番言いたい場所と重なっているか確かめる。ずれていたら、崩す位置を動かします。
- 最後に、反復なしの案と聞き比べる。反復なしのほうがよいと感じたら、繰り返しは捨ててかまいません。
案2に、この印を付けると次のようになります。
| 回 | 前の行 | 「母のやり方で たたむ」の印 | 案2の中での判断 |
|---|---|---|---|
| 1 | 父のシャツをたたむ | +(たたむのが母ではないと分かる) | 残す |
| 2 | 弟の体操服をたたむ | =(同じことの確認) | 型を作るために残す |
| 3 | 母のパジャマをたたむ | +(母のものを、母の代わりにたたむ) | 残す。ここが山 |
| 4 | タオルをたたむ | = | 外す |
| 5 | 靴下をたたむ | = | 外す |
案2だけを直すなら、四回目と五回目を外した三回の形になります。ここではさらに、三つの案とこの印の結果を合わせて、最後の形を選びました。
作例・詩選んだ案:たたむ
夕方 畳の上で たたむ
父のシャツをたたむ
袖を背中に回して
弟の体操服をたたむ
胸の名前が見えるように
母のパジャマを たたむ
明日 病院で着られるように
母のやり方で たたんだのに
どれも 四角くならない
要点選んだ案で、それぞれの案から取ったもの
- 案3の「型を保って一部を変える」形を土台にしました。
- 案2の印で山になったのは、母のパジャマの回でした。同じ行を何度も戻すより、案3の最終連のように「母のやり方で」を一度だけ置くほうが、型の崩れと重なって強く聞こえると判断し、リフレーンは入れませんでした。
- 案1の書き出しにあった「夕方」を、「畳の上で たたむ」と合わせて一行目に置きました。時間を先に渡しつつ、「た」の音の重なりで手の動きの拍を聞かせています。
- 「〇〇をたたむ」の三行のうち、母の行だけに一字あきを入れ、型の中の間を一か所に絞りました。
反対に、反復を入れないほうがよい詩もあります。一瞬の景色だけを書く短い詩や、言葉の数が少なく一語ずつに重さがある詩では、繰り返しが言葉の重さを薄めることがあります。案1のように場面の情報を正確に渡したいときも、反復なしが向いています。反復は、リズムを作るための道具の一つで、すべての詩に必要なものではありません。
自分の詩で、入れる案と省く案を作る
練習反復の三案を作って聞き比べる(25分)
- 自分の詩から、同じ動作や同じ物が何度か出てくる部分を選びます。なければ、この記事の「たたむ」のように、手を動かし続ける場面をメモにします。
- 反復なしの案を書きます。言いたいことを、行ごとに違う形で書きます。
- 同じ行や同じ語をそのまま繰り返す案を書きます。四回以上繰り返してかまいません。
- 型を保って一部を変える案を書きます。どこで型を崩すかを先に決めます。
- 三案を録音して聞き、繰り返しの回ごとに「+」「=」を付けます。
- 残す繰り返しと、外す繰り返しを決め、最後の形を一つ書きます。反復なしを選んでもかまいません。
確認表反復とリズムの確認表
-
反復なしの案と、反復を入れた案を、両方声に出して比べた
-
繰り返しの回ごとに、意味が加わったか、同じことを言っただけかを分けた
-
「=」が続いて単調になった回を、外すか変えた
-
型を崩す位置が、詩で一番言いたい場所と重なっている
-
変え方を二つ程度に絞り、型が見えなくなるほど変えていない
-
音の重なりのために、場面にない言葉を持ちこんでいない
-
同じ型の行の中で、読点や一字あきの間を一か所に絞った
-
型の行より長すぎる行が、拍を崩していないか確かめた
比喩を加えて、イメージを一篇の中でつなげたい場合は、詩の比喩の作り方で、同じ具体物から作った比喩の候補と、比喩を外す案を比べています。